湖の国

  • 講談社
3.09
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本棚登録 : 95
感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065171981

作品紹介・あらすじ

学校になじめず、家庭でもうとまれ、高校も中退しひきこもりがちだったミトは、近所の介護施設でバイトをはじめる。そこで担当した澤井のおばあちゃんが買った田舎の家をめざして家出をしたミトは、湖からやってきたヨシノと出会う。ヨシノは澤井のおばあちゃんの姿をしていたが、じっさいにはこの世の人間ではなかった。だんだんとヨシノに興味を持ち、惹かれていくミトだったが・・・・・・!?
 
 総ルビで、小学生にも読みやすい作りになっています。

 挿絵は、児童書で数々の挿絵を描いてきた、佐竹美保氏が担当します。

 柏葉幸子×佐竹美保の傑作ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • 惹きつけられるような表紙の絵に、背表紙と裏表紙の絵、全てが物語上のポイントになっているデザインが心憎い。

    今作品における、柏葉幸子さんのファンタジーは、和のテイストを感じさせられ、少々ホラーな雰囲気もありました。
    それから、浦島太郎のような、昔話のイメージですかね。

    物語の前半は、ミステリーのような謎を巡る展開だけど、真相が完全に不明なため、少々、中弛みに。

    ただ、その中弛みは、後半の展開のために用意してあったようにも思われ、途中から内容が思いきり様変わりし、一気に物語のテーマが収束されていきます。

    そこで問われるのは、人間とそうでない者の違いであり、それは、感情と理屈に言い換えることができるかもしれません。

    特に、愛が絡むと、理屈云々でないときもあることは、古今東西、様々な物語や史実(あるいは経験)からも明らかであるとは思うのですが、如何せん、これを児童書で問いかけていることに、少々疑問が。

    どういった方をターゲットにしているのか、といった点だけ、ちょっと気になりました。高校生くらい? それとも少女漫画のようなイメージなのだろうか。

    物語の中には、大人のわびさびに近いものを感じさせる、登場人物の切ない心情もあり、それを逆に、どう感じるのかといった楽しみ方もあるのかもしれませんね。

    まあ、私的には特に問題なく楽しめたし、僅かな希望を滲ませた終わり方も、却って、吹っ切れた感が出ていて良かったと思います。

  • 弁護士の父、大学教授の母、優秀な兄と姉に囲まれるミトは、取り立てて優れたところのない娘だった。高校も中退し、2年の引きこもり生活の後、ひょんなことから介護施設のアルバイトを始める。半年後そのことを知った家族から、辞めてアメリカの高校への進学を促されるが、彼女は今のままの生活を望んでいた。
    ふと思い立って、施設で親しくしている沢井のおばあちゃんがこっそり買ったという家を見てみようと東北の湖のある街を訪ねるが、その晩湖から大波が来て、向かいの公園に巨大な船が乗り上げ、びしょ濡れの黒い人影が降り立つ。その人影はミトのところまでやってきて倒れ込んだが、なんとそれは、介護施設にいるはずの沢井のおばあちゃんだった。

    ……。

    普段ならここに、まとめの一文を入れるのですが、ここまでの導入部分の粗筋を読んだだけでも、かなり奇想天外な話だと推測されると思います。
    私の読解力では、この話が何を描きたかったものなのか、想像すらできませんでした。



    *******ここからはネタバレ*******

    介護施設で知り合ったおばあちゃんの恋い焦がれる家の様子を見てきて話してびっくりさせてあげよう、どうせ自分の家には居場所もないんだし、と考えて衝動的に旅に出たのはわかるんですが、どうしてプロの「追手」が、びしょ濡れで倒れてしまうような事を起こすのか?ミトという一般人がたまたま泊まっていたのが想定外だったとしても、交通事故で介護施設に入っていなければ沢井のおばあちゃんが住んでいたはずではないか。それなのに「自分に関わるな」と突き放すなんて支離滅裂だ。
    それに、なぜ地蔵菩薩の真言を唱えることが、伊坂弓子を鬼に変え、ミトを危険に晒すのか?そもそも真言や菩薩という存在を、あやかしもののように扱うのは不遜ではないのか?
    ここで描きたかったのは、住む世界も違う、姿も知らない相手への思慕ではなかったのか?それでは、昔の強盗事件など持ち出す必要なかったでしょうに。


