告白 三島由紀夫未公開インタビュー (講談社文庫)

著者 :
制作 : TBSヴィンテージクラシックス 
  • 講談社
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本棚登録 : 111
感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065173855

作品紹介・あらすじ

自決9ヶ月前。最後の長編小説『豊饒の海』第三巻「暁の寺」脱稿日に語られ、 今まで公開されることのなかった貴重なインタビュー音源が発見された。
くつろいだ様子でてらいなく自身の文学観、芸術観、戦後観を語るその口調に、従来のイメージをくつがえすような「素顔の三島」が表れている貴重なインタビュー。 「群像」2017年3月号に部分掲載されて各メディアで大反響を呼んだ第一級の資料を全文公開した単行本を文庫化。
「これをわかってくれれば、僕のやりたいことは全部わかる」と三島がインタビュー中で語った評論「太陽と鉄」を併録。

感想・レビュー・書評

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  • TBSテレビ資料庫内の「放送禁止テープ」の山から発見された、自決9ヶ月前の三島へのインタビューを書籍化。単行本は2年前に出ているが、文庫化を機に初読。

    インタビュアーを務めたのは、三島の評論『太陽と鉄』などの英訳を手がけたジョン・ベスター。
    ただし、〝ベスターが三島作品を訳すにあたって本人からレクチャーを受ける〟というテイのインタビューであり、公開を前提にしたものではないようだ。

    インタビュー時間は1時間20分。それをベタ起こししているのだが、この長さでは一冊の本としては足りない。

    ゆえに水増しのため、三島の『太陽と鉄』(インタビュー中に、「これをわかってくれれば、僕のやりたいことは全部わかる」との言及がある)を併録。
    さらに、テープの発見者・小島英人による長文の「あとがき」を付している。
    あとがきは、テープ発見から書籍化までのいきさつが綴られたもの。これ自体がわりと面白く読める。

    『告白』というタイトルから、三島のイメージを覆す衝撃的事実の告白が含まれているような印象を受ける。
    が、そういうものはなく、「『告白』ってほどのもんではないなァ」と思ってしまった。

    とはいえ、インタビューの内容は興味深く、三島文学の愛読者なら一読の価値はある。

    たとえば、三島が開高健から資料提供を受け、ベトナムのゴ・ディン・ヌーを主人公にした戯曲を「書きたいと思っている」と言うくだりがある。
    これは実現しなかったわけだが、読んでみたかったと思う。

    ゴ・ディン・ヌーとは、いわゆる「マダム・ヌー」のこと。
    南ベトナムのゴ・ディン・ジエム政権の圧政に抗議して僧侶が焼身自殺を遂げたとき、「あんなものは人間バーベキューにすぎない」と言い放ってケネディを激怒させた「ドラゴン・レディ」である。

    《彼女はカソリックで、自分の道徳の正しさを信じている。自分ほど正しい女はいないと思っている。だから、異端者を殺したり、いじめたりするのにも何も容赦がない。(中略)とても清らかな女性で、彼女自身は聖女なんです。だけど、ものすごく残酷なんですね。芝居の題材として面白い。》18ページ

    もしもその戯曲が書かれていたら、現代版『サド侯爵夫人』みたいな感じになったのかな?

    それ以外にも、東大法学部で学んだ訴訟法が「僕の小説の構成の一番基本になっている気がする」という一言など、目を引く発言が随所にある。

    ただ、日本国憲法について語ったくだりは、何が言いたいのかサッパリわからなかったw

    P.S.
    このインタビューの中で、三島が「よござんすよ」「よござんすか」と、2度も「よござんす」を使っていることに驚いた(84ページ)。
    「よござんす」なんて、私は日常の中で一度も聞いたことがない。
    1970年当時はまだ普通に使われていたのか? それとも、古い日本語を大切にした三島だから使ったのか?

  • 全国ニュースで報道もされた未公開インタビュー。単行本刊行時もかなり話題になったものの文庫化。
    巻末の解説には、インタビューテープが発見された時の出来事が詳細に書かれていて、それを読んでいるだけでも楽しいが、肝心のインタビュー部分は、何度読んでも、三島由紀夫という人物の純粋さを凝縮しているように思える。
    (そう考えるとやっば、〝才能枯渇説〟を採りたくなるんだよなぁ……)

  • 考え方や言い方がすきだった
    ほうほうほうと思った
    すきなところを何回も読み返した

  • 好きなように楽しそうに話してらっしゃるなという印象でした。
    自決の9ヶ月前にに録音されてたインタビューのようですが、このあとどんな心境の変化が…と思います。
    ごまかしごまかし生きてきた、これから先またごまかして生きていこうって思ってるのが自民党の政府、と。。
    大聖堂みたいな小説が書ければ嬉しい、とおっしゃってるのが印象的でした。
    「太陽と鉄」は正直良くわからなかったです。あとがきは書きたかったのでしょうけど、正直蛇足かな…インタビューを聞いた当時の関係者のお話だけでいい。三島家からのお手紙と、松本道子さんのところはとても良かったです。

  • 1970年2月19日の収録であるから、本当に最晩年の三島の思想が言葉の隅々にまで及んでいる。歴史的価値を感じると共に、このまま(まさか)残り9ヶ月の人生を生き抜いた当代随一・唯一無二の作家の、ある種切実さを潜めたありのままの姿を捉えることが、「ハッハハハハ(笑)」と呵呵大笑したり自分の文学の欠点をしばらく考え悩む場面から読み取れる。聞き手が『太陽と鉄』翻訳のジョン・ベスターとのインタビューであるから、ある程度リラックスして(ウィスキーのソーダ割りをおかわりしているし)本音を話す三島由紀夫の姿が微笑ましくも感じる良著。

  • ふむ

  • 未公開インタビューと「太陽と鉄」の二本立て。インタビューと部分まで読了。しかし、対談テープが21世紀に発掘されるというのも不思議。読んだ限りでは、権利関係がはっきりしないと放送局で眠らせておくものなのだろうか。/開高健からベトナムのゴ・ディン・ヌーの話を書かないかと言われたこと。言葉を非常に大切にしたフローベールを引き合いに、ぼくもそういう思想だけど、時代遅れと呵々大笑。大きなカテドラルみたいな小説が書ければいい。平和憲法が偽善のもと。ヤミ取締法を守って死んだ検事を引き合いに、守ったら死ぬような法律をごまかしごまかし生きていかなければならない状況に、たえがたい、と。大学で学んだ法学の自身の法律への影響。といったあたりが印象に。

  • 自決九ヵ月前の幻の肉声。放送禁止扱い音源から世紀の大発見! マスコミ・各界騒然!

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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