- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065206614
作品紹介・あらすじ
なぜイラン高原の辺境から、世界史上に輝く二つの帝国が生まれたのか?
ハカーマニシュ(アケメネス)朝とサーサーン朝、気鋭の研究者がその興亡を描く、世界史ファン待望の一冊!
ペルシア悲劇、ペルシア絨毯を生んだ、哀調を帯びた神秘的な桃源郷。
しかし、古代オリエント期のペルシアは、リアリズムの極致というべき世界だった!
急激な都市化、海のシルクロードの掌握がもたらす経済的繁栄。
西アジアからエジプトまで支配するに及んだ壮大な組織力と軍事力。
くりかえされる宮廷クーデターと兄弟間の殺戮……。
そしてリアリズムの塗料が剥げ落ちた時、古代ペルシアに衰亡が忍び寄る――。
感想・レビュー・書評
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大変面白かったが、読むのに苦労した。
何故なら、人名、王朝名がペルシャ語記述だったからで、私たちが知る名はギリシャ語(ヨーロッパからの名称)なので、アケメネス朝ペルシャがハカーマニシュ朝ペルシャになったり、読み進んでいくうちに「あぁ、これはダリウス、これはクセルクセスか。」と後でわかることが多かった。
笑ってはいけないがササン朝ペルシャ末期の皇帝乱立には呆れてしまった。皇帝が立つとすぐに暗殺されることを繰り返す始末。すでに腐敗して帝国は瓦解していて、サラセンに連戦連敗で滅亡に。
2つのアーリア系ペルシャ王朝の歴史を堪能できた一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は、イラン高原南西部のペルシア州を拠点として、ペルシア人が建てた2つの帝国、ハカーマニシュ朝(ギリシア語名アケメネス朝)とサーサーン朝の興亡を描いた一冊である。
通読しての感想の一つは、後継を巡っての争いの血腥さである。継承がルール化されていないとそうなりがちなのであろうが、それにしても厳しい。
そして、特にハカーマニシュ朝についてそうなのだが、ペルシア戦役、アレクサンダー大王東征と、西方側から見てしまう見方が染み付いているということである。パルティアであればローマ帝国と、サーサーン朝であればビザンティン帝国との争いが続いていたが、やはりローマであり、ビザンツ側から見てしまう。
また、ホスロー一世時代の税制改革により、イスラーム期にハラージュ(地租)とジズヤ(人頭税)として継承されたこと、宗教面について、単純にゾロアスター教がずっと国教として信仰されていたものではなく、教義等の推移があること、など本書で初めて知ることができた。
特に印象に残ったのは、ホスロー二世の世界大戦の章である。彼の政策に巻き込まれて、国内の大貴族やビザンティン帝国始めオリエント世界全体が運命を狂わされたと著者は言う。そして、疲弊しきったペルシアは、イスラームに席捲され世界史の舞台から退場し、一方ビザンティン帝国はシリアとエジプトを奪われ、何とかコンサタンティノープルは死守したが、国力はだいぶ衰えてしまった。
なかなか馴染みのないペルシア帝国について、新書という手に取りやすい形でまとめてもらえてありがたいし、随所に著者の率直な見解が差し挟まれているところが、大変面白かった。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/747363 -
アケメネス朝(ハカーマニシュ朝)とサーサーン朝(エーラーン帝国)の2王朝をペルシア帝国と定義し、この間概ね1000年の勃興を概説している(なお、アルサケス朝パルティアは最低限の記述のみ。)。ギリシア等ヨーロッパから見た歴史ではなく、ペルシアから見た歴史を描いており新鮮に映る。古代オリエントの世界を眺望する良書。それだけに帝国と深く結びついていたゾロアスター教について十分な背景知識なく自説が述べられているのは、初学者に優しくない。
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イスラーム期以前の,主にハカーマニシュ朝とサーサーン朝についての解説本である。
本書では,古代ペルシアのエネルギーが拠って来るところを,ハカーマニシュ朝における大王の宮廷政治と,サーサーン朝における皇帝と大諸侯との鬩ぎ合いに見る。(p25) -
ギリシャからの視点でしかみてないので、やはり固有名詞が紐付かずアケメネス朝のイメージが湧きにくい。
サーサーン朝からはもともと知らないので面白い。 -
(本書ではペルシャ語表記にこだわって違う表記をしているけど、ここでは判りやすくギリシャ語表記で)アケメネス朝とササン朝ペルシャの通史。最初は慣れないペルシャ語表記に戸惑うものの、ササン朝になると筆者の筆が滑らかすぎて一気に読めてしまいます。宗教的にはゾロアスターのみということは無く、結構込み入っていたのだなと。
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ゾロアスター教、イラン・イスラーム思想を専門とする著者によるペルシアから勃興した2つの帝国史の概説書。人名・地名表記に慣れるのに少し時間がかかったが、徹底したペルシア視点からの記述が新鮮で面白い。
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大部分は読み進めるのが大変だったが、ホスロー二世の治世になって、がぜん面白くなった(当時の人にとっては、堪ったものではないが)。
ビザンティン帝国と戦端を開き、相手の首都をお互いが同時に攻撃するという、聞いたことがない状況。「どうなっちゃうの、これ!?」というドキドキ感。
4軍すべて投入し、よく他から攻められなかったと思う。まあ、他にいなかったから投入できたのだろう。
全体を通して、名前と地名が覚えられなくて苦しんだ。同じ名前の人が何度も出てくる。当時は「二世」「三世」が付かなかったとのことで、もっと大変だったのだろう。
欧米の名前では入らないようなところに長音が入るのも要因かしら。
王の後継者争いは、常に血なまぐさい。協力するということがなかったのかと思う。親兄弟で切った切られたをやっている。マキャベリを地で行っている。古代ローマ帝国より酷い。
王の配偶者は近親婚が主のように感じた。酷いのは父娘婚まである。これでよく健康上で問題にならなかったと思う。
意外と言っては失礼かもしれないが、都市構築の能力はとても高かったというのに驚いた。単にチグリス・ユーフラテス川の恩恵だけではなかった。
本書に出てきた古代ローマ共和国・帝国では次の人々。『ローマ人の物語』で読んだのが懐かしい。
可哀想なクラッスス(敗死)
ゴルディアヌス3世(戦死)
フィリップス(撤退)
ヴァレリアヌス(捕虜)
ディオクレティアヌス(ナルセフ一世の敗退)
コンスタンティヌス大帝(内戦で忙しい)
ユリアヌス(戦死)
序盤で偽造された碑文の話が出てくる。
ペルシアの各帝国では全体的にほとんど文献が残っていない。3世紀までは、岩に刻んだレリーフと墓、碑文、あとギリシャの文献くらい。4世紀からは碑文もなくなる。なので、ねつ造が比較的やりやすそう(真贋のチェックがしづらい)。炭素同位体年代測定が重要だと思う。
貨幣考古学というものをしった。一時期に貨幣を鋳造していなかったら、その地域はその期間は他国に占領されていた、など、面白い。
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