じんかん

著者 :
  • 講談社
4.19
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  • Amazon.co.jp ・本 (514ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065192702

感想・レビュー・書評

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  • 戦国時代の三悪人の一人として名高い松永久秀の人生を、織田信長の回想として語る。
    織田信長が語るというスチエーションも小説ならではで、おもしろい。信長の孤独な内面にも触れたよう。
    久秀を悪人としてではなく、戦国の世で「武士のいない世の中をつくる」ことを目指し民衆に寄り添う人物として描いている。
    歴史上の人物は見る角度によって、どう捉えたいかによっても全く違う。真の姿が分からないから想像が膨らむのだろう。
    ふだんあまり歴史小説を読まないので違和感なく、おもしろく読めたのかもしれない。

  • ぶ、分厚い・・・。
    小説は普段は文庫本で済ませており、単行本を手に取るのは直木賞ノミネート作ぐらいなのですが、ハードカバーで500ページもあると、やっぱり迫力が違います。
    内容も装丁の重厚さに違わず、著者の情熱や思いがいっぱい詰まった渾身の力作です。

    斎藤道三・宇喜多直家と並んで戦国時代の三大梟雄と呼ばれた武将、松永弾正久秀(久兵衛)の一生を描いた作品です。
    全部で七章から成っていますが、各章とも織田信長と小姓の狩野又九郎が案内役となり、かつて聞いた九兵衛の半生を回想して各章が始まる、というフォーマットになっています。
    最初、いきなり夜盗の一味が登場して、幼い九兵衛もその仲間になるもんですから、歴史上に名を残した人物に対してずいぶん大胆な解釈をしたもんだなあと思いました。
    この夜盗集団を描いた第一章が、一番スピード感と迫力があって面白かったです。
    ただ中盤以降、三好元長に従事したり、後に天下の悪人と呼ばれるような所業を行ったりした際に、九兵衛自身が主体的に動いたというよりも、やむにやまれぬ事情で行動を起こさざるを得なかった、という形で物語が展開しているため、第一章で感じた破天荒さが年齢を重ねるごとに失せていくような印象を受けました。
    まあ現代のサラリーマンも、年齢や役職が上がっていくたびに行動が窮屈になっていくような面は確かにあるので、共感は得やすいのかもしれませんが。
    また、戦国の世で「武士のいない世の中をつくる」という考えのもとに行動する、という点も「軍隊がなくなれば戦争は起こらない」的な考えの焼き直しとしか思えず、若干の違和感を覚えました。

    とはいえ、弟である甚助との関係はよく描けていますし、現代に通じる部分(例えばパニック時の大衆の行動とか)をうまく取り入れていた点も良かったと思います。
    トータルでは十分楽しめました。

  • 読みごたえあった。さすがにこのサイズだと通勤に持ち歩くのは無理で、家で寝る前に少しずつ読み進めたので、結構時間かかった(苦笑)

    松永久秀の人生を、織田信長が小姓頭に語り聞かせる、と言う形で進む。
    松永久秀と言えば、三悪を犯した悪人、と言うイメージが強いが、実際には前半の人生については、ほとんど分かっていないそうで、
    だとすると、本当はこんな魅力的な人だったのかもしれないな。

  • 天正五年(1577年)、安土城天守に君臨する織田信長のもとに、織田家に忠誠を尽くしていたはずの<松永久秀>謀叛の急報が届く。これが二度目の謀反という前代未聞の事態を前に、主君の勘気に怯える小姓頭・狩野又九を前に、信長は意外にも笑みを浮かべ、かつて久秀から直接聞いた壮絶な半生を語り出した・・・。貧困、不正、暴力が蔓延るこの世の不条理に抗いながら、民を想い、民を信じ、正義を貫こうとした松永久秀の生涯を切々と語り紡いだ、 直木賞作家・今村翔吾さん渾身の重厚な歴史エンタ-テイメント大作。 「お前は何を知りたい」「人は何故生まれ、何故死ぬのかを」・・・錯綜する人間ドラマは、興奮冷めやらぬ強烈な読後感に満たされる。

