地磁気逆転と「チバニアン」 地球の磁場は、なぜ逆転するのか (ブルーバックス)
- 講談社 (2020年3月18日発売)


- 本 ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065192436
作品紹介・あらすじ
【第36回 講談社科学出版賞 受賞!】
今、地球の磁場が徐々に弱まっている
――これは地磁気逆転の前兆なのか?
その謎を解くカギは、新・地質年代「チバニアン」が握っていた!
「チバニアン」申請チームを牽引した著者による徹底解説!
地質年代「チバニアン」――地球史に、初めて日本の地名が刻まれた。
その決め手となったのは、千葉の地層から見つかった「地磁気逆転」の痕跡。
かつて地球には、磁石が南を指す時代があったのだ。
なぜ地磁気は逆転するのか。次はいつなのか。
そのとき、地球はどうなってしまうのか。
最新研究で、地球科学最大の謎にどこまで迫れるか?
磁石の発見からチバニアン誕生までを紐解く!
■おもな内容
第1章 磁石が指す先には ――磁石と地磁気の発見
第2章 地磁気の起源 ――なぜ地球には磁場が存在するのか
第3章 地磁気逆転の発見 ――世界の常識を覆した学説
第4章 変動する地磁気 ――逆転の「前兆」はつかめるか
第5章 宇宙からの手紙 ――それが、謎を解くヒントだった
第6章 地磁気逆転の謎は解けるのか ――なぜ起きるのか、次はいつか
第7章 地磁気逆転とチバニアン ――その地層が、地球史に名を刻むまで
・地球が「巨大な磁石」である理由
・地磁気の弱化でネアンデルタール人が絶滅した?
・気候変動にも地磁気が関係?
・隕石衝突が地磁気逆転の引き金になる?
・「チバニアン」誕生の舞台は奇跡の地層だった
……地磁気の起源からチバニアン誕生秘話まで
感想・レビュー・書評
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ある時スイッチが切り替わるように、磁場が逆転するのか。
それとも、じわじわと移動していって、地磁気極が赤道上にあった時期もあるのか。
地磁気逆転の経過が知りたくて手にした本。
第36回講談社科学出版賞受賞作。
とても面白かった!
筆者は、地質年代名「チバニアン」が誕生することになる、GSSP審査の提案書執筆責任者。
難しいことを取り扱っているはずなのに、平易でわかりやすい。
磁石、海嶺とプレートテクトニクス、磁場のない他の惑星のこと。
身近な知識とつながる部分が多く、興味をひく。
日本列島の「観音開きモデル」のように、「ブラタモリ」とつながる部分も多かった。
GSSP申請の際、日本国内である団体からの妨害があった件も、触れられていた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
◯この本は一言でまとめるとプロジェクトX。いつものブルーバックスよろしく、噛み砕いた説明で、地学の歴史から最新の研究まで網羅しているものの、読み物として面白いのである。
◯地学に対する知的好奇心を満たすように読み進めていたが、終盤に至って、それまでとは異なり、不穏な空気に包まれる。「団体」の登場である(調べてみると、どうも個人のようだ)。なんのことだと二度見した。注釈がここまでに記載されていたいわゆる注釈ではなく、筆者の思いが溢れている。団体からの抗議、妨害活動が語られ始めるのだ。
◯学術的なものがどのように合意されていくのか、過程を知らない者にとっては、様々な紆余曲折やよく分からない拘りの元に遅々として進まぬことがあることを知る。とりわけ驚いたのは、地学において地中海近辺でなければならないという主張。もはや近代以前の発想である。科学とは平等ではないのか、、
◯国際地質学連合における審査の二度にわたる延期、団体からの妨害、様々な困難を乗り越えて選定されたチバニアン。見に行ってみるのも感慨深いのかもしれない。 -
磁極の北極と地理上の北極がずれていることは知っていた。地磁気逆転という言葉も言葉として知っていた。でも地磁気逆転がなぜ起きるのは知らなかったし、そもそも何で地球に地磁気があるのか知らなかった。そんなぼくにはちょうどいい一冊だった。
ここ数百年、地磁気は弱まりつつあるそうだ。地磁気は太陽風から地上を守るためのバリアーとしても働いているから、地磁気の弱体化は気象にも影響を与えそうだ。もしそうならどんな影響があるのだろうか。さらに地磁気が逆転したりしたら、その影響はさらに大きくなりそうだ。なんか足元がぐらぐらしそうな気分で読んだ。 -
チバニアンという単語は聞いたことがあったけど、何を指しているのかは全く知らない。そんな状態で読んでみたらおもしろかった。
