あめつちのうた

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065196878

作品紹介・あらすじ

絶賛の声、続々!   

「この物語の中には、紛れもない野球と人間がいる。野球と人間だけが生み出せるドラマが存在する。読み進むに従い、未知の世界が広がっていく。どこにもなかった野球小説が誕生したのだ。」
【あさのあつこ】

「2017年、大雨の甲子園で、阪神園芸の奇跡のような仕事と球史に残る試合を観た。私にとって知りたいことが全部詰まった一冊だった。若者たちの挫折と夢、反感からの友情。繊細で温かいつながりがすばらしい。」
【佐藤多佳子】

「人はみな、何かのプロなのだ。数々のプロを生んだグラウンドを育み守るのも、またプロだ。グラウンド整備は人生に驚くほど似ていて、だからきっとあの聖地はこんなにも心を熱くさせるのだ。」
【須賀しのぶ】

「学級文庫に置きたい。そして、読み終わった子どもたちと、わやわや感想を話し合いたい!」
【はやみねかおる】

「私たちの普段の仕事がリアルに描かれていて、あっという間に読み終えた。この本を読んで、スポーツを支える裏方たちの喜びを、苦労を、努力を知ってもらえたらうれしい。」
【阪神園芸株式会社 スポーツ施設本部 甲子園施設部長 金沢健児】

土と向き合う。雨を信じる。
そうして、日本最高のグラウンドが生まれる。
甲子園の神整備、「阪神園芸」が小説に!

絶望的な運動神経の持ち主・雨宮大地は、自分とは正反対の弟や頑なな父への鬱屈を抱え、甲子園のグラウンド整備を請け負う阪神園芸へと入社する。ところが、持ち前のセンスのなさから、仕事は失敗続き。広いグラウンドのなかで、たったひとりうろたえる自分は、本当に一人前のグラウンドキーパーになれるのか?同性愛者であることを周囲に隠す親友・一志や、重い病気を患いながら歌手を目指すビールの売り子・真夏、ケガでプロへの道を断念した、同僚の長谷。大地は同じく「選べなかった」運命に思い悩む仲間たちと関わり合いながら、自らの弱い心を掘り起こすように土へ向き合っていく。

タイガースファン、高校野球ファンのみならず、
すべてのスポーツファンに捧げる、唯一無二のグラウンド整備お仕事小説! 
今日も彼らは、地味に地道に、あのグラウンドを守り続けている。
 

感想・レビュー・書評

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  • いやー、面白かった。
    雨降って、地固まるの話。

    甲子園球場が舞台、グラウンド整備を請け負う阪神園芸のお仕事小説。

    絶望的に運動神経がないため、野球をプレーすることを早々に諦め、裏方になる道を選んだ雨宮大地。家族への鬱屈した思いや友達のセクシュアリティの問題に悩みながらも、阪神園芸に入社し社会人生活をスタートさせる。
    怪我で野球を諦めた元甲子園優勝投手の同僚の長谷に意地悪され、ビールの売り子で歌手を目指す真夏に恋心を抱きつつ、持ち前の真面目さと明るさでグラウンドキーパーとして成長していく。
    その姿がなんとも眩しい。

    高校野球ファンは読むべき青春小説。
    自分の中では、勝手に2021本屋大賞のノミネート候補作。

    来年の夏は甲子園に野球を見に行きたいな。
    高校野球の独特の雰囲気を味わいながら、阪神園芸のグラウンド整備する姿をしっかり楽しみたい。
    晴れれば芸術的な水撒きが見られるし、大雨ならば、もしかしたらグラウンドを甦らせる奇跡の技を拝むことができるかもしれない。
    尊い仕事をまた一つ教えていただきました。

