じんかん

著者 :
  • 講談社
4.20
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本棚登録 : 389
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (514ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065192702

作品紹介・あらすじ

戦国時代の三悪人の一人として名高い松永久秀。その生涯を、絶望的貧困から立ち上がり、一国の城主として大成、さらに最後、織田信長に攻められ自害するまであまさず余さず描く。『童の神』で直木賞候補となった今最も勢いのある若手歴史作家による、圧巻の戦国巨編!

感想・レビュー・書評

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  • 小姓の狩野又九郎が戦国の黎明期を駆け抜けた男、織田信長より伝え聞いたという形式の松永弾正久秀の一代記です。

    表題の<じんかん>とは人間という意味であり、人と人が織りなす間。つまりはこの世という意であるそうです。

    物語は九兵衛(久秀)の少年期より始まります。
    九兵衛は14歳弟の甚助は11歳の頃です。

    九兵衛と甚助は足軽たちに父を殺され、母が自害し、孤児となり、野盗働きをする少年たちの集団に拾われます。
    そこのリーダーは多聞丸という少年であり、日夏という少女には九兵衛は字を教えてやることにより、心を通わせていきます。
    仲間だった少年の一人、梟の裏切りにより多聞丸は窃盗に失敗し、仲間を殺され全てを九兵衛に託して死んでいきます。
    九兵衛は裏切った梟を自らの手で刺し、生き残った甚助と日夏を連れて本山寺に厄介になるところから九兵衛たちの旅が始まります。
    そして、ここが、久秀の原点となります。

    キャラクターがいいと思いました。
    九兵衛の聡明さ、賢さ。
    甚助の健やかさ、勇敢さ。天真爛漫さ。
    日夏が九兵衛を慕う気持ち。

    九兵衛と甚助は本山寺から堺に行くことになり、日夏は「迎えに来て」と九兵衛に言いますが、九兵衛は「いい縁があれば嫁げ」と言い残し旅立ちます。

    九兵衛は祐筆ができ、茶の湯をたしなみます。
    甚助は猟師たちと猟に行くのが好きでした。
    そして戦乱の真っただ中に入っていく二人ですが、大人になり三好元長の家に仕えますが、少年時代のことは、いつも忘れず建てた城の名に多聞城という名をつけます。

    そして三好元長が見た「民が執る政」という遥か遠くにあるという夢を一緒にどこまでも追いかけていきます。

    甚助や日夏とのあまりにもせつない別れもあります。
    最後は織田信長にも仕えますが、最後の最後は落涙しました。
    九兵衛の信条は<いつも人間が切り開く>でした。

    • しずくさん
      『麒麟がくる』で吉田鋼太郎さん演じる松永久秀を観ていて興味が湧く人物でした。先日の松永久秀を取り上げた歴史番組でも、今まで彼は誤解されていた...
      『麒麟がくる』で吉田鋼太郎さん演じる松永久秀を観ていて興味が湧く人物でした。先日の松永久秀を取り上げた歴史番組でも、今まで彼は誤解されていたようだと語ってましたねぇ。
      2020/07/15
    • まことさん
      しずくさん♪こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      ドラマは最近、なかなか観る時間がなくて、わからないのですが、あまりにも、日...
      しずくさん♪こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      ドラマは最近、なかなか観る時間がなくて、わからないのですが、あまりにも、日本史がわからないので、レビューを書く前に少し検索してみたら、そのようなことが、確かに書かれていたようでした。大変な悪人と思われていたらしいのですが、好感の持てる人物でした。
      2020/07/15
  • 『悪人』と名高い松永久秀の半生を新たな解釈で描く。
    先日読んだ伊東潤さんの「茶聖」と同様、これまた主人公の見方が変わる作品。
    とはいえ、最近の研究で松永久秀は後世に伝わるような悪人ではなかったことは少しずつ分かって来ている。寧ろ優秀で先進的だったが故に周囲から疎まれたのかなとも思える。

    この作品の面白いところは、松永久秀の半生を語るのが織田信長という点。二度も謀反を起こされながら、信長は最後まで彼を許そうとしたのは何故かもこの解釈なら理解出来る。
    そして松永久秀が最後まで追い求めたもの、生涯を懸けて夢を追い結局は叶わぬまま人生を終えたその姿から信長は何を感じ何を思ったのかにも興味を感じた。
    この後起こる本能寺の変の最中、彼の胸に松永久秀のことは去来しただろうか。そんなことをチラッと思った。

