大江戸火龍改

著者 :
  • 講談社
3.66
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本棚登録 : 226
感想 : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065203996

作品紹介・あらすじ

禍々しきは、吾の出番。――妖退治屋をなりわいとする麗しき謎の男、遊斎の事件簿。

江戸時代、凶悪犯を取り締まる火附盗賊改の裏組織が存在した。
専ら人外のものを狩り鎮めるその名は、火龍改。

満開の桜の下で茶会を催していた一行から悲鳴が上がった。見れば大店のお女将の髪が逆立って、身体ごと持ち上がっていき、すっかり桜の花に隠れてしまった。見上げる者たちの顔に点々と血が振りかかり、ぞぶ、ぞぶ、ごり、という音のあと、どさり、と毛氈の上に女の首が落ちてきた――。遊斎は、飴売りの土平、平賀源内らとともに、この怪奇な事件の謎を追う(長編「桜怪談」)。短篇「遊斎の語」「手鬼眼童」「首無し幽霊」も併録。

スカイエマの、クールで色っぽい遊斎や不思議な生き物たちのイラストが誌面を飾る。クラフト・エヴィング商會の瀟洒な装丁で、現代版の絵双紙本が誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 「神々の山嶺」以来の夢枕作品。思ったより読みやすかった。スカイエマさんの挿画が沢山あって嬉しい。

    タイトルからまた火事関係の話か?と思ったら、実は『火龍』の『火』は『化』の言い換えであり、本当は『化物』専門の事件解決人。憑き物祓いや妖怪退治、人に害を成すなら祓ったり鎮めたり、でも害をなさないなら放っておく。
    仕事の内容が内容だけに幕府の正式なお役目としての記録も正式な辞令もない。

    主人公は遊斎なる謎の男。しかし彼が『火龍改』とする表記もない。年齢も出自も不詳。〈鯰長屋〉の一室、足の踏み場もないほど奇妙な物で溢れた部屋に住んでいる。
    しかし彼の手に掛かれば、土の中に住む鯉も憑き物も首のない幽霊もあっという間に解決。

    アッサリし過ぎて拍子抜けかと思ったら、最終話は半分のページを要する中編。
    ある商家の女将が桜の木に引きずり込まれナニかに喰い殺され、若旦那は木乃伊のように干からびて死んでしまうという恐ろしい事件。

    遊斎は早速乗り出すが、彼に事件の話を持ち込んだ飴売りの土平(どへい)もまたただ者ではない。人形を自在に操り聞き込みに使ったりあやかしと対峙させたりする。
    さらには如月右近という、普段は往来で客に自分の鼻先に置いた飯粒を斬らせるという変わった商売をしている剣の達人や、陰陽道の達人の播磨法師なる謎の老人、かの平賀源内も出てくる。

    この中編は何ともおどろおどろしい化物が出て来て、土平や遊斎も襲われかけて難敵。しかし最初に人物関係図が出てくるので、これが事件の原因、大元かと想像はつく。それでも一捻りあったのだが。

    この一冊で終わらせるには勿体ないキャラクターたち。謎めいたキャラクターは好きだが、謎過ぎてもう少し知りたいような。あとがきで夢枕さんも続編書きたいような感じだったので楽しみに待つことにしよう。

  • 妖しくて艶めかしい男の所作に魅せられた。

    人のふりをして人の中に紛れ込む妖怪。
    江戸の人々を脅かす妖怪を祓い鎮める"火龍改"遊斎の物語。
    目には見えず不気味な気配のみで、人の心をひたりひたりと追い込む妖怪。
    けれど元はみな人が創り出したもの。
    嫉妬、憎悪、強欲等人の業により生み出された"人ならざるもの"はいつの世も、特に後ろめたい思いを隠した人を恐怖の底に突き落とす。
    そんな"人ならざるもの"を鎮静する遊斎とその仲間達の魅力に、私も取り憑かれてしまったようだ。

    この物語はぜひシリーズ化してほしいし、映画化もしてほしい。
    遊斎役は神木隆之介クンでどうでしょう?
    物語の中で小川未明の『赤い蝋燭と人魚』の赤い蝋燭が出てきてびっくり。
    ちょっと嬉しいサプライズ。

