隣人X

  • 講談社 (2020年8月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (218ページ) / ISBN・EAN: 9784065197646

作品紹介・あらすじ

第14回小説現代長編新人賞受賞作。


現代の社会が抱える問題と巧くリンクさせ、登場人物の置かれた環境や心情を通じて難民や移住外国人の受け入れ、違法労働について投げかけてくるところに作者の並みならぬ手腕を感じた。 
――朝井まかて


小説の主軸は三人の女性それぞれの日常にある生きづらさの描写にあり、それが作者と地続きのテーマであるだけに、とてもよく描けている。  
――中島京子


3人の女優が名演技を魅せる舞台劇のような佳作だ。突きつけられた問題は深い。
――出口治明 (APU学長)


異国の地で生まれたこの小説は、タフで真面目で意表をつく。     
――筒井ともみ (脚本家)


それぞれの女性が何やら糸で繋がっている気配もよく描けていた。才気が随所に感じられた。 
――伊集院静


人々の出来事や心の動きが丁寧につづられ、読んでいて好感を抱くものだった。 
――宮内悠介


惑星難民に拘らず、今を生きる私たちの世相を風刺している。
――紀伊國屋書店福岡本店 宗岡敦子


20xx年、惑星難民xの受け入れが世界的に認められつつあるなか、日本においても「惑星難民受け入れ法案」が可決された。惑星xの内紛により宇宙を漂っていた「惑星生物x」は、対象物の見た目から考え方、言語まで、スキャンするように取り込むことが可能な無色透明の単細胞生物。アメリカでは、スキャン後に人型となった惑星生物xのことを「惑星難民x」という名称に統一し、受け入れることを宣言する。日本政府も同様に、日本人型となった「惑星難民x」を受け入れ、マイナンバーを授与し、日本国籍を持つ日本人として社会に溶け込ませることを発表した。郊外に住む、新卒派遣として大手企業に勤務する土留紗央、就職氷河期世代でコンビニと宝くじ売り場のかけもちバイトで暮らす柏木良子、来日二年目で大学進学を目指すベトナム人留学生グエン・チ―・リエン。境遇の異なる3人は、難民受け入れが発表される社会で、ゆるやかに交差していく。

みんなの感想まとめ

現代社会のさまざまな問題を背景に、異なる境遇にある三人の女性が描かれる物語は、彼女たちの生きづらさと成長を通じて、難民や移住者に対する視点を問いかけます。主人公たちは、派遣社員やフリーター、留学生とし...

感想・レビュー・書評

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  • 『パリと本屋さん』に収められていた小説が素晴らしく、他の著書を読んでみたくなった。こーいう時って衝動で動いちゃうから、全然あらすじを確認しないんだよな…「面白ければ良いんだ!」って笑
    蓋を開けば、まさかのSF。だが予想通り期待を裏切らず、読んで良かった一冊となった。『パリと本屋さん』の時とはまた違ったストーリー展開に、気づけば夢中でページを繰っていた。

    《NASAが地球外生命体との接触に成功。アメリカ合衆国は「惑星難民X(エックス)」として受け入れる方針を発表》
    ある朝流れた臨時ニュースを皮切りに、アメリカや日本を含め、世界中が惑星人Xとの共存に悩まされていく。世界が少しずつ混迷を極めていく中、物語は派遣社員の紗央、コンビニ店員の良子、ベトナム人留学生リエン、週刊誌記者の笹、それぞれの日常を行き来する。

    この「それぞれの日常」というのが、いちいち胸が詰まるんです…。みんな器用に生きられなくて、異性との付き合いもどこか噛み合っていない。
    一番辛かったのが、良子さん。多忙な両親の仕事を手伝い、上京してからは職を転々とする日々。その原因は、彼女の勘違いされやすい特質にあった。
    仕事を完璧にこなし、リエンを気遣うなど根本的に優しい女性なのに、全然報われない。理不尽にも抗えない。名前負けしていないよね…嫌なかたちでだけど。

