現代経済学の直観的方法

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065195031

作品紹介・あらすじ

かつて『物理数学の直観的方法』で理系世界に一大センセーションを巻き起こした著者による、どこにもなかった経済書、誕生。

・資本主義の本質
・インフレとデフレのメカニズム
・貿易が拡大する理由とは?
・ケインズ経済学とは何か?
・貨幣の本質とは?
・仮想通貨(暗号資産)とブロックチェーンとは何か?
そして、
・資本主義社会の最大の問題点と、その解決のヒント

私たちが生きる現代資本主義社会の本質とその問題、行く末を直観的に理解する一冊!

(目次)
第1章 資本主義はなぜ止まれないのか  
第2章 農業経済はなぜ敗退するのか 
第3章 インフレとデフレのメカニズム
第4章 貿易はなぜ拡大するのか 
第5章 ケインズ経済学とは何だったのか 
第6章 貨幣はなぜ増殖するのか 
第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか 
第8章 仮想通貨とブロックチェーン 
第9章 資本主義経済の将来はどこへ向かうのか 

感想・レビュー・書評

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  • 「経済数学の直観的方法」でお世話になった者としておもしろいのは分かっていたので、発売日に購入。
    まったくもって期待通りと言うか期待以上。

    ① まず、いわゆる「経済学部」レベルでのマクロ経済学について、「ひらたくいうと何なのか」を知りたい、という人。端的に言ってこの本最強。
    詳しいひとの「記述が正確じゃないあーだこーだ」はとりあえず気にしなくて大丈夫。

    ② 経済学部とか公務員試験の準備とかで中谷巌の「マクロ経済学入門」は読んだよ、クラスの人。読後、「自分の言葉で整理できた」感が半端ないはず。

    ③ マクロ経済のMicro Foundation、ゲーム理論がカバーされてないぞ、これでは「現代経済学」とは言えない、みたいなことを言えちゃう人。→「経済数学の直観的方法」、併せて必読。

    ④ PhDクラスの人。私にはわからないが、「厳密性」を追求するならアンチ含めていろいろ指摘はあるかもしれない。が、著者が目指している本書のゴールはそこではないだろうとは思う。

    さて、その上で、私的には、本書の白眉は「ブロックチェーン」を貨幣数量説、金本位制から説き起こしている章と、資本主義を「縮退」なる理系概念を便宜的に援用して語る思考実験の終章。こういうことを語ってくれるひとはそうはいないと思う。

    世の変革期には「理数系武士団」とでもいうべき人々(蘭学の素養のある幕末期の武士のような、つまり理系のバックグラウンドはありつつ経済学にアレルギーのない人)が必要、と。
    私は文系だが、本当にそういう一団を待望したい。
    そのために、とくに理系の方々にぜひ読んで頂きたい本。

  •  著者の「経済数学の直観的方法(マクロ経済学編・確率統計編)」には本当に驚かされた。単に経済学の主要理論が物理数学をアナロジカルに用いることで記述できるということを示したにとどまらない。そもそも経済学という学問そのものが、西欧自然科学の豊潤なアチーブメントにより醸成された「直観」をもとに構成されているということ、さらに現代経済学の主流派の隠れた意図がその「直観」を通して見ることで極めてクリアになることを、門外漢にもわかりやすく喝破したのである。西欧的・経済学的パラダイムにどっぷり浸かっていては絶対に見出すことのできない斬新な視座であったと思う。

     「はじめに」等によればそもそも本書は、経済学に昏いために社会的に「使われる」立場に置かれがちな科学技術の専門家に対し、国を動かす側の論理である「経済学」を啓蒙する意味で、あくまでもで内輪向けに書かれたものであったらしい。それが読者の強い支持を得てまとめられたのが本書のようだが、僕はむしろ、(本職の専門家などは別として)経済に明るいことを自ら恃みにする文系人や実務家こそ読むべきではないかと思う。よく言われるように、経済学というのは他の自然科学に比べ、どこかいい加減で非科学的な柔軟性を多分に有している。経済通の間では余りに自明のこととして共有されているものの中に、どうしても辻褄が合わないのではないか、論理的にはどう考えてもトートロジーや循環論を含んでいるとしか思えないものがままあるが、現実の経済はそのような矛盾を曖昧にぼかしたまま「回っている」のだ。しかし傍目八目ではないが、当事者がかえって気づかない矛盾に、著者のような他分野の専門家からの指摘を受けて初めて気がつくということはよくあることで、そこを改めて熟慮してみることには多大な意義があるように思う。矛盾を含みつつも機能しているシステムには必ず歪みが蓄積しているもので、そこで将来予想される調整に伴うムーヴメントを予測する上でも、またその歪みそのものを修正する方策を探る上でも、著者の物理・数学的な知に基づくアナロジーは極めて有用な補助線となるはずだ。

