人間に向いてない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.53
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本棚登録 : 1276
感想 : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065197844

作品紹介・あらすじ

「今年(2018年)読んだ本の中で、私のベスト3に入る1冊!」――宮部みゆき(単行本帯コメントより)
話題騒然のメフィスト賞受賞作。読者から届いた熱い、熱い声。続々重版出来。

子供を殺す前に。親に殺される前に。
すべての「向いてない人」に捧ぐ、禁断のオゾミス、または落涙の家族サスペンス!

一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる奇病「異形性変異症候群」。
この世にも奇妙な病が蔓延する日本で、家族は。

ある日、美晴の息子の部屋を、気味の悪いクリーチャーが徘徊していた。
――冗談でしょう。まさか、うちのユウくんも・・・!!??
そこから平凡な家族の、壮絶な戦いが幕を開ける。

感想・レビュー・書評

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  • 人間がある日突然、異形の姿へ変貌する奇病「異形性変異症候群」が引き篭もりの若年層に集中して流行する。政府はこの奇病に対し人間としては死亡したとみなす法律を制定し人権を剥奪する。奇病に苦しめられる親子。自分の子供がある日突然、グロテスクな姿に変わっていたら、同じように我が子として接することが出来るのか。親子の在り方の是非が問われる物語。

    タイムラインよりブク友さんのレビューを拝読中に見かけた本作品。今まで何度か目にしていたものの改めて【人間に向いてない】斬新な表題名と、その方のレビューに綴られた言葉に胸を打たれ、これは読まなければならないという思いに駆られ手に取った。

    物語はある家族に焦点を当て進行する。
    高校中退22歳ニートの息子・優一が突然、虫へと異形する。法的には死と認められる奇病。母・美晴は戸惑いつつも「それ」を【息子】と認知し親として努める。
    一方で父・勲夫は「それ」を【虫】と認知し親であることを放棄する。同様下に置かれたある家族は子供を殺し、ある家族は廃棄する。冒頭で著者から問われた様々な家族の在り方、親子の絆模様が美晴を通じて、他家族を通じて、延いては読者を追い込んでくる。

    自分は子供と向き合ってきただろうか。
    自分の育て方は正しかったのだろうか。
    と言う親の目線。

    親は自分を理解してくれていただろうか。
    親は自分の味方であっただろうか。
    と言う子の目線。

    親子の目線だけでも異なりがある中で、世間が暗黙に唱える育児や勉強に対する【常識】が更に美晴を、他家族を、延いては読者をとことん追い詰める。

    その常識は本当に正しいですか。
    その常識はあなたにとって良い情報ですか。
    その常識であなたの大切なものは守れますか。

    美晴をはじめ他家族が、それぞれ取捨選択をしながら、親子の在り方を決断していく。ある人は未来へ光を、ある人は過去の闇を見つめながら。

    324ページ以降、結末を迎える寸前まで、怒涛の自問自答と毒吐く独白パートが畳み掛けてくる。

    本作品のテーマは総じて『親と子と、親子の在り方』であり、特に私のような子を持つ親の立場の方がターゲットであろう。

    しかしながら一方で、子の立場から、親に向けて世間に向けて、自分の保ち方、在り方も探り取れる文脈が点在されているなと私は受け取った。

    人間同士が共存していく術を今一度鑑みる機会を与えてくれた1冊であった。


    私を本作品へと導いてくれたブク友さん、ありがとうございました。

  • 本屋大賞2019の一次投票第30位。

    人を虫とか犬とか植物などの異形に突如変貌させる「異形性変異症候群」。感染症ではなさそうだが、なぜか引きこもりの発症が多い。発症すると治癒はしない。役所的には死亡したこととして処理される。従って、人間に向いてない人たちに訪れる緩慢な死とも言える。
    発症した人は生きているけど人権はない。さらには、ペットのように愛護しなくてもよい。

    これは何の罰なんだろう?
    「タイトルは『人間失格』の平叙文化」とレビューがあったが、なるほど、そういう意味なのか…
    社会に役立っていない奴なんていらない、と人智を超えたところで選別が行われる。

    社会から抹殺され、政府は救済を放棄する。
    親さえも見放す。

    突然娘がグロテスクな虫になったら、それでも愛せるかな?