    松永久秀が三好家の家臣として登場する前については分かっていないらしい。だからこそこの作品では大胆なフィクションでその少年期を描いてある。
    個人的には祐筆であったり優秀な役人だったりしたことからそれなりの血筋の武家か、それだけの教育を受けられる裕福な家の生まれかと想像していたのでこの少年期については違和感があった。
    ただ後に彼が築く多聞山城の名前の由来であったり、東大寺の焼き払いや二度目の謀反に繋げるあたり、作者さんの努力が垣間見えた。

    松永久秀が生涯の主君とした三好元長が語る理想、『武士の支配から解放』し、『民が民を治める』国というのはまさに現代の国の有り様だ。だがそれが素晴らしい世界なのかと言われたら何とも言えない。
    この作品を読んでいると、『じんかん(人間=この世)』は儘ならぬものということを切実に感じる。
    三好元長の理想は民の心に沿うものだと思っていたが、それなのにその民から裏切られた。家臣から裏切られたのならまだ納得出来るが、懸命に守ってきた民から裏切られるとは一体なんのために戦ってきたのかと脱力する。

    『人という生き物は変革を拒む。人はそれを神だの仏だののせいにして生きているだけなのです』
    『本当のところ、理想を追い求めようとする者など、この人間(じんかん)には一厘しかおらぬ。残りの九割九厘は、ただ変革を恐れて大きな流れに身をゆだねるだけではないか』

    変革の先にあるもの、理想の現実化の先にあるものが民の幸せだと説いてもそこに逆らうのが民の意志であるならば、それは理想ではないということなのか。

    また細川高国の話はなかなか興味深い。日本に限らず今の世界を表現している。

    『恐ろしいのは、箍が外れれば後先など考えずに狂騒すること』
    『己を善と思い、悪を叩くことは最大の快楽。たとえ己が直に不利益を被っておらずともな』
    『世に善悪があると本気で思うか』

    自分の行為や意志を正当化するためにそこに外れるものは悪と決めつけ徹底的に叩く。結局のところ、松永久秀が後世で『悪人』とされたのはこういうところなのかなと解釈した。

    民のため主君のためにこんなに頑張って、汚名も悪名も引っ被って最後まで足掻き続けて、それなのに上手くいかなくて、結局彼の人生は何だったのか、一体『何のために生まれたのか』。
    しかし現代になって再び彼の研究が進んで再評価もされ、優秀な武将として注目されている。そのうちに彼が追い求めた理想の世界も分かってくるかも知れない。
    その時に彼が生まれた意味、生きて足掻いた意味も確かにあったと言える。

  • 【記録】
    じんかん
    2020.05発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    残念です。

    ブクロクの新刊情報を見て書店に見に行くと、字が小さくて読めず。
    今村翔吾さんの本は読みたかったので残念です。
    ※【記録】の説明は、プロフィール欄に書いて有ります。

  • 戦国時代の三悪人の一人として名高い松永久秀の人生を、織田信長の回想として語る。
    織田信長が語るというスチエーションも小説ならではで、おもしろい。信長の孤独な内面にも触れたよう。
    久秀を悪人としてではなく、戦国の世で「武士のいない世の中をつくる」ことを目指し民衆に寄り添う人物として描いている。
    歴史上の人物は見る角度によって、どう捉えたいかによっても全く違う。真の姿が分からないから想像が膨らむのだろう。
    ふだんあまり歴史小説を読まないので違和感なく、おもしろく読めたのかもしれない。

  • ぶ、分厚い・・・。
    小説は普段は文庫本で済ませており、単行本を手に取るのは直木賞ノミネート作ぐらいなのですが、ハードカバーで500ページもあると、やっぱり迫力が違います。
    内容も装丁の重厚さに違わず、著者の情熱や思いがいっぱい詰まった渾身の力作です。

    斎藤道三・宇喜多直家と並んで戦国時代の三大梟雄と呼ばれた武将、松永弾正久秀(久兵衛)の一生を描いた作品です。
    全部で七章から成っていますが、各章とも織田信長と小姓の狩野又九郎が案内役となり、かつて聞いた九兵衛の半生を回想して各章が始まる、というフォーマットになっています。
    最初、いきなり夜盗の一味が登場して、幼い九兵衛もその仲間になるもんですから、歴史上に名を残した人物に対してずいぶん大胆な解釈をしたもんだなあと思いました。
    この夜盗集団を描いた第一章が、一番スピード感と迫力があって面白かったです。
    ただ中盤以降、三好元長に従事したり、後に天下の悪人と呼ばれるような所業を行ったりした際に、九兵衛自身が主体的に動いたというよりも、やむにやまれぬ事情で行動を起こさざるを得なかった、という形で物語が展開しているため、第一章で感じた破天荒さが年齢を重ねるごとに失せていくような印象を受けました。
    まあ現代のサラリーマンも、年齢や役職が上がっていくたびに行動が窮屈になっていくような面は確かにあるので、共感は得やすいのかもしれませんが。
    また、戦国の世で「武士のいない世の中をつくる」という考えのもとに行動する、という点も「軍隊がなくなれば戦争は起こらない」的な考えの焼き直しとしか思えず、若干の違和感を覚えました。