     本書のテーマは「資本主義はなぜこのようなものなのか」ということに尽きる。なぜGDPの2割もの投資が必要なのか。なぜ利子は正当化されるのか。なぜ貨幣価値は維持されているのか。そしてなぜ、経済はこれほどまでにイデオロギーに左右されるのか。本書では、こういった自明すぎて答えに窮するような疑問が、電子回路やエントロピー、天体運行などのパラダイムを用いたアナロジーにより問い直されていく。そこでは、物理や数学のような自然科学からはどうしても漏れ出てしまう経済学の非合理性、さらにはその非合理を飲みこんでなおも動きを止めない柔軟性や可塑性といったものが、剥き出しの本質として眼前に提示されることとなるのだ。

     第8章までの記述はどこかで既に扱われているトピックに関するものであり、視点こそ目新しくはあっても既視感は否めないが、本書の肝は第9章での著者の提言にある。現在の経済繁栄の原因が経済エコシステムのエントロピー増大過程から富という形でエネルギーを抽出してきたことにあり、その結果システムが「縮退」、すなわち少数種による寡占と多数種の衰退を起こしているとの警告だ。このような過程をもたらしたのは、近代以降の啓蒙主義が天体の二体問題における自動軌道修正を経済学に拡大適用し、人間の短期的願望(欲望)が大数としては長期的願望(理想)に一致するという過剰な楽観主義定着を促進したからだというのである。そして現状の回復も死滅にも至らない「コラプサー」への落ち込みを打開するには、前述の富の抽出過程の他に、エコシステムを破壊的に再構築する「もう一つの力」が必要だと説く。それがセルオートマトンのアナロジーと哲学者オルテガの引用で説明される「呼吸口」の力だという。人間は可能性を閉ざされても満たされ過ぎても精神的に死に至るのであり、「呼吸口」=想像力を媒介とした幸福の摂取により、エントロピックな縮退の進行を少しでも止めてカオスへの落ち込みを防ぐべきと説いている。

     ただ一方で、この縮退が不可逆的なもであること、また人々の短期的欲望を完全に抑制することが非現実的であることを認めるところが、著者の物理学者らしいリアリズムの顕現と言えるだろう。著者が期待する「もう一つの力」の効果の発揮には数学や物理に基づく真理に裏打ちされた「最高レベルの知性」による「大きな物語」の提示と共有が必要だとするが、それには現代政治に立ちはだかる大きな壁、すなわち反知性主義の克服が無論のこと必要になる。また現下のコロナウィルス禍をみる限り、外生的ショックは肥大化した残存種よりも寧ろ絶滅に際する希少種を駆逐する方向の推進力を持っているのではないかとも思える。しかし種々の困難はあろうが、著者の駆使するアナロジーの力による共感の醸成と知性の共有が、長期的には必ず人々の行動原理に変化を及ぼすものと信じたい。それが、非科学的な側面を持ちながらその巨大な慣性質量で命脈を保ってきた経済学と、科学的ではあっても必ずしも人々にそのエッセンスが受容されていない自然科学が、今日まで共存している理由なのではないだろうか。

  • 【一読しての感想】
     入門書の力作。門外漢ならではの視点があり、うまいこと諸分野のエッセンスを抽出しようとしている。ついでに小室直樹の入門書的な思い切ったワリキリを久しぶりに味わえる。つまり「試験予備校のカリスマ講師による○○学の授業を味わえ!」「これ一冊で最強だ!」的なノリ。
     あと参考文献が載ってないのは何故だろう(例えば仮想通貨についても、著者は徒手空拳で第8章を書いたわけじゃないはずでしょう)。
     全体の感想を書くには、ツッコミが沢山いるので、ブログの方にそのうち書くはず。

     わたくし的にもっとも気にかかるのは、著者は本書冒頭で「書店の経済のコーナーには、経済を概観できる入門本がない」(大意)と悲しんでいること。これは思い切った誇張。というかウソやん。あ、もちろん著者が小さな本屋にしか行かず&『儲かる株の本』しか見つけられず、という可能性ならありえる。
     これまでも良い入門書は本屋に並んでたよ!