    サラッと読めちゃうんだけど、立ち止まって考えるとなかなか恐ろしい小説。

  • 人間の息子が、一夜にして芋虫になるという、あり得ない設定のお話。
    ですが、人間関係がとてもリアルでした。
    妻目線の夫と息子。苦手な姑。
    女同士の力関係や上っ面の仲良し。
    そして、この病気になってしまう若者達の心の叫び。
    子供達が何を思っていたのかを書き綴られているところは、心が苦しくなりました。
    自分の子供にも同じ事をしているかもしれないという後悔と、自分も子供だった時の親への不満も思い出して共感してしまった。

    子供は親を選べない、だからこその関係を築きたい。

    • ほん3さん
      はじめまして。いいね!ありがとうございます。
      この内容は気になります。
      いつになるかは分かりませんが、読んでみたいと思います。
      クリップさせ...
      はじめまして。いいね!ありがとうございます。
      この内容は気になります。
      いつになるかは分かりませんが、読んでみたいと思います。
      クリップさせてくださいね。


      2022/05/29
    • あゆみんさん
      コメントありがとうございます♪
      ほん3さんの本棚も参考にさせて下さい、宜しくお願いします。
      コメントありがとうございます♪
      ほん3さんの本棚も参考にさせて下さい、宜しくお願いします。
      2022/05/29
  • 最近、こういうグロい作品にあたるのが多いなぁ、と読み始めて…
    でも、何か違う!
    母の、子に捧げる愛が表現されてます
    我が子が芋虫になっても、です
    いつか、サナギから蝶へと生まれ変わるのを信じて

  • 2022年3月30日読了。

    突如として発生した奇病が蔓延した世の中。
    ある日突然、人間を異形の姿へ変貌させてしまう病『異形性変異症候群』、別名ミュータント・シンドローム。
    異形となった患者の体は人間とは異なった生物へと変化し、身体構造や食べ物の嗜好なども変わり、会話やコミュニケーションすらも取れなくなる。
    犬や猫のように可愛げのある姿に変異するならまだしも、どれもこれもがグロテスクな姿へと変貌した。
    幼児サイズのイソギンチャクは触手の代わりに人間の腕が多数生えていたり、人間をグチャグチャにすり潰して練り固めたようなスライムに変貌したり・・・。
    その醜悪さから嫌悪感を抱いた家族が世話を放棄したり、暴行を加え殺してしまう事件が多発。
    それを受け、政府は異形性変異症候群を致死性の病と認定し、この病に罹った患者はその場で人間としての死を診断され、人権を失うことと決定した。

    この厳しい政策の背景には、異形性変異症候群を発症する人々の特徴が関係していた。
    多くの社会人には無縁のもので、この病に罹る人間は若年層のニートや引きこもりと呼ばれる層だけに集中していたからである。
    その為、国の労働力や生産性が大きく損なわれる事はなく、影響も少ないだろうという結論を政府は下したのだった。

    罹患する人種がそのような若者であるが故に、変異した子を持つ親は、育て方を間違えたダメ親という烙印を押され、
    心無い人々の間では、『神による淘汰なのではないか』などとあらぬ噂まで立ち始める始末。

    そんな中、また一つの家庭に悲劇が起きる。
    田無美晴は、昼食の準備が出来たことを告げるため、いつものように息子の部屋へと足を運んだ。
    22歳になった優一は引きこもりになってもう2年が経つだろうか。
    早く社会復帰して欲しいと思いながらも、惰性でここまでズルズルと来てしまった。
    部屋のドアをノックしようとした美晴は、聞き慣れない奇妙な音を耳にする。

