フォークロアの鍵 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.82
  • (13)
  • (15)
  • (14)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 163
感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065174395

作品紹介・あらすじ

羽野千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学生。“消えない記憶”に興味を持ち、認知症グループホーム「風の里」を訪れた。出迎えたのは、「色武者」や「電波塔」などとあだ名される、ひと癖もふた癖もある老人たち。なかでも「くノ一」と呼ばれる老女・ルリ子は、夕方になるとホームから脱走を図る強者。ほとんど会話が成り立たないはずの彼女が発した「おろんくち」という言葉に、千夏は妙な引っ掛かりを覚える。記憶の森に潜り込む千夏と相棒の大地。二人を待っていたものは……!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 川瀬七緒『フォークロアの鍵』講談社文庫。

    やはり川瀬七緒の作品は『法医昆虫学捜査官』シリーズ以外は全く面白くない。

    この落差は何なんだろう。

    本体価格800円
    ★★

  • 素晴らしい作品。その一言に尽きる。
    民俗学の謎を追い求めるロマンをしっかり満たしてくれ、現代から将来への課題である介護についてもしっかり描写されている。
    とりわけ印象に残ったのが老人たちを生き生きとコミカルに描いている点。作品全体が暗くならずに済んでいる。
    この本で出てくる様々な課題、介護も民俗学も家庭問題も終わりは見えないという点で、グループホームがこれからどうなっていくか、結局ルリ子が見たものは何だったのか、大地の家庭問題・将来はどうなるかということに詳しく触れられていない。その辺はやや現実的だが彼らの未来は明るいだろうとの印象で読み終わることができた。

  • 法医昆虫学シリーズとは、また毛色の違った一冊。主人公は、民俗学を学ぶ女性で、人間が歳を取って「ボケて」しまっても、最後まで消えずに残る記憶について研究している。

    ...と思ったら、イキナリ学校からドロップアウトする高校生の話に変わって(^ ^; 正直、「何が起こってるんだ!?」と困惑しながら読み進める。年齢も違うし、全く関係の無い二人の時間が、とあるきっかけで重なり合い、相乗効果でお互いに成長していく様が微笑ましい。

    そして主人公がフィールドワークのために通う老人ホームの、三癖も四癖もある(^ ^; お年寄り達のキャラが良い(^ ^ 敵役の設定も見事。敵対関係から徐々に主人公を認め始める、主任のキャラもリアルで◎

    後半に向かうにつれ、予想もしていなかった展開が訪れ、基本「ほのぼの」している本作でも、まさかのサスペンスシーン(^ ^; いや、落差が大きい分、ドキドキもひとしおというもの(^ ^;

    法医昆虫学シリーズでもちょいちょい顔を出す、伝奇的なカラーが前面に出ており、「民俗学者の孫」である私には大好物(^o^ エンタメだけではなく、老人介護を取り巻く問題など、問題提起もさり気なく含まれており、一粒で二度も三度もおいしい一冊です(^ ^

  • 「おろんくち」その言葉、電車の中からみつけたウロのような一瞬の光景がしばらく頭を離れない。
    認知症の人たちの中に残されていく記憶にスポットライトをあてて進められていく話、主人公の明るく食いしん坊なキャラクターから興味深く楽しく読み進められたが、最後の方はちょっと怖くて1人深夜に読むのは無理だったーー!
    大地くんが恐ろしい事件を起こすのではなく、明るい未来に希望を持てる終盤で、ホッとした。

  • ほのぼのテイストの表紙と裏表紙あらすじの「おろんくち」というホラーっぽさから、内容が全然想像できないまま読み始めたけど、想像以上に面白かった。レナードの朝っぽさはどこまで真実なのだろうか。

  • 珍しく挫折

  • 「おろんくち」の言葉が出てくるまで長い!でも、そのおかげで物語の中に入りやすく、謎解きが始まってからのスピード感について行くことができた。
    想像以上にゾワッとする場面もあり、驚いた。
    途中から、姥捨山の話を思い出していた。

  • 口頭伝承を研究する大学生が、ある施設のコミュニケーションが取れない老人から『おろんくち』という謎の言葉を聞き出し、その不思議な言葉の意味を探っていく、謎解きのようなお話でした。
    核心に迫っていく様子がハラハラドキドキでした。

  • 川瀬さんのこれまでの作品では、『テーラー伊三郎』が一番好きで、高校生の成長物語と、年齢を重ねた人が新しい時代に合わせた学びを積み重ねていくという、成長×成長のシナジー効果(汗)のお話に夢を感じていました。

    彼女の他の作品(昆虫法医学系)は、どちらかといえばおどろおどろしいところが多くて、それは悪くはないんだけど、ちょっと読みたいものと違うんだよなあと思っていたところに、介護+民俗学という新たな組み合わせにドロップアウトした高校生を加えるというやり方が、ぼくにとってはベストマッチでした。

    介護の現場のリアリティを残しつつ、そこに夢を加えた程よいバランスが素晴らしいです。敵役がちょっとあまりにデフォルメがすぎてリアリティを損なっている感じはしましたが、まあ許せます。

    解かれていく謎がそこにあったのか! というのは驚きではありましたが、消去法で謎に迫っていくところは、学問の方法論そのもので、若手の民俗学者の思考法をたどっている感じはとてもしました。まあ、学問の本道のほうで、新たな発見があったらもっとよかったんですけど。それはエンターテイメントのわかりやすい謎解きとしての妥協点としては悪くなかったのかなと。

    参考文献に「驚きの介護民俗学」があがっていて、それが学問として存在していることに、まさに「驚き」ました。ぜひ読んでみたいです。

  • 最高!
    久しぶりに電車の中でニヤけるほど面白かった!

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。デザインのかたわら2007年から小説の創作活動に入り、’11年、『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー。’21年に『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』(本書)で第4回細谷正充賞を受賞し、’22年に同作が第75回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門の候補となった。また’23年に同シリーズの『クローゼットファイル』所収の「美しさの定義」が第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。ロングセラーで大人気の「法医昆虫学捜査官」シリーズには、『147ヘルツの警鐘』(文庫化にあたり『法医昆虫学捜査官』に改題)から最新の『スワロウテイルの消失点』までの7作がある。ほかに『女學生奇譚』『賞金稼ぎスリーサム! 二重拘束のアリア』『うらんぼんの夜』『四日間家族』など。

「2023年 『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川瀬七緒の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×