襲来 下 (講談社文庫)

  • 講談社 (2020年7月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784065203750

作品紹介・あらすじ

日蓮が唱えた「立正安国論」の中にある「他国侵逼」とは、大国が日本に攻め寄せるということを意味した。即ち、大陸の蒙古による九州への侵攻である。その予言を確かめ、蒙古の様子を探るために、日蓮の身の回りの世話をしていた見助が、朝鮮半島に最も近い島、対馬まではるばる遣わされたのだ。長旅を終えて対馬に到着した見助は、島民に温かく迎えられる。古くから島に住み着いている阿比留一族との交流を深め、蒙古の情報を見助は次々に入手していく。他方、日蓮はこの間、幕府からの弾圧や浄土宗による法難に遭うが、対馬と東国の間で二人の手紙のやりとりは続いた。そして見助が対馬に入って十余年、ついに蒙古が動いたとの情報が……。

みんなの感想まとめ

歴史の中での人間の生き様と、戦争の悲惨さが描かれた作品は、主人公見助の視点を通じて、蒙古襲来という壮絶な出来事を追体験させてくれます。彼は日蓮の予言を確かめるため、対馬で情報を集める役割を担い、長い旅...

感想・レビュー・書評

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  • 日蓮の予言「外敵襲来」を確かめるために、千葉安房からはるばる九州西の島対馬まで旅をした見助。いよいよ対馬でその情報を見聞きしていくのが下巻。

    「見助」というネーミングがうまい。侍でもない職人でもない、ただ海で舟をこぐのとタイ釣りがうまい漁師。だから西海に出て、果ての島に渡っていくのも得意である、まじめで勤勉な好青年、というのも見知らぬ土地での活動ができるということ。

    そんな彼が「蒙古襲来」にまつわる事実関係を把握していく様は、一緒に歴史をひも解いて見ていくようだ。「元寇」が神風で終わったでは済まない、小さな島の逃げ道のなさは残酷な侵略と犠牲的な戦いの現実。その敵も味方もすさまじく容赦がないということをつぶさに見ていく見助。

    7世紀前の出来事ではあり、小説という形ではあるけれども、現代にも通じるものがある。日蓮という思想家の宗教も絡んではいるが、日蓮宗の解釈は重要ではなくて、人間としての生き方のやさしい解き明かしになっているのが好感。

  • 最近の私にしては長編の歴史物を読了。
    日蓮の説く「立正安国論」は現代の私たちの目から見ると、非科学的で、多宗派に対する過剰なまでの攻撃も、受け入れ難いものがあるが、たぶん色々な宗教の教祖など、カリスマ性があり、人を惹きつけて離さないものがあるのだろう。
    主人公の見助もその一人。日蓮は折に触れ、見助が読み書きできるひらがなで書状を書いて、見助を感激させたりもする。
    この話は、たぶん、作者の創作なのだろうが、最後、辻褄も合うように終わっている。
    私は歴史にうといので、元寇が博多沖から逃げ帰っただけだと思っていたが、このような悲惨な史実もあったとは。

  • 蒙古襲来、元寇・・・
    必ず異国が海を渡って日本を攻めて来ると考えた日蓮様は漁師の出である見助を対馬へ送る。見助は日蓮様の耳目として13年間その任にあたり、ついに巨大な船団がやって来る。圧倒的な力に立ち向かうこともできず、ひたすら「見る」事に徹する見助。
    蒙古の襲撃の場面は読んでいて胸が張り裂けそうになる。
    それにしても帚木先生の作品は、なぜこうも優しさに満ち溢れているんだろう。日蓮様はもとより、鎌倉の干物屋のおかみのたえ、対馬のくったん爺さまと、とい婆さまや密かに心を寄せあうなみ。兄のような馬場冠治、そして海を渡ってやってきた馬の蒙古。全ての登場人物の笑顔が目に浮かぶ。
    蒙古襲来がロシアのウクライナ侵攻に重なって見えるのは私だけだろうか。日蓮様は戦いの犠牲となった蒙古兵に対しても祈ることを忘れなかったという。ロシアの兵士も戦いの犠牲者なのかも知れない。

  • 大好きな帚木さんの歴史小説。「水神」と同じく、史実とフィクションが上手い具合に溶け込んでいて、本当に存在しているような人物描写は見事としか言いようがない。結末に近づくにつれ、胸が熱くなり涙無しでは読み進められなくなった。covid-19が落ち着いたら、鎌倉に史跡を辿りに行きたい。

  • 主人公の見助は、その名の通り、日蓮上人の耳目として対馬に赴き、蒙古襲来の際には惨状の目撃者に徹する。故に激しいアクションは一切無し。かの“神風”の後も、生き残った元の船団が逃げ帰るのを山の上から眺めているだけである。また、作中で日蓮上人は浄土宗をボロカスにこき下ろしていたけど、念仏宗をはじめとする他宗派への非難・攻撃がいくら史実とは言え、関係方面からクレームが来なかったのか、ちょっと心配になるくらいの内容だった。

  • 日蓮が予言した蒙古襲来に幕府は手を打てなかった。神風どころではない元寇の真実!

  • 日蓮の無名の付人の人生をを通して、元寇に至る鎌倉時代の空気と、日蓮及び日蓮宗の勃興を描いた一冊。

  • 「元寇」の裏側で、対馬や壱岐で、こんな悲劇があったなんて、学校の授業では習わないので、驚きだった。

  • 蒙古の来ない、日蓮の話かな?話は淡々と進む。
    時間の流れを感じさせない文章だが、最後の旅から
    一気に時間を感じさせる。
    死や別れを淡々と書いてるし、旅で何かある訳でもないのに、普通に読めるのが不思議。

  • 題名から元寇の戦記物と思って購入したが、下人の成長譚・ロードムービー的なストーリーで、これはこれで面白さがあった。が、
    主人公は日蓮の耳目・手足として人生の大半を過ごす。想い人とも結ばれず、日蓮とも再会できずに亡くなるが、自分の一生は日蓮の依頼を全うし幸せだったと感じて亡くなる。
    信仰を持った者は幸せなのかもしれないが、自分には残酷な話にしか思えない。なんか、やるせない。
    主人公は無色透明というか、ロボット的。最初に受けた命令を実直にこなすだけ。かつての想いびとが蒙古に連れ去られても、日蓮の命令を優先して何もせず傍観するだけ。宗教の怖さを感じた。

    元寇は神風により撃退できた印象が一般的であるが、実際には御家人達の奮闘による事がよく分かる。また当時の庶民の暮らしや交易が盛んであった事もきちんと描かれている。

  • 93

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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