なぜネギ1本が1万円で売れるのか? (講談社+α新書)

  • 講談社 (2020年10月22日発売)
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065214473

作品紹介・あらすじ

失敗に次ぐ失敗、それでも僕たちは、ネギ界のダイソンを目指す!

ミシュラン星付きのシェフは唸り、スーパーのバイヤーたちは喜び、大手種苗会社の営業担当者は膝を打つ。「ブランド創り」「マーケティング」「営業の肝」「働き方」・・・・・・、常に革新を求める彼のネギにはビジネスのすべてが詰まっている!!
風雲児による、おもしろすぎる経営論。

●相手を見極めるのがポイント
●常識を疑え
●物量は力なり
●3本セットから2本セットに替えた理由
●なぜスーパーに営業をかけたのか
●高いものを安く見せる
●作業はバックが鉄則
●土寄せの極意
●有機肥料が良い理由
●作業を時速で考える
●畑は小さいほうがいい
●端っこ2メートル問題
●サポート係で4割の生産性向上
●自分のペースで働ける会社に


清水寅、身長158センチ。「初代葱師」を名乗る彼は、「ねぎびとカンパニー」という会社の経営者でもある。高校卒業後、金融系会社に就職。その後営業で頭角を現し20代で7社の社長を歴任。そこから30歳でまったく無縁だった農業の世界に飛び込み、ネギ農家に。多くの失敗を重ねながら、持ち前のバイタリティと探究心、そしてサラリーマン時代に培った経営感覚で、農の世界で大きな渦を巻き起こしている。

感想・レビュー・書評

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  • それは、それだけの価値があるものだから
    です。

    年に数本しかつくれず、他のどのネギより
    立派で美味しく、甘いネギなので需要もあ
    るそうです。

    ただ、それだけがビジネスの目的ではなく
    真の狙いは「他のネギも高く売ることがで
    きる」点です。

    「ちょっと高いけれど、これだけ美味しい
    立派なネギを作っているのだから、他の普
    通のネギも美味しいに違いない」とお客様
    が思ってくれる、それが戦略です。

    さくらんぼやブドウのような果物と違って
    野菜、特にネギは品種や等級もなく、価格
    は単なる収穫量に左右されるだけです。

    そこにブランドされたものを作り上げれば
    それは注目を浴びるのは当然です。ビジネ
    スの王道です。

    そんな王道のヒントを学べる一冊です。

  • すごいオトコが、農家に参入してきたものだ。とにかく、日本1を目指すのだ。なかなか、農業に参入してくる新規就農者でも、日本1を目指して取り組む人はいない。いわゆる一番をとって、天下人になるということなのだ。てっぺんを取らなければ、世界は見えない。とにかく、集中力や細部にまで疑問を持って取り組んでいる。スピード感がある。まさに、農業は前途洋々たる未開拓分野がいくらでもあるのだ。山形天童市で、ネギを始めるのだが、最初から1ヘクタール。日本の農家の石橋を叩いて行き詰まる手法とは違う。私も、中国、雲南省にいて、農業会社のトップから言われたのが、トマトを作りたい。温室で4ヘクタールだという。その方が、早く結果が出るという。確かにそうだ。清水寅は、現在ネギを10ヘクタール近く作っている。
    この本を読みながら、気がついたことが多かった。目標はあくまでも日本一なのだ。そして、問題意識が鮮明であるがゆえに、当たり前とされている農家の壁を突破する。日本一になるには、どんなネギを作るのかが、実践の中で理解していく。「1町歩なんか不可能だ。最初は1反歩から始めるほうがいい」という周りの農家なんかに耳を貸さない。まぁ。よく働くのだ。1日18時間働くというから、それはモーレツ農家なのだ。そして、参入して400万円売り上げれば表彰されるという農協職員の言葉に驚き、市場で値段が決められて、自分で値段が決められず、安すぎることだった。どうやって食っていくのか?ということが鮮明なのだ。つまり、趣味の農業ではなく、ビジネスそして経営としてネギ農家を営むのだ。
    「物量は力なり」という言葉に、感激をして取り組む。ネギは水はけがいい土地で栽培する。2Lのサイズのネギの方が単価が高く、作業が楽である。虫や病気になるのは、硝酸態窒素が多いことで、それを減らせば、虫も減り、病気も減る。とにかく、現場観察力が芯をつかむ。そのためには、有機肥料を使う。彼は、有機の中で、アミノ酸やペプタイドを直接吸収するという研究成果もきちんと知っている。なぜなのか?という質問を常に持っている。例えば、ネギだけではダメなので、加工食品を作る。いわゆる農水省が推進した6次産業である。ネギのあらゆる加工食品を作るが、結果として、加工食品メーカーは味の素など巨大メーカーに太刀打ちできないことを知る。結局は、農水省の予算稼ぎの口実なのだ。結局は苗に向かうのは正解である。私も、農業に参入しようとした時に、自分で価格が決められる農業は苗事業しかないと思って、苗から入った。
    何と言っても、営業することが自分の得意とすることだということで、5Lのネギをモナリザとして1万円で売ろうとする日本一ネギ戦略は、素晴らしい。自分でブランドを作り上げている。いいなぁ。
    清水寅。日本一を目指して、どこまでも伸びて行くだろうね。何を疑問に思ったかということこの本には書いてあって、若き農業者、新規就農者は学ぶべきである。私も、随分教えられた。

