トポロジカル物質とは何か 最新・物質科学入門 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 145
感想 : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065222676

作品紹介・あらすじ

金属、絶縁体、半導体からトポロジカル超伝導体まで、物質科学が解明してきた驚きの性質を一挙説明。ミクロのからくりは実に面白い!

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの挫折本。内容としては面白かったのだが、やはり途中からついていくことができなくなりまひた。
    文系の壁を感じました。

    ただ、物理学を履修されたことのある人なら、大変わかりやすく読むことができるかと思われます。

  •  2016年のノーベル物理学賞は、物質のトポロジカル性質解明の先駆けとなる発見をなしとげた3人の研究者に送られた。本書は、人類の物質観を革新するといわれる「トポロジカル物質」の本格的な入門書である。
     「はじめに」に、「逃げることなく、(略)真正面から解説し」とあるように、本書は物理の理論的な内容をできる限り誤魔化しなく説明することを目指して書かれている。そのためには当然、かなりの量の前提知識について説明することが必要である。実際、第Ⅰ部と第Ⅱ部はすべてそれに費やされている。これらの部では人類の物質観が時代と共にどのように変遷してきたかが述べられており、個人的にはここだけで本書を読んだ価値があると思った。トポロジカル物質の解説に入る前の準備段階な訳だが、ただ知識の羅列に留まることなく、ノーベル物理学賞を補助線として解説される、新たな物理現象が発見されるとそれを説明する理論が提案され、それを元にしてまた新たな現象が発見され・・・という連綿と続く物理学者の格闘の歴史は、読んでいてとてもワクワクさせられた。ただ、僕は大学で物理を勉強していてある程度の予備知識があったが、いかんせん一番のお楽しみの本題に入るまで随分長いので、(他の方も書いておられるように)まったく量子力学を知らなかったりすると読むのを少し苦痛に感じる人もいるかも知れない。スピン軌道相互作用を電磁場のローレンツ変換との関連から説明するのは勉強になった(僕は聞いたことのない説明だったが、調べたらWikipediaには書いてあった)。
     第Ⅲ部はいよいよトポロジカル物質の解説である。キーワードは「対称性」、「スピン軌道相互作用」、「バンド反転」、「波動関数のパリティ」、「スピン・運動量ロッキング」、「幾何学的位相」といったところだろうか。詳しい内容については(興味のある方は)本書を読んでもらうとして、トポロジカル物質は、電子のエネルギーバンドが「ねじれ」ていることに起因して、通常の物質には見られない特異な性質を示す。また、それら新しい性質を活かして新しいデバイスが生み出せないかということで、量子コンピュータを含め様々な応用の可能性も紹介されている。
     かなり読み応えのある本格派な本だが、図も要所要所に挿入されており、また扱われている内容の高度さの割には説明がとても分かりやすい。基礎から一歩ずつ、物質科学の最先端に誘ってくれる一冊と思う。

     1ヶ所だけ、他の方も指摘しておられるが、p.199の図6.5(d)の格子右上手前の頂点に位置するのはBa^2+の誤植だと思う(O^2-だと組成が合わない)。

    序章 バーチャル空間で物質を観る
    第Ⅰ部 ノーベル賞に見る物質科学 トポロジカル物質への前奏曲
    第1章 原子から量子物理学へ
    第2章 原子から物質へ
    第3章 物質は量子効果の舞台
    第Ⅱ部 バーチャル空間で物質を観る 量子物理学での表現法
    第4章 運動量空間とは
    第5章 バンド構造 物性科学の基礎
    第Ⅲ部 トポロジカル物質とは何か
    第6章 仮想磁場 電場が磁場に見える
    第7章 トポロジカル絶縁体とは
    第8章 電子波の位相
    第9章 トポロジカル物質ファミリーと応用

  •  年の瀬も押し迫るこの時期に今年最高レベルの刺激に出会えた。あまりに面白くて一気読み。歯応えたっぷりの最新学術知識をわかりやすく解説する、まさにブルーバックスの面目躍如と言える一冊だ。「表面物理学」なるサブジャンルが存在するとはついぞ知らなかったが、本書を読むことで量子コンピュータや超伝導といった今日的・近未来的なテーマはもとより、半導体や太陽光発電などのすでに実用化された技術の原理も理解でき、通読すれば全てが一つの線で繋がったような快感を得られると思う。

