中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流 宋朝 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065221433

作品紹介・あらすじ

講談社創業100周年企画「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版、第4回配本。この巻では、唐宋変革期から南宋滅亡までを政治史を概観するとともに、思想文化に焦点を合わせて宋代中国を考察する。著者によれば、中国四千年の歴史のなかで、日本人にもっともなじみやすいのは宋代であり、日本の生活習慣や伝統文化の奥底に「宋」は居着いているという。
大唐帝国を揺るがせた安史の乱から200年、五代乱離のあとを承けて宋朝が建てられた。太宗の下、中央集権的官僚国家が確立、科挙制度の改革により広範な階層から科挙官僚が輩出した。文治主義をとったことの功罪はいかなるものだったか。
なかでも、朱子学の公認は宋という王朝を象徴する出来事だったが、それはどのような背景、環境から生まれ、受容されていったのか。その過程と、そこに関わる士大夫たちの精神について詳述する。
北方の異民族王朝に対し絶えず軍事的劣勢にありながらも、後世まで規範となる政治・社会・経済システムを作り上げた宋朝は、文化の華がひときわ咲き誇った時代だった。宋代に起源をもつ文化の新潮流、陶磁、喫茶、書画、文学などにも目を向け、宋代像を描き出す。〔原本:2005年7月、講談社刊〕

感想・レビュー・書評

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  • 2021/4/29読了
    宋代を扱う。
    今までの先生方とはちょっと異なり、軽妙な文章が目立った。きっと、講義や講演でも、お話が巧いのだろうと想像する。宋は、軍人の権力を弱めた文民統制王朝で、歴代中国王朝の中でも軍隊は最弱と言われているらしい。しかしその分、文化的には高尚なものを多く生み出し、いわゆる和風文化のルーツでもあるのだから、強い軍隊を持つことの功罪を考えてしまう。

  • (後で書きます。参考文献リストあり)

  • 短期王朝に終わった5代に続く宋。趙匡胤が五代最後の後周から禅譲を受けて建国し、6代目の短期に終わらせないという固い決意が、「五代史」の編纂に示され、また「宋」の国名も「殷」を継ぐものという意味があった。そして趙匡胤(太祖)の後を継いだ弟・趙匡義(太宗)は秀吉の後の家康に準える記述は非常に分かり易い。太祖系からの政権簒奪だったのだろう。『資治通鑑』の編者・旧法派の司馬光、欧陽脩や蘇軾と新法派の王安石の対立など、現代の与野党政治を思い出させるだけに、現代に近くなった印象を感じた。そして宗教として儒教・道教・仏教(禅宗)が深化していった時代でもあったのだ。
    楽しい話は宋と契丹の講和条約に際しての契丹に毎年払う和解金について指三本30万円で成約した曹利用を皇帝の真宗が一度300万と勘違いしたが、30万と知って満悦したという逸話。双方が平和を求めていたという背景による、とは今もこのようなことが起こってほしいと思う。この時代に三国志演義が成立し、劉備や孔明が英雄とされ、芸能文化が広まっていったことし、儒教が朱熹の登場により隆盛を極めていったことなど、日本での平安から鎌倉時代よりも、江戸時代を思わせるような印象を持った。

  • KT9a

  • 思想文化に焦点を合わせて、南北300年における時代の推移を明らかにする内容。特に朱子学に関する記述が豊富で、王安石から新旧対立・道学の展開を経て成立にいたる流れ、後世に与えた影響などは興味深かった。

  • 長命王朝の軍隊としては史上最弱とされる宋だが、今日に繋がる政治制度や経済政策、そして高度な文化と(贖った)平和、近世への橋渡し役割を演じた帝国は、惰弱な軍事力の賜物の側面もあり、現代に通じる意義を含んでいるように思える。途中教学の話がメインになり、やや退屈を感じたが、経済発展と平和を享受した人々だけが成し得る文化の興隆は、語る材料に事欠かないのだろう。遊牧民が華北に跋扈する中、所謂漢民族が産物豊かな江南に移動し、中華の成熟を促進、その成果がやがて北へ還流(元王朝)し中華を再拡大する流れは、中国史の読みどころと思う。本書は概説書としてはやや外れで、文化面にスポットを当てた狙いは、読者によって好みが分かれそう。

  • 現代に伝わる日本の文化の基をつくったといっていい宋朝。歴代王朝最弱の軍隊を持っていたが、周辺の民族や国と交渉で渡り合っていたのは、文治主義の面目躍如ではないか。

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著者プロフィール

1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。中国思想史。『儒教の歴史』(山川出版社、2017年)、『近代日本の陽明学』(講談社、2006年)、『宋学の形成と展開』(創文社、1999年)、『中国近世における礼の言説』(東京大学出版会、1996年)、『中国思想史』(共著、東京大学出版会、2007年)、ほか。

「2021年 『東アジアの尊厳概念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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