ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065196106

作品紹介・あらすじ

もう「E<環境>S<社会>G<企業統治>」を知らずに仕事はできません!
ワシントンポスト、CNN、エコノミストほか世界注目の第一人者による、
不況期こそ重要なESG入門決定版。

世界の巨大投資家が気づいている史上最大の破綻リスクとは何か?
世界の勝ち組企業がやっていて日本企業がやっていない唯一のことは何か?
そして、新型コロナ不況をサバイブするESG思考とは?

2019年9月に開催された国連行動サミットでは、グレタ・トゥンベリの演説が注目を浴びた。欧米での積極的な反応にくらべ、日本国内では批判的な論調が強かった。しかし日本人に見えていない現実がある。世界の投資マネーはESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))に向かって怒濤の勢いで流れているのだ。その額はおよそ3000兆円!
製造業やIT系グローバル企業もぞくぞくとCO2削減目標を行動方針に掲げていることからわかるように、もはやESGとサステナビリティは世界の勝ち組企業の常識。これに対し、日本の取り組みは遅れが際立っている。
日本人が今ひとつ理解できていないESGの教科書として、ビジネスパーソン必携!

感想・レビュー・書評

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  • 「ESG」とは「Environment、Social、Governance」の頭文字。そして、環境や社会に配慮することで投資パフォーマンスを向上させる投資戦略を「ESG投資」という。世界最大の年金基金であるGPIFも「ESG投資」を行っている。
    グローバル企業はESGを考慮し、株主もESG志向の企業に投資し、世界はニュー資本主義に移行しているということを初めて知った。
    これからも世界の動向に目を向け、この長期トレンドをキャッチアップしたいと思った。今後、気候変動の進展が、新たな金融危機の火種になるかもしれない。

    世界で最も持続可能な企業100社
    世界水フォーラム

    p22
    たとえば、環境や社会を考慮することで投資にもパフォーマンスを向上させる投資戦略「ESG(環境Environment、社会Social、ガバナンスGovernanceの頭文字)投資」で運用されている資産は年々増え、2018年の時点では33.4%と世界全体の資産の3分の1がESG投資で運用されるまでになっている。

    p32
    1990年代まで、世界各国からのアフリカ諸国へのODA総額は200億ドルほどだったのだが、企業による外国直接投資(FDI)は徐々に伸びたとはいえ、それを上回ることはなかった。しかしついに2001年、企業FDIが政府によるODAを上回る。そしてそのままFDIは急成長を遂げ、2007年には500億ドルを突破した。アフリカの経済成長を支える担い手も、先進国政府の援助から企業の投資へと移っていった。

    p48
    資本主義の中でも、特に注目されるのが「アングロサクソン型資本主義」と呼ばれるものだ。「アングロサクソン型資産主義」をデジタル大辞泉で引くと、次のように書いてある。
    米国・英国で典型的にみられる資本主義の形態。企業は金融市場から直接資金を調達し、株主利益の最大化を優先する。業績が悪化した場合は、株主価値を維持するために積極的に人員を削減するため、雇用は不安定になる。賃金制度では成果主義をとり、自己責任を重視。政治的には小さな政府を志向する。

    p49
    新興国の中でも経済成長が著しいシンガポール、香港、インド、スリランカ、南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、エジプトは、どこもイギリスの旧植民地だった国だ。これにアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというイギリスを出自とする先進国を加えると、経済大国はおおむねアングロサクソン型ということになる。中国でもメキシコも、経済エリートたちは、こぞって米英のビジネススクールに通い、アングロサクソン型の経営を学ぶ。新興国の学生にとって、外資系金融機関に就職するのは一つの憧れだ。最近ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やスタートアップ企業への人気が高まっているが、彼らも資本主義を積極的に受容し、成長していこうとしている。

    p50
    2020年の時点で、世界の資産の合計は279兆ドル(約3京円)。これには、株式だけでなく、預貯金、土地、債券なども含まれている。
    金融関係者の間で「機関投資家」と言えば、表の中の「年金基金」と「保険会社」を指すのは常識だ。この2つで資産全体の33%を構成する。年金基金も保険会社も個人から老後の資産を預かる形で資産を運用している。そのため資産の大元の出所は個人と言える。

    p51
    ただし、33%を構成する資産100万ドル(約1.1億円)以上の富裕層は別格の存在で、プライベートバンクが特別待遇の資産運用サービスを提供していることが多い。富裕層投資家のことを、金融機関では「ファミリーオフィス」と呼ぶ。残りの30%がいわゆる普通の個人投資家で、「リテール投資家」と呼ばれることが多い。

