- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065171912
作品紹介・あらすじ
「三国志」は『万葉集』『太平記』にも登場する。江戸時代には、張飛と関羽が女性になる物語や、劉備と孔明が交わる春画もつくられた。日中戦争期には「三国志」ブームが訪れた……etc
日本の歴史は「三国志」とともに歩んできた!「三国志」を愛してやまない東大卒女子アナが、その真髄を全く新しい角度から探究する。
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『三国志演義』は、中国四千年の歴史の中で、一瞬とも言える百年ほどの時代を描いた小説なのに、なぜか日本人は「三国志」が大好き。どうして、「三国志」は日本で人気があるのでしょうか。
「日本でずっと読まれてきたから」――そうなのです、日本の歴史は、ずっと「三国志」とともに歩んできたのです。
第一章では、『三国志演義』のあらましと、私がどんな「三国志」に触れてきたのか、という「三国志の個人史」、第二章では、現代作家による『三国志演義』の多彩な世界をご紹介します。
第一章、第二章は、今、どんな日本語の「三国志」があるのかというブックガイドとしてもお使いいただけます。
今だけではなく日本で長きにわたって「三国志」が読まれてきたということを、卑弥呼から江戸時代までを第三章・第四章で、明治時代以降を第五章でご紹介します。
そして、第六章では、現代に繋がる日中戦争期の「三国志」ブームに迫ってみましょう。日中戦争下に花開いた日本語の「三国志」が、ほぼそのままの姿で、戦後の「三国志」ブームを作っていくのです。
ーー「はじめに」より
感想・レビュー・書評
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筆者の三国志愛が全編に溢れていて、それだけでも読んでいて楽しくなります。吉川英治「三国志」と横山光輝のマンガでしか触れたことはなかったのですが、現代作家だけでなく、こんなに多くのバリエーションの「三国志」があることに驚きました。作家による色の違いと、何故日中戦争当時に吉川英治「三国志」が新聞連載されたのかの考察がとても興味深かったです。
個人的には宮城谷昌光「三国志」を読みたくなりました。
これも個人的にですが「桃園の誓い」がない三国志はやはり読む気がしません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タレント本かと思いきや、しっかりした本だった。書名は「日本における三国志の受容」とでもすべきか。
江戸初期の『通俗三國志』以降、豊富なアレンジと共に大衆文化に浸透していく。明治期には、国定教科書への収録も含め、忠臣とされた孔明の偉人化。日中戦争期には、作家として従軍した吉川の自らの経験も踏まえた、「敵」と「大東亜共栄圏の同胞」という相反する見方を土台にした吉川『三國志』。これも含めた中国を理解するための三国志ブーム。
吉川以降の時代では、有名作家の三国志小説の文体の違い。柴錬三国志が性描写が過激というのは分かるような気がする。現代の中年以下の層では横山光輝とゲームの影響が大きいだろうが、さすがに本書ではこれらは触れられていない。しかしこれらも、江戸時代以降の大衆への浸透があったからこそなのだろう。 -
全くの初心者にはちょっと難しいかなと思った。私は横山三国志+人形劇世代で、身近な三国志ファンは実は書籍は読んだことがない人が圧倒的に多い。そういった方々が読むと気づきが多いかもしれない。
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第1章 わたしの「三国志」―主な出来事を追って
第2章 有名作家、それぞれの「三国志」
第3章 弥生時代から江戸時代、人々はどう読んだか
第4章 江戸時代、知らぬ人なし「三国志」―大衆文化に深く浸透
第5章 近代日本と孔明
第6章 日中戦争期の「三国志」ブーム
著者:箱崎みどり(1986ー、目黒区、アナウンサー) -
読売20191110書評
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三国志のブックガイド的なものを勝手に期待していたので少し肩透かしでした。漫画やゲームにも言及してあればもっと面白く感じられたのではと思います。私的な三国志ものおすすめは、蒼天航路(マンガ)、北方三国志、宮城谷三国志、ナムコ三国志(ゲーム)、そして正史三国志。あと三国鼎立(フリーゲーム)。
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東2法経図・6F開架:B1/2/2535/K
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三国志初心者へのガイドブックでもありながら、日本における三国志の受容と変遷をテーマに現代に至るまでを俯瞰する。著者の三国志への愛が全編を貫きつつも、事実や引用資料に基づく研究者の視点で著されており一方的なオタク語りにはならず、また研究論文のような硬さもあまりなく読みやすい。日本における三国志文化の裾野にさらなる広がりを持たせるであろう、新たな三国志研究のスタンダードとも言える。
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日本における三国志の受容を『日本書紀』から現代にかけて綴ったもの。同じ現代新書に雑喉潤『三国志と日本人』があるが、江戸時代の庶民文化への三国志の浸透状況や近代における三国志ブームの背景については、本書の方が記述が多い。
とくに日中戦争期の三国志ブームは、戦時期の社会・風俗を考える上で貴重な指摘で、さらに掘り下げることのできるテーマだと思った。