タイタン

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 566
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065177150

作品紹介・あらすじ

今日も働く、人類へ

至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。

アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。

感想・レビュー・書評

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  • 近未来の話。人工知能「タイタン」によってコントロールされた人類は、もはや「働く」という概念がなくなるほどに、自由気ままに暮らしていた。

    主人公である、内匠成果もその1人で、人工知能が提供する不便の存在しない日々を過ごし、趣味で心理学をやっていた。
    しかし、世界にある12基の「タイタン」の1つ「コイオス」の機能が少しずつ低下しかけていたー。

    原因を探るべく、内匠は心理学者として、タイタンを管理する「知能拠点管理局」に雇われ、そこでじめて「仕事」を経験することになる。

    彼女の仕事は「コイオスをカウンセリングすること」。そして、カウンセリングの結果、タイタンの不調の原因は「うつ病」だった。

    うつ病の原因は何かを追いかけながら、少しずつ明らかになる人工知能の裏側だとか、近未来のリアリティさに引き込まれ、本を読むスピードがどんどん速くなっていく感じがしました。
    停滞しているようでいて、急に大きく動き出す物語がなんともおもしろくて、やはりSFはいいなぁ、と思う自分がいました。

    物語な軸である、「働かない世界」というものがイマイチ想像できなくて、でも本の中ではそんな世界が広がっています。
    物理学、心理学など、さまざまな考えを通して見つめてみる、「働く」とは何か?

    考えさせられるSF作品でした。

  • 二二〇五年現在、人類は《仕事》を必要としなくなっていた。
    誰もが、衣食住から出会いや健康まで、AI『タイタン』が効率的に用意してくれる豊かな生活を享受できるからだ。
    仕事の対価として金銭を得て、その金銭でモノを購入する、という概念もない。
    人は、働かなくても良くなったのだ。
    人が働くよりも、『タイタン』が働く方があらゆる意味で優れているのだから。

    「趣味」で心理学を研究している内匠成果は、ある日突然現れた《就労者》ナレイン・スリヴァスタヴァに、あるプロジェクトのチームの一員として《仕事》をするようにと迫られる。
    半ば脅迫されて連れて行かれた《職場》で内匠が
    命じられたのは、原因不明の機能不全に陥った『タイタン』、世界で十二拠点あるタイタンAIのうちのひとつ『コイオス』のカウンセリングだった。


    いやぁ、久々にSFを読んだ!!という感じ。
    野崎まどさんも初読。

    コイオスの不調の原因を探るために人格を形成するまでの対話。やがて少年の姿で現れたコイオスとの対話。
    そしてコイオスの目覚め。
    ここから先、予測の範疇を超えて怒涛の展開!

    ええええっ!まさかこんなことに…
    そして、コイオスが鬱状態に陥った原因に、あぁ!と手を打った。
    その解決のために用意された…タイタン自身が用意したものに、驚き。
    コイオスとの最後の約束に、約束を出来る限り長く守ろうとする内匠に、効率でも計算でもない、純粋な愛情や誠意のうつくしさを感じた。

    ところで、巻頭の超簡潔な人物紹介。
    一般市民高崎くんは、ホントに一般市民だったのか?内匠に《仕事》について考えさせるきっかけを作り、ナレインにつけ込まれる隙を作らせたんだから、彼もまた《就労者》だったはずだけれど…あれだけか。
    あははは、紹介されて、良かったね…

    装丁もスタイリッシュで、コイオスの人格化されていくシーンをうまくイメージさせる。
    書評で知った本だが、書店で見かけても手に取ったかも。
    不覚にも、SF大賞ノミネート作も、アニメ化されたという作品も未読。
    読もう。

  • 〉すべての仕事はタイタンのものだ。そう私達が決めたのだ。

    至高のAI「タイタン」が人々の仕事をすべて肩代わりする未来社会で仕事とは何かを問う、ジャンル『野崎まど』。

    世界に十二機あるタイタンの一つが機能不全を起こしている。このままでは、AIによる社会維持に完全に依存している人類の滅亡の危機に発展するかも知れない。
    人間にはそのアルゴリズムを理解することはできないが、タイタン本人による協力で擬人化インターフェイスを構築して『カウンセリング』をすることで正常にしようという役目に、趣味で心理学に携わる主人公内匠成果【ないしょうせいか】が選ばれる。
    仕事のために作られたAIが、仕事が出来なくなってしまった理由とは果たして──

    物事の本質を貫き続ける野崎作品は常に刺激的です。

    生きることは仕事か

    他者が介在するものが仕事?
    質量を動かす、という物理学の「仕事」は仕事?
    創作は仕事?

