ルイ・ボナパルトのブリュメール18日 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065193464

作品紹介・あらすじ

本書は、ジャーナリストとしてのカール・マルクス(1818-83年)が執筆した代表作、待望の新訳です。書名にあるルイ・ボナパルト(1808-73年)は、よく知られているとおり、ナポレオン1世の甥にあたります。1836年に武装蜂起を起こしたものの失敗して国外追放処分を受けたルイは、4年後にもクーデタを試みて失敗、終身禁固の刑を宣告されました。6年後の1846年に脱獄してイギリスに亡命しましたが、そこに勃発したのがヨーロッパ全土を巻き込む1848年の革命でした。
急遽フランスに帰国したルイは、同年9月には憲法制定議会の議員に選出され、貧困層のあいだに根強く残るナポレオン崇拝を利用して、12月には大統領選挙で勝利します。そうして、3年後の1851年12月2日にはクーデタを起こし、反対派の議員を逮捕して議会を解散、国民投票で圧倒的な支持を得ると、ついに翌1852年12月には皇帝に即位し、ナポレオン3世(在位1852-70年)として第二帝政を開始することになるのです。
本書は、この過程をジャーナリストとしてつぶさに見ていたマルクスが、1848年の革命から1851年のクーデタに至る歴史を追いながら、何が起きたのか、なぜナポレオンは次々にみずからの野望を実現することができたのかを分析したもので、ルイが皇帝になった1852年に雑誌で発表されました。ここに見られるのは、巧みに民意を利用して選挙に大勝し、政治と憲法をほしいままにしていくプロセスにほかなりません。同じ光景は、それから150年以上を経た今日、さまざまな国で再現されているものだと言えるでしょう。
――こうした背景を踏まえつつ、数多くの巧みな翻訳を送り出してきた訳者が「慣れない畑」にもかかわらず育て上げた豊かな果実が、この新しい翻訳です。底本は、1869年にハンブルクで単行本として出版された改訂第2版を用いました。
本書の日本語訳としては岩波文庫(1954年)と平凡社ライブラリー(2008年)のものが広く親しまれてきましたが、第2版の翻訳である前者はいかんせん古いと言わざるをえず、後者は新しいものの第1版の翻訳で、必ずしも一般的とは言えません。そのような状況が長らく続いてきた中、練達の訳者による第2版の新訳、たくさんの人たちのニーズに応える、まさに待望の1冊になることでしょう。

[本書の内容]
政治党派一覧
関連年表

はじめに
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日

訳者あとがき

感想・レビュー・書評

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  • ルイ・ボナパルトこと、ナポレオン三世はとっても変な人で、良い独裁者だったのではないか。民主的な考えを取り入れた独裁者だったと述べたのは鹿島茂氏。本著を読む前に、内田樹氏との対談に目を通した。

    『資本論』がマルクスの資本主義論であるとすれば、本書はマルクスの民主主義論。うん、いたるところ支離滅裂で嘘八百でわけがわからない。だがそれでいい。これは、成田悠輔氏の言。うん、わけがわからない。

    いざ。ページを開く。
    ー ヘーゲルはどこかで、すべての世界史的な大事件や大人物はいわば二度あらわれる、と言っている。マルクスはそれに付け加える「一度は悲劇として、もう一度は茶番として」ダントンの代わりにコシディエールが、ロペスピエールのかわりにルイ・ブランが、ナポレオンの代わりに甥ルイ・ボナパルトが。そして本著の第二版が。全く同じカリカチュア。

    階級闘争を繰り返しながら、堂々巡りをしているかのようで、しかし、その抗争の中で、果たしたはずの普通選挙制度が改悪化していく。革命は民主的と言えるのかは悩ましいが、成熟せぬ、いや、膠着状態を打破するには、革命すら民主主義的手続きか。そこにつけ込むようにルイ・ボナパルトは権力を掌握する。

    ー どの党派も、革命を十分にリードしてしまうと、もう革命についていけなくなり、ましてや革命の先に立つこともできなくなる。するとたちまち、自分たちの後ろにいた、自分たちよりも大胆な同盟に押しのけられ、ギロチンに送られる。革命はこんな具合に上昇線をたどっていった。

    上昇線なのか。民主主義に組み込まれた革命が独裁に取り込まれ、しかしその独裁はポピュリズム。何が何だか、どこから茶番なのか。2月革命はフローベルにとって滑稽。ヴィクトル・ユゴーやトクヴィルからは、頽廃的な反復。マルクスが茶番と言ったのは、どういう意味か。本著がこのこんがらがった抗争劇とルイ・ボナパルトの素顔に迫る。しかし、うん、まだわけがわからない。民衆という変わらぬ箱の中でおきた、ホームコメディとでも言いたいのだろうか。