    「湖」の意思も理解できない。なんのために生きながらえたい人々を保護しているのか?なんのために脱走者を執拗に追うのか?
    「兄者」だって、そもそもどうして薫子さんに姿を見せたの?
    ミトは、ヨシノが兄者と同じように猫となっても、同じ感情を持って生き続けられるのだろうか?ヨシノが人間以外の姿で身近にいる限り、彼女は他の人と人生をともにすることが難しくはならないのか?
    仙崎の家でヨシノを待つと彼女は言うが、そもそもそこは人の家で、黙って何ヶ月も住んでいるんでしょ?アルバイトとはいえ社会人なんだから、それじゃまずくありませんか?

    ファンタジーの場面設定もストーリーの展開も、人物の感情の動きも、私には奇想天外で、とても理解困難な作品です。

    表紙裏に「湖の国」「東北の湖の町」の地図がありますが、これは物語の順序に合わせて「東北の湖の町」「湖の国」に載せたほうがわかりやすいと思います。

    とても難解なので、私は人にオススメしませんが、文章自体は平易で全てにふりがなもついているので、中学年や高学年から読めると思います。

  • 主人公が前向きになれたことが良かった。

  • 児童書としては、主人公が前を向いて力強く生きていくことを
    最終的に期待してしまいますが
    この物語はちょっと違うような気がする
    いろいろ経験した大人が共感しながら読んでいくような感じ
    そして、物語という夢から覚めてからもどこかで続いているような印象

    前半はミステリーで後半はファンタジー
    印象が違う不思議な物語
    追いかける人の姿が見えないところも
    いままでにはない展開ですね!

  • ★おすすめコメント★
    主人公ミトが湖の底で見た景色とは!? 小学生の頃になんだかわくわくして読んだ児童文学書。湖の国ではそんなわくわくと、ミステリーが沢山つまっています。
    もう一度、あのわくわく体験をしてみませんか?
    武蔵野大学図書館OPACへ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000167488

  • いや~やはり柏葉幸子さん、素晴らしく面白かった。前半は割とうだうだとまどろっこしい鬱々とした雰囲気だが、後半すべての伏線が縒り合され加速度を付けてぶっ飛ばされてくような物語展開スピード感が素晴らしくて一気にダア。(この前半ウダウダ後半ぶっとばしパターンの感じってちょっとダイアナ・ウイン・ジョーンズ思い出すなあ。)珍しく子供向けというよりは少し上の世代にも、と思えるような主人公の年齢設定、恋愛要素。てんこもりにビルドゥングスロマン、自己確立、民話的要素、大地に根差したファンタジー、ミステリー。何しろ魅惑的。是非続編出てほしい。

  • 続きもあれば是非読みたい。

  • 表紙からもなんか異世界からの出会い、とは思っていた。
    家族から疎まれ、自分の居場所がないミト。
    家に戻りたくなくて、ふと思いつき、バイト先で知り合ったおばあちゃんが家族にも秘密で買ったという家を1人訪れる。
    その晩現れたのはそのおばあちゃんだったが、姿はそうだが中身は違うようで…。
    とまどいつつも始まった2人暮らしの中にミトは居心地のよさを感じていく。
    おばあちゃん、もといヨシノもそうかと思っていたのだが。

    異界との触れ合いと主人公の成長、という感じの児童書かと思ったけど、もいちょい心の機敏、というか、
    誰も知らない不思議な町、とはちょっとテイストが違うかな。
    話しが湖の国に移ってからが第二部、という感じ。
    千と千尋の神隠しの電車に乗って行くところ、みたいな。