    とはいえ、弟である甚助との関係はよく描けていますし、現代に通じる部分(例えばパニック時の大衆の行動とか)をうまく取り入れていた点も良かったと思います。
    トータルでは十分楽しめました。

  • 悪名高い松永久秀を、ここまで魅力あふれる人間として描いた作品は過去にないでしょう。
    明智光秀同様に前半生が不明なので、この作品のような人生だった可能性もなくはないわけで、NHKの大河ドラマと思えば楽しめます。まあちょっとやり過ぎ感は否めませんが、その人が善人か悪人かなんて戦国時代においては立場によって180度変わるわけで、新しい視点で描いた久秀像は新鮮でした。

  • 松永久秀。戦国の大悪人と言われた武将の人生を主君信長が語り聞かせる。追いはぎであった少年時代、生涯をかけて従った主君との出会い、努力が実を結んだ隆盛、そして裏切りと世間への幻滅。現在の悪名高いイメージと違う、教養高く、忠義に厚い人物像がそこにあった。彼がいかにして悪人となったか、戦国の世をどう生き抜いたかが見えてくる。武士のいない世をつくろうとする戦国武将というのは夢物語過ぎないかと鼻白むところもあるが、苦しみばかりの世に生きながら行動を起こす事のない民に久秀が落胆する場面は人間の真理を鋭くついていた。

  • 読後、すぐにwikiで松永久秀を調べてしまう。まさか信長に語らせる構成とは思わず、勝手な刷り込みも手伝って「信長ってそんな長々話す人だったっけ」と違和感があったのも事実。色々な描かれ方をする戦国武将だけれども、今村さんが描いた姿が事実であって欲しい、と思う。「八本目の槍」でも同じことを思った。天も神も仏もない、と思い続けた人生が、実に出会いに恵まれて豊かなものであった事が羨ましい。そして賢い。彼の言葉全てが楽しかった。戦国武将に思い入れはなかったけれど、今村さんのおかげで二人ほど好きな人が出来た。感謝。

  • 麒麟が来るでも話題の松永久秀が主人公。いわゆる松永久秀といえば、「三悪事」を働いた戦国の梟雄というイメージだが、この「じんかん」では忠臣として理想に燃えていた久秀像を描いている。その久秀がなぜに後世悪人呼ばわりされたのか、歴史を新たな解釈で再構築しているわけだけど、やはりその場合、前提条件を全編に渡って受け入れられるか否かが物語に没入できるかの鍵を握る。私は今回は没入できなかった。後半になるにしたがって、話に無理が出てきて、読むのがしんどくなってきた。しかし、松永久秀は主人公として十分なエピソードを持っているので、もう少しド直球の物語も見てみたいと思った。

  • 九兵衛(松永弾正少弼久秀)の一生を描いた大河ドラマ。戦国の世を救うため、三好元長の「武士を残らず駆逐したい」という願いを実現するために三好家に仕える。改革は人を納得させる必要があり、その難しさは今も昔も変わらない。元長は志半ばに亡くなり、久秀が遺志を継ぐ。そして久秀も三好家や他の大名との間に挟まれて思うように進められない。神仏を信じない久秀であるが、人を信じる力は強い。子供の頃に知り合った多聞丸や日夏の遺志を自分のものにして、死ぬまで人を民を家臣を信じぬいた。久秀自身が悪者になっても大きな目的のために動いた。壮絶なドラマである。500ページの大作であるが、長さを感じられない。むしろ、もっと読みたいと思った。

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著者プロフィール

今村 翔吾(いまむら しょうご)
1984年、京都府生まれの時代小説作家。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て専業作家となる。
2016年、『蹴れ、彦五郎』で第十九回伊豆文学賞の小説・随筆・紀行文部門最優秀賞、2016年『狐の城』で第二十三回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞をそれぞれ受賞。2017年『火喰鳥』が単行本デビュー作となり、啓文堂書店時代小説文庫大賞を受賞、「羽州ぼろ鳶組」シリーズとして代表作となる。2018年「童神」で第十回角川春樹小説賞を受賞し、『童の神』と改題されて単行本発刊。同作が第8回本屋が選ぶ時代小説大賞候補となると同時に、第160回直木賞の候補に。

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