民俗学 (講談社学術文庫)

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感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065181355

作品紹介・あらすじ

民俗学って何だ? 戦後の民俗学を発展させた泰斗による、決定的テキスト。
人々の日常への探究は、いかに始まり、どう展開し得るか。これを読めば全体像がわかる!

ハレとケ、山民/海民、カミとホトケ、ケガレ、女性と子ども……。
人々の営みを学として探究するための最重要事項を、初歩から核心まで明快平易に講義。
近世の萌芽から柳田国男、南方熊楠、折口信夫らに至る研究史をふまえ、
さらには都市の民俗などアクチュアルな学問としての可能性を展望する。

【本書より】
 民俗学は二〇世紀後半、世界の文明民族の間で必然的に起こった学問である。イギリス、ドイツ、フランスなどヨーロッパ文明社会の知識人たちが、同じ民族の内部で、キリスト教以前の文化や、先住民族の遺習などに気づき、それらが辺境の地域社会に残存していることを研究対象にしてスタートさせた。日本においては、ほぼ同時期に、本居宣長や平田篤胤、菅江真澄などの国学者や知識人たちが、田舎の習慣に古代を求めたり、他界観、神観念についての考えを深めたりしており、さらに明治時代末に至り日本の近代化、工業化に対する批判の姿勢をもった柳田民俗学が出発したのであった。
 各国の民俗学のあり方には、それぞれ特徴があり、一括することは難しい。しかし共通している点は、古習の残存をとらえるという観点ではなく、むしろ現代社会に現実に生きている民俗の意味を問うということであり、日本の民俗学にはそのための枠組みとして、「常民」や「ハレ・ケ」の概念が用意されたが、近年それだけでは不十分であることからつぎつぎと修正意見もだされてきている。民俗学は出発の時点においてまず都市化を経験しており、民俗が外在的にも内在的にも変容しつつあることを大きな前提としていた。民俗はつねに変化しているからこそ、変化の相のなかにプロトタイプや変化のプロセスを探ることが可能になっている。民俗の消滅は変化の仕方であり、そこに原則をとらえる必要があるだろうし、一方に民俗の再生、再生産、創造という認識もなされてくる。近代化・都市化に応じての民俗のあり方が現代民俗学にとって不可欠の視点となっているのが現状の認識といえるだろう。

【本書の内容】
1 民俗学の成立と発達
2 日本民俗学の先達たち
3 常民と常民性
4 ハレとケそしてケガレ
5 ムラとイエ
6 稲作と畑作
7 山民と海民
8 女性と子ども
9 老人の文化
10 交際と贈答
11  盆と正月
12 カミとヒト
13 妖怪と幽霊
14 仏教と民俗
15 都市の民俗

※本書の原本は、1990年に放送大学教材として刊行されました。

感想・レビュー・書評

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  • そして山間部のどこかに現世とは異質の空間である幽界=隠り世があると想像していた。
    1 民俗学の成立と発達 より

     ちょうど大正七年ごろに、各地の村の民間伝承のあり方に一つの傾向が出ていた。つまり旧い事はそのままいい伝えるという村人の姿勢が次第に失われつつあったことである。

    祭りにともなう神輿もやはり「前から」なくなっている。
    2 日本民俗学の先達たち より

    土の生産を離れた都市民が、かならずしも農民と同様の世界観をもつとはいえないのである。
    4 ハレとケそしてケガレ より

    たしかに柳田のように、カミ→妖怪とみてしまうと、妖怪は当初存在していなかったことになる。一方、超自然的存在に邪悪なものを認め、カミとともに人間に畏怖心を与えていると考えることは、西欧的な神と悪魔の対立に通じている。
    13 妖怪と幽霊 より


    民俗学というシンプルなタイトル。入門書的な広く浅くな章立て、けれども楽しく読むことができました。ゴジラが出てきましたが、てっきりあれは災害や原発のメタだと思っていました。識者によって様々な解釈があるのでしょうか。
    今聞いたら笑ってしまうような生活様式や思想、暮らしとその時々の楽しみなど、興味深く異論反論も交えて語られています。科学や技術が発展し、山や谷が削られ、海を埋め立てられた現代の暮らしの中でも、ああ昔と比べて変わってないな、と不思議と感じることもあります。土着というか、染み付いてとれない習性のようなもの。自分が民俗学という学問に惹かれる所以。

  • 図書館でなく、初めてかった宮田登さんの本。
    著者は元 日本民俗学会会長。
    前書きには民俗学をもっと学びたい人向けに教科書的な本の紹介をしている。

    平田篤胤の異人への関心。山伏を異人と見た。山間部のどこかに現世とは異なる空間である幽界=隠り世があると想像。
    しかし荒唐無稽な作り話というのではなくて日常生活の中にどう位置付けられるかを明らかにしようとしていた。幽界は人間の潜在意識に関わるものとして見ていた。

    アジアの民俗学は、戦後は日本を含め比較民俗学での交流が開始されてきている。

    柳田國男は、民俗学を科学として体系化を行なった。現代的課題に取り組むべき使命を持った学門。
    郷土=ムラ=地域住民のまとまりを正確に観察しようという態度があった。
    明治20年頃の文明開化に伴い家々の年中行事の改廃が激しかった。 また女学校を出ていると雑煮の汁加減も変わると言われ、村の外からの知的刺激が民俗のあり方を変えていく。

    宗教観
    仏教や神道の前に、民間信仰があって、それに寄り添う形になったのが、日本式の仏教、そして神道。

    漁師の町では網などを持っている家とそれに従う村民という構図があるが、昭和の小説家で出てくる網元の語源はここだろうか。

    同じ窯の飯を家族構成員でみんな一緒に食べるのが慣習、不文律だった。
    行事の時に村のみんなで食べるというのが転じて、お中元などの像等習慣にかわった。素麺、冷麦を送るのはこの元となる行事からきている。

  •  民俗学の発祥と歴史、今さら聞けない「ハレ」と「ケ」の違い、柳田國男や折口信夫の思想と功績をはじめ、民俗学の基本的知識から現代での動きと展望が紹介されている。
     もともと放送大学のテキストとして編まれたものというのもあってか、章ごとに何を具体的に学べるかがはっきりしている。また全15章構成と章の数は多く感じるが、1章につき45分程で読めると思う。とても読みやすい。
     折に触れて読み返したいと思います。

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著者プロフィール

1936-2000年。神奈川県に生まれる。東京教育大学文学部卒業。同大学大学院修了。筑波大学教授,神奈川大学教授などを歴任。筑波大学名誉教授。元日本民俗学会会長。文学博士。専攻は民俗学。民間信仰,都市民俗はじめ広汎なテーマで、歴史学等の周辺分野とも連携しながら業績をのこした。『日本の民俗学』『ミロク信仰の研究』など著作多数。

「2019年 『民俗学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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