  • 前半の自慢話コーナーでは読むの止めようかと思ったが、特に後半はサラリーマンにもダメになる内容だった。万人にできるかは疑問だが、、中盤の農業の専門的な話の箇所は読み飛ばした。

  • これまでは生産者の本を読んだらたいてい作ってるものを食べたくなるのだが、今回はまったくならなかった。
    ネギが嫌いなわけではない。
    他より数倍高い価格で20度超えの糖度のネギを欲しくはないというのがまず一つ。
    普通のネギで十分。
    「ネギはそういう野菜じゃない。庶民的な値段でないと無理なんだ」というスーパー担当者の感覚に近いかな。

    それと売り方が何か嫌。
    著者は、消費者金融時代に培った営業スキルを駆使して大都市圏に積極的に売り込みをかける。
    「恋するカボチャ」とか「キスよりあまいほうれん草」などキャッチーなネーミングを考え出すのだが、ずぶの素人でも自信満々の大言壮語。
    何万個を出荷したらどれくらいの儲けになるとゴールを設定したら、あとは見切り発車でGO。
    適正分量もわからず原液のまま消毒薬をドハドバかけて、虫が付いてるとクレームがあると、回収して高圧洗浄機で吹っ飛ばし塩水に漬けてまた売り場へ。
    そりゃ腐るって。
    あまりにも事業計画が無謀すぎて、山形を飛び出て日本中を車で駆け回ることに。
    気づいたら運転席で脱糞していたことも。

    ゆっくり慎重に歩くのではなく、とにかく全速力で走り続ける。
    失敗を何回繰り返そうが、助走があればあるほどその分飛躍も大きいという考え方。
    農業ビジネスに参入してやると鼻息荒く野心満々な人には拍手喝采かもしれないが、自分はどちらかというと彼らに敗れ去った者たちにシンパシーを感じる。
    ネギと苗だけで3億円を売り上げ、従業員もパートを含め数十人を雇用し、地元経済への貢献は大きいが、ネギ全体の消費量が爆発的に増えたわけでもないのなら、その分だけ割りを食った農家もそれなりにあるはず。
    勝者の裏には敗者あり。
    2Lなど高価格帯のボリュームゾーンを独占されているなら、MやLなどのそれ以下のサイズはますます薄利多売となるはず。
    どんどんと廃業が進めば、ゆくゆくは安くて普通のネギを買い求める消費者にも皺寄せが来るかも。

    それでも知らなかった、面白い話はいくつかあった。
    雨の日に畑に入られるのを農家の人は特に嫌うというのもそう。
    濡れた土を踏むことで、土中の酸素が抜けてしまう。
    おまけに乾いた時にそのまま固まってしまうため、根の呼吸もしにくくなる。
    湿った畑には入るべからず。
    土は常にフカフカをキープしたい。
    畑をフカフカに保てば、内部が乾燥しやすく、雑草の発芽も抑えられる。

    だが、赤ちゃんネギの時は別。
    フワフワだとヒョロヒョロの弱い丈しかできない。
    ギュウギュウの土にして、上に重い土まで載せることで、太くて丈夫な丈にすることができる。
    赤ちゃん苗は過保護に育てたいが、早い段階で風雨に当てた方が強く太いネギが育つのも経験してわかったこと。
    「いかに育ちすぎを防ぐか」というのも農家にとっては重要な指針で、東北のような雪国の苛酷な環境も、丈夫な苗作りとってはアドバンテージになりうるのだ。