    銀行は融資以外の資産運用は債券(大半は国債)が中心になっている。

    p52
    日本の大手の運用会社には、三菱UFJ信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、野村アセットマネジメントなどがある。一方、世界の上位は、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、フィデリティ・インベストメンツと、上位4位はすべて米系が占める。あまりなじみのない人も多いかもしれないが、彼らがいわゆるウォールストリートの担い手たちで、「外国人投資家」と呼ばれ、日本の上場企業の株式も多数保有している。
    運用会社が投資家から預かっている資産運用額は桁外れで、首位のブラックロックは約7兆ドル(約770兆円)、2位のバンガードは約5兆ドル(550兆円)、3位のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズでも約2.5兆ドル(275兆円)ある。米系には世界中の投資家から資産が集まる上に、海外展開も積極的にしているので、運用資産規模が大きくなる。もちろん3社とも日本に支店がある。それに比べ、日本最大手の三井住友トラスト・アセットマネジメントは約8000ドル(約88兆円)で世界28位。日本は先進国ながら運用業界の規模は大きくない。また、機関投資家と言う場合には、年金基金と保険会社に加え、運用会社を含める場合もある。


    p59
    今でも信者から寄付が集まるキリスト教は、集まった資産を財団という形にして株式や債券に投資し運用している。

    p60
    1980年代に、資産運用業界の本場であるアメリカでは、受託者責任に関する大きな規制改革が実施される。それまで企業年金は、投資先企業の経営に不満があるのであれば、株を売って株主をやめることで不満を解消すべしという「ウォールストリート・ルール」が適用されており、株主として議決権を行使して経営に介入することは禁止されていた。しかし、運用資産額が大きくなり、長期分散投資が必要になると、株を売却して不満を解消することが難しくなり、株主として経営に介入して不満を解消する必要が出てくる。そして1988年、エリサ法を所管する労働省が「加入者の利益のために議決権を行使することは資産運用行為に含まれる」という画期的な見解を発表し、議決権行使を解禁する。

    p99
    ESG投資とは、投資先企業のESGの状態を考慮した投資手法だ。

    投資家は元来、投資先企業を分析する際に、企業の売上成長率、利益成長率、市場全体の伸び率、マーケットシェア、財務の健全性といったデータを集め、さらに株価収益率(PER)、自己資本利益比率(ROE)等の専門的な指標ち着目し、投資先企業の株価の見通しを弾き出してきた。

    p101
    まずアメリカの上場企業の中で時価総額の大きい500社を集めた「S&P500」の企業を母集団とし、そこからアルコール、たばこ、ギャンブル、軍事、原子力発電に関連する企業や、アパルトヘイト問題のあった南アフリカで事業をしている企業
    除外すると、250社が残る。

    p108
    ヘッジファンドは人工知能(AI)を駆使してコンマ数秒の利ザヤを狙った売買を得意としている。(中略)ヘッジファンドによる世界の運用額は、たしかに年々増えており、今では3.2兆ドル(約350兆円)まで来ている。

    p127
    現代ポートフォリオ理論とは、投資対象企業の各々の過去の投資リターンと株価の変動の変動率(投資リスクという)を分析すれば、自ずと最適な投資先企業ごとの投資配分(投資ポートフォリオという)が構築できるという数字を使った投資理論だ。

    p129
    ESG投資家は、過去の財務データや業績予想だけで投資判断をするより、ESGデータも考慮したほうが企業の成長性を見通せると考えた人たちだ。

    p132
    ROEとは、利益を自己資本で割った指標のことで、株主から投資された資本でどれだけ効率的に利益を出せているかを測るものだ。「稼ぐ力」とも言われている。ROEを上げることとESGを重視することは根本的には矛盾しない。ニュー資本主義でもESGを重視し長期的なトレンドに対応できれば、売上と利益がともに伸び、ROEは上がっていくと考えられている。

    p146
    座礁資産とは、将来経済利用できなくなる化石燃料(石炭・石油・ガス)を指す。人間社会は発電や自動車燃料で化石燃料に依存した生活を送っているため、化石燃料は投資家や銀行にとって非常に人気のある投融資先だった。しかし、気候変動を抑えるために二酸化炭素排出量が規制されると、経済資源として活用できなくなる。すると、資産価値のなくなった化石燃料資源を保有している資産採掘会社や、化石燃料に依存している電力会社の利益が今後、大きく減るかもしれない。HSBCなどの金融機関はこのように考えるようになっていく。とりわけリスクとみなされたのは、化石燃料の中で最も二酸化炭素排出量の大きい石炭だった。

