今度生まれたら

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065218723

作品紹介・あらすじ

70歳になった佐川夏江は、夫の寝顔を見ながらつぶやいた。
「今度生まれたら、この人とは結婚しない」
夫はエリートサラリーマンだったが、退職後は「蟻んこクラブ」という歩く会で楽しく余生を過ごしている。
2人の息子は独立して、別々の道を歩んでいる。
でも、実は娘がほしかった。
自分の人生を振り返ると、節目々々で下してきた選択は本当にこれでよかったのか。進学は、仕事は、それぞれ別の道があったのではないか。
やり直しのきかない年齢になって、夏江はそれでもやりたいことを始めようとあがく。

2大ベストセラー『終わった人』『すぐ死ぬんだから』の著者が放つ最新「高齢者」小説!

感想・レビュー・書評

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  • 前2作『終わった人』『すぐ死ぬんだから』と本作『今度生まれたら』と近作『老害の人』で高齢者小説4部作というらしい。
    近作の『老害の人』は未読だが、どれも仕事(勤労・労働)への希求がある。
    今これを書いている私(65歳)は今年から隠居の身だが、勤労やボランティア等への意欲は全く無い。

    我が人生悔い無し、とはとても言えないが、それを考えたところで。。。という気持ち。
    そもそも労働意欲なんぞは40代半ばくらいから減退していた。
    もう50代からは定年後のことを考えながら、受験や学費や住宅ローンの工面などに追われながら日々送っていた。
    この頃のことは悔いているかな、もっと色々楽しめば良かった。

    まあ人それぞれとも言えるが、この先男女共に75歳まで働くことに成るという予測もあるのだから、これからの人はこんな悩みは無くなるのかも知れない。

    さて、これから公営体育館でやってるスタジオプログラムで運動してくるかな。
    色々書いたけど読書としては実に楽しい体験だった。

    作品紹介・あらすじ
    70歳になった佐川夏江は、夫の寝顔を見ながらつぶやいた。
    「今度生まれたら、この人とは結婚しない」
    夫はエリートサラリーマンだったが、退職後は「蟻んこクラブ」という歩く会で楽しく余生を過ごしている。
    2人の息子は独立して、別々の道を歩んでいる。
    でも、実は娘がほしかった。
    自分の人生を振り返ると、節目々々で下してきた選択は本当にこれでよかったのか。
    進学は、仕事は、それぞれ別の道があったのではないか。
    やり直しのきかない年齢になって、夏江はそれでもやりたいことを始めようとあがく。
    2大ベストセラー『終わった人』『すぐ死ぬんだから』の著者が放つ最新「高齢者」小説!

  • 痛快!!

    私はまだ(41)のオバハンだけど、佐川夏江さん(70)と同じ悩みというかモヤモヤしたものを抱えているので、やたら共感してしまった。

    いろいろ夢とか野望があって自分に期待していたのに、あっという間に(41)のその辺のオバハンに!!
    健康寿命まで30年ほど、今は幼児がいるのであと15年くらいは自分はあと回し。
    結局何もない普通の中年...
    やりたいことが存分にできるのは定年間際?!
    その頃の私は気力体力があるのか?!脳は?!
    考え出すと、やり直せないところまで来てしまったことに絶望。

    そして夫はこの絶望を理解できない。
    そもそも男で(この時点で高い下駄を履いていると僻んでしまう)、家族仲が非常に良く、世話焼きのお母さんに可愛がられ、学校では苛められたことも苛めたこともなく、大企業に就職し、転職先も早々に決められて、時短勤務とか育休なんかとらずにキャリアを継続でき、子供もいて家族健康で幸せだと言える都内育ちの人には分からないのかもしれない。
    当然あるとは思うけど、時代の風潮とか性別や年齢のために何かを諦めたことがないように思える人だし。

    どんな結末を迎えるのかドキドキしながら読んだ。
    幸せそうな人が予期せぬ辛い出来事にみまわれたり、いつまでも気になる息子達が大きな決断をしたり。
    そして忖度や葛藤を経て夏江さんが「前向きなバアサン」になる展開が好き。

    「バアサン」にあたる世代の内館牧子さんが書いているからすごく面白い。
    夏江さんが忖度の裏で心のなかで言う本心に笑ってしまった。

  • 著者の本は、「すぐ死ぬんだから」に続き2作目ですが、めちゃくちゃ面白いです。
    登場人物に個性があり、心理描写も丁寧に描かれており、グイグイ読んでしまいました。
    ぜひぜひ読んでみてください。

  • おもしろい! 70歳の ”悩める主婦” 夏江の本音の部分がおもしろくて気持ちよく、一気に読んでしまった。

    70歳の佐川夏江。杉並の自宅近くの保育園建設に対して、新聞記者のインタビューに答えたところ、「佐川夏江さん(70)」と記事になったのに衝撃を受ける。69と70は大違いなのだ、と。

