数学者の夏

著者 :
  • 講談社
3.52
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本棚登録 : 433
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065208489

作品紹介・あらすじ

天才的な数学の才能を持った高校生、上杉和典は校内の理数工学部に所属している。今年から部員でリーマン予想の証明に取り組んでいたのだが、和典は皆で議論を戦わせながら進めていく方針にどうにもなじめない。皆は合宿でリーマン予想に取り組むというが、和典はひとりで証明に挑戦するため、長野の山奥で夏休みを過ごすことにした。ここは古くから高校生や大学生、予備校生を対象に学生村を開設しており、和典の学校でも募集の告知があった場所の一つだった。
和典はそこで、ホームステイをしながら数学に没頭しよう、そう意気込んでいた―ー。

ステイ先に到着するやいなや、問題に取り組む和典。だが、不注意により書き込みをしていた紙を飛ばしてしまう。すべて回収したと思いきや、一部垣根を越えてよその家まで飛んでいってしまったことが分かる。
そしてこの飛ばしてしまった紙が、和典に思いもよらぬ出会いをもたらすことになるとは、誰も知る由もなかった―ー。

感想・レビュー・書評

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  • 数学を心の拠り所としている主人公が
    一夏の出会いで成長してゆく物語。

    歴史的事実と過疎化する村の問題を絡めつつ、
    主人公が村で起こる不審な窃盗事件の犯人を
    突き止めようと奔走する。

    事件の謎を解きたい願望は、数学の才能に
    限界を感じて壁にぶつかり、鬱々としている
    主人公にとって、眼前の問題から逃げだす
    格好の言い訳にもみえました。

    でも、現実逃避と分かっていても
    犯人を知りたい欲求と解を目指す嗜好を
    重ねて話が組み立てられていた気がします。

    数学用語が多々出てくるため、
    理系でないわたしには読みづらかったので、
    途中、何度か折れかけましたが、
    『終わりよければ全てよし』
    暗い結末でなかったのが救いでした。

  • 探偵チームKZのティーン向けシリーズ。主人公は上杉君。高校二年になり、大好で実力あった数学で自信をなくしかけ、逃げるように伊那谷の山間夏期合宿のようなツアーに参加した。そこで久しぶりに彩と再会!彩と上杉の中学時代の関係語られます。もしもし悩み相談室で黒木くんと小塚くん登場します。
    数学や満州、日本における田舎の立ち位置など、KZあるあるの雑学小ネタがやや中ネタ語りになりながら話が進んで行きます。KZ大好きで難しい本も読めるようになってきたら、二人の関係にえ~っそうなの!と読めます。猥褻や盗撮等変態さんが出てくるので、中学校から(たいした描写ではない)。ソ連国境からの引き揚げで、もしかして踏み込んでくるか?と思ったけど、慰安系はなしです。

  • 相変わらず、藤本ひとみ先生は読者を惹きつけるのが上手い。まさかアーヤが登場するとは思わなかった。二人の関係に、手汗が止まらなくてニコニコしぱっなしだったから表情筋が痛い。今回のお話も高校と大学の受験用紙に出るのかな?藤本ひとみ先生のそういうお話チェックしなきゃ。

  • KZシリーズ読者がちょっと大人になって読んだら、泣いて喜びそうな話。
    上杉たち主要メンツが高校生になって出てくるシリーズ。
    自信に満ち溢れていた小学生時代を眩しいものとして語ってくれるのがいい。

    夏休み、数学のためにとある田舎へ出向いた上杉が出会う事件の話。アーヤとの再会が胸アツ。

    学校図書館に置くには話が割とディープなので中学生以降かな。

  • 数学に魅せられた少年が、行き詰まりを感じて田舎の合宿プログラムに参加。そこでは不可解な事件が次々と起こり、数学で培った論理的思考力を解決する、というミステリ。『羊と鋼の森』と同じく人生に行き詰まりを抱えた若者が、自分の進むべき道を決める、というテーマ。数学をしていると時間を忘れてしまうと言う経験のある人は共感ポイント多数でオススメです。

  • 数学に悩む臨場感を高校生らしさを感じられる言動が描写されつつ、恋愛模様が随所に入っていて面白かった。

  • 2023.6.22

  • 思考は個人がするものだが、感情は人と人との間に生まれる。
    人間である以上、その思考は必ず感情に影響を受ける。
    リーマン予想の行き詰まりと今の和典の人生における壁が対比されながら物語が展開され、伊那谷村の村民、偶然の再会を果たした立花彩との関わりの中で数学に閉じこもっていた自分から脱却する。

  • 約300ページの中で形成された人間関係が鮮やかだった。また、私は進路に悩むことがあって上杉が数学に挫折する所では自分と重ねてしまったところもあった。

  • 伏線、トリックなどは平凡でミステリを読み慣れている人ならすぐわかる。
    ただし、数学の比喩と絡めると主人公の心情があざやかに浮き上がり、各種問題の本質と心情の絡まりが心地よい。ミステリではなく、青春小説として大いに評価できる

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著者プロフィール

長野県生まれ。西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説で脚光をあびる。フランス政府観光局親善大使。著作に、『新・三銃士』『皇妃エリザベート』『シャネル』『アンジェリク緋色の旗』『ハプスブルクの宝剣』『王妃マリー・アントワネット 華やかな悲劇のすべて』『幕末銃姫伝』『i維新銃姫伝』など多数。青い鳥文庫ではKZのほかに「妖精チームG(ジェニ)」シリーズ、『マリー・アントワネット物語』『三銃士』も手がけている。

「2019年 『探偵チームKZ事件ノート 特装版 校門の白魔女は知っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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