やばいデジタル “現実”が飲み込まれる日 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065219546

作品紹介・あらすじ

2020年の1年間で生み出されたデータ量は「59,000,000,000,000GB」。
これは、YouTubeの高画質動画57億年分にも相当する。


デジタルは、私たちの社会をさらに自由に、豊かにしてくれるーー。
しかし、それが実にはかない願望であったことを、私たちはいま実感させられている。

SNSの広がりは「真実」と「フェイク」の境界をあいまいにし、私たちは「フェイク」に踊らされるようになった。

文脈を失い、断片化された情報は、それがデマであってもまるで真実であるかのように、「いいね」がつけられ、世界中に拡散されていく。

ビッグデータに蓄えられた検索履歴は、私たち以上に私たちのことを知り尽くしたデータ=「デジタルツイン」となり、私たちのプライバシーを丸裸になりつつある。

にもかかわらず、私たちは、デジタルの恩恵から逃れられないのだ。


フェイクが横行し、プライバシーが剥奪され、リアルはデジタルに侵食されるーー。不自由で非民主主義的な世界を、私たちはどう生きるべきか。

「フェイクによって何が奪われているのか」「便利さと引き換えにどのようにプライバシーを受け渡してしまっているのか」という2つの問題意識をもとに、2020年4月5日、12日に「NHKスペシャル デジタルVSリアル」というシリーズ番組を全2回で放送した。

この放送だけでは伝えきれなかった取材内容をふんだんに盛り込み、現代のデジタル世界を紐解いていくというのが、この本の狙いである。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、2020年4月に放映されたNHKスペシャル「デジタルVSリアル/第1回 フェイクに奪われる“私”」及び「第2回 さよならプライバシー」の取材を基に、番組で取り上げられなかった内容を含めて書籍化したものである。
    あらゆるもののデジタル化が急速に進む今、我々はどのような世界に住んでいるのか? 取材班は「はじめに」でこう述べる。「SNSに広がりは「真実」と「フェイク(偽物)」の境界を曖昧にし、私たちが「フェイク」に踊らされる事例が数多く発生することになった。文脈を失い、断片化された情報は、それがデマであってもまるで真実のように、「いいね」が付けられ、世界中に拡散されていく。極端な意見に共感が集まり、主義主張の異なる者同士の罵り合いが加速する。デジタル化の波は、人々の分断を深め、真実を見えなくさせ、フェイクの渦に私たちを巻き込んでいった。さらには、ビッグデータに蓄えられた膨大な個人情報は、デジタルの世界のもう一人の自分=「デジタルツイン」となり、プライバシーは丸裸になりつつある。にもかかわらず、私たちは、デジタルの恩恵から逃れられない。そう、私たちの「現実(リアル)」は、すでにデジタルによって浸食され、デジタルを抜きにしては考えられないものへと変わってしまったのだ。」
    本書は、番組と同様に大きく二部構成となっており、前半は「フェイク」、後半は「プライバシー」を取り上げている。
    番組を見、本書を改めて読んで、「フェイク」については、日々進歩する技術に驚くばかりである。番組が放映された当日にも、ネットに「米国当局が、米国人がコロナウイルスを中国に持ち込んだと発表した」という動画が出て、私の友人の間で話題になったのだが、それはまさにフェイク・ニュースであった。本書で繰り返し述べられている、「私たち一人一人にできることは、「これは本物なのか?」と疑い、偽物である可能性があれば、それを拡散しないという認識を持つこと」、「一番必要なのは、やはり『自分の頭で考える』。そこが第一になる」というスタンスが、今後一層求められるだろう。(前述のフェイク・ニュースは、冷静に考えれば、“仮に事実であったとしても”、米国当局があの時期にそのような事実を公式発表することは200%あり得ない、と判断できる)
    また、「プライバシー」については、私も、古くはオーウェルの『1984年』を、最近では『幸福な監視国家・中国』(梶谷懐・高口康太共著)などを読み、大いに問題意識を持っていたが、「デジタルツイン」という概念にはやはり驚きを覚えたし、ミレニアル世代の次に続く「Z世代」(1990年代後半~2000年代生まれ)は、幼い頃からスマホに慣れ親しんできたデジタルネイティブであり、東京、ニューヨーク、ロンドン、ベルリンなど世界の8大都市に住む同世代の2/3が、「デジタルの世界にプライバシーはない」と考えているということには、大いに懸念を感じざるを得ない。
    2020年は、米国大統領選挙でトランプ氏(支持者)が「フェイク」情報を多用したこと、また、新型コロナウイルスの広がりを抑えるために(中国のような)強権的な国家がデジタル個人情報を使ったが、それが当該国民の多くに支持されたことなどから、「デジタルがリアルを超えた年」として記憶されるのかも知れない。
    アナログ時代に長く生きた私としては、ネガティブな面ばかりが気になるデジタル時代であるが、好むと好まざるとに関わらず、この時代に生きる以上、我々はまず、現実を知らなくてはならない。そのための一助となる一冊と言えるだろう。
    (2021年4月了)