     本書がやや読み手を選ぶ本であるのは確かだ。まず、題名となっている「トポロジカル物質」なるものに具体的に言及が始まるのは終盤、ようやく第7章になってからである。その特殊性を理解するためにはまず「物質一般の性質は電子の振る舞いによって量子力学的に記述される」という一般原則を理解する必要があるのだが、当然この分野の量子物理学的パラダイムの説明にはそれなりの記述量を要する。畢竟、本題への到達がどうしても遅くなってしまい読者は忍耐を求められることとなる。ただ、量子物理学については啓蒙書はあまたあり、それらに触れた経験のある読者ならば痛痒なく読み進められるかもしれない。しかしようやく本題が始まったかと思えば、そこからは具体的な物理的現象の観察結果を記述する「実空間」と並行して、個々の電子の運動量に着目したバーチャル空間である「運動量空間」における考察が進められていくことになる。この運動量空間は物理現象の直観とはいささかかけ離れた抽象的な概念であるため、僕のような文系門外漢が理解するのはやや骨が折れるのだが、この実空間と運動量空間をいかに頭の中で行き来できるかが本書を面白いと思えるか否かの分水嶺になるのではないかと思う。

     一般的な絶縁体では、安定的な低エネルギー状態を表す「価電子バンド」と、電流を生じうる高エネルギー状態の「伝導バンド」の間にギャップがあり、ここに電子の最高エネルギーレベルを示す「フェルミ準位」が存するため、バンドギャップ以上のエネルギーが外部からもたらされないかぎり電流を生じない。しかし、電子の活動スピードの速い(角運動量の大きい)ある種の物質では仮想磁場が強く働くこととなるため、「スピン軌道相互作用(磁場に対する電子スピン自身の反応により、スピン縮退が解ける現象。通常はスピンの向きでエネルギーに差は生じないが、磁場存在下ではスピンの向きによりエネルギー準位が分裂する)」が強く生じる結果、価電子バンドと伝達バンドの上下関係が「捻られる」ことがある。つまり、このバンド反転が起きやすい物質こそが「トポロジカル物質(トポロジカル絶縁体)」であるということになる。

     ではこの物質の何が特徴的かといえば、通常の物質ではその性質がバンドの「形状」の変化により決定づけられるのに対し、トポロジカル絶縁体では形状ではなくバンドそのものが変質してしまっているため、そもそも量子物理的な性格が異質なものになってしまっている、ということらしい。すると、トポロジカル絶縁体(バンド反転)と通常の物質(バンドギャップ存在)の接触面においては、バンドギャップがゼロとなり(バンド交差)、フェルミ準位をその交差範囲内に含むため、低エネルギーから高エネルギーへの移行(励起、電流発生)が容易な金属一般と同様の状態(トポロジカル表面状態)が生ずる。これは他の外部条件によらず物質そのものの内部の状態のみから生じる性質であり、電子の振る舞いにより規定される一般的物質とは異なる、トポロジカル物質特有の非常に「頑強な」性質だということになる。

     そのトポロジカル絶縁体では実際に磁場があるわけではないが、電子の原子に対する相対的運動の結果、電子が主観的に感じる「仮想磁場」が生じている。電子のスピンはこの仮想磁場の影響を受け、常に電子運動量ベクトルに対し左方に直角の向きを持つことになる(スピン・運動量ロッキング)。トポロジカル表面状態では、電子の運動量はそれぞれバラバラで相殺されるため合計ではゼロとなるが、電流が流れると一定方向の運動量が優勢となり、これに対応して一定方向のスピンも増加するため「スピン偏極電流」が流れることになる。このスピン偏極電流はスピン方向がロックされているがゆえに、通常の物質内ならば生ずる不純物との衝突による「180度後方散乱」が起こり得ない。これに仮想磁場の時間反転対称性を勘案すると、トポロジカル表面状態ではあるスピン偏極電流に対し必ず180度逆方向の同じエネルギーの電流が同時に流れることになり、総計では電流は相殺されてゼロになるが、その一方で逆方向のスピンが逆方向に流れていることになる。これは電子の移動を伴わないスピン情報のみの「純スピン流」であり、ジュール熱発生のようなエネルギーロスを伴わないため、新たな省エネの手段として用いられないか研究が進められているという。また、以上のプロセスを逆にして走査トンネル顕微鏡で一定のスピン方向を持った電子をトポロジカル絶縁体の表面に注入すると、電場なしで電流を生じさせることができるということになる。これは従来の太陽光発電よりもロスの少ない発電装置に利用できる可能性があるということだ。

