- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065185025
作品紹介・あらすじ
岸本佐知子、歓喜!
「これは、私がずっとずっと読みたいと思っていた、最強最高の女子バディ物語」
親友の名前はトランジで、私はピエタ。
人類最後の「名探偵と助手」だ。
芥川賞受賞第一作『おはなしして子ちゃん』に収録された衝撃作「ピエタとトランジ」が、長篇になって帰ってきた!
天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、彼女の才能に惚れ込み助手に名乗り出たピエタ。トランジは事件を多発させる体質で、次から次に周囲で人が死んでいく。
あるとき、トランジの体質に秘められた恐るべき事実が明らかになり、人類は滅亡に向かう――!?
芥川賞作家が送るスリル×サスペンス×友情の、超弩級ガールズ・エンターテイメント!
感想・レビュー・書評
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名探偵トランジは殺人誘発体質。そばにいても死なない助手ピエタは特殊な存在。
学生時代から殺人事件が多発,老年期になるとディストピア状態。森の歪んだ価値観に囚われた生き方と二人の自由な生き方は対照的。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おかえり、ピエタ! おかえり、トランジ!
「おはなしして子ちゃん」で鮮烈だった短編の二人が、長編になって帰って来たー!
最高のシスターフッド。
フェミニズムとエンターテイメントはがっちり両立すると見せてもらえて、すごく嬉しい。
新キャラ森ちゃんもすごいよ…好きだよ…あと大家さんたまらない…。
構成もとても粋。
再読したい。 -
きららの作者インタビューがかなり印象深い。
「最初に書いた短篇は私も気に入っているんですけれど、世間に流通している女子高生のイメージに乗っかって書いてしまったとあとから後悔したんです。女子高生というある種のブランド価値とか、若いからめちゃくちゃできるんだとか、若いからきれいだとか。そういうイメージを利用して、人生の輝きは若い頃にほんの一瞬だけ訪れるものだという価値観を助長してしまった。この反省を踏まえて、〈完全版〉では輝きというものは女子高生特有のものではないということを書こうと思いました。だから、二人が年をとっていくのでなければ書く意味がなかった。ピエタとトランジも、年を取りながらも最後まで輝きを保ち続けるんだということを書きたかったんです」 -
最高&最強のバディ小説。
ピエタとトランジの関係性が好きすぎます。
あなたがいるからわたしは無敵。あなたがいるからわたしはわたしでいられる。という唯一無二のふたりが好きです。
表紙から「少女ふたりのバディもの」を想像していたのですが、想像を遥かに上回っていました。そんな中途半端なものじゃなかったです。そんなふうに「少女性」を消費するような小説じゃなかったです。
『ピエタとトランジ』の出現によって、自分もこんな作品を書きたいと思った作者たちが、彼女たちにオマージュを捧げるような作品をきっと書いてくださるだろうと思えるような本でした。
大好きです。 -
この設定とストーリーの概要で、他の作家さんが描いたらまったく別の感触になるんだろうな。
藤野さんぽいぶったぎりと奔放と混沌だった。
なんとなく読みながら、乙一バージョンとか伊藤計劃バージョンとか妄想してみた。
どこまでも理不尽ながらそこはどうでもいいのよ、みたいな突き抜けた爽快感。
面白かった。
友情なんて言葉では言い尽くせない。 -
短編集『おはなしして子ちゃん』でお気に入りだった「ピエタとトランジ」、これ連作とか長編で読んでみたいなあと思っていたらまさか実現してた!
短編の時点では、名探偵の周囲ではなぜか殺人事件が頻発するという小説内設定を逆手にとったパロディ的な設定で、なぜか身の回りでやたらと殺人事件が起こる体質の女子高生トランジと、その相棒となったピエタのバディものだったのだけど、この連作集では、その基本設定のまま、どんどん二人が年齢を重ねていって、予想外の場所へ連れていかれるのが楽しかった。ラノベっぽい題材ではあるけれど、そこは藤野可織ゆえラノベにはならず、斜め上に突き抜けていく。ゆえにちょっとこのラノベっぽい装丁は微妙。イメージをかえって縛られてしまった。
バディものとしてはとても良い。二人の生き様が、時代に合わせて変容し、さりげなくジェンダー問題もちりばめられている。ただ個人的には、トランジの体質が伝染性というのはどうかなと思った。あと二人の仲間になるのかと思いきや、とんだ疫病神だった(いや被害者なんだけど)森ちゃんという子が苦手だった。 -
著者の『爪と目』を読んだ後、きれいな表紙に惹かれて。
女子高生探偵モノかと思いきや、いい意味で、予想を大きく裏切られた。なるほど世界はそうなっちゃいますか!
ピエタとトランジが、生きていくためにお互いを切実に必要としていることが、二人が歳を重ねるごとに痛いほど伝わってきて、アイスがほっぺたに落ちるくだりは(まさにピエタ像そのもので)切なくて泣きそうになった。
トランジ(transi)が死の現在進行形ならば、ピエタ(piet'a)はそれをまるごと抱き止める存在だ。
行く先々で人が死ぬってまるでコナンじゃん、と思ったりもして、絶対自分の人生で出会いたくはないタイプの二人だけど、「最高に楽しい毎日を送ってきた」「ひとつも後悔してない」p8 ってババアになっても言えるってカッコいいなと思ったりもする。
ちなみに表紙のイラストに話は戻るが、
松本次郎さんという漫画家さんによるもので、調べていくと、氏のお兄さん松本太郎さんの波乱の人生にもう1つ小説を読んだような気分になった。 -
これは何なんだ!とんでもないものを読んでしまった気がする。現実と妄想が入り乱れ、スプラッター並みの内容なのに淡々と描写されており、書かれている内容ほどの重さを感じない。しかし、何が起きているのか分からない、論理的な説明もつかないが、破滅への向かって突き進む。ピエタとトランジが年を取るとともに世界が壊れていく。そんな様をまるで大河ドラマのように描き切った。それは、まさに彼らの名前が示すように「ピエタ」と「トランジ」の世界(メメント・モリ)なのだろう。短編が完全版になることにより「黙示録」となって甦った。雰囲気も内容も全く違うが、なぜか夢野久作の『ドグラ・マグラ』を思い出した。傑作です。
#ピエタとトランジ #NetGalleyJP -
ピエタとトランジというあだ名を持つ女性二人の事件録。
物語は二人が高校生の時から老年に至るまでを、ピエタの手記という形で進んでいく。
トランジが「名探偵コナン」をはるかに上回る殺人呼び寄せ体質のため(笑)、描かれる事件は殺人ばかり。そして、人の死がやたら軽い!
基本的に二人の周りで起こる殺人事件の話で進んで行くが、それに挟まれる形で、トランジが登場しない、医師になったピエタの私生活の模様が挿入される構成がなんとも奇妙。
あと、カバー絵と挿画を漫画家の松本次郎が担当しているところもユニーク。松本の作品は「フリージア」しか読んだことがないが、この作品の雰囲気に合っていると感じた。良い人選だが、著者の希望なのかしら?