  • 1848年の2月革命から1851年のルイ・ボナパルトによるクーデターまでを、同時代人の、あのカール・マルクスが論じた本。
    ナポレオン3世のことを、凡庸でグロテスク、山師、男妾、と蔑称塗れで呼んでいるが、内容は冷静に政治過程を論じてある。

    難しい局面になると、議会政治が機能しなくなり、庶民の不満を求心力にした簒奪者が更に世の中を破滅に導く構図は、昭和日本と同じと思った。

  • もしこれから読む人がいれば、解説から読むことをおすすめする。
    悪口を言うということは、その相手の存在と力を認めているということだ。

    資本論か何かが学校の宿題で出た時は、真面目に読まず、sparknote で内容だけ確認したのでマルクスの文章はほぼ初めて。
    やたら芝居がかった文章から、ロンドンで上映された舞台、ヤングマルクスみたいな激情家ぶりが伺える。

    というよりそもそも、フランス革命後の歴史なんて全く覚えていない。逃亡するメッテルニヒの挿絵が教科書に載っていたことしか。

    なので少し調べました。間違ってるかもだけど。
    フランス革命→立憲王政(共和制までの間の時間)→第一共和制(フランス初の共和制)→第一帝政(ナポレオン。ヴェネツィア共和国を終わらせたので少し恨めしい)→復古王政→7月革命(ドラクロワの絵と、レ・ミゼラブル)
    からの本書、関連年表の7月王政につながる。
    かつ、マルクスはプロレタリアートの味方、という視点で読むとなんとなく何故怒っているのかわかる。
    間違ってるかもだけど。
    ヒップホップですね。時代の最先端。いや、今はインディーズロックが戻ってきてるから少し前の流行。ヒップホップ50周年なのにね。

    例えば憲法で人権を保障することは人類の進歩だと教育されてきたけれど、疑問を呈してもいいんやで、って言ってくれる意味では価値があると思う。しかも当たり前に男子限定だしな。
    議会、大統領、司法、軍隊など現在の政治制度に近い常態で、それがいかにもろいかがわかる。しきりに今読むべきと言われるのはそのためなのかも。

    なんとなく進撃の巨人に置き換えてみると、他人事じゃなくなる。

  • ⅠとⅥの最後の年表とⅦが醍醐味でした。他の章は細かな内容で、この頃のフランス史に精通しないと読みこなせないですね…浅学非才な自分が悪いんですが。
    でも、この頃のおフランスと令和大日本が重なる気が…ルンペンプロレタリアート=ネトウヨな感じ。

  • ジャーナリストとしてのマルクス、もしくはアジテーターとしてのマルクスか。筆が走るままに書いているような勢い。この人が現代にいたらツイッター中毒になっていたのでは、などと要らんことを考えてしまった。

    マルクスといえばロンドンのイメージが強いので、フランスの事情になんでこんなに詳しいのだろうと思って調べたら、この時期のマルクスは一時的にパリに住んで共産主義者同盟を立ち上げたり、ほとんどフランス政治の当事者に近い立ち位置だったみたいだ。

    別途、Wikipediaなどで当時のフランス史の流れは押さえつつ読んだ。21世紀の日本人に向けて書かれている訳でなく、けっこう細かい出来事をも追っているので、そうでもしないとよく分からないところがある。

  • 同時代の事実・事件について、その背景やそこに至るまでの流れを概観し、どうしてそんなことが起こったのかということを考察する場合、筆者の思い込みによるバイアスが資料的裏付けや証言にかかってしまうという困難があると思うのだが、マルクスの記述には(もちろんバイアスはかかっているのだろうが)そんなことを少しも感じさせず、複雑な政治的出来事をきちんと腑分けしてわたしたちの前に提供してくれている。
    目次の後に付けられている「政治党派一覧」と「関連年表」のおかげで、この書物が書かれた時代背景や事件の流れがよくわかった。

  • マルクスの文章や分析には興味を覚えるが、当時の政治的背景等について一定の知識、理解がないと、本当のスゴさが分かりづらいと思われる。

  • 20/04/15。

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著者プロフィール

カール・マルクス(Karl Marx):1818-83年。ドイツの経済学者・哲学者・革命家。科学的社会主義の創始者。ヘーゲル左派として出発し、エンゲルスとともにドイツ古典哲学を批判的に摂取して弁証法的唯物論、史的唯物論の理論に到達。これを基礎に、イギリス古典経済学およびフランス社会主義の科学的、革命的伝統を継承して科学的社会主義を完成した。また、共産主義者同盟に参加、のち第一インターナショナルを創立した。著書に『資本論』『哲学の貧困』『共産党宣言』など。


「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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