- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065217764
作品紹介・あらすじ
一六世紀、スペイン人によるアメリカ大陸征服史が始まる。黄金を探すコロンブス、ピサロ、コルテス……。抵抗する、モクテスマ、トパック・アマルなどのインディオたち。栄華を誇った帝都と文明は、いかに滅ぼされたのか? 西欧と非西欧の壮絶なる戦いの記録を、既存の、スペイン人主体の史料では触れられなかった「敗者の視点」から再検証、植民地時代から現在へ続くラテンアメリカの被征服史を辿る。
プロローグ 黄金の夢
第一章 コロンブスの目指したシパンゴ
第二章 冒険者バルボア
第三章 メキシコの発見
第四章 首都の攻防
第五章 対決
第六章 「悲しき夜」
第七章 英雄の敗北
第八章 太平洋と中央アメリカ
第九章 南の海の探検
第一〇章 カハマルカの悲劇
第一一章 クスコ占領
第一二章 征服者たちの争いとインカ
第一三章 アラウコの国とパンパ
第一四章 ムイスカの黄金
第一五章 エル・ドラードとアマゾンの国
エピローグ 征服者たちの黄昏
あとがき
年表
民族と地域
人名検索
2002年小学館より刊行されました
感想・レビュー・書評
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アステカ文明とインカ文明を破壊したスペイン人のことについて、きちんと学ぶ機会はなかったのだが、この本を読んでだいぶよくわかった。
とにかく「金に狂ったスペイン人」は、現地人を騙して、虐殺しまくる。その背景には、キリスト教があって、邪悪な異教を信じている悪魔を虐殺するためならどんなに汚い手段でも使う。
それに対して、インディオたちの純真さはどうだろう。金のありかを聞かれて答えてしまう。歴史とは正しい正しくないということではないといいながら、このスペイン人の不正はナチスどころではない。
想像すると気持ち悪いほどの残虐行為を、敬虔なクリスチャンが行うのであるから、現代のタリバン勢力の非人間性なんて問題にならない。キリスト教の信者たちよ、あなた方の先輩が世界中で犯した残虐な犯罪行為に少しでも心を寄せてください。
隣人への愛がキリストの教えであるはずなのに、隣人を動物以下扱いをする悪魔になっている。それは十字軍遠征の時もそうだったし、帝国主義による植民地支配の時もそうだった。
キリストよ
あなたは苦しみから救わないこともさること
残虐な殺戮行為を十字架を掲げながら行うあなたの信者についてどう思うのだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
凄まじい蛮行と収奪のイメージの強いスペイン人の南米征服だが、ほんの前世紀までは栄光の大遠征、大探検にして、原住民を野蛮な風習から解放する善行ですらあった。本書も被征服者視点を謳ってはいるものの、事績をスペイン人の記録によっている為、悪行への糾弾はあるとはいえ、どうしても征服者目線がち。ただ文明が文明を滅ぼす行為は人類史では普通で、ある意味それが海を隔てた未知の大陸で起こったに過ぎない。負けた側視点で見ると、僅かな人数に支配され横暴を許した既存の大帝国への忸怩たる思いだけがあり、勝った側から見ると、ほとんど情報の無い広大な大陸を、黄金欲の赴くまま探検し、様々な未知の要素にぶつかりながら征服するストーリーは、RPGの世界のようにも感じられた。16世紀の支配被支配の関係が貧富の差として今日まで続いているという指摘には、歴史を学ぶべき理由が提示されている。普段世界史として扱われる機会の少ない南米史だけに、インカとアステカ征服の経緯をテンポよく追った本書は、概史としてお薦め。
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配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01435536 -
スペイン人によるアステカ・インカへの進出に関する歴史を解説した本。
残された様々な記述をもとに時系列で何が起きていたかを解説しており「こう記されているが本当はこうだったのではないか」と、研究に基づく説が記されているのも分かりやすく良かった。実際のところ、スペイン人側が記述した書物は勝者の歴史であり、王室に対して支配の正当性を説くという側面もあっだろうから、すべての情報が正しいわけではないのだろう。