    【めも】
    ・著作一覧。神格化PR文を拝読できる。
    http://book.motion.ne.jp/index.html

    ・装丁家コバヤシタケシ氏のサイトより、本書の紹介ページ。
    https://surface83.com/economics

    【版元サイトから書誌情報】
    製品名:現代経済学の直観的方法
    著者:長沼 伸一郎
    発売日:2020年04月09日
    価格 本体2,400円(税別)
    ISBN 978-4-06-519503-1
    判型 A5
    頁数 458
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000323019


    【簡易目次】
    第1章 資本主義はなぜ止まれないのか 015
    第2章 農業経済はなぜ敗退するのか 087
    第3章 インフレとデフレのメカニズム 115
    第4章 貿易はなぜ拡大するのか 143
    第5章 ケインズ経済学とは何だったのか 185
    第6章 貨幣はなぜ増殖するのか 225
    第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか 265
    第8章 仮想通貨とブロックチェーン 309
    第9章 資本主義経済の将来はどこへ向かうのか 371


    【詳細目次】
    はじめに [001-007]
    目次 [008-011]

    第1章 資本主義はなぜ止まれないのか 015

    1 資本主義の中枢部を解剖する 026
    止まれない資本主義
    資本主義の成長スピード
    軍事史と鉄道
    「経済社会の鉄道網」
    中世世界と貯蓄

    2 「経済社会の鉄道網」と資本主義の恐ろしく不安定なメカニズム 041
    貯蓄の持つ二つの意味
    金貨の循環がもし目で見えたら
    貯蓄で社会が貧しくなる
    パン屋の事業拡大
    いかに貯金は環流されるか
    常軌を逸したサイクル
    意外な一致
    政策当局の目から見ると
    マクロ経済学の最重要ポイント

    3 文明社会はいかにしてそれを選択してきたのか 066
    金利が容認されるに至った文化的背景品
    ウェーバーの伝えるカルヴィニズムの真実
    切断された相互扶助の糸
    資本主義の必要性の「3要素」
    反対側から見た光景=イスラム世界と金融
    現代イスラムの「無利子銀行」
    資本主義は最終的な勝者か
    要約 083

    第2章 農業経済はなぜ敗退するのか 087
    ペティ・クラークの法則
    徳川政権の経済問題め
    農業と機動性
    徳川政権のジレンマ
    現代の原料産出国の悲惨
    産油国の反撃
    商工業側の苦労
    需要拡大の歴史
    石炭文明から石油文明へ
    石油文明から半導体文明へ
    要約 113

    第3章 インフレとデフレのメカニズム 115
    ドイツの天文学的インフレ
    インフレ状態の図式化
    循環作用の中のインフレ
    サーキットのボトルネック
    フィリップス曲線
    インフレのメカニズムの整理
    「貨幣の中立性」という考え方
    インフレで誰が得をするか
    デフレはインフレより恐ろしい
    戦後日本のサバイバル戦略
    政府当局のインフレへの対応策
    要約 141

    第4章 貿易はなぜ拡大するのか 143
    1 貿易のメカニズム 144
    貿易を行う理由
    貿易の生み出す巨大な利益
    貿易の力学
    利益の取り分の国家への移行
    自由貿易体制の登場

    2 貿易の歴史 
    没落してしまった「商業民族」
    オランダの場合 繁栄を支えたバルト海の穀物輸送ルート
    英国の場合①――毛織物、毛織物、毛織物
    英国の場合②――自由貿易論の登場
    米国の場合――南北戦争の舞台裏
    日本の場合①――近代化の生命線だった「絹の道」
    第二次世界大戦とブロック経済への移行
    日本の場合②――重工業への移行
    「中世自由貿易圏」としてのイスラム世界
    グローバリゼーションの波と新興国の台頭
    世界経済全体の効率化か国内の安定か
    要約 

    第5章 ケインズ経済学とは何だったのか 185
    ファラオの名誉回復
    奇妙な石油ポンプ
    ケインズ的な経済観
    金貨と銀貨の経済効果
    乗数効果のメカニズム
    大恐慌下でのケインズの挑戦
    新旧学派の言い分
    中世には貯蓄の問題はどうだったのか
    ケインズ経済学の泣き所
    ケインズ政策の暴走と新古典派の台頭
    英国におけるケインズ経済学の特殊事情
    経済学の勝者を決める「同盟ゲーム」
    経済学の系譜
    要約 222

