緋色の囁き 〈新装改訂版〉 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 931
感想 : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065201640

作品紹介・あらすじ

「私は魔女なの」
 謎の言葉を残したまま1人の女生徒が寮の「開かずの間」で焼死した。
 その夜から次々と起こる級友たちの惨殺事件に名門女学園は恐怖と狂乱に包まれる。
 創立者の血をひく転校生冴子は心の奥底から湧き起こってくる“囁き”に自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののく。
「囁き」シリーズ登場!!

感想・レビュー・書評

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  • 綾辻さんの囁きシリーズ三部作の一作目。

    全寮制の名門校、聖真女学園に転校してきた冴子。
    学園の校長、宗像千代は冴子の伯母にあたり、地方の名家である宗像家を継がせるため、養子に出されていた冴子を呼び寄せたのだ。
    しかし聖真女学園は、生徒を生活の隅々まで規則でがんじがらめにし、つまらないことで懲罰を与える教師が監視する、まるで監獄のような場所だった。
    まもなく、冴子を教師の理不尽な仕打ちから敢然と守ってくれた同部屋の少女が、寮の特別室で焼死しているのが発見される。
    それを皮切りに、同じクラスの少女らが次々と惨殺される事件が続く…。

    殺された少女の遺した『魔女』という謎めいた言葉。寮の特別室でかつて起きたという事件。冴子の深層に潜む緋色の記憶。

    修道院かのような厳しい規律で暮らす全寮制の女子校という舞台設定に、まずドキドキさせられる。世間では名門と言われているけれど、そこに入学した(させられた)彼女らは、いずれもワケありで、厳しすぎる規則と罰則、教師の嫌がらせに鬱憤を溜め込んでいる。
    陰鬱で異様な空気の漂う教室、君臨するのは、美しく聡明な、非の打ち所がないお嬢様の綾。
    綾辻さんの初期の作品とのことだけど、この空気感は確かに綾辻さんだなぁ。

    次々と起きる惨劇に、これもうどうなるんだろうと気になって、すごい勢いで読んだのだけども、最後が少し…、いや、だいぶ尻すぼみだった気がするの。
    ええー!!というより、「えぇ…?」というような(?)。
    最初から読み直したら、その張り巡らされた伏線に驚くのかもしれない。でも血が流れすぎてちょっと脳内が貧血気味なのでそれはまたの機会にしたい(笑)

  • 綾辻行人さんといえば、十角館の殺人で代表される「館」シリーズが有名ですが、「囁き」シリーズにもついに、手を出してみました。

    一言でいえば、かなり好きです、この作品。舞台は全寮制の名門女子校。主人公は転校してきた美少女。綾辻行人さんらしく、幕開けから不穏な空気が滲み出る。

    「魔女」と「魔女狩り」。学園内で起こる連続殺人劇。揉み消される事件。クラス内に漂う奇妙な空気。なにかがおかしい。転校生の冴子の心に潜む「赤い記憶」と「囁き」の正体。一体、誰が犯人なのか。ゾクゾク感がたまらない。事件の真相には誰もが驚くと思います。

    どこか美しさも感じられるホラーミステリ。読了後、「緋色の世界」に囚われたような錯覚に陥る。絢辻さんらしさが存分に詰まった「緋色の囁き」を、ぜひ、手に取ってみてくださいね。

  • R4(2022)6.28-7.3

    『殺人鬼』、『フリークス』以来の綾辻行人の作品。
    『緋色〜』も『闇祓』特設サイトでレコメンドされていたので読んでみる。

    綾辻行人は、『殺人鬼』の「これでもかグロ攻撃」に辟易してしまい、しんどい半分怖い半分で遠ざけていたのだが、特設サイトの紹介を見て一読の価値あり、と本書を手に取った。

    閉鎖的ない女子高で次々起こる猟奇的な殺人。そこに主人公の記憶が重なり、結末に向かって猛スピードで駆け抜けていく。

    殺人シーンはさすがにリアルだが、グロすぎることはなく(映像化してはいけない)、その関門はクリアできた。

    面白かったのだが、生意気なことを言えば、犯人の半生についてもっと深く掘り下げるべきだったかと。事件を起こした理由は分かったけど、そういう心理状態になった理由は少しうやむやになっている気がした。

    とはいえ、読み手も「緋色」に染まっていくことができました。
    次も綾辻行人でいってみよう。

  • 閉ざされた名門女学校。どこか不気味でいわくありげな登場人物たち。語り手の不明瞭な記憶。そして凄惨な連続殺人……

    これ以上ないというくらい、ゴシック調の妖しげ雰囲気が作中にふんだんに盛り込まれ、頭の中に残るのは鮮烈な緋色のイメージ。死と狂気、混乱、そして鮮血。たまらない人にはたまらないホラーの雰囲気をまとったミステリーです。

    解説でも触れられているけれど、作者である綾辻さんのホラーに対する一種の美学、あるいは嗜好というものが徹底された作品だと思います。

    上に書いたように設定や登場人物たちの妖しさというものが完璧に作りこまれている。現実的な設定というものは脇において、とにかく妖しさやいわくありげな雰囲気づくりに心血をこめたからこそ作り上げられた世界観。