    ーかしかし。かしかしかし。

    何か小枝のような硬く軽いものでドアを引っ掻くような音。その音は延々と続いている。
    『ユウくん?』と声を掛けても返事はない。
    何とも嫌な予感が美晴を襲う。

    ゆっくりとドアを開け、部屋を見回し、視界を下にずらした時。
    美晴の足元に『それ』はいた。
    中型犬ほどの大きさの虫。
    蟻のような顎を持った大きな頭、側面には複眼があり、体は芋虫に似ている。
    胸部からはアンバランスなほど細長い枝のような脚が生え、体の側面にはムカデのように無数の脚が備わっている。しかもその無数の脚が人間の指の形をしている。
    なんともおぞましくグロテスクなその姿。
    それは息子の変わり果てた姿だった。

    「嘘よ、こんなの・・・いやああああ!」
    恐怖だけではなく、いずれこうなるのではないかと危惧していた事が現実となってしまった絶望の叫びだった。

    途方にくれる美晴を余所に、旦那の勲夫は「もう優一は死んだ。そんな虫はさっさと山に棄ててこい」と父親とは思えない冷淡な言葉しか掛けてこない。
    夫婦仲は険悪になり、誰にも悩みを相談出来ない美晴は、単独で異形性変異症候群について調べ始める。
    そんな最中、インターネットで『みずたまの会』という変異者の家族が交流し、苦悩を分かち合うグループの存在を知る。
    ここに行けば今より少しは前向きに進むことが出来るはずだと、一縷の希望を胸に入会し、様々な変異者家族達と触れ合う事になっていく。


    ずっと読みたいと思いながら、長らく眠らしていた本作。やっと読む事が出来た。
    ある日突然息子が虫になってしまうというシチュエーション。
    解説でも名前が挙がっていたが、やはりフランツ・カフカ の『変身』を彷彿とさせる。
    グレゴール・ザムザは単にデカい虫に変異していたが、本作の異形達は虫のような物や魚・鳥・爬虫類、はたまた植物など多岐にわたっている。
    しかも、どこかしらに人間の一部を残したままグロテスクに変異しているあたり、かなりタチが悪い。
    そんなショッキングな内容と描写の激しさから、かなり人を選ぶ作品ではあると思うが、自分的にはかなり面白かった。
    読み始める前のイメージとは裏腹に、読後は考えさせられる事がとても多かった気がする。
    人間関係・親子の在り方・子供を育てる事の難しさ・正しさとはなんなのか。
    今後の育児の指針になり得る言葉も多く、さながら育児指南書・バイブルのようにすら感じた。

    親のエゴで自分の子だからと理想像を押しつけ、所有物のように扱うのではなく、1人の人間として尊重して接していく事の重要性。

    何でもしてやるのではなく、子供の様子に合わせてやりたい事の手助けをするだけでいい。時には見守るだけの方が良いこともある。

    装丁の見掛けに臆せず、子育て世代の親に是非読んでもらいたい一冊でした。

  • ’21年11月15日、読了。Kindleで。黒澤いづみさんの作品、初。

    うーん…一気読みしてしまいましたが、途中(特に序盤)、何度も止めようと思いました。僕には、グロテスク過ぎ、かつヘヴィ過ぎ。眠りを奪われる位の、衝撃度でした。いやぁ、疲れた!