    わー、70歳だ、一体私の人生って・・と、夏江は戸惑う。夏江は自分を評して、ずっと忖度した物言いをして、相手に、世間に気に入られるように生きて来た、という。しかし本心はちがう。その本心の部分を内館氏はズバリと書く。これがものすごく気持ちいいのだ。

    物語は、起承転結、メリハリよく進む。転の部分で、アッという展開。しかし最後は前に道をつける。内館氏らしい、「陽」の決着。

    実はNHKBSでドラマ化される、番組宣伝をTVで見てさっそく読んでみたのだ。夏江は松坂慶子、夫に風間杜夫、姉に藤田弓子、姉の夫が平田満、読んでてこの顔が頭に浮かび、文字の中で動いていた。

    この夏江、設定は昭和22年生まれ、短大を卒業し大手企業に就職し、そこで2歳上の夫と出会い、二人の息子はもう独立、姑も2年介護して見送った。面倒くさいものから解放された、輝ける70代が開けるのか? と思いきや、「今度生まれたら、この人とは結婚しない」と夫の寝顔を見ながら思うのだ。並みいるライバルをけおとし、猛烈に、しかし深淵に作戦を練りアタックして、しとめた夫なのに、だ。

    しかし、夏江は、本音と建前を使い分けて「忖度だらけのもの言い」の人生を送ってきたのだ。そして当時の女性は結婚がゴールとの風潮を疑いもせず、結婚には短大、主張するよりはうなずく女、を演じて来たのだ。しかし70の今、ターニングポイントは2度あったと思う。あの時あっちの道に行っていたら・・ 

    夏江の本心メモ。
    「七十歳になってわかるが、昭和四十年代は野蛮な時代だった」(24歳すぎて結婚しない女には、『あらあ、娘も哀れだけど親が哀れだね』というのが40年代だった)

    「『口には出さず、腹ン中で思ってろ』と言いたいが言うわけがない。」「みんなして前向きで陳腐な語託を並べてろッ。」「前向きバアさんに食当たりしたのだ」(70過ぎたら趣味とかボランティアに、前向きになれという識者や友人に対し)

    「口には出さなかったが、そういう励ましはマッサージに似ている。その時は生き返るが、すぐに元に戻る」(同い年の識者の講演会に行き、前向きな考えをと言われて)

    「姑のムカつきには手当なしか?」「親の溜飲の下げ方をひとつくらい答えてもいいだろう」(息子夫婦の関係が怪しくなり、人生相談の回答者が、夫婦の問題に親が立ち入るな、ということに対し)


    あとがきでは、内館氏自身が雑誌のインタビューを受け「この件に関し、脚本家の内館牧子さん(70)は・・」と印刷されたのに衝撃を受けたとあった。

    2020.12.1第1刷 図書館

  • 70才の夏江さんの物語。私と世代が違うので共感できる事が少なかった。文句ばかり言ってるオバサンだなーと思ってしまった。趣味を持つことはダメなのかな。私は良いと思うけど。でも70才になったら違う気持ちになるのかな。最後はハッピーエンドで良かったです。

  • 70歳、たしかに、「高齢者だなぁ」と思う年齢である。
    私の住む地域では、行方不明者のアナウンスが流れることがあるが、「69歳の男性が・・・」と流れたら「69歳で行方不明なんて、何があったんだろう」と思う一方、「70歳の男性が・・・」と流れると「認知症で徘徊してしまったのかな」と思ってしまう。
    もし有名人が69歳で亡くなったら「まだ若いのに」と思う一方、70歳で亡くなったら「結構長生きしたんだな」と思ってしまう。
    実際には、1歳しか違わないのにね。
    それくらい、(70)には威力がある。アラフォーの私も、そう思います。

    70歳になって残りの人生に絶望してしまった主人公・夏江。
    ローン払い終わった自宅が有り、専業主婦して育て上げた息子たちは40代で健康に社会的に暮らしている、両親義両親はともに他界しており老々介護もない、夫も健康に老人クラブの活動に精を出している、仲の良い姉がおりよく会っている・・・。
    年金貰えないだろうと言われている氷河期世代からしたら、何が不満なの?と思えてしまいますね笑。
    夏江は、「老人には趣味でもあてがっておけ」という風潮が嫌だそうで、社会から必要とされていない現状に絶望しているのだろうと思う。趣味は、ない時間の合間にやるから楽しいのであって、それしかないとなったらつまらないものと考えているようだ。
    分からなくもないけど、それなら、50代で子育て終了してから、なぜ(70)まで何もせずにいたのだろう・・・?