    惑星人Xが、彼らの日常に顕著に入り込んでくることはない。ただ日々世間を騒がせているニュースだけあって、やはりみんな意識している。
    惑星人Xというのは、もともと無色透明の単細胞生物である。しかし知能レベルは極めて高いとされ、スキャン能力を使って対象の容姿から思考までをコピーすることが可能。つまり、ドッペルゲンガーになれる。(ただしスキャンできるのは一度きり)
    最初にXと接触したアメリカでは、「自分は惑星人Xだ」とカミングアウトしたハリウッド俳優まで出てきた。(その後、#XTooというハッシュタグがSNS上でトレンド入りする。あれ、どこかで聞いたような流れだな…)

    何の苦労もなく別の生命体になれるXたちに、リエンのように引け目を感じたり、笹のように「日常を覆される」と危惧したりと、現地民が移民に向ける目線と似ていなくもない。彼らに仕事を奪われる。治安が悪くなったら、国ごと乗っ取られたら、どうしよう…。
    著者はパリ近郊に在住で、移住前もパリに住まわれていた。パリといえば、移民の街。そのような環境下に身を置く内に、異質なものへの眼差しに敏感になったのだろうか。
    いずれにせよ、彼女にしか書けない物語であることは間違いない。

    本当は非好戦的な惑星人X。彼らが地球に降り立ち社会に溶け込んでも、地球人を傷つけることは一切ない。
    一方、地球人は不器用な生き方しかできず、どの人生もいびつな形を成している。まるで、お互いを傷つけ傷つけられながらでしか生きていけないようにプログラムされているみたいだ。
    惑星人Xはいつか、愚かな地球人を救ってくれるのだろうか。それとも、おとなしく社会に溶け込み続けるのだろうか。物語に入り込んで、ぜひ聞いてみたい。

  • アメリカが『惑星生物X』 を『惑星難民X』として受け入れることを発表した。『惑星生物X』の原型は無色透明で、対象物の見た目から考え方、言語までスキャンするように取り込むことが可能である。友好的な彼らを日本も受け入れすることになった。
    紗央は新卒で派遣社員となって1年半。正社員との差を感じつつ大手企業で働いている。ある日、飲み会の帰りに本の趣味が合う男に出会い、カラオケボックスへ行く。ビー玉のような不思議な目の彼。しかし彼の様子がおかしくなり…。

    派遣社員で働き方に疑問をもつ紗央。男の「一度だけ」の言葉に弱く傷ついた過去を持つ良子。良子と同じコンビニで働くベトナム人留学生リエン。
    疎外感や差別感を感じて生きる女性3人が、惑星難民のニュースと身の回りにいる人-隣人X—を通して生き方を変えていく物語。SF要素が入った人間ドラマです。全体的に共感するところが多くて、3時間で一気読みしました。

    リエンがライブでギターを弾く恋人を見て『すごい』から『あいしてる』まで、勉強中の日本語でありったけの言葉を並べるところにキュンとなりました。

    途中まではよくある人間ドラマなのかな、と思っていたところ、後半ぐんぐん面白くなっていきました。この人が惑星難民Xだったとは、と、びっくり。
    私ももしかして惑星難民Xかもしれません。

  • 映画が気になったので原作本を。
    なかなかXが出てこなくて、普通の日々を過ごす女性たちの小説かと思いきや、そー絡ませてきたかという感じ。
    異星人をどう受け入れるかという問題もそうだけど、ジェンダーとか異国の人に対する態度とかいろんな社会問題も折り込まれてて面白かった。
    リエンのXに対するずるいという気持ちが、一番しっくりした。

  • もし宇宙人が難民認定されたらあなたは受け入れることができますか???


    本書の主な登場人物はみんな女性です。
    派遣社員やフリーター、語学留学生…。
    三人とも普段から疎外感を感じながら生きるキャラとして登場します。その姿はどこか惑星難民Xに重なります。
    「むしろ自分たち外国人は惑星人と共に排除されてしまうのではないか」
    「惑星難民Xは、二十六歳の平凡な自分と何が違うというのだろう」


    こういう状況をなかなか想像できませんが、たとえば自分が海外に留学生として住むことを想像するとわかりやすいのでしょうか??