  • 前半は「戦争広告代理店」の続編ともいうような内容
    あの頃はおもにテレビ戦略だったけど、今の主戦場はSNSなどのソーシャルメディアだとわかる
    経済的にも政治的にもどんな人間にどんな情報をどう与えればいいかを探索し続ける、いわば「動機付け」によって人間をしつけていく過程ではと思ったりする
    現代的といわれるSNS、ゲーム、広告、陰謀論などは、それ自体はリアルでの実益をもたらさないが、動機に直接働きかけ大きな力をふるっている
    そして台湾の例をみても、SNSに既存のテレビや新聞が引っ張られているのがよくわかる
    いかにフェイクや世論が作られるかは、アルゴリズムとそれをだます人間のだましあいの様相を呈している


    後半はデジタルツインについて
    検索履歴から個人情報を推定していく作業は出来過ぎた刑事ものをみるよう
    アマゾンのレコメンドくらいのものかと思っていたけど、香港の例をみると国家権力が個人データを監視する危険をはっきり感じた
    ある日気付いたら世界中が善き人のソナタみたいな世界になっている、その瀬戸際にいるのかもしれない

  • 最近いろんなところで話題になっている、ネット上でのフェイクニュースやフェイク動画に関して解説した一冊。フェイク動画を実際に作っているエンジニアや、海外でフェイクビジネスを行っているという「フェイク王」の取材も収録されており面白い。中でも、ある人の9年分のグーグルの利用履歴を解析して、その人の職業・年収・恋愛の有無などを丸裸にした実験が興味深かった(間違った解析結果もあったがほぼほぼその人の情報と一致していた)。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00280020

  • フェイクは困るが、そもそも我々庶民に真実が知らされる時代、あったのだろうか?とはいえ、見抜いていかねば…。

  • 【きっかけ・目的】
    デジタルは便利だと思う。スマートフォン、人とモノを繋ぐIToO技術であったり。
    1995年にマイクロソフトがWindows95をリリースして以降、すごくネット技術は向上した。日々の生活に欠かせないものになった。

    個人的には、今年になってからテレビ、新聞、ラジオ、読書、ネット決済(買い物)、銀行手続き、スケジュール管理はては健康管理など大体のことは、スマートフォンを使い常時ネットに繋がっている生活になっている。

    いわゆるインフラとして完全に機能しているのでないと困るレベルにまでなっている。

    そうなると気になることも出てくるわけである。

    ビックデータという言葉が流行った時にデジタル上の情報がIT巨大企業に吸い取られているという事実に鳥肌が立ったが、立っただけでその後はその危険性に気づくわけでもなく便利さに負けてここまで来てしまった。

    【感想】
    まず、読み終わって鳥肌が立ちすぎて気持ち悪くなった。SFを地で行く時代になったということだろう。ドラえもんの世界観は21世紀になってもできないが、ネット空間を中心に便利さ故に知らない内にあらゆる「しこう」(志向、嗜好、思考など)の痕跡を各サービスのアカウントやメールアドレスに残した結果、デジタルツインが生まれる。

    そして悪意の第三者によって完全にすべてが乗っ取られる。

    フェイクや詐欺、プライバシーの侵害あらゆる事件の温床になっている。

    これを利便性のリスクととり倫理観との狭間で規制をどのように取り入れるのか。政治や行政、民間によるサービス(ショッピング決済など)が対策を如何に取り入れていくのか注視していきたい。

    【終わりに】
    これを読んで「ハイペリオン」というSF小説を思い出した。敵役に人口知能AIが登場するなかなか手の込んだ小説だった。後、もう一つ思い出した小説があるのだがネット草創期に起きた致死性パソコンウイルスについての海外サスペンスだが、タイトルを思い出せない。
    今回読んで思い出したのは図らずもデジタルという仮想空間で「何か」が生まれるという点だ。しかも悪意の第三者という位置づけだ。
    デジタル空間は規制のない状態だ。故に悪意が蔓延るということなのだろうか。なかなか興味深い。

  • フェイク、デジタル監視、個人データは誰のもの。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00557322

  • 2022年10月~11月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00551863

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/747396

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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