  • 世に悪は跋扈するが、神など在りはしない。ただ、天使ならきっと……。

    人も世も繋がり。遥か以前より連綿と紡がれる道なき道。

    私はこの道に何を残す……。

  • 謎も逸話も多い人物、松永久秀を大胆に解釈した作品
    織田信長の口から語られる、その人物像は・・・

    これまで読んだ著者の作とは、ちょっと毛色が違うかな?(出版はこっちの方が古い)
    しかし、よくもここまで話を膨らませたものだと、感心します
    大した説得力のある作品ですね

  •  渾身の大作だと思う。松永弾正久秀。物語の中に出てくる弾正は決して悪人ではない。
     そう生きるように運命の歯車が回ったのか。
    人生は刹那だ。大樹に比べなんと短いのだろう。
     寂しさとともに本を閉じた。弾正を読む前よりずっと好きになった。

  • じんかんを読んで、松永久秀が益々分からなくなった。読み応えは充分。もっともっと知りたくなった。
    人間に主眼をおいて描かれた小説だと思うので、それはそれでとても良かった。

  • 今村翔吾さんの作品を読むと、毎回自分が全く知らなかったり、一面でしか見てなかった歴史上の人物を新たな一面から知ることができる
    今回は、松永弾正久秀

    物語の展開の仕方が面白い
    織田信長が、久秀の二度目の謀反を知らせに来た小姓頭の狩野又九郎に夜を徹して久秀の人となりや来し方を語って聞かせるというのだ

    主君殺し、将軍殺し、東大寺の大仏殿の焼き尽くしという戦国一の悪名高き松永久秀の真相

    凄惨極まりない幼少、少年時代、数々の人々との出会い
    久秀の目指した夢が信長の口から思う存分語られる

    これは今村翔吾の松永久秀像なのであろうが、あながち全てが脚色であるわけがない
    多方面からの歴史家の研究によって、いろんな史実が塗り替えられていることからも明らかだ

    三好元長の目指した民による政治に感銘を受け、必死に支えようとする久秀に
    それを根こそぎ覆すかのように語る細川高国の「民」
    「民は支配されたがっている。日々の暮らしが楽になるのは望んではいる。しかし、そのために自らが動くのを極めて厭う。百年後の民にいくら有益であろうと、今の暮らしが奪われれば民は怒り狂う。救われたい、富を得たいと願うくせに、自らが責を負うのは嫌う」
    だから民による政治など不可能と言わんばかりだ

    自分の心を見透かされたようで耳が痛いが、否定できない

    ー何故、俺が生き、お前が死ななきゃならない。
    ー人は何のために生まれてくるのか。

    松永弾正久秀の一生は、この二つを問い続けた一生であったのではなかろうか

  • 文学書評
    読書レベル 初級〜中級
    ボリューム 509頁
    ストーリー ★★★★★★!
    読みやすさ ★★★★★
    ハマリ度  ★★★★★★!
    世界観   ★★★★★★!
    知識・教養 ★★★★★
    読後の余韻 ★★★★★★!
    一言感想:総合評価★6!感動の余韻が全く抜けません。500ページを超える長編ですが、とにかく最初の章から面白い。中盤に差し掛かるとさらに面白い。そして最後の最後はさらに盛り上がって面白い。そして感極まっての号泣。

    私は歴史が大の苦手。でも私のように歴史が苦手な人にもぜひ読んでもらいたい作品でした。私も歴史小説は食わず嫌いで避けてきて、これまでに読んだ歴史小説と言えば『黒牢城』くらいです。もちろん主人公の松永久秀も知りませんでした。主な登場人物で知っていたのは織田信長くらい。でも!面白いし、ハマりました。

    この作品を手にした理由は、YouTubeほんタメで、500ページ以上あるのに『一気読み作品』として紹介されていたからです。そんなにハマるのかと…、気になってこの作品を手に取りましたが、私の心に一生残る1冊となりました。

    この作品の魅力は、人物の感情が深く描かれているところです。戦で命を落とし、貧困に苦しむ中で、どのような感情で生きていたか、まさに人間(にんげん)とは何であるか、人の一生(じんかん)とは何であるか、丁寧に描かれた人物の感情から確実に感じ取ることができました。

    手元に残しておきたい1冊です。

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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