MMT 現代貨幣理論とは何か (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065182048

作品紹介・あらすじ

いま世界の政治、ビジネス、経済論壇を席巻する現代貨幣理論(Modern Monetary Theory=MMT)について、
知るべきことがすべて、これ1冊で、明快にわかる!
日本が/世界が変わる “異端”の経済学、最良の入門書。

「財政破綻の危機」は幻想か?
政府はどこまで借金ができるのか?
経済のマクロな仕組みの初歩から貨幣というものの本質論まで、
標準的な経済学の理論もふまえてMMTを中立的に分析。

ベストセラー『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』によって、
AIによる雇用危機の可能性を提起、社会現象を惹起した、
日本でいまもっとも注目される経済学者のひとりである著者が、
MMTが日本が長期低迷から脱するための理論となりうるか否かを明快に解説。
さらには、「すべての人々のための貨幣制度」を展望する意欲作!

【本書より】
 MMTは、非主流派の経済理論、つまり一般的な経済学の教科書には載っていない理論です。主流派の経済学者からすれば、MMT派は「異端派」ということになります。
 私は、大学の講義で「ミクロ経済学」とか「マクロ経済学」といった主流派の経済学を教え、学術的な論文も主流派のフレームワーク(枠組み)にしたがって書いています。しかしながら、主流派とか非主流派といった区分に本質的な意味があるとは思っていません。
 私自身は、MMTに全面的に賛成でも、全面的に反対でもありません。明確に賛成できる部分と疑問や違和感を抱かされる部分とが混在しています。本書は、そうした立場の経済学者から著されたものです。
 MMTは、拡張的財政政策を採用して借金を増やすのが正しいのか、逆に緊縮的財政政策を採用して借金を減らすのが正しいのか、という国の命運を左右するようなテーマに関わっています。この問題の重要性の前では、主流派経済学かどうかといったことは些末なことであり、最終的な賛否はさておくとしても、まずはMMTの主張に耳を傾けるべきでしょう。
 私は、もとより拡張的財政政策を採用するのが正しいと思っており、その考えを補強したいがために、MMTの理解に努めました。その成果をまとめたのが、本書ということになります。 

【本書の内容】
なぜいまMMTが注目されるのか?
貨幣の正体―お金はどのようにして作られるか?
政府の借金はなぜ問題にならないか?
中央銀行は景気をコントロールできるのか?
政府は雇用を保障すべきか?―雇用保障プログラム
MMTの余白に―永遠の借金は可能だろうか?

感想・レビュー・書評

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  • わかりやすいです。
    経済学者は他派閥に対して過度に喧嘩腰なのでこういう冷静な本だと安心します。

  • MMTについての概略が書かれた本。
    ①財政的な予算制約はない
    ②金融政策は不安定である
    ③雇用保証プログラムを導入するべき
    この3点が主要な論点だが、個人的にはMMTは全面否定できず、従来の主流派経済学よりも現況をリアルに捉えてる部分もあると思う。もう少し詳しく知りたくなった。

  •  MMTとは何か。

     MMTは貨幣は負債であるという説明から始まる(これはグレーバーの負債論と同じ理論だ)。国の予算の財源は税金ではなく貨幣という負債を発行することなのだと言う。
     だからといって国は無限に貨幣を発行してお金を使い続けるわけではない。大量の国債を発行しても返せず破綻するということはないが、インフレが進み過ぎることで破綻することはありえる。MMTは決してすごい量のお金を刷れるというわけではなく、どれくらい刷れるのかという点においては様々な考え方があるようだ。

     MMTは劇的に国家財政のあり方を変えるというよりはもっと根幹の国と貨幣の関係を変える理論なのだと思う。公共事業を生み出し国家が雇用を用意するなど、コロナ禍において重要性が増していると思われるがはたして。。。

  • 何冊かMMT(現代貨幣理論)の本を読みましたが、その中では、これが一番。

    これまで読んだMMTの本は、MMT派の人が書いた本だったこともあり、「MMT最高!」的な論調でしたが、本書の著者である井上氏は、主流派の経済学をかなり尊重した立場で書いていることもあり、MMTに対する客観的な目線を非常に大切にしている印象を受けました。
    また、井上氏から見た、MMTについて「納得できるどころ」「納得できないところ」を理由付きで説明しており、好感のもてる書き方になっていました。

    MMT派が主張するジョブ・ギャランティについては、井上氏がベーシック・インカム推進派ということもあり、その欠点が、かなり明確に示されています。
    これまで読んだMMTの本から、「MMTの良し悪しはよくわからんが、ジョブ・ギャランティだけは、もしかしたら良い施策かも」と思っていたのですが、井上氏の指摘を読んで、「やっぱりベーシック・インカムの良いかも」と思い直しました。
    ジョブ・ギャランティとベーシック・インカムの成り行きについては、今後もしっかり追っていきたいと思います。

    なお、MMTについては、まだまだわからないことがいっぱいですが、「そもそも貨幣とは何か、貨幣はどのように発生したのか」を理解することが、MMTを理解する上でのカギだという気がしてきましたので、そのあたりを考えつつ、他のMMTの本にも当たってみたいと思います。

  • 回りくどい言い回しが多くて読みづらい。口語文に近く、誰かちゃんとした編集者がいなかったのかと思った。著者にはかっこいい言い回しなのでしょうね。

  • わかりやすい。

  • 極端なインフレさえ起きないように注意する必要はあるが金融機関は事実上無限に国債を受け入れることができるという話は面白かった。中央銀行が操作できるのは金利であって貨幣量ではないという点は主流派とMMT論者で概ね共有しているらしく、争点は金利操作のような金融政策によってインフレ率や失業率のコントロールが可能かという点にあるというように理解した。

  • 文章でユニークさを出そうとしているけど、好みではありませんでした。
    ただ平易にわかりやすくMMTとアメリカの主流派、ヨーロッパの主流派、日本の主流派を対比させながら解説している点は素晴らしいと思います。
    著者個人のMMTのレンズを利用した時の経済政策、金融政策提案がなかなか腑に落ちてはきませんでした。
    少なくともMMTがベーシックインカムを明確に否定している旨は記載しながらも自分の理想であるBI導入に関する提言にしても良いのではないかとは思います。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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