    「──私も惑星隣人Xだ」p111
    確かにそう思うかも。

    今日の教訓:隣人には優しくしよう

  • 異星人が人間社会に分からないように溶け込んでいて、それを概ね人類も受け入れている世界。完全に人間をコピーしているので誰にも分からない。そして異星人は人間を傷つけるつもりも支配するつもりもない。
    さて、自分の世界に異星人が紛れ込んでいるとしたら。もはや自分だって異星人の末裔かも。
    とても興味ぶかい本でした。

  • 映画館で予告を見た。宇宙人がわらわら登場するのだろうと期待しながら、原作を手に取った。

    「惑星難民受け入れ法案がアメリカで可決、日本でも」という、かなりセンセーショナルな舞台設定。
    その派手な背景とは裏腹に、物語には不思議な静けさが漂う。

    一流企業の若い女性派遣社員、
    過去のある40代独身女性、
    ベトナムからの留学生の女の子。

    今いる場所に存在することに自問自答を続ける登場人物たち。彼女たちに共通するのは、世間からの疎外感、消えない不安、孤独。
    (え、惑星難民出てこないじゃん、と、戸惑いながら読み進める。)


    「透明になることが社会に適合することだと思っていた」p123
    「(辞めたら意味がない、の)意味とはなんだったのか」p21
    「ここにいていいのだろうか」p200

    頑張っても頑張っても、目指すものの手前に引かれる見えない境界線。「暗黙の了解」の中で、自然に成立する「棲み分け」。p15
    ああそうだった、と自分のこれまでの人生を痛みと共に思い出す。彼女たちの痛みがそのまま重なる。

    「人間を傷つけるのはいつの世も人間」p213
     
    透明な姿を、スキャンした対象に変えて、ただ平和を望みながらその一生を終えるX。
    地球という星では、誰もが在るがままに生きるのは難しい、ということを改めて気づかされる。せめて自分の隣の人の痛みくらい、想像できる人間でありたいと思う。


    捕捉
    本当によくできた小説だと思うけれど、紗央と良子、二人ともが父親に関する物語のため、少し混乱する。(映画ではその辺りが整理された形になっているのかも?)

  • 対象物の姿形どころか、考え方、言語など、相手そのものを完全にスキャンできる惑星生物X。難民として地球にやってきた彼らを、アメリカを筆頭に、受け入れ体制になりつつある世界。
    そんな世界を舞台に、大学院卒の派遣社員、就職氷河期世代のダブルワーカー、ベトナムからの留学生の、3人の女性を主軸とした連作短編集。
    惑星生物Xという、地球人から見てはっきりとした「よそもの」が出てくる一方で、この女性達自身が、それぞれの生きる場所で社会的な「よそもの」として描かれているように感じました。
    その息苦しさ、生きづらさ、憤りややるせなさに生生しく共感しながらも、淡々とした文章とSFというフィクションのおかげでするすると読み進められ、最後には彼女達のしなやかさに心が少し軽くなるような、良い読み心地の作品でした。

  • 人種や性別、ステータスや血縁より大切にしたいのは誰と一緒にいる事が幸福なのか。
    SNSやマスゴミに翻弄される人間の狂気さ、そして優しさと強さ。それらが日常感溢れる文章にバランスよく配置されていて読み易くドライブ感がある。ただ惑星難民Xという強烈な具材をクライマックスでしか活かせてない感じには勿体無さを感じてしまう。

  • なんじゃこら、という話ではあったけど、
    おもしろく読めました。
    惑星X人を難民として受け入れようと世界が動き出している中での、三人の女性の日常を描いています。
    それぞれ、大学院まで出たけど派遣だったり、男運のないバイトかけもち店員だったり、外国人留学生だったりと、社会の敷くレールからはずれそうになって生きづらそうにしている女性たち。彼女たちは男性からの理不尽な言葉や暴力にも苦しんでいます。
    ドカチンが日本をつくっている、というセリフなど、社会の構造をこれでもかというくらい突き詰めた上での、惑星難民Xという異質な存在の登場。

    作者さんは脚本家らしいですが、それもあってか、小説というよりはストーリーの企画書を読んでいる感覚になりました。おもしろいけど、情緒的な深みには欠けているような。

    あと、惑星難民と三人の女性とのつながりがあるようで、そこまで劇的なSF展開にもならないので、主張したいことはわかるけどもうちょいひねってほしかったなと思いました。