  • 高校野球と言えば甲子園球場。
    高校球児が憧れる華やかな舞台裏で、地道にコツコツと選手のことを一番に考えてグランドを整備するプロ集団・阪神園芸。
    トンボがけに三年、散水に三年、すべての仕事をマスターするのに十年かかる、という。
    一人前になるまでに相当な修行が必要な職業で驚いた。
    ただグランドの土を均せばいいのではなく、そこには独自の理論と緻密な計算がなされていた。
    今までテレビでグランド整備をされている姿を何気なく見ていたけれど、こんなにも神経の使う大変な仕事だとは初めて知った。
    常に湿度や気温、日照、風向きに気を配り、土や芝生の管理から校旗の掲揚等、選手や観客のために最高の舞台を整える黒子集団。
    選手に寄り添う姿勢に好感を持った。

    新米グランドキーパーの大地。
    慣れない仕事に四苦八苦し何度も失敗を繰り返しながらも、仕事に誇りを持ち少しずつ成長していく。
    大地の名前の由来「雨降って、地固まる」の話が良かった。

  • 高校球児の憧れの甲子園、我が阪神タイガース球団のホームグラウンド甲子園のグランド管理を担当している阪神園芸に就職した雨宮大地の成長物語

    甲子園には何度も訪れたことがあり、阪神園芸さんの活躍ぶりは、内野席から拝見しているが、あのグランドの状態をどこも均一に一定に保つために努力されていることが、小説を通して表に出たことは、労をねぎらう意味でも良かったと思う

    驚きの連続だった
    毎試合前に耕運機のような車両で数センチ土を掘り起こし、その後、整備カーバンカーで均し、コートローラーで仕上げる

    シーズンオフの1月には25センチの深さで掘り起こし、あのグランドが畑のような状態になるそうな
    いわゆる天地返し、土の下部の「不透水層」の部分を掘り返し、水はけの良い柔らかく乾きにくい土にするそうだ

    夏芝や冬芝を混ぜて植えるとか

    しかし、もちろんこの本は阪神園芸さんの仕事マニュアルではない

    元高校球児だった父とその父親の遺伝子をそっくり受け継いだ弟との狭間で、自分の価値を見出せず卑屈になっていた大地が仕事や新しく知り合った仲間との交流を通して、成長していく
    生まれてはじめて父と向かい合い、今までの自分の思いを吐露する場面は、親子なのにあまりにも食い違っていた思いが明らかになり悲しくなった

    確かに人間の心の奥底にも「不透水層」はあると思う
    頑なになっていて、素直に人の言葉が聞き入れられなかったり、いくら友達でも思いを打ち明けられない部分は、誰にだってある

    「心の天地返し」と表現されていた
    心の天地返しをして、自分の思いや感情を吐露できたら、いいかなとも思うが、物語みたいに簡単ではないだろう

  • "阪神園芸さん"
    野球好きなら多くの人が知っている呼び名。甲子園球場で行われる試合では、アナウンサーや解説者たちがリスペクトをこめてたびたびそのように紹介する。

    みんながそうやって阪神園芸の仕事ぶりを話すので、新たな野球ファンたちも無意識に"阪神園芸さん"を尊敬する。裏方でありながら、テレビ画面を通してこれほど多くの人から仕事をリスペクトされる園芸会社はなかなかないと思う。

    私もイチ野球ファンとして、"阪神園芸さん"はすごいと知っていたけれど、甲子園球場の土や芝が、実際どんな作業によって素晴らしく維持されているのか、何がそんなに他の球場と違うのかなど、詳しいことはほとんど知らなかった。

    この本は、阪神園芸に入社しグラウンドキーパーになった青年のお話。もちろんグラウンド整備の話もしっかり書かれている。

    阪神園芸の方々は、グラウンドの芝や土を1年かけて育てている。私は趣味で畑をやっているが、畑の作物の美味しさを決めるのは土。畑での作業と全く同じように、自然と向き合い、天気を見て、チームプレーであの広いグラウンドの"土"を耕し、育て続けている。その奥深さと作業の大変さは、予想を超えるものだった。