    第6章 貨幣はなぜ増殖するのか 225
    増殖してきた貨幣
    イングランドの紙幣とモンゴルの紙幣
    磁化される貨幣
    磁化はどこまで続くか
    増殖してしまった金細工師のお金
    現代の銀行での貨幣増殖
    貨幣はこのように増殖する
    増殖メカニズムの定量面
    「通貨供給量」の定義
    なぜ社会は貨幣の増殖を容認したのか
    金本位制度の弱点が
    貨幣の世界の「実と虚」の変遷
    仮想通貨は「虚」か「実」か
    要約 262

    第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか 265
    1 ドルから見た国際通貨 266
    国際経済に君臨するドル
    ドルの奇妙な変貌
    ジレンマに陥ったドル
    解決し難いジレンマ
    国際通貨の困難の根源
    ドル以外の選択肢なし ――「モンゴル型」への変貌
    円の基軸通貨への道は遠かった
    現代の経済世界で貨幣価値を保証する後ろ盾は何か

    2 過去の国際通貨はどうだったか 
    イスラム貨幣はどうだったか
    ポンドの場合
    英国以外の紙幣の進化
    金本位への奇妙な愛情
    一見魅力的な国際収支回復のメカニズム
    金本位制の意外な落とし穴
    現代世界では舞台から消えた「グレシャムの法則」
    要約 306


    第8章 仮想通貨とブロックチェーン 309
    電子の世界の金本位制
    どうやって電子の世界に「増えない量」を作り上げるか
    ブロックチェーンの「超大型機」と「中・小型機」
    中・小型機タイプのブロックチェーン
    台帳ファイルを細かく分けてタグをつける
    改竄をどうやって防ぐか
    「入力を1だけ変えると結果が大きく変わる」例
    「ハッシュ関数」とはどんなものか
    ブロックチェーン化という改良
    ブロックチェーン化で改竄は格段に難しくなる
    何冊の台帳を同時に改竄しなければならないか、
    ハッシュ関数の性質
    中・小型機タイプでは膨大な計算は必要ない
    超大型機タイプのブロックチェーンのシステム
    「ナンス」の組み込み方
    「マイナー」は何を動機に面倒なことをするのか
    ビットコインはマイナーが少しずつ流し込んできた
    ビットコインの「半減期」
    ビットコインと金本位制
    過去の議論との奇妙な共通性
    ビットコインが遭遇する金本位制と同じ壁
    ビットコインの歴史的存在意義
    他の仮想通貨について
    現時点での仮想通貨の構図
    要約 367

    第9章 資本主義経済の将来はどこへ向かうのか 371
    1 「縮退」という大問題 373
    「縮退」という繁栄が
    縮退のメカニズム
    メカニズムの本質
    劣化状態から抜けられない事例
    縮退の過程で金銭的な富が生まれる
    人間の長期的願望は短期的願望に縮退する
    縮退は放っておいても元へ戻らない
    誤った「多様化」はかえって縮退を加速する
    「ごみ」という概念自体が縮退によって生まれる
    世界はどう縮退して富を絞り出しているか
    実体経済と乖離する世界が
    変化した経済の常識

    2 われわれはどうしてこんなに大きな誤解をしてきたのか 399
    大きな勘違いを導いたもの
    天体力学が作り出した巨大な錯覚
    人間の短期的願望と縮退の行き着く果て
    政体循環論と縮退
    「コラプサー」と「縮退」の語源
    過去にローマで何が起こったか
    西欧地中海世界はどうコラプサーから回復したか
    中国の場合
    もう一つの力が存在しなければコラプサー化は止められない

    3 経済世界に縮退を止められる力は存在するか 
    オルテガのヒント
    その隠れた力の経済への意外な影響力
    現代の閉塞感の根源
    碁石をヒントにした基本原理
    資本主義社会の人間の精神状態はどう表現されるか
    ジョイントは基本的にまず上下方向に発生する
    呼吸口の数え方
    経済社会を動かすもう一つの力
    縮退を止めるための力学
    縮退を止めやすいパターン
    一国主義や地域主義の意味
    将来の経済学

    おわりに(二〇二〇年三月 長沼伸一郎) [449-452]
    索引 [453-455]

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00604337

    わかりやすくて、おもしろくて、そして深い。
    世界の状況が刻々と変わる現在、
    文系理系問わず、経済を知らずに世の中を知ることはできない。
    そんな時代に「経済をなんとなく避けてきた」読書人におすすめ。

    かつて『物理数学の直観的方法』で理系世界に一大センセーションを巻き起こした著者による、
    この一冊で資本主義の本質をガツっと直観的につかむ、
    どこにもなかった経済書。(出版社HPより)