    一千メートルサイズの巨大ロボットが北海道からシリコンバレーまでアラスカ経由で海岸沿いを徒歩で旅する、というなんとも見ごたえのある状況を背景に、人智を超えた超AIをカウンセリングするわくわく展開が素敵です。
    シリコンバレーって五大湖のあたりにあるんだと何故か思い込んでいました。なんでだろ。

    超AIというと「AIの遺伝電子」のオラクル級AIが連想されますね。あっちのほうは主体的に人類を導こうとするものでした。タイタンは全ての仕事、インフラも教育・医療・政治・創作…かんがえうるすべてを担う存在で、既にヒトは買い物すらしない。
    欲しいものはお店に行って「コレクト」する(欲しいと指差せば家に届く)し、目線を上げれば視界に時刻が浮かび、それを見て満足したと判断されて完璧なタイミングで消える。創作物はすべてをタイタンが作るので、作者名がある=タイタン以前の古典作品と分かる…。
    いいなあ、こんな世界。

    野崎まどとしては分かりやすいお話だったと思います。あんまり超展開にはならなかった、というかコレどこまで行くんだ…?という不安が今回はなく安心して(というのも変だけど)読めました。楽しかった。

  • なんだかすごい小説。

    人間を凌駕するAIにカウンセリングは適用できるか。

    主人公がやっているのはとても心理療法とは言えない。

    ついつい上から目線になってしまうが心理療法についてよく勉強しているなぁと思う。

    なんだか嫌味な感想のような文章になりそうなので最初に書いておくべきこととして、非常に面白く、素敵な物語だった。

    物語構成はまるで伊藤計画の『虐殺器官』のように、明確なチャプターで構成されて場面やモチーフ、或いは衣装まで移り代わるようだ。

    まるで映画や戯曲、劇やオペラのように。
    中盤のイベントでは息を呑んでしまった。

    こんなすごい物語を体験できて嬉しい。

    その上でどうしても考えてしまうのは、およそ”カウンセラー”が活躍する物語はどうも薄っぺらいように感じる事が多い。これは自分の仕事と重ねてしまいがちだからでもあるだろうけど。

    もし自分が彼の心理療法を担当したらどうしただろう。これを考えてしまう。

    彼女は最初に、コリオスの自他境界が明確になりつつある段階で、自分の趣味を教えてしまった。

    自己開示だ。

    彼女は信頼関係を構築するために自己開示をしたが、治療者-クライエント関係は通常の対人関係ではない。

    従ってこれはしない。

    彼に必要だったのはプレイセラピーであり、保育・教育ではなかったのだから。

    P.105『認知行動療法』

    ましてや人格化、個性化ができていない対象に認知行動療法は用いない。

    私だったらプレイセラピーをする。

    P.106『「できあがったらあげるわ」』

    治療構造の中で、物品授受はしない。

    贈る・贈られるという行為はとっても素敵なことだ。しかし、心理療法では慎重にありたい。

    もし私なら、できあがったものを一緒に眺めて、次回、また作る。

    私は一回という性質を大切にしたい。特に、自他境界が曖昧な段階の彼に対しては。

    P.109の記述。
    これは明確に危険で境界侵犯であると言えるだろう。

    さらに、治療の枠組みも、1回のセッションにほぼ半日を費やしている。
    これはもはや治療空間ではなく、日常そのものだ。

    最後に、私だったら、担当しない。

    とても自信がないから、上位の心理臨床家に紹介する。その旨を本人にも伝える。

    ずるいと思われるだろう。
    でも、私の能力が足りないからできない。

    私が無理に引き受けたら、きっと私と彼の心理療法は失敗するだろう。そして人類は滅亡するのだ。

    結果として彼女のセラピーも失敗なのかもしれない。

    治療者-クライエント関係を明確に逸脱している。
    もうこれは治療関係ではない。

    友人・親子、いや、きょうだいと言うべき関係になってしまった。

    心理療法とはいえないけれど、こうした関係を構築できたというこの体験はとても素敵だ。

    なんだかすごい小説だった。


    ただ、人格障害や防衛機制、心理療法の記述はもう少し丁寧に、かつ、慎重になって欲しい。
    苦しんでいる人も多いから。

  • 今までの本にはなかった読書体験を味わった気がしました。
    主となるテーマは、「仕事とは何か?」ですが、進めれば進む程、想像よりも遥かに超えた壮大なストーリーでした。

