見えない絶景 深海底巨大地形 (ブルーバックス)

  • 講談社 (2020年5月21日発売)
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065179048

作品紹介・あらすじ

いざ、地形のモンスターをめぐる深海底世界一周の旅へ!
深海底には、陸上とは比較にならない巨大地形がひしめいている。地球を2周する長さの巨大山脈、エベレストを呑み込む深さの海溝、日本列島の数倍もある台地、海底総面積の30%を占める大平原、月の直径よりも長い大断層……どうしてこんなものができたのか? 
さあ、キャプテンフジオカがナビゲートする潜水艇「ヴァーチャルブルー」で、「見えない絶景」をめぐる世界一周の旅に出よう。想像を絶する地形のバケモノたちの成り立ちを知れば、地球の「本当の顔」が見えてくる! 

おもな内容

第1章 深海底世界一周

 第〇景 世界一周のロードマップ
 第一景 日本海溝
 第二景 深海大平原
 第三景 シャツキー海台
 第四景 ハワイ諸島ホットスポット
 第五景 巨大断裂帯
 第六景 東太平洋海膨
 第七景 チリ海溝
 第八景 大西洋中央海嶺
 第九景 中央インド洋海嶺
 第十景 坂東深海盆

第2章 深海底巨大地形の謎に挑む

第3章 プレートテクトニクスのはじまり

第4章 冥王代の物語

終 章 深海底と宇宙

感想・レビュー・書評

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  • ブクログで応募し、(なぜか!)プレゼント当選していただいた本である。最新の本をいち早く読めたのはとてもありがたい。まずはお礼を申し上げます。

    日頃、この手の本には関心はあるのだが、果して読んでも理解できるのかという不安が勝ってしまい、なかなか手にする機会がなかった。本書も、いただいたものの内容についていけるか半信半疑で読み始めた。

    本書のかなりの部分を占める第一章は、バーチャルな潜水艇で世界中の深海の光景を観察しながら、世界一周をするという形式で書かれている。実際に深海調査も行っている著者が執筆しているためか、記述された内容は臨場感にあふれ、なおかつ微に入り細にうがったものになっている。読み始めたときに感じた不安は、杞憂に終わった。

    深海について語ることは、すなわち地球の成り立ちを探ることだということがわかる。人類の営みを説く歴史は、せいぜい数千年間の時間軸での出来事である。一方、地球の歴史は、数十億年というスケールだ。

    地球の歴史という時間軸で見ると、人類はついさっき誕生したようなものである。大きさにせよ時間的な長さにせよ、地球そのものを対象とすると、とたんにスケールが桁外れに大きくなる。気の遠くなるような時間の経過の中で、地球は隕石の爆撃衝突に出会い、その結果、灼熱のマグマに覆われた星と化す。それがもとで海と大陸ができ、生命体が誕生する。さらには唯一の衛星である「月」も生まれる。

    これらの出来事は、あまねく偶然の産物だろう。そして、一連の偶発事象が、正しくこの順番で発生したことで、地球は稀なる確率によって生命体を有する星となった。しばしば地球以外に、宇宙に生命体の棲む星はあるのかということが取り沙汰されるが、本書を読めば「ない」とは言えないことが分かるだろう。しかし、同時に、その可能性は極めて低い奇蹟的な蓋然性によるものであることも解る。蓋然性に乏しい事柄は、一般に「夢」や「ロマン」といった言葉で表現される。ゆえに、宇宙に想いを巡らすことは、ロマンあふれる行為たりえるのだろう。

    ともあれロマンなどといつまでも白昼夢に浸っているわけにもいかない。なぜなら今も地球は活動を続けている。日々、とてつもないスケールで地球は少しずつ変化しているのである。「見えない」海底では絶えず巨大なプレートが移動している。この活動があればこそ、我々は地球上に生命体として存在しうるわけだが、同時に一たび何かしらの契機が訪れれば、人類はあっという間に滅亡させられる可能性もあるのだ。例えば地震――2011年3月11日、東日本大震災は記憶に新しい。この未曾有の震災に、我々はなすすべなく、ただ立ちすくんで、おのが無力さを痛感することしかできなかったが、地球はこの程度のことはいとも簡単にやってのける。

    本書によって、地球のもつ素晴らしさと恐ろしさの二面性を理解することができる。これを機に自然災害への備えを見直す機会にすることも有用かもしれない。しかし、備えにも限界はある。地球の上に乗っかって生かされている我々は、地球が牙を剝けばひとたまりもない。それでも本書を読んだ後には、やはりロマンが残っている。

  • 想像力のすばらしさよ。ともかく楽しかった。また今度。

  • 海底2万里、日本沈没の小説をより面白く読む為に読んだ。
    わからないところが多々あるけれど、ロマンがあって面白い。

  •  ブクログ様、献本どうも有り難う御座いました。
     
     『はじめに』からすでに深海底の壮絶な巨大さが伝わってきます。
    第1章『深海底世界一周』
     第〇景『世界一周のロードマップ』――「しんかい6500」って意外に狭いんですね。
     第一景『日本海溝』――「三陸沖の海側斜面でビニール袋やインスタント焼きそばの箱などのゴミが散乱しているのを発見した」に驚愕しましたが、「マネキンの首も発見した」で絶叫!マネキンの首の写真はインパクト大!私も海にゴミを捨てないようにしないと。P.42の(余談ですが宮沢賢治は明治三陸地震の年に生まれ、昭和三陸地震の年に没しています)に、「へーっ、そうなんだ!」日本海溝と地震の関係に書かれていて、地震について考えさせられました。
     第四景『ハワイ諸島ホットスポット』――ハワイ島や南米の地震や津波が日本にも大きな影響を及ぼすとは驚きました。
     第八景『大西洋中央海嶺』――パンゲアに『天空の城ラピュタ』と、何て壮大なんだ!
     第十景『坂東深海盆』――「しんかい2000」の狭さや深海の寒さを忘れる程興奮させる相模トラフの光景って凄いですね。第一景『日本海溝』もそうだけれど、「ゴミが流れてくる」という記述を読んで悲しくなりました。