    経験上わかったことは、雑草とは無理に戦わないこと。
    どうせ勝てっこないのだから、撲滅を目指すのではなく、はなから雑草が好む土地には作付けしないこと。
    いまはどんな畑でも借りやすくより取りみどりなのだから、土の質を見て、雑草の出やすい畑は借りないこと。
    目の敵の雑草だが、実は中に病気や虫に効果のある雑草もあって、そういう雑草はあえて畑に蒔いて、休眠中の畑のリカバリーに貢献させている。

    ネギなどのお馴染みの野菜は、大量に出荷できるところが有利で、価格も高く買ってもらえる。
    普通ならバイヤーが大量に買い付ければその分リベートで安くなるはずだが、農産物の世界では逆になる。
    スーパーやレストランなどの大口顧客が最も恐れているのは欠品で、それを避けるためなら、多少高い値段を支払うことも躊躇しない。

    他にも、ホウレンソウは大きく育てた方が甘くなるというも知らなかった。
    事実、大きくすればするほど、エグみの原因となるシュウ酸や硝酸が減少するのだとか。

  • ここまでやるのってすごいと思う

  • たかがネギだと思って読んだが、数字を用いて客観的に分析した経営をされている方で、非常に考え方が参考になった。

  • 農業のイロハも知らない状態でネギというニッチな市場に挑んでいった著者の実体験の話で、心構えやビジネスのやり方の参考になる内容でした。
    営業の基本は相手を知ること。
    ブランド品を1つ作ることで普通の商品の商品価値を上げることに成功した話はかなり参考になった。
    あとはいかに仕事を競技化して効率良く楽しめるような仕組みを考えて実行していくところも感心させられた。
    常に実験、検証、研究し続ける姿勢に見習おうと思わされた本でした。

  • ●ねぎびとカンパニー。のモナリザ。8本一万円の真の葱を上回る1本一万円。
    残りの2,000,000本の葱も少しでも高く得るため。
    ●嫁さんの実家、山形の天童市。
    ●抜根代が200,000円でも、行政から70,000円の補助が出るからかかる費用が130,000円。その果樹園を叩きに変えて1,500,000円の売り上げが立つなら使うべきじゃないですか。
    ●農協に出さないなら、まずは蕎麦屋。
    ●多くの病気には気温と湿度が関係している。湿気を防げば、病気はある程度まで予防できる。だから雑草対策が最大のテーマ。
    ●毎日2時間は見回りする。

  • 農業しか知らない人では、このようなアイデアは浮かんでこないなと思った。
    やっぱり異業種から学ぶことはたくさんあると思うし、なにか真剣に打ち込んできたからこそ、そこで学んだことを次のステージに生かせることがある。

    憧れの仕事が農業というのはまだまだ難しいが、こういう方が何人もいれば農業という職業が憧れの仕事になるのも遠くはないと思った。

  • 面白い。

    タイトルがキャッチー。

    文字通り泥臭くやっている著者が、ネギにかけた想いが伝わってくる。面白いのはこの時、想いであればビジネスはそこまでというのもあるのだが、ガンガンそこをビジネスにしていくのが見てみて気持ち良い。

    一章では消費者金融というところでやや引いてしまったが、100%努力であるところがやはり面白く、そのままネギでも結果を出せるというところにもっていったのがやはりすごいと思う。

    アンチテーゼではないが、では自分が出来る人は人の教育はどうだろうかというところで、やはり最初は色々あったように思うが(翌日にだれも来なかったくだり)、その人の適性を見てコミュニケーションしていくところはさすがといえる。

    あとはやはり、ネギ以外の副収入としてのトライアルも非常に面白い。成功している、例えばモナリザや真の葱のようなものはすごいので、それだけ見るととても失敗をしているようには見えないだろう。だがしかし、失敗もめちゃくちゃしているからこそ、いくつかの成功を得られている。これはもう著者の生き方ややり方がそのままといえるが、それくらいやらないと捉えるのでなく、どこならスイートスポットとして無理なく、それこそ楽しみながら出来るか。そこを探るということに力を入れたほうが良いと再確認出来る。

    ネギで10億の売上。ぜひ見てみたいと感じた。
    見かけたらネギも買ってみます。

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