地獄の楽しみ方 17歳の特別教室

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 828
感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065173848

作品紹介・あらすじ

「今の十代の皆さんは、私が十代だった頃に比べても、はるかに優秀です。
しかし、大人になった皆さんを待ち受けているのは地獄のような現実です。それはいつの時代も変わりありません。
地獄を楽しむためのヒントを、もう地獄に堕ちている先輩が、少しだけお教えします」(京極夏彦)

「あなたの世界」は、言葉ひとつで変わってしまいます。
SNS炎上、対人トラブル――すべては「言葉」の行き違い。
語彙を増やして使いこなすわざを身につければ、楽しい人生を送ることができます。

地獄のようなこの世を生き抜くための「言葉」徹底講座。

大人前夜のきみたちへ。学校では教えてくれない本物の知恵を伝える白熱授業。
「17歳の特別教室」シリーズ第5弾。

感想・レビュー・書評

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  • 京極さんは面白いなあ‥。
    「17歳の特別教室」ではあるけれど、全ての大人にも読んで欲しいなあ。若い人には勿論ね。

    前半はちょっと固いんだけど、後半は段々エンジンかかってきて、流石京極さん。
    「例えば、「絆」。フン(笑)鼻で笑ってしまいました。」とかね!

    言葉なんて通じないものなんだ。
    SNS上では特にね。
    語彙を増やそう、その為には本を読もう。
    自分の言葉が誤解されるかもしれない、他者の言葉の自分の解釈は間違っているかもしれない、その可能性を想像する力を持とう。
    そして「愛」やら「絆」やら「夢」やら、胡散臭い言葉には騙されないようにしよう!

  • ブクログから「おすすめ本」として通知が来たので読んでみた。

    10代後半の青少年向けの本なので、本来はまったくターゲット外だが、読んで面白かったら子供に勧めてみよう、と思って読んだ。

    テイストは、養老孟司さんの『なんとかの壁』シリーズに近く、悩み多き青少年の思考を堂々巡りのループから脱してシャープにするのによい本だなあ、と思った。ので、子供にも読ませてみよう。

    勝ち組、負け組、という言葉を批判する部分が秀逸。(P61-67)

    “負け組って、いったい何に負けたんでしょうか。しかも「組」ですよ。世の中に負け組なんて組はないです。同時に、勝ち組だと威張っている人も、何に勝ったんですか。何にも勝ってません。そんなルールは世の中に存在しないんです。お金を持っているほうが勝ちとか、位が高いほうが勝ちとか、彼女がいるほうが勝ちとか、彼氏の年収が高ければ勝ちとか、そんなルールは誰が決めたんですか。そんなルールはないんです。その人の人生はその人がよければそれでいいんです。負けもなし、勝ちもなし。これが正しいあり方ですよね。”

  • 京極夏彦の小説はさほど読んでいないけれど。
    現世を"地獄"と言い切ったうえでのその"楽しみ方"、しかも10代のための特別講座とのことで、とても興味をそそられて読んだ。
    そもそも言葉とはなんなのか。まずはそこから始まる。
    私たちは青という漢字を見てなぜ青色をイメージすることができるのか。時間なんて見に見えないものを概念として理解したつもりになれるのは何故か。
    言葉はそれらを現すことができるすばらしい発明であると同時に、常に欠けたものでもある。言葉はいつも不完全である。
    小説なんかはそんな不完全な言葉を駆使してつくりあげられたもので、だから書いてあることよりも書いていないこと、自分がその言葉を受け取ってかき立てられた感情、その小説を読んだ自分自身の中からつくりあげられた感情を大事にしたい。

    そして語彙を増やすということは自分の人生を豊かにすることである。語彙はその数だけ世界をつくってくれる。
    言葉は、混沌(カオス)の中から"私"を抜き出してくれるのであるから、語彙はそりゃ多いほうがいい。