    そして、主人公の青年や同僚、家族など、野球に対する何らかの強い思いを持った人たちが作るストーリーもとても面白かった。青年たちの成長と共に、自分自身も前向きに励まされていくような気持ちになった。

    甲子園球場の土は、その上でプレーする選手たちをまさに育てている、最高の土なのだと改めて思った。

    とても分厚い本だったけれど、あっという間に読み終えてしまった。甲子園球場に関する知識も、さわやかな読後感も得られる良い本だった。野球ファンでなくてもじゅうぶんに楽しめると思う。

    余談ではあるが、この本を読んでから、以前なんとなく思っていた、甲子園球場に屋根をつけたら良いのになどという考えは全く無くなった。
       

  • 高校時代にわだかまりを持ったまま卒業してしまった若者たちの青春小説。東京から離れて阪神園芸に就職した「大地」が関西で揉まれて独り立ちしていく姿を描いてみせる。通勤電車で読んでいて、思わず涙ぐんでしまう場面もあった。
    若い人たちはもちろん、昔若かった人たちも共感できる部分が多いのではないか。
    久しぶりに良い作家に巡り合えた!

  • あぁ、なんなんだこの完全無欠の小説は!
    アタクシの中の全方位向けおススメ本に新しく加えますよ!!

    野球に詳しくなくても、甲子園に行ったことがなくても、スポーツが苦手でも、あるいは今まで働いたことがなくても、学校に行ってなくても、私は私のプロだ、そしてあなたはあなたのプロだ。生きている限り誰もが人間のプロだ!

    中高大とマイナーなスポーツに励んでいた身としてはいつも高校野球というものの巨大さや特別さにひがみをもっていた。甲子園の放送もよほど見るものがない時以外は観ることもない、知り合いの学校が出ていなければ新聞で結果を見ることもない。
    だから阪神園芸という会社のことも初めて知った。彼らの仕事が、「甲子園」にとってどれだけ大切なものなのかなんて、本当にかけらも知らなかった。
    いや、驚いた。すごいな、阪神園芸。試合が終わった後に単にグランドを整備するだけじゃなかったんだ。
    ネットにたくさんの動画がアップされているのも驚いた。こんなにも人気者だったのか阪神園芸。
    見ていて飽きない彼らの動き。無駄のないその仕事ぶり。まさに職人。
    世の中には、誰かのために誰かが輝くために一生懸命働いている人がたくさんいるんだな。
    日の目を見なくても、目立たなくても、うまくいって当たり前で失敗した時には取り返しのつかないことになるとしても、それでも誰かのために、明日の、明後日の、ひと月後の、誰かのために、真剣に仕事に向き合う人たち。彼らのすべてがカッコいい。

    これは、青春とスポーツとお仕事と家族とセクシャリティと、そして、あきれるほどのすがすがしさが詰まっている。そう、つまり、完全無欠の小説なのだ!

  • 自己変革したい気持ちに背中を押してくれる名作。額に飾って置きたいほどの金言が続々出てくる。

  • 野球を愛する人にぜひ読んでほしい。
    甲子園という特別な場所での、特別な試合を陰でサポートしてる阪神園芸。
    いろんなことに悩みながら、自分の進むべき道を見つけて突き進む若者たちの一生懸命さがとても眩しくて爽やかで。
    毎日をただ過ごしてる私も、なにか頑張る元気をもらえた気がします。

  • 2020/08/09 044

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。会社員となるが、その後退職し現在はアルバイト生活。2012年『白球アフロ』(受賞時タイトル「白球と爆弾」より改題)で、第7回小説現代新人賞奨励賞を受賞。選考委員の伊集院静氏、角田光代氏から激賞された同作は2013年に刊行され話題を呼んだ。他の著作に『野球部ひとり』『つよく結べ、ポニーテール』『僕の母がルーズソックスを』などがある。元高校野球児で、ポジションはセカンド。2018年『風が吹いたり、花が散ったり』で島清恋愛文学賞を受賞した。

「2020年 『あめつちのうた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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