    いつのまにか幻や悪夢の中に迷い込んだかのようなどこか頼りない感覚に陥り、そして作品の緋色のイメージに囚われていたように思います。

    昨今ではミステリーもホラーもジャンルが広がっているので、ここまで王道のゴシックホラーというものはあまり見かけない気がする。そのためか作品を読んでいてどこか懐かしさも感じました。

    スティーヴン・キングの小説と映画『シャイニング』をドキドキしながら見たような感覚というべきか……。変に凝ったことや最近の流行も排して、ただひたすらに怖さの美学を突き詰め、鑑賞者の前にさらしたというべきか……。

    好きな人はこの雰囲気にはまり込んでクラクラすること請け合い。とにかく妖しさと血の色に飢えた人なら、この一冊を読めば間違いないという、どこか倒錯した美しさを感じるホラーミステリだったと思います。

  • 耽美で陰湿なサイコサスペンスなのかと思いきや血飛沫舞うお嬢様バトルロワイヤルでいい意味で予想を裏切られました!殺人の描写が派手で読んでいて気持ちがいいほどです。人もぽんぽん死ぬのでテンポがよく、後半になるにつれ全員が怪しく思えてきて楽しいです。トリックを考える楽しさはあまりないかもですがたまにはこういうお話もいいですね。
    魔女がキーワードで最後数行がカーの火刑法廷を彷彿させる終わり方でそこが好きです。

  • 女学園、魔女、殺人事件と、設定から間違いがないことはわかった。読んで納得の、読了感でした。

  • 名門・聖真女学園高校に転入した校長の姪・冴子。寮で同室になったクラスメイト・高取恵に好感を抱くも、彼女は「開かずの間」で焼死体となって発見される。35年前に起きた事件、冴子の失われた記憶。謎は緋色に深まっていく─。

    囁きシリーズ第一弾。学園で巻き起こる連続殺人のミステリを土台に、閉鎖的な環境下の心理、冴子の過去といったホラー・サスペンス要素を織り交ぜた一作。次々と起こる事件の中で、自分が犯人なのではないかという疑念を持つ冴子。彼女が勇気をもって過去と宿命に立ち向かう姿は美しい。

    厳しすぎる教育方針が生み出した魔女狩りの構造。先生から裁かれる生徒たちが、裁く側へ回るために責める相手を作る歪んだ連鎖。この罪と罰が血のように巡り舞い戻ってくる展開が恐ろしかった。今の社会でも罪を暴いては炎上させる魔女狩りが毎日のように行われているのが何とも皮肉。

    それにしても、恵の兄・俊紀が有能すぎるしカッコいい。
    「そう。僕はあなたに勇気を持ってほしい。今のままでいるのは、あなたにとってきっと良くないと思うから」
    「誰から生まれたか、なんてことはね、一人の人間の今ある形の、ほんの一要素にすぎないんです」
    こんなことを言われたら惚れるよね。この物語は終わっても人生は続く。彼女たちが背負う血の宿命に抗えるか。ここからが本番なのかもしれない。

  • 館シリーズを読破してからの囁きシリーズ

    お嬢様たちのバトルかと思いきや、過去の出来事も入り乱れ、事件が起こっていく
    背筋が凍るようなゾワゾワ感の強い作品でした。次も楽しみ

  • ホラーシリーズの第1作らしい。
    ホラー作品は好みじゃないけど、ドキドキしながら読んでしまった。犯人はすぐ分かっちゃうし、事件の解明には甘さもある。でも確かに美学があるよね。
    ただ時代のせいかな、このヒロインにはイライラさせられるばかりだ。

  • 怖かった……
    クラスメイトみんな頭イカれ狂ってて気持ち悪い。集団心理って怖いな…
    綾さま断トツで気持ち悪い…ファザコンの域も超えてるし魔女狩りしようとか言い出すのもイカれてる。
    加代も危険人物の異常者過ぎて怖かった。それにいくら世間体の為に宗像家に加代戻せないったって、記憶なくなって別人になったとしてもあんなイカれた狂人を野に放たないで欲しいわ…
    血が引き金になってる狂気的な描写や犯行シーンもすごい怖かった。
    最後あれ冴子も母親と同じ路を辿るってことかな…蛙の子は蛙…そんなホラゲあったなぁ

    館シリーズとだいぶ違って、事件が起きて探偵役がいてって感じではなくホラー寄り。
    怖かったけど先が気になって1日で読んじゃった。

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著者プロフィール

1960年京都市生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院博士後期課程修了。87年、大学院在学中に『十角館の殺人』でデビュー、新本格ミステリ・ムーヴメントの契機となる。92年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。2009年発表の『Another』は本格ミステリとホラーを融合した傑作として絶賛を浴び、TVアニメーション、実写映画のW映像化も好評を博した。他に『Another エピソードS』『霧越邸殺人事件』『深泥丘奇談』など著書多数。18年度、第22回日本ミステリー文学大賞を受賞。

「2023年 『Another 2001(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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