    次々にページをめくってしまう勢いはありました。

  • 身内が映画制作に関わったとのことで読んでみた。
    はあ、そうですか、という読後感。
    SFのようで何気ない小説のようでミステリーのようで、それらが混ざり合ったような、もやっとした感覚。
    外国人の存在も含めて、純粋な何かなんてない、意味もない。そんな風に思った。
    くじ、当たってるといいな。

  • (多分)初めてSF小説を読んだ。宇宙から謎の知的生命体がやって来て、彼らを「難民として受け入れるか」が問題となる。とはいえメインは人々の日常生活を中心に描写され、宇宙からの難民Xとリンクしながら話が展開されていく。
    それとなく社会問題としての「難民問題」も暗に示していて考えさせられるところが満載。内容は違うが、SFがらみもあってか『アバター』を観た時に近い心境になった。

  • 全然内容知らずに読み始め、不穏な感じがホラー的?と思っていたがなんと面白い!考えさせられるテーマだったり、それぞれの繋がり方だったりが。本当にそう!知らないて不気味、でも変に気を許すタイミングもあって…

    240111

  • 比較的淡々と物語は進んでいく。
    宇宙人であるXの受け入れを進めている地球、というかなりSFっぽい設定の中で繰り広げられるのは人々の生きづらさや悩み。
    結局世界で大きなことが起きていても身の回りの小さな人間関係で我々は悩み、傷ついてしまうということかな。

  • 面白かった。人間は異質なものを排除する性質があるからできるだけみんなと同じように行動しがち。理解できないものの存在は怖い。普通だと思い込んでた自分がまさか宇宙人だったという結末。それもそれで怖い。

  • 惑星難民XってSFぽい中、登場するのは
    3人の女性。
    読みやすく、それぞれの境遇が想像できる。
    そして、難民問題、移民問題。
    問題ってよく言うけど問題ってつくから
    難しく考えなきゃいけなくなっちゃうのでは。
    Xのように、
    自国が住めない状態で、そこにいると命の危険に晒されるんだよ。ただそれだけだよね。
    別にその国を乗っ取りたい訳じゃなく、
    ただ安心して暮らしたい。
    人間は、あくまでも自分のテリトリー内のことは自分ごとだけど、それ以外は他人事だよ。
    自分にも戒めていきたい。

    ニュースで見た、ガザとイスラエルの戦争で、
    ガザのテロリストがイスラエルに侵攻成功したことを祝うパレードがヨーロッパ(国名は忘れた)であったみたい。難民や移民を受け入れると言うことは、戦争が身近になるということだし
    関係ないとは言えなくなるんだなと思った。

  • 与えられた情報に基づき完全な擬態が可能な地球外知性生命体とコンタクトした世界
    惑星難民Xと呼ばれた彼らは、日常生活の中に溶け込んでいった
    個々の短編の主人公はすべて女性
    実際にいそうな境遇の人達 
    結局のところ恐ろしいのは人間でしたというところか?

  • 淡々と進むヒューマンドラマ。
    惑星難民X受け入れを進める社会や各登場人物が丁寧に描かれているからか、斬新な設定をすんなりと受け入れ一気に読むことができる。

  • 3人の若い女性,それぞれ現状に圧迫感を感じ生きることに疲れている.コンビニを舞台に彼女たちが交差し普通の小説であるはずが,惑星難民Xという味付けで風変わりであっと驚くような物語に仕上がっている.

  • 時代を鋭く捉えているが同時に既視感もある。その正体は、難民や移民を超えた普遍的テーマへの問いかけなのだろう。漠然とした不安や繋がり、バランスが壊れたように噴出する暴力。淡々とした日常に主題が潜んでいる。

  • 惑星難民xの受け入れかぁ、そんな日がくるかも…。

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著者プロフィール

パリュス あや子(ぱりゅす・あやこ)
神奈川県横浜市生まれ、フランス在住。広告代理店勤務を経て、東京藝術大学大学院映像研究科・脚本領域に進学。『隣人X』で第14回小説現代長編新人賞を受賞し、小説家デビュー。2023年に映画化された。他の著書に『燃える息』『アレアレ!』(講談社)『パリと本屋さん』(エイチアンドエスカンパニー)がある。

「2026年 『パティシエールまたは連れ去り犯の言い分』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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