紀元前77~13万年の間が地質年代チバニアンとして命名された。巨大な磁石としての地球の性質を分かりやすく解説してくれる一冊。
■方位磁針は真北を差さない。平面方向にズレる(偏角)地球の中心方向も差している(伏角)
■レーマンのP波観測に関する論文のタイトル「P´」がカッコいい(中二的に)
■地球の外核は導電性の液体金属から成り、核の表層部と深部の密度差による対流(地球ダイナモ作用)で磁場が生成させる。
■地球の地磁気は何度も逆転していた。発見したのはフランスのブルン、明らかにしたのは京大の松山基範博士。その原因は現在でも諸説あるようだ。
■溶岩は加熱時に磁性を失い、冷えるときに磁場情報を残留磁化として記録する。電子の向きが偏った鉄やコバルトやニッケルは強磁性をもつ。
■地磁気の極性年代には先人研究者の名前がつけられる。ブルン、松山、ガウス、ギルバートなど。
■地磁気は太陽風や紫外線から地球を守るバリアとなる。
■地磁気の逆転は、過去80万年間で一度だけだが、過去250万年スパンでは11回発生している。おそらく今後数百年は地磁気逆転はなさそうたが、いざ逆転すると著しい気候変動が予想される。
■地磁気の強さや磁極位置は動き続けている。
■房総半島のは白尾火山灰が堆積しており、残留磁化と放射線同位体比計測から、地磁気逆転の年代が特定された。この地質年代(紀元前77万~13万)がチバニアンと名付けられた。
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地球の地磁気が過去に逆転した痕跡を観察できる地層として、千葉県の市原市の地層が一躍有名になったのはつい最近のことですが、本書ではそもそもなぜ地球に地磁気があって、その果たしている役割や、環境に与える影響について解説してくれています。
地磁気や磁石に関する歴史の紹介では、中国が都市建設に際して風水のために磁石で方位を測ったことから真北を基準としていないのに対して、日本の都が真北を基準としているのは、とても興味深い対比でした。また方位には偏角と伏角があることも知りました。地磁気の方向や強弱により、こうした角度も影響を受けるとのことです。興味深かったのは、体内に磁性鉄をもつ生物が、地磁気を感知して行動するということでした。地磁気逆転現象は、フランス人のブルンと日本の松山が発見者として名高く、直近の地磁気逆転は77万年前だそうです。市原の地層でもこの痕跡が観察できる、とのことですから一度是非見に行ってみたいと思いました。そもそも地層から地磁気の逆転が観察できるのは、岩石や溶岩が磁性を固定するからですが、当時の地磁気の方向がこうして判明する、というのは大変神秘的な現象だと感じました。地磁気が大きく北極や南極からずれることをエクスカーションというそうですが、直近では4万1千年前に起こったそうです。フランスの地名からラシャン・エクスカーションと名付けられていますが、この時期がネアンデルタール人の絶滅と時期的に重なるため、影響があったのではと推測されているようです。エクスカーションで地磁気が弱まり、オゾン層が破壊され紫外線が強まったことによる影響と考えられているようです。地球の地磁気が太陽風から生物を守っているのです。1859年に太陽のフレアが突発的に発生すると、プラズマと磁場が一緒になって宇宙に放出され、その影響が地球に及んだことが紹介されています。この時、電化されていた国、例えばアメリカでは磁気嵐で電信ネットワークがダウンしたのですが、同様のイベントが今発生した場合の社会、経済への影響は甚大でしょう。地磁気がない火星では太陽風の影響によって大気や水がなくなってしまったようです。地磁気が地球上の生命に及ぼす影響の大きさを認識させられた良書でした。 -
2020/12/01読了
大学の講義で地球磁気学をとっていて
少しずつ興味を持ち
テスト勉強がてらに購入
やはりブルーバックスは図や写真などが豊富で
非常に分かりやすい
講義を全て受けてからの本であったので
内容がすらすら入ってきた
しかし前半の内容(地磁気逆転)などは
初学者には少し難しいのかもしれない
星4の理由は
後半の内容に少し失速を感じたからである
前半は逆転の詳細や時期の説明など
非常に詳しく書いてあった
後半はチバニアンの内容だったが
チバニアンがどんなにすごいものか
というよりも、
コレ登録めちゃめちゃ大変だったわ~
というような内容
夢やロマンのある古地磁気学
もっとアピールしてもいいのではないか
と思いました -
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