    僕にしては、かなり集中して読みましたが…途中、色々な事を考えました。(読まれて高評価をつけてる方々、皆さんおそらくそんなんだろうなぁ。)
    恐怖、戸惑い、悲しみ、エゴ、愛…ナドナド、色々な「人間の、象徴」的なものが描きこまれていて、胸が一杯になりました。紹介で「必ず3度えずく」みたいなのが有りましたが、まさにそんな感じでした。やはり、一番気持ち悪いのは「人間」なんだな…と、再認識させられました。

    第一章の最後の、*後のエピソード…なんだか泣けてしまいました(╥﹏╥)

    本当は星5つ、付けたいのですが…ヘヴィ過ぎて、そこまで人にオススメできないかなぁ、と思い直しての星4つです。でも、ある意味、カフカの「アレ」を初めて読んだ時よりは、僕には衝撃は強かったです。衝撃度は、僕には今年一番かも。

  • メフィスト賞受賞作ということで気になっていて、文庫化を機に読んでみました。
    引きこもり傾向にある若者の間で流行する奇病”異形性変異症候群(ミュータント・シンドローム)”が蔓延している日本が舞台の、近未来パニック系小説。
    主人公の主婦・美晴も恐れていたが、とうとう息子の優一も罹患し、おぞましい虫のような姿に変貌してしまう。
    早く保健所に連れて行って処分しろ、と言う無理解な夫に責められながら、美晴はなんとか優一と共に生きていく方法を探そうとするが……。

    カフカの変身を、親側の視点から描写した感じで話はすすんでいく。
    展開は一進一退するばかりで途中ちょっと飽きてしまったんだけど、優一の視点が語られる終章の手前でまた面白くなった。
    また、実家に帰省し母と会話している最中に美晴が得た「親である私たちが息子の心をまず異形にしてしまったのではないか」という考察には頷かされた。あぁそういうことか…と理解できた気がした。この奇病は私にとっても、子育てをする親なら誰にとっても他人事じゃない。
    ハッピーかつブラックなラストには声を出して笑った。

  • 引きこもり息子がいきなり芋虫のような異形になる奇病になってしまう。
    社会的にも死と判定され、周りからは嫌悪の目を向けられる。
    母はそれでも愛せるのか、同じ境遇のママさんと会う中で、悩み迷う。
    「普通」に育ってほしい。「理想」の息子像を知らないうちに押しつけていたことを知る。

    初めは読んでいるのも悲しく、救われないと思ったけど、ラストはとてもメッセージ性もあり、作者の伝えたいことが感じれてとてもよかった。

  • 害虫か益虫か。我が子をそんな風には考えない。

    特別な家庭でない限り、親子関係には、無償の愛が当たり前に存在する。しかし、我が子が虫になってしまったら?あるいは、虫のように、会話もできず、理解不能な存在になってしまったら?

    我が子の病気や障害における許容ラインはどこか。そもそも、我が子に対して、ラインなんて存在するのか。では、そのラインに脳死のような社会的な死が含まれるとどうなるだろうか。

    色んなテーマが内在している。そして、それぞれの境界線と感情の源泉から、起こった出来事に対峙していく。小説、だが、これは社会学的な思考実験でもある。果たして、自分はどのラインだったであろうか。読後、そのラインは上下、濃淡どのように変わっていくだろうか。

    愛する客体のメタモルフォーゼ。強烈なメタファー小説であった。

  • ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」ー。

    初めての黒澤いずみsan。虫になった息子、ミュータントシンドローム、田無美晴・優一、津森乃々香・紗彩、「みずたまの会」など。

    病気の設定(発症した場合はその時刻をもって患者は死亡したことになる、葬儀は行われない、患者の家族は遺族として役所に死亡届を提出する義務があり怠ると罪に問われる、生命保険は適用される、死亡一時金の請求は可能である等)や、異形者の設定(外見の種類、食事、排せつ、出かけ用バッグ等)が、リアル過ぎて、背筋が寒くなりました。

    優一の父親の言動が許せない!と思っていたら、最後に・・・。

    酔生夢死の人生にならないよう、相手を認めて、信じて、見守りたいと思います。

    【第57回メフィスト賞】

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著者プロフィール

福岡県出身。2018年に第57回メフィスト賞受賞作『人間に向いてない』でデビュー。

「2020年 『私の中にいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

黒澤いづみの作品

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