    p155
    気候変動の進展は機関投資家や金融機関の投融資に急激に影響を与え、新たな金融危機の火種になるかもしれないため、金融危機を未然に防ぐためには新たな政策が必要となる。そこで金融当局の国際機関である金融安定理事会(FSB)に対し、金融機関が気候変動に対処すべき方向性を定めるよう要請した。リスク対策を十分におこなうためには情報の透明化が必要だと考えたFSBは、この年の12月4日に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)という活動を発足させた。機関投資家、金融機関、企業のそれぞれが気候変動から受ける事業リスクや事業機会を十分に分析し、開示するための枠組みを作っていくことになった。

    p171
    実はわずか数年前まで、GPIFはどのように運用リターンをを上げて年金資産を増やしていけるかに腐心していた。日本の公的年金は2001年まで財政投融資という形で政府の公共事業に投資され、運用されていた。しかし、ずさんな公共事業が財政投融資で支えられていることが社会問題となり、1997年に第2次橋本内閣が進めた特殊法人改革で2001年に年金福祉事業団が廃止。かわりに財政投融資ではなく資産運用をする方針に転換するため2006年に設置されたのがGPIFだ。誕生してからわずか十数年しか経っていない。
    発足当初のGPIFは、「株式投資は危ない」という世論の下、資産運用の70%以上を債券が占めた。しかもその大半が日本国債への投資という状況だった。

    p170
    日本の国民年金と厚生年金の合計約170兆円(2019年末現在)の資産運用をすべて担い、世界最大の年金基金として君臨する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

    p172
    その後、GPIFはESG投資のあり方を模索し、ESGインデックスの公募を実施。国内外のインデックス開発会社や運用会社など14社から27本のインデックスの応募を集める。

    p174
    採用された3本のインデックスでのうんようがくは、1年半後には約1.5兆円になっており、徐々にESGインデックスでの運用額を増やしていたことがわかる。しかし、GPIFのESG投資は、これにとどまらなかった。
    GPIFは170兆円という巨大な資産を運用しているため、非常に幅広い企業の株を持っている。その状況でリターンをさらに増やすためには、株価が上がりそうな企業の株を探すだけでなく、全企業の株価を上げ、日本経済を活性化していけばいい。ニュー資本主義の時代に、海外機関投資家もESGスコアに注目して投資しているのであれば、日本企業のESGスコアを全体的に引き上げれば、株価は上がり、投資リターンは伸ばせる。

    p175
    しかしGPIFは、法律によって、自分自身で投資先企業を決定することも、自分自身で投資先企業と対話することも禁止されている。この法律を作ったときの政府は、GPIFは巨大なので、大株主として市場に介入できてしまうことを恐れていた。そのため、GPIFは自分で株や債券を選ぶことはできず、投資手法ごとに運用会社を公募して選定し、すべての資産を運用会社経由で運用するという方法を採っている。

    p177
    それまでは、PRIに署名した機関には、毎年進捗報告を提出する義務だけが課せられていたのだが、2017年に新ルールを導入し、署名機関は運用資産の半分以上でESG投資をすることも義務付けたのだ。ここでいうESG投資には、ESGインデックスなどを使って投資先の選定時にESGを考慮している投資運用だけでなく、投資した後に投資先企業のESGスコアを上げるように求めていくタイプの「エンゲージメント・議決権行使」型も含まれる。

    p178
    投資運用の世界では、運用会社自身が投資家から預かった資金や株、債券などを運用会社自身で保有してはいけないという「信託分離」というルールが、ほぼどの国でも導入されている。理由は、詐欺や不正を防止するためだ。そのため運用会社は自分では資産を預からずに、信託銀行に管理を任せて運用の指図だけをしている。

    p191
    20年や30年の戦略や目標を考える際には、現在の事業モデルや市場シェア、顧客属性、売れ筋の製品を出発点にする必要は必ずしもない。それらが現在と同じ状況にある保証など、どこにもないからだ。
    そうではなく、長期戦略や長期目標を考える際は、社内の状況をいったん忘れ、思いきって環境変化や人口動態、高齢化やAIなど、長期的な外的要因の変化から考えることに振り切ってしまったほうが、議論の取っ掛かりが見えてくる。そうして一度、実現したいゴールを描いてから、そこに近づくための道筋を、戦略と計画の双方で設計していくほうが効率的だ。
    このような外的要因をイメージすることが難しいのであれば、社内だけでなく社外の知見を活用したほうがよいだろう。