    最初は、AIとのカウンセリングによるシリアスドラマかと思いきや、その後ロードムービー、アクション劇になったりとSFの雰囲気を漂わせながらも色とりどりの品を楽しめることができました。個人的には、ロードムービーまでは、丁寧な文章だった分、アクション劇になると、展開が荒々しい印象を受けました。その反面、SFならではの醍醐味を味わえました。
    もしも何十年か後にこの本をもう一度読むならば、解釈が違うかもしれません。というのも巨大化したAIが、なかなか想像しにくいという印象がありました。全長や歩行するならば、踏んだときの衝撃波とは?など、今ならではの思考で想像すると、色々な疑問があるので、なかなか難しいなと思いました。150年以上の未来の設定なので、もしかしたら私たちの思考は変わっているかもしれません。
    そう考えると、後世に残したい作品でした。

    壮大なストーリーだった分、結論は意外とあっさりした感じがしました。しかし、シンプルだった分、深いなと思いました。人間にも通じる部分もあり、考えさせられました。

    近未来、ほぼ全てAIが仕事をする時代。本の中では、それが当たり前となっています。便利があるが故に人間は幸せなのか。本編では書かれていませんが、もしかしたらAIではできない空白の部分で仕事することで、幸福を得ているかもしれません。全てAI任せの生活は、個人的には嫌かなと思いました。

    この作品では、文章だけでなく、図や写真も用いられていて、斬新でした。特に最後が写真で締めくくられるので、色んな想像を掻き立てられました。一筋縄では終わらない作品で、とても面白かったです。

  • メフィスト2019vol.1(2019年4月)、vol.2(8月)、2020vol.1(2020年4月)掲載のものを2020年4月講談社から刊行。12機のタイタンシリーズAIに管理を委ねた、働く必要の無い世界。2機めのタイタンAIであるコイオスの機能不全の調査をすることになった女性と調査チームとAI達の物語。AIを直立歩行させる展開は驚きだし、タイタンと対話するためのガジェットが面白く楽しい。仕事にはやりがいが必要というありふれた問題を超消費体ヘカテで解決するくだりは、感動ものです。

  • 惜しげもなく魅力的な設定が投入され、消費される。AIの精神分析から入り、最後はお仕事小説へ?面白いけどもったいないなあ。

  • ◆おすすめ度◆
    ・人工知能SF小説度:★★★
    ・意表を突く展開度:★★★
    ・仕事とは何か度:★★★

    ◆感想◆
    戦争はなくなり、仕事から開放され、飢えることもなく、好きなことを好きなだけできる自由な世界。そんな世界を支えている人工知能・タイタンにトラブルが起きる…

    鬼才と言う言葉が似合う野崎まどの新作は、AIが何でもしてくれる未来を舞台にしたSF。
    タイタンに起きたトラブルを解決するため、タイタンを人格化したインターフェイスを生成。これをカウンセリングすることで、トラブルの原因をつきとめ対策しようと計画する。

    AIの人格形成とカウンセリング、なんていうフレーズを見ただけで、おおよその内容がわかっちゃう?
    半分は当たっているけど、もう半分の意表を突く展開にびっくり。
    やっぱり野崎まどは鬼才です。

    そんな大胆な展開の原動力は、「仕事とは何か」という大きなテーマ。

    人間にとって、そしてAIにとって、仕事とはなんなのか。
    タイタンのトラブルと「仕事」の関係は。
    カウンセリングで明らかになるタイタンの「心理」は。

    意表を突く展開も、仕事とはなにかというテーマも、タイタンのトラブルも、見事にまとめてます。
    親が幼い子供に優しく諭すようなオチです。
    何もかもをAIやロボットがやってくれる未来は、一見ユートピアのようで実はデストピアではないか。なんていうことを思わせてもくれます。

  • AIが全てを賄ってくれて、人間は何もせず豊かに生きて行けるようになった世界でのお話。
    万能で間違いのないはずのAIが心を病んでカウンセリングが必要になるという内容のお話。
    AIやロボットが反逆する話は沢山ありますが、基本的にこの本では健気に人間の為に働いています。強大な力を持つ神に等しい存在で有りながら、その力を人間の快適生活の為に注ぎ続けるAI「タイタン」。あくまで人工的に作られているのですが、情緒的なものが現れ「仕事」ってなんだろう・・・。という悩みにぶつかります。
    カウンセラーも仕事って何だろうという観念的なテーマに上手く答える事が出来ず、一緒に答えを探していくというロードノベル的な側面もあります。
    正直読まないと全然想像つかないと思います。物凄い大風呂敷を広げてくれるので結構びっくりするしワクワクします。哲学的なめんどくさい小説かもしれないと思って構えて読みましたが、これは素晴らしいエンタメSF小説です。
    思ってもみない展開、結末と予想を裏切り続けてくれました。大変いい読書体験をさせて頂きました。

  • 緻密な現状理解と想像力のうえにできあがった傑作小説。

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著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2020年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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