    誰かを愛しいと思うこと、一緒に生きたい、隣に立っていたい、と思うこと。

    姿違ってもわかるってのはツボですなー。胸キュンポイントですわー
    沢井のおばあちゃんの家を買った理由に泣けたり、
    血が繋がってなくても親子として想いあう家族にいいのうっと思ったり、
    いろんな想いに色々切ない一冊。
    まあ、ミトさんとこの家族設定はちょっと今時ないやろーーーな作り物めいた
    感じだが、そこはスルーで。


    兄者が猫ならヨシノはなにに?

  • 楽しい冒険ものを期待して読みましたが、違いました。
    結構暗い感じです。

  • 高校中退で、介護施設でアルバイトをするミト。
    担当の沢井のおばあちゃんが東北に買った湖の前の家が気になって行ってみると…。

    姿は関係なしに、本質に惹かれるというのは、素敵なことなんだろうけれど。
    現実的な部分が気になって仕方がない。

    バイトとはいえ、仕事で知り得た情報で、行ってもいいと言われたわけじゃないのに、勝手に人の家に入るとか…。
    何も事件が起きなかったら、沢井のおばあちゃんに行ってきたことを報告するつもりだったらしいし、勝手に行ってきたことを聞いたらどう思ったんだろうと考えてしまう。
    これが親戚とかならまだしも…。
    最初から、このあたりで引っかかってしまって…。

    途中、沢井のおばあちゃんの家で数ヶ月過ごすわけだけれど、光熱費はおばあちゃんの口座から勝手に引き落とされてるから、そのあたりのお金を無断で使ってるわけだし。
    隣町にバイトに行って生活費稼いで、ヨシノとずっと暮らしていける気がするみたいな描写があったけれど、そもそも無断で住んでるし…とか。
    最後も、猫になった兄者とそのまま、この家で過ごしていくような流れだったし。
    こうなれば、流石に事情を話して、住まわせてもらうのかもだけれど…。
    既に数ヶ月勝手に住んでましたと、言われたらどう思うんだろう…とか思ってしまった。

    湖の国、桃源郷…。
    湖の国の住人になっても、たまに現世に行ってくることも出来る。
    でも、逃げ出そうとすると容赦ない。
    仕組みとか伏線はよかった。

    最後の20ページくらいが怒涛の展開だった。
    あと少ししかないのにどう終わるの…と。

    ミトたちが逃げたあとは、監視役の鈴木さんの役目も終わって、湖の国は完全に閉鎖状態なってしまったのか。
    こっちから向こうに行った人は満足したら、いずれ消えるけれど、もともといる向こうの住人はどうなるんだろう。

    あとは、ヨシノの正体が男でよかったね、という。
    途中、ヨシノの正体が分からないうちから、恋してたわけだし。
    女でも親友みたいな感じでずっと付き合えるかもだけど。

    ヨシノもきっと戻ってくる、で終わったけれど、兄者と同じように猫や犬になって戻ってきたらどうするのかなー。
    人間の男になって戻ってきてハッピーエンドで終わるよりは、その後が気になる分成功だけれど…。
    虫とかだったらどうするんだろ…。

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著者プロフィール

児童文学作家。岩手県生まれ。東北薬科大学卒業。大学在学中に講談社児童文学新人賞を受賞し、『霧のむこうのふしぎな町』でデビュー。ファンタジー作品を多く書き続けている。『牡丹さんの不思議な毎日』で産経児童出版文化賞大賞、『つづきの図書館』で小学館児童出版文化賞、『岬のマヨイガ』で野間児童文芸賞受賞、『帰命寺横町の夏』英語版でバチェルダー賞受賞など受賞歴多数。


「2023年 『トットちゃんの 15つぶの だいず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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