    p193
    大企業と取引をしようとすると、従来からの品質、納期、価格に加え、環境、プライバシー、データセキュリティ、労働環境、人権対応等に関する基準を要求されることも今後増えていく。このときに面倒くさがらず、きちんと評価される存在になれれば、他の企業との差別化をしやすくなることも覚えておいていただきたい。

    p195
    サステナビリティ経営やESG投資の分野では、企業や機関投資家が自主的にNGOや国際機関と連携し、課題設定や課題解決の方向性の提示、課題解決の進捗報告に関する議論をリードすることが多い。EUでは現在、政府の役割は、先頭に立って企業を導くことから、企業に市場メカニズムを強化するための情報開示ルールの整備や税制の設計といった競争環境の整備と、出遅れた企業を支援する助成・補助や先進事例と紹介等といった下支えに移ってきている。

  • ・欧米でこれだけESG投資と経済成長について議論されているにも関わらず、なぜ日本の企業や投資家はその潮流に乗れていないのか疑問に思った。英語ができないことや、右へ倣えの意識が強すぎることが原因なのだろうか...

    ・恥ずかしながら私も、CSRは株主に社会貢献活動をしているアピールをするためのものだと思っていた。しかし、この本を読むことで、適切なCSRは企業成長につながること、ESG投資は株主の利益につながること、がちゃんと理解できた。多くの人に勧めたい一冊。

    ・無知ほど怖いものはないと感じた。読書をすること、英語を学び海外の情報に触れること、を心がけたい。 

    ・日本で最初にESGインデックスを採用した、当時GPIFの水野さんは凄い。批判覚悟で新しいことを最初に取り入れられる人は本当に凄い。

    ・最近日本でも、「クリーンエネルギーへの転換」が叫ばれているが、これはただの流行なのか、それとも環境問題へのアプローチが経済成長につながることを理解した結果なのか、気になった。

    ・政府が産業界の声を集約し、政府が国際会議で交渉するといった「二層政治」が崩壊し、政府の存在がどんどん小さくなっていることも気になった。大企業の力がどんどん強くなることに問題はないのか、グローバル化ってこういうことなのか。関連書をもっと読みたいと思った。

  • ESG投資が生まれた背景が、とても細かく書かれているので理解しやすいです。日本と欧米で環境経営に対して考え方がずれていたことが今の差になってしまったことがわかりました。おそらく日本の企業経営や国の政策に関わる人などがしっかり勉強してESG投資やサステナビリティを理解していればもっと日本も欧米に追いついていたのではと思いました。やっぱり英語とか読書が大切だと思いました。

  • ESGやSDGsの本質が分かる超良著。世界と日本のずれを歴史から紐解きながら、現在の世界的トレンドやその根本にある考え方を分かりやすく解説している。

  • 世の中がESGを意識した活動に代わってきた歴史が、環境破壊を考えるようになった1980年代以降から、SDGsを掲げる現在までに渡って詳しく書かれている、またそこに、日本と外国での差、意識の遅れ、取り組みの遅れがどう出てきているのかがわかる本。

    メモ
    ニュー資本主義とは、環境・社会への影響を考慮すると利益が増える、と考える。この考え方がここ10年でグローバル企業や機関投資家に浸透してきている。
    リーマンショックを機に、欧米の機関投資家やグローバル企業は、サステナビリティ経営やESG投資に取り組むようになっていった。
    ESGとは何かを理解した上で、ニュー資本主義の時代に必要なマインドは、長期思考を持つこと、グローバル企業や国際機関など、視野を広げて世界の動き、情報を捉えること、が特に重要と感じた。
    世の中の変化に対して、長期思考を持ち、将来の事業成長や価値創造にとって重要なことは何かを考え、適応して実行していく力が必要とされる。

  • 東2法経図・6F開架:519.1A/F87e//K

  • 現在のESGムーブメントに至るまで経緯を中心に書かれており、日本がいかに出遅れているか、顔色を伺い無難にやっていこうとする姿勢では今後通用しないことが分かります。