  • 装丁が魅力的、の一冊。

    これは本を手にしたとたん、しばし眺めていたくなるほどの魅力的な装丁。

    主人公 遊斎の醸し出す妖しい雰囲気、随所でうずまくあやかし。
    これが夢枕さんの言葉と美しいイラストのおかげで心にスッと入り込んでくるような感覚が良かったな。

    本って、装丁も作品を引き立てる大切なポイントだということ、グッと物語の世界に入り込める大切な役割を担っていることを改めて実感した。

    これからどんどん登場人物達の魅力が増してくるのかしら。
    白い髪、赤い目…遊斎のイメージは勝手に白兎。

  • 人に害をなす人外のものたちを祓ったり、鎮めたりする〈火龍改〉。
    謎めいた遊斎の活躍をえがく、連作短編集。

    新シリーズだが、『陰陽師』シリーズに似ている。
    特に、ダーティな存在の播磨法師は、まんま芦屋道満。

    赤い紐で結んだ長い白髪。
    赤い眸。
    年齢不詳の不思議な遊斎。

    仕事の対価はしっかり取り、子どもたちともふれあい、市井にとけこんでいる庶民性。
    深く知りたがる相手に「知りたいですか?」と不穏な様子を見せるあたりが、少しちがった。

    設定は安定したおもしろさなので、今後も楽しみ。

  • 大江戸火龍改(かりゅうあらため) 夢枕獏(ゆめまくらばく)著:東京新聞 TOKYO Web
    ◆異界へ誘う周到な物語[評]玉川太福(浪曲師)
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/56522?rct=book

    “江戸版陰陽師”新章スタート!『大江戸火龍改』(夢枕獏:著)発売を記念した特別無料配信も実施!|株式会社講談社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002694.000001719.html

    『大江戸火龍改』(夢枕 獏,クラフト・エヴィング商會,スカイエマ)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343513

  • 新聞の書評で知った本。久しぶりの夢枕氏の作品。人外が描かれる異世界物語は相変わらずだが、主人公や登場するキャラクターが落ち着いて、楽しく読めた。いい意味で歳を重ねた趣きのある夢枕作品です。

  • キャラクタ、物語とも安定の夢枕獏先生でございました。

  • <素>
    いやはやなんともこのシンプルな文章から溢れ出る物語の気持ち良い事よ。お江戸版『陰陽師』とも云える作品です。またもちろん先の作品『大江戸恐竜伝』を引き継いでもいるのでしょう。
    今作後半はかなりのミステリーじたてです.夢枕獏なのだからミステリーファン垂涎のとまではゆくわけもないですが,そこそこ謎を深めてから解き明かすという慣れないw荒業にでています.けっこうこれは獏さんらしくない?面白さなのですよw

    巻末の正規の本文に対しての「あとがき」は2020年の5月に書かれている.いつもどおり 2020年5月小田原にて ,とそう書いてあるのだからこれはその通りなのだろう.そしてそのあとがきの後にもう一つのあとがきが有ってそこでなんと獏さんは「コロナバイラス禍」について触れている.志村さんのことにまで触れながら,覚えているがよいぞ政治家共よ! と云う意味の事を書いている.
    僕は上梓された本で初めてコロナバイラスに触れている本に今回出会った.それが夢枕獏であったと思うとなんとなく納得がいくのであった.すまぬ。m(_w_)m

  • 図書館で、たまたま見つけ、表紙に引かれて借りました。
    陰陽師に通ずる、あやかし系のお話しです。私は好きなので、一気に読んでしまいました。主人公の遊斎さんが、妖艶でかっこいいです。これも、安倍晴明に通ずるところありって感じです。シリーズ化したら、次も読みたいと思います。
    アニメ化もしてほしい!

  • 内容を事前に知らずに読み始めてしまいました。普通の時代物だと思って読みはじめたので、物の怪系とわかって読むのをやめようと思ったのですがつい読んでしまいました。でもやはり最後の犬の怨念は深夜だったこともあって読んでいて恐ろしくて・・・(泣)

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著者プロフィール

1951年神奈川県生まれ。東海大卒。77年「カエルの死」でデビュー。『キマイラ』『闇狩り師』『サイコダイバー』『陰陽師』などの人気シリーズを持つ。『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞。『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞。『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞、吉川英治文学賞。近年、菊池寛賞、日本ミステリー文学大賞を受賞。18年、紫綬褒章を受章。

「2023年 『黄金宮Ⅱ 仏呪編・暴竜編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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