この本の内容からは外れるが、モクテスマ(モテクソマ)が優柔不断な王でコルテスに丸め込まれたというのも、最新の研究だとモクテスマ1人のせいではなく、当時の社会的状況から必要な行動をとったということが分かってきたとのこと。
壮絶な争いが繰り返され、多くの死者を出してきた歴史であり、著者も後書きで記していたとおり、今日の人種差別などの問題にも直結していることを考えるとコンキスタドーレスのやってきたことは重い。
スペイン人があまりにも金を要求するので、現地民からは「スペイン人は金を食べるに違いない」と思われた…というのが印象的だった。 -
4.2/69
内容(「BOOK」データベースより)
『一六世紀、スペイン人によるアメリカ大陸征服史が始まる。黄金を求めたコロンブス、ピサロ、コルテス…。抵抗するモクテスマ、トパック・アマルなどインディオたち。栄華を誇った帝都と文明は、いかに滅ぼされたのか?西欧と非西欧の壮絶なる戦いの記録を「敗者の視点」から再検証し、植民地時代から現在へ続くラテンアメリカの被征服史を辿る。』
『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』
著者:増田 義郎
出版社 : 講談社
文庫 : 424ページ -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/768260 -
黄金を求め、未知の大陸を求めて冒険に出た者たちが侵略者となり、略奪者となり、残虐と不合理と残忍極まりない行為を繰り返していく。
読めば読むほど、特にインカ侵略のピサロの話はどんどん具合が悪くなるほど閉口モノだった(戊辰戦争の本読んだ時も残虐性に閉口したのを思い出した。なんだって戦争ってこんなに人の体をぐちゃぐちゃにすることに抵抗がなくなってしまうんだろう。ただ殺すだけ、命を奪うだけではなく、その後の遺体損壊→晒すというのが、嫌悪感の要因か。えげつない拷問と処刑がエンターテイメントだった時代というのが、もはや今の時代と価値観違いすぎて、心に線引きしないとぐはーってなる。)。
ピサロって悪い人のイメージだったけど、補強された感じ。
しかも異母異父弟やら従弟やら、ピサロたくさんいるし。
もうやめてくれーと思いながらページをめくった。
それくらい、記述が真に迫っていて詳細だった。
補給に関しても侵略者側が飢えてとんでもないものまで口にしながら生き延びていくこともあれば、兵糧攻めにされて滅んでいく国もあり。
前半のアステカの方はまだ見れた、というか、先にインカを読んで前半のアステカに戻ってきたので、耐性がついてしまったのかもしれない。
生け贄にする残虐なやり方は、侵略者たちに憎悪と復讐心を掻き立てたことだろうということも理解できた。
その憎悪の結果、略奪や処刑や侵略行為もろもろが、さらに増幅され、互いに増幅を重ねていったことも想像に難くない。
そんな中において、流行する疫病で滅ぶ侵略者たちや原住民たち。
目に見えないウイルスや細菌が原因となる病に対抗することがに難しいかをわからせてくれる。
そして、略奪や侵略を繰り返す男達の話の中に出てくる女性たちは、物のように侵略者たちに捧げられる話が多かったが、その中でも通訳としてやがて子まで成した女性の話が挟まれていたり、その子供がスペインでいかにたくましく生きたかにも触れられている。
あとがきに今日の状況について、この16世紀の出来事に端を発しているというのに、はっとさせられた。
ずいぶんと長い年月の間に染み付いてしまったのだろう。
書の初期の方には、インディオたちは大人しかったとも記述されている。
南アメリカ大陸で繰り広げられたこの殺戮の歴史は、黄金に目が眩んだ故だったのか、と思うとやるせないが、冒険にも金がかかる。その金を購い、さらに裕福になるためには、どこまでもトチ狂っていってしまうのかもしれない。
というか、この時代の人の生命や倫理観というのはこんなものだったということも踏まえて読まないと、やはりかなり厳しいものがある。
読み終わって、ふと、よくジパングはこんな目に遭わなかったなとつくづく思った。
湖の真ん中にある島のアステカですら滅ぼされ、インカですらも滅ぼされたというのに、まあよく生き残ったものだ。
大西洋を渡りきることの難しさ、スペインやポルトガルからすれば、アメリカ大陸の方が近かったのだから、まずはそこから征服意欲を満たしていった、としても、同じ頃日本にも鉄砲は伝来し、キリスト教も宣教師が来ていたのだから……補給路の長さ故なのかなんなのか、よく滅ぼされなかったものだ。