     文章が読み易く、様々な工夫がされていて、初心者の私でも分かり易かったです。地震・火山・生物を研究する為に、深海調査をする重要性を知りました。
     今年の夏も暑苦しかったですが、深海底世界一周で涼しく過ごせました。深海のスケールが大きい絶景を観る事で、コロナ疲れを忘れて元気を貰えました。もっとも、「しんかい6500」の内部は三密ですが(笑)。
     深海は地球や宇宙の始まりと繋がっていて凄いですね!
     『おわりに』で、「しかし、「しんかい6500」は近年、老朽化が懸念されています。」(P.245)と書かれていて、とても心配しています。後継機が出来て、また有人調査されるように願っています。コロナ騒動が治まり、夜明けの鐘が鳴る事を祈るばかりです。

  • 海中の巨大地形をバーチャルツアーで紹介。また、ほとんど証拠が残っていない冥王代におけるプレートテクトニクスの発生について、ハワイの溶岩湖で観察されたことがスケールの違いはあれど起こっていたとの考察は興味深かった。

  •  深海調査船で51回も世界の深海を目の当たりにした著者がガイドしてくれる世界一周(深海)旅行という仕立て。海溝、海淵、海嶺、海膨。海盆、海台などを一気に周遊できる。
     地球の起源に関する知識の積み上げは、地味であり遅々としているものと実感する反面、この半世紀のテクノロジーの進化による科学的知見の積み上げには目を見張るものがある。なんとも矛盾する言い回しであるが、地球科学というのか地質学というのか知的探究の一方、資源の探求という物的欲求とも隣り合わせの分野であるが、著者の知的探究としての研究費の獲得に対する危惧の念も伝わってくる。
     本著「冥王代の物語」では著者の仮説が披露されている。怖いもの知らずで持論を展開する著者のこの分野でガッチリ仕事してきた人間味が花を添えている(笑)。

  •  深海探査船の発見と、海底地形を「地球一周の旅」になぞって紹介していく本。発見と観測事実から想像される地球の内部構造、歴史、大気・海洋と地殻の相互作用など、幅広い現象と、事実を事実と認めるのに必要な課題がよどみなく伝えられている。
     地球の成り立ちを理解し、理論を打ち立てるための研究課題はかなり多く解決は難しい、見通し良い解決など程遠い。タイムマシンがあれば手っ取り早いかもしれないけれど、冥王代の高温高圧猛毒大気を観測する手段はタイムマシンを作るよりも高いハードルかもしれない。
     特に興味深かったのは、トランスフォーム断層のでき方のところ。プレートテクトニクスの説明では、たいてい地殻を「平面」とみなした描像が描かれるのだが、トランスフォーム断層、海嶺が生み出す海底地形を説明するには、地殻を球面とみる必要がある。球としての内部構造、球面としての地殻、その相互作用を幾何・解析的な扱いで研究していけば、数学の理論が生まれるかもしれない。
     面白かった。

  • 地球科学者の著者による海底地形からみた地球の成り立ちを分かりやすく解説した1冊です。著者は日本が保有する世界有数の深海調査船「しんかい6500」で何度も海底調査に同行し、その体験をもとに本書前半はバーチャルな深海底世界1周という構成になっています。
    海で最も深いマリアナ海溝でも深さ1万メートル強。そこに潜った潜水艇は限られ、人類が直接深海底に脚を踏み入れたことは未だありません。宇宙に目を向ければ高度400㎞に国際宇宙ステーションがあり、38万㎞離れた月に人間が降り立ち、無人探査は既に億㎞の距離に到達しています。これほど身近でありながら、なかなかアクセスできない深海に、どのような地形があり、それが地球の成り立ちにいかに関わってきたのかを分かりやすく解説しています。
    膨大な量の海水に遮られ、人類が目にすることはできませんが、海中に存在する海嶺(海底山脈)、海溝(深い谷)、海台(海中の広大な大地)は、地上に存在する山脈の代表ヒマラヤ山脈や、渓谷の代表グランドキャニオン、台地ではデカン高原などとは比較にならないほど大規模です。もしも海水がなければ、どれほどダイナミックな地形が現れるのか、著者が熱く語っています。
    宇宙開発は近年、さまざまな成果が紹介され、それなりに予算が確保されているようですが、日本の深海調査は「しんかい6500」の竣工が1981年、深海掘削船の「ちきゅう」は2005年。「しんかい6500」はそろそろ老巧化も問題で、後継機の予算が確保されるのかどうか、気になるところです。「しんかい6500」の退役後、海外の深海調査船を借りなければ南海トラフ巨大地震の調査など日本近海での深海調査ができない、などと言う事態に陥らないように、海に囲まれた海洋国家だからこそ、ちゃんと予算を付けてほしいと思います。

  • 452-F
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著者プロフィール

1946年京都市生まれ。
東京大学理学系大学院修士課程修了。東京大学理学系大学院博士課程中退。理学博士。東京大学海洋研究所助手、海洋科学技術センター研究主幹。GODI研究部長、海洋研究開発機構上席研究員をへて、2012年退職。現在静岡大学客員教授。
著書に『フォッサマグナ』『三つの石で地球がわかる』いずれも講談社ブルーバックス、『深海底の地球科学』朝倉書店など多数。

「2024年 『扇状地の都 京都をつくった山・川・土』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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