    私はよく「この感情を言葉にして伝えることはできない。言葉として口にした瞬間から紛い物あるいはただの嘘になってしまうような気がする」と感じることがある(今のこの文章でもそのときの感情すべてを言い切れていない)のだが、それは言葉として抜き出したことで、抜き出しきれなかったそのほかのすべてを捨ててしまうことになるからなんだと気づいた。それはまぎれもなく不幸だ。でも言葉にしないことには混沌のなかを沈んでいってしまうものであるから、やはり語彙は多いほうがいい。より正確に抜き出すことができるように。
    言葉にして捨てることは不幸だが、けれどその感情を芽生えさせてくれるものも言葉である。言葉は不幸でも幸福でもある。

  • 10代の青年を対象に行われた講演を書籍化したもの。最初から最後まで京極節が炸裂。私が初めて京極夏彦の作品を読んだのも中学生の時で、当初はかなりの衝撃を受けたのですが、彼の小説の中で言っていることがほぼそのまま主張されています。言葉が持つ特殊性、言葉は100%正しくは伝わらない、言葉を受け取る方は無意識に足りない部分を補って聞いている……などなど。読書についても言及していて『読書は能動、面白がってやると思って読むのが正しい。』面白くない本はないと平素から言い切っている京極氏ならではの言葉。私も同意。語彙の数だけ世界が作れる、たくさんの言葉を知って、その言葉を使いこなすことが豊かな人生を作ってくれると語る京極氏。この本は大人の人にも読んで欲しい良書です。

  • 言葉は不完全なもの、削ぎ落とされて欠けるもの。
    すべての読書は誤読である。わかりやすいことばでことばを扱う慎重さを感じさせられる。

  • 書評『地獄の楽しみ方』京極夏彦著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2020021400088.html

    『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』(京極 夏彦)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000325430

  • 『現実に持たなければならないのは、きちんと達成できる目標です。それを夢だ、希望だみたいなことで美化してしまうのは、非常に危ないと思います。』

    中高生への講演録。
    緩急が上手い!
    思わず吹き出すところも多々ありつつ、読むのを止めて考え込む言葉もたくさん。
    十代にお勧めしたい。
    引っ越しのエピソード、最高だったなー!

  • 言葉はすぐれた発明で、同時に欠けているもの。言葉を選び取ることで、多くがこぼれ落ちるということ。欠けてるところは相手が勝手に埋めるということ。伝わると思ってもお互い勘違いしてることはよくあるということ。
    言葉により影響を受けるのは現実の何かではなく人の心だということ。
    整理整頓清掃が大事。嫌いなことをしないために、頭を使おう。メモなんてとらず、ボーッと聞くほうが入ってくる。役立てるようにするのは自分ということ。行動しなければ変わらない。

    具体的に氏がなにをしたかはいっさい言わないトーク。嫌いなことは執筆、という氏の小説に興味をもちました。

    もっと言葉を自在につかいたいなら、言葉の持つ特性を知ることは有効だと思います。

    聞き手(15〜19歳の年齢層)との一問一答は読み応えあり。

  • 17歳では無いですけど、大変面白く読みました。17歳でこんなお話を聞く機会があった方々が羨ましい。
    残りの人生、言葉を選びながら、楽しんで生きていけるように工夫します。
    それにしても生徒さん達の質問にも驚きました。難しいこと考えて生きているんだなと自分の17歳時を思い起こしてちょっと情けない。

  • 刊行前から買うと決めていた。数年前の東京国際ブックフェアでの講演と通じるものがあるとおもい出し、当時より、若い世代に伝わるよう柔らかく噛み砕いてお話しされている印象を受けた。そして17歳をとっくのとうに越えた30代の凝り固まった(笑)女にも優しく届くお話で、この地獄をどうやって生きていけばよいのか右往左往しているいま、これを読めてとてもよかった。ある言葉を言ったあとに鼻で笑ってしまい謝罪する京極さんに笑い、10代へ「じぶんを大事にしましょうね」と語りかけるさまにまさかの涙が出てしまった。整理整頓をしよう。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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