- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065172711
作品紹介・あらすじ
「皆さん、おはようございます、日直の杏子(アンズ)です」「拒食も過食も不眠も自傷の一種だ」「僕はあなたがたを愛しているので、方法は記しません」「関東地区でパーティー希望です」「それでもお願いだから!」「俺は死にたくない!」「だってわたしはもう子供じゃないから!」人々の声は、あなたに届くでしょうか? 第39回野間文芸新人賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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高橋弘希『日曜日の人々』講談社文庫。
最近気になっている新人作家の一人。第39回野間文芸新人賞受賞作。
拒食、過食、不眠、自傷行為、自殺願望といった現代の悩める若者たちの姿を描いたエグい小説。悩める若者たちが集う場所は……
何が若者たちをこうした暗闇へと誘うのか。答えが見出だせないまま結末を迎え、嫌な後味だけが残る作品だった。傑作『指の骨』と共通するのは狂気か。しかし、『指の骨』に比べると物足りなさを感じる。
本体価格580円
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大好きな小説。何年ぶりかの再読だけれど、当時と同じ強さで文章から滲み出る痛みを感じた。
癒えない痛みに耐えながら生きなければならないというのは、どういうことなのか。そして、何もできなかった無力感をずっと抱えながら「自死遺者」として残されるというのは、どういうことなのか。
朝の会で、たくさんの言葉を持ち寄って考え続けていけたらいい。
絞り出される言葉は痛みだけれど、それをくりかえして降り積もっていくものは、きっと痛みではないと思うから。
〈帰路、Aに手を引かれて、病院前に広がる春先の庭を歩きながら、ピンの欠けたオルゴールを想像しました。今まで響いていた和音から、少しずつ音が欠けて、一つの楽曲から、音符が差し引かれていきます。音符が差し引かれたまま、オルゴールは廻り続け、旋律とは言えない、音楽とも言えない、奇妙な響きを奏で続けます。人生は少しずつ消費するものではなく、ぽろぽろと欠けていくものかもしれない、白日の下に、そんなことを思いました。〉
〈デプレッションは選択肢の消えていく病であるが、確かに僕の選べる未来は次第に限られていった。僕は幼少期に縁日で見た〝千本引き〟と呼ばれるくじ引きを思い描いた。あの赤い紐の先に景品が付いているくじ引きである。赤い紐の束が少しずつ減っていき、残った数本の紐を引いてみると、そこには〝首吊り〟だの〝飛び降り〟だの〝服毒〟だの記してあるのだった。〉 -
従姉妹の死の真相を追求するためにREMに参加するものの、拒食症の少女と懇意になっていく。死んだ従姉妹を拒食症の少女に重ねているのだろう。結局、少女の拒食症は悪化し入院にまで至り、主人公は死の欲動に感染する。
拒食症の少女を救えなかったのに、集団自殺を失敗した上で明るいラストを迎えていた。ここで賛否両論分かれるのではないだろうか。 -
読みたいリストより。
絶望している人がよく出てきた。痛い場面があった。切実でひりひりした生きづらい感じを分かりたいし分からないでもない気もするが、自分は多分本当には分かっていないだろうと思う。 -
表現が痛々しく、ぐぅーーとなり、読むのが辛い時があった。最後の方がちょっと意味がわからなかった。分かるような、理解できるような人になりたい。
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日曜日なので、文庫で再読しました。
高橋さんもっともっと読みたいですが、書くのしんどいのかなーと思ってしまいます。
日曜日の人々は読んでいる方もしんどくて、今も不眠症を患っている身としては吉村の言うことすごくわかる…となります。
「不眠は昼に肉体を蝕み、夜に精神を蝕む」拒食も過食も不眠も自傷の一種です。
言葉にすることですくわれたり、言葉にすることでますます呑み込まれていくのもわかる気がします。わたしはたまたま軽くなる方だっただけ。
「人生は少しずつ消費するものではなく、ぽろぽろ欠けていくものかもしれない」
高橋さんの文章は痛むのですが、痛みを伝えるために表現を徒に過剰にしてなくて好きです。淡々としています。 -
「日曜日の人々」とは自助グループへの参加者が自身を語った原稿をまとめている冊子。主人公の航は従妹が自死をしたことにより、この自助グループの存在を知る。
そこで知り合う人々を通して「死」に向き合っていく。
最後の車内での一連の文章を読んで、自分が死ぬとき自分は何を思うのか、ワクワクしてしまった。
自傷も拒食も不眠も、すべて言葉。
自分に、他人に、伝えたいことがある。死を選ぶときは言葉がなくなった時なのかもしれない。(薬物依存に関しては言葉ではないと個人的には思ったり。)
言葉はいつ何時刃物になるかわからない恐ろしい道具だと思う。
高橋さんが紡ぐ言葉は葉っぱのようだ。気づいたら少し切れていて、その傷が読み進めていくうちにどんどん増えていく。柔らかな文章の中にものすごいエネルギーが秘められている。
読んでいる最中は思わなかったが、読後感は映画『ファイト・クラブ』の鑑賞後の感覚に似ているところがあった。あれは映像とかブラピやエドワードノートンの演技力で凄まじい気迫だったけど、これは文章のみなのだから恐ろしい。
場面が突然切り替わっていく終盤の流れは、呼吸している暇も与えられず何者かに急かされているようだった。一気読み必至です。
誰にも自ら死を選ぶことはしてほしくない。1日でも長く生きてほしい。生き続ける理由にはならなくても、あの人がいるから今日は死ぬのやめておこうって思ってほしい。その あの人 になれるように。
著者プロフィール
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