    具体的な事例が挙げられているのですが、自分には馴染みのない団体であったりワードであったりで正直頭に入って来なかったです。

    詳細な説明が多い分、全体像が掴みにくいのが残念でした。

    これまでの話が9割なので、これから何をすべきかと知りたい方、時間のない方は最後の章だけ読むことをおすすめします。

  • とても良い。TCFDに関わるようになって手に取ったけど、これまでの世界の歩みや日本の対応が手に取るようにわかるし、基礎知識として役にたっているように思う。

    アナン事務総長のころの国連の動き(20世紀末)や、その後(21世紀初頭)の国内での経産省と環境省の対応や「CSR」の潮流、あるいは欧米での(WRIなどの)NGOの動き、といったあたりがきっかけとして大事そう。
    国連では2006年にできていたのに国内では10年以上知られていなかったPRI(国連責任投資原則)なども象徴的だし、リーマンショックが与えた影響の違い(日本ではCSRが暗黒の時代に突入した一方、欧米ではむしろサステイナビリティ経営が勃興し、リスクの洗い出し・対応や、社会の信頼回復が急務と捉えられた)も印象深い。
    また、CSR報告書の内容(項目)についても、GRIのガイドラインでは重要な項目に絞って報告すればよいとされているのに日本企業は網羅的な対応をするという愚直さも、誰かが指摘していたとおりだ。

    本書が示す四つの象限による、「オールド/脱/ニュー 資本主義」という捉え方は、世界の動きを理解するのに確かに有用だ。
    欧米が「ニュー」に移行するなかで日本がどこか「脱」にいき気味なことや、そんななかでもGPIFの水野氏らの動きが投じた一石の意義もよく理解できる。
    また、リーマン後と同様、今回のコロナをうけて欧米企業ではむしろサステイナブル(気候変動への適応含む)を意識しているがその背景をやっと理解できた気がする。
    学んだ視座を、TCFD関係でもいかしていきたい。

  • ESGの重要性が叫ばれて久しいが、その内容や背景を理解したく本書を手に取ったが、ESGを誤解していた自分に気付いた。企業の社会的責任あるいは倫理的観点から、環境、社会、コーポレートガバナンス(ESG)を遵守するものと認識していたが、本書を通して、ESGはグローバルで企業が守るべき重要な枠組みとして理解されていることを知った。
    リーマンショックを経て、短期的な業績に焦点を当てるのではなく、長期的視点でリスク要因を洗い出し対応することが企業経営に求められるようになった。つまり、短期的視点で利益を追求するような企業経営では、社会・環境・コーポレートガバナンスを度外視した企業活動が正当化されていまい、長期的なリスクが顕在化する。例えば、四半期決算の利益向上を目的にして、海外生産拠点で児童労働をして人件費削減をした場合、短期的には減価を下げ利益を上げることができるが、長期的には現地労働者によるボイコットで生産ラインが停止したり、国際NGOが児童労働を猛烈に批判し、株価が急落するだろう。中でも、気候変動は最大の長期的リスクの1つで、グローバル展開をする企業にとっては、その生産地から長期的かつ安定的に資源調達が可能なのかは、サプライチェーンを管理する上で非常に重要だ。
    このように、欧米ではESGは企業の長期的成長を支えるための重要なリスク管理として捉えられており、環境・社会への配慮と利益は両立するものだという共通認識がある。
    一方、日本の多くの企業では、ESGはボランティアら倫理的取り組みとして捉えられており、ESG推進が長期的な成長要因になると理解されていない。そればかりか、ESGへの配慮と企業の成長は対立すると認識されている。
    ESGに対する捉え方の違いを学ぶ好例は、ファーストリテイリングのウイグルからの綿花調達の問題だろう。ナイキを初めとする欧米メーカーは、中国政府のウイグル自治区に対する監理を批判し、ウイグル自治区からの綿花は調達しないと公言した。これは、ESGの思考の枠組みで考えたとき、ウイグル自治区で不当な労働環境にある労働者からの綿花を調達することは、長期的にはサプライチェーンが維持できないと考えたからだろう。一方、日本の最大手アパレルメーカーであるファーストリテイリングは、中国のウイグル自治区への支配に対して明言を避けている。もちろんファーストリテイリングも中国の振る舞いが倫理的に肯定できないと分かっているが、重要顧客である中国を刺激できないのだろう。この意思決定の背後にあるのが、ファーストリテイリングとナイキのESGに対する考え方なのではないかと、わたしは思う。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00557267

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著者プロフィール

株式会社ニューラルCEO

「2022年 『ネイチャー資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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