    内館牧子さんが普段思っていることを、包み隠さず忖度なしに書いた小説なんだろうな、と思った。
    特に、夏江と同い年で社会的に活躍している女性弁護士の講演会でかみついた夏江は、「え、こんなキャラだっけ?」、と前後の人格的つながりがないほどに、べらべらと演説めいていた。あれが、内館さんの本音?

    「あのとき別の選択をしていたら」と思うのは、年代関係なくよくあることだ。
    手に入れなかったものが輝いて見えることってあるよね。私もあります。
    若い時なら、「もう一度あのときの選択をし直して、人生やり直すんだ」と暴走する人もいるかも。このお話では、70過ぎて暴走した方が一人いましたが・・・。
    例えば、昔フッた男が成功者になっていた。彼を選んでいたら、今は私もきっともっと輝いた人生を送っていたのかも・・・。
    しかしここで夏江の良いところは、「もし私が彼とくっついていたら、彼は成功していなかった」と冷静に振りかえることができるところだろう。
    だから、夏江は暴走しないし、その結果、この本ではたいした事件もおきない(笑)。
    そんなふうに、手に入れなかったものを欲しがらない冷静なところが(70)なのかな。
    だとしたら、やっぱりそういう年齢って、私はいいなと思います。
    自分の人生の生きがいが何であるか?残りの人生何に使うか?そんな自己完結できる贅沢な悩みを持てるのは、やはりいい人生だなと思うのです。

    余談だけど、園芸ボランティアをできることになったときの夏江の描写が、私の母(65)と全く同じで笑った!
    もう働く必要ないのに、いつまでも社会と繋がっていたい、誰かの役に立ちたいという思いも、母と夏江は似ている。正直、私が65~70になっても、そういう気持ちでいられるとは思えない。なぜなら、もう十分に社会で魂をすり減らしたからだ。
    今すぐにでも隠居したいと願うアラフォー娘は、どんな老人になるんだろう。

  • 身に覚えがあることばかりで前半は自分を否定されている気がして卑屈な気分になってしまった。
    でも、結局は面白く、あっという間に読み終えた。
    自分のこれからの生き方を少し考えてみよう。何も変わらないとしても…。と、思わせてくれた。

  • 70歳となった夏江の物語、
    少し昔の価値観ではあるが、
    まだ私達にも少し理解出来るところもある。

    若かりし頃の夏江のパワーや
    能力はなかなかのものだ、
    ある種の尊敬の念すら抱く。
    それでもそのうえをいくバンビ!
    ラストの時を経た再登場と展開に
    驚いたが、たしかに私の若かりし時代にも
    こんな女がいたわ!と思った。

    「今度生まれたら〜」は誰もが
    一度は考えるのではないだろうか。
    選ばなかったもう一つの選択肢を生きる自分は
    今も昔も何度となく考えたことがある。

    ラストを結ぶ
    今度生まれたらこの人とは結婚しない。
    やっぱり。
    結局はそうなることの繰り返しなのかな。
    個人的にも激しく同意します笑

    私が好きだったシーンは、第5章、
    弁護士の高梨の講演会
    「人生百年をどう生きるか」
    夏江が納得のいく答えを求めて、
    高梨との問答を繰り返すシーン、
    年齢は関係ない、始めようと思った時が一番若い!
    なんて口当たりの良い答えでは、
    全然満足できない気持ちが
    よく表現されていた。
    私も!と思った。
    誰かに答えを貰いたいわけじゃないけど、
    真剣に向き合う夏江に自分を重ねた。
    行き着くところ、
    私も見つけられるのだろうか…

  • 「終わった人」「すぐ死ぬんだから」を読んでいたので
    読みました。なかなか面白い。
    うなずける!そして笑える。思った様に生きている人って
    どのくらいいるのだろう?
    お互いに目をつぶる事、我慢をすることで生きて来ている人の方が多いと思います。
    何が幸せか?晩年になってわかる事も多いのでしょうね~

  • 自分は、60歳を越えて、今生きている実感がある。後、10年経ったとき、はたして自分の足で歩いて、生き生きと生の実感を感じる生き方をしているか。考えさせられた。面白いではなく、生きている実感を大事にしようと思った。

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著者プロフィール

1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業。1988年脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本に「ひらり」(1993年第1回橋田壽賀子賞)、「毛利元就」(1997年NHK大河ドラマ)、「塀の中の中学校」(2011年第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞)、「小さな神たちの祭り」(2021年アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞)など多数。1995年には日本作詩大賞(唄:小林旭/腕に虹だけ)に入賞するなど幅広く活躍し、著書に映画化された小説『終わった人』や『すぐ死ぬんだから』『老害の人』、エッセイ『別れてよかった』など多数がある。元横綱審議委員で、2003年に大相撲研究のため東北大学大学院入学、2006年修了。その後も研究を続けている。2019年、旭日双光章受章。

「2023年 『今度生まれたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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