  • 《資本主義を興した原動力は確かに金儲けの欲求であったかもしれないが、その金儲け自体が、実は金自体のためではなく想像を絶する教義を持つ信仰のためだったというのが、ウェーバーの学説の論旨なのである。》(p.69)

    《要するに日本の資本主義を駆動する精神とは「心配」であり、(…)極言すれば日本人は金儲けをしたくて必死に働くというより、いまの地位を失うのが心配だから必死に働くのである。》(p.74)

    《現代社会が資本主義をもはや手放せなくなっている理由は、ほぼ次の3点に要約できる。すなわち①軍事力維持の基盤としての資本主義(旧英国型)、②人々に未来の夢を与えるための資本主義(米国型)、③資本主義から身を守るための資本主義(日本型)の三つであり、これから何らかの新しい経済体制を設計しようと思った場合、必ずこの3点すべてについてクリアできることを何らかの形で保証できねばならない、ということである。》(p.84)

    《現在の半導体文明では、かつての石油文明の時代と比べると、消費に夢や物語を託すこと自体がかなり難しくなっているのであり、そのあたりが今後の資本主義経済の隠れた大きなネックであるように思われる。》(p.112)

    《どういうわけか米国人の金本位制度に対する郷愁というものはかなり根深いものがあるらしい。そしてその種の人々は政治思想について一つの共通した傾向を示すことがある。これは後の仮想通貨の章でも述べるが、彼らはだいたいにおいて厳格な直接民主主義の信奉者であり、経済的にはアダム・スミス流の自由放任主義、そして国際経済においては徹底した自由貿易主義者である。そしてその仕上げとして、通貨制度にぴては金本位制を好む傾向が強く、それが一種の三位一体をなしているのである。》(p.295)

    《「一般に希少性の高い状態から希少性の低い状態に移行する際にエネルギーが引き出される」》(p.380)

    《もし個体が細かい多様性を過剰に主張しはじめると、逆にグループや種としての特性が曖昧化・希薄化してかえってその多様性の力が弱まり、結果的に短期的願望の巨大な塊をベースに成り立つ単一勢力が勝利することで世界全体が画一化する、ということが起こるのであり、このパラドックスこそが多様性を巡る力学の基本なのである。》(p.389)

    《本来ならば世界のマネーはその外側の領域全体をくまなく隅々まで広く回るべきものなのだが、現在の世界経済ではその流れ全体がどんどん縮退し、狭い金融市場の内側だけで投機のために回るようになっている。》(p.395)

  • https://www.silkroadin.com/2020/05/blog-post_5.html

    現代経済の背景や仕組み、成長を続けなければならない資本主義社会の宿命と原則原理とこれから


    本書は、タイトルの通り現代経済学について書かれた本です。

    「現代経済について学ぶ」には過去の経済が辿った道筋を理解している必要があります。

    そして本書を見ると、外見上はやや厚め一冊の本のようだが、実はむしろ9冊分の本を極限までコンパクトにまとめて一冊の合本にした、オールインワン的な本だと思っていただいた方がよい。(引用、現代経済学の直観的方法、長沼伸一郎/講談社)

    つまり本書は、「現代経済」と「関連する過去の経済」の最重要部分を1章ごとに最小限までコンパクトにまとめた、9章から構成された1冊となっています。

    読み終えた後も手元に置いて読み返したい、完全保存版です。

    経済の成長拡大が思わしくない現代。

    わたしたちが出来ることのひとつは経済について知る、もっと理解を深める、再確認することです。

    本書を読むことは家にいながらでも手軽に出来て、経済の成長拡大を理解するきっかけとなります。

    わたしたちが「経済を理解してサポートする」ための第一歩を踏み出しましょう。

    現代経済学の直観的方法、長沼伸一郎/講談社


    是非ご覧ください。

  • 評価が大きく分かれそうな本。
    経済を物理などとのアナロジーで考える、というところが肝の本。イメージが頭のなかにできるので語りやすくなるのは確か。ただ、アナロジーは便利だけど重要なパラメーターを見過ごすなど危険もあると思う。その点は経済学者のかたの指摘を聞きたい。

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)卒業後、同大学理工学部大学院中退。1987年、自費出版『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社)の出版によって、理系世界に一躍名を知られる。その後も組織には属さず仲間と一緒に研究生活を送っている。
著書に『物理数学の直観的方法 普及版』『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(いずれもブルーバックス)、 『一般相対性理論の直観的方法』『無形化世界の力学と戦略』(いずれも通商産業研究社)など。



「2020年 『現代経済学の直観的方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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