     本書をなんとか理解し読み進めるには、通常の物質の性質を説明する第Ⅱ部以前の解説に何度も戻らなければならず、確かに苦労はする。しかしそれは逆にいえば、本書がきちんと理解の前提となる知識を準備してくれているということでもあり、非常に親切に構成された本だと言えるとも思う。図表も多く、抽象的な概念を直観的に理解する助けになる。カバーする範囲が広い割にコンパクトにまとまった内容となっており、物理一般に興味のある方にぜひお勧めしたい。 

  • 結構難しい内容で結局トポロジカル物質とは何か?と聞かれても答えられる自身がない。

    でも物理学の話は理解出来なくてもなんだか面白くてつい読んでしまいます。

  • トポロジカル物質とは何かの前説が180pもあるが、量子力学の発展の歴史=ノーベル賞の歴史が分かりやすく解説される。X線、半導体、スピン、超伝導、バンド構造。忘れてたわ~。
    トポロジカル物質は、「時間反転対称性が保たれている量子ホール効果状態」。
    原子核の周りを電子が回っていると、空間反転対称性が破れていることで電場ができ、その電場のなかを運動している電子から見ると「仮想的な磁場」がかかっているように見える。仮想地震のなかではスピン軌道相互作用により電子のエネルギーがスピンの向きによって変わる。
    価電子帯の電子と伝導帯の電子で電子のエネルギーが変わりバンドの上下が入れ替わる。バンド反転。
    トポロジカル絶縁体。
    内部は絶縁体だが表面は金属のように伝導。トポロジカル表面状態。
    電子状態が「ひねられて」いる。

    スピン流のバッテリーはジュール熱出さない。
    太陽電池にも?

    電子波の位相??
    もう分からん、、、、

    トポロジカル超伝導、トポロジカル量子コンピューター、21世紀の新物質。

  • 第一部が量子物理学、第二部がバンド理論、第三部がいよいよトポロジカル物質の話という構成です。一応背景知識があるので第三部から読み始めましたが、まったく理解できませんでした。

  • P157ほどまで読。

    ポッドキャスト「a scope」で今後の活用に大注目なトポロジカル物質なる存在について知り読んだ。
    残念ながら半分ほどで一旦休憩。

    ただ、非常にわかりやすく物理学の前提からはじめて、順を追ってトポロジカル物質の説明までしてくれている。
    読み応えがあり、とても勉強になった。
    初学者の私でも理解できる書き方で非常にgood。

  • ブルーバックスもここまで行ったのかと思えるほど技術的に難解な本。
    トポロジカル物質という特殊な性質を持つ物質についての本なのだが、ほとんど付いていけなかった...。

  • トポロジカル物質とは何か,漠然と理解できたように思う.将来の応用が期待できると思った.専門用語が多いので,内容は難しい本である.1回読んだだけでは,完全には理解できていない.

  • 結構がんばって付いていったのだが(文系にも理解できる
    程度でわかりやすく書いてあるということだ)、最後息切れ
    してしまった。トポロジカル物質自体まだ研究が始まった
    ばかりの新発見であり、まだまだこれからというところか。
    ゆくゆくはいろいろと工夫利用されて、我々の生活を一変
    させるものなのかもしれない。普通電子が核の周りを回って
    いると考えるところ、電子を中心に観ると核の方が回って
    いると見なせるという「相対論」が印象に残った。

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著者プロフィール

1960年栃木県に生まれる。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。理学博士。日立製作所基礎研究所研究員、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助手、同助教授、同准教授を経て、現在、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。専門は表面物理学、とくに固体表面およびナノスケール構造の物性。著書に『見えないものをみる――ナノワールドと量子力学』(東京大学出版会)、『振動・波動』、『研究者としてうまくやっていくには』(いずれも講談社)などがある。

「2021年 『トポロジカル物質とは何か 最新・物質科学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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