自由になるための技術 リベラルアーツ

  • 講談社 (2021年3月3日発売)
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本 ・本 (290ページ) / ISBN・EAN: 9784065222683

作品紹介・あらすじ

リベラルアーツとは、「自由になるための手段」にほかならない。
自分たちを縛り付ける固定観念や常識から解き放たれ、自らの価値基準を持って行動するために。
いままでの正解が突破するヒントがここにある。
独立研究家・山口周が、哲学・歴史・美術・宗教など知の達人たちと、リベラルアーツの力を探る。

【主な内容】
「なぜチャーチルは周囲の反対を押し切ってナチスと対峙できたのか」
「日本企業の生産性の低い根本的原因とは」
「考える力の鍛え方」
「なぜ近代化はキリスト教社会から始まったのか」
「イノベーションに重要な「神」の視点」
「最新のリーダー育成のキーコンセプトと禅の共通点」
「なぜ、エリートの多い組織で不祥事が頻発するのか」
「予測不能な時代に対処する三つのPとは」
「かつてのローマ帝国にあって現代日本にないもの」

【構成】
第1章 リベラルアーツはなぜ必要か
第2章 歴史と感性 対談:中西輝政、
第3章 「論理的に考える力」が問われる時代に 対談:出口治明
第4章 グローバル社会を読み解くカギは宗教にある 対談:橋爪大三郎
第5章 人としてどう生きるか 対談:平井正修
第6章 組織の不条理を超えるために  対談:菊澤研宗
第7章 ポストコロナ社会における普遍的な価値とは 対談:矢野和男
第8章 パンデミック後に訪れるもの 対談:ヤマザキマリ
終 章 武器としてのリベラルアーツ

感想・レビュー・書評

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  • リベラルアーツは常識にとらわれずに「問い」を立て、イノベーションを生むために必要な、知恵の基盤だと解釈した。
    リベラルアーツを通じて普遍的な常識と疑うべき常識を区別できる。
    歴史、宗教、哲学……etc.の古典と呼ばれる書籍も、今後は食わず嫌いせずに貪欲に取り込んでいく。

  • リベラルアーツとは平たく言えば「教養」なのだろう。ただ一言では尽くせない深さを感じる。
    リベラルアーツはどのように身につけ活かしていくべきかとの視点で読み進めた。

    リベラルアーツとは
    固定観念や時々に顔を見せる常識とされるものから自由になるための思考技術
    事象を相対化して問い立てする技術を本質とするもの
    普遍的な価値基準

    リベラルアーツはなぜ必要か
    ファイナンスやガバナンスなど一部の専門知識だけでなく歴史や文化など人間性を豊かに育むことなしに真のリーダーや変革はない
    専門知識がなく、得意分野でなくとも全体を俯瞰して言うべきことは言う姿勢を促し変革の種となる

    どのように取り入れ行動に反映するか
    損得ではなく善を基準に考え行動する
    専門知識に偏らず美意識や哲学など普遍的価値観を学ぶ
    誰かが言ったことに忖度することないよう自分の頭で考え、責任持って発言する

    現代はあまりに専門化、分業化が進みそれぞれの知識は共有されにくくその世界だけの知識や常識になりやすい。異分野、異文化どうしの二項対立となり極端な世界となる。
    これらを中和するすべての土台となるものがリベラルアーツ。リベラルアーツなくして専門性は追求できないのではないだろうか。
    盲目的に信じ行動することに歯止めをかけ問いかけする技術とも言える。
    古典や美術に意識的に触れ、論理だけでなく直感も大切にし普遍的な価値観を身につけよう。
    自分の頭で考え責任持って行動する。これほど自由なことはない。

  • 【星:4.5】
    著者が芸術・宗教などいわゆるリベラルアーツと呼ばれる分野での一流人との対話をとおして、リベラルアーツの重要性を明らかにしていく内容。

    この本を読んでリベラルアーツがどうして役に立つのか、なぜ必要なのかということをよく理解できた。

    リベラルアーツを語らせるならこの著者以外にいないでしょ、そんな風に感じさせる。

  • 著者と著名人との「今後個人に求められるもの=リベラルアーツ」に関する対談集。それぞれの観点から話されている内容は非常に刺激的で、かつ、さらに深く知りたい、と思わせるものだった。考えを反駁・整理するため、それぞれの方の著書を読んでみたいと思う。

    なぜリベラルアーツが必要なのか、という問いに対しては「自分の頭で判断するための教養や知識、美意識を身につけるため」という答えとなり、非常にしっくりくる。

    自分自身や社会に閉塞感を感じている人にはおすすめの一冊。

  • リベラルアーツ…、それは自分の昔から最も苦手とする分野。。
    至る所で、リベラルアーツの重要性が叫ばれる今日この頃、
    まず概要を理解すべく、この本を手にとってみました。

    山口さんの本は、これまで何冊か読んできましたが、
    著者の教養の深さがにじみ出るような本になっています。
    そもそも各分野に造詣の深い人たちとの対談というライトな構成なのですが、
    なんせ自分の苦手分野だからか、理解が中々追いつきません。
    最後の山口さんのまとめを読んで、
    ようやく「あ~そういうことか」となることが何度もありました。
    自分のリベラルアーツのなさを反省すると共に、
    新しい分野に少し足を踏み入れた時の
    ドキドキする好奇心を少しだけ味わうことができました。

    対談相手もユニークというか、この人がリベラルアーツの人なの?って感じ。
    日立のビッグデータの人とかテルマエ・ロマエの人とかってリベラルアーツの人なの??

    最後の山口さんのリベラルアーツに対する解説もとても分かりやすかったです。
    初心者はむしろこっちから読んで、
    リベラルアーツに対する熱量を上げておいた方が良いかもしれません。

  • 問答無用で読みたくなる山口周さんの著作を新幹線の車内で読了。〝リベラルアーツはなぜ必要なのか〟を7名の専門家との対談を通して論証している。印象に残ったwordは〝コナトゥス〟というものさし。
    「一人ひとりのコナトゥスが活性化すると、やる気やモチベーションが湧き、創意も発揮できるので個人の生産性は上がります(p35)。

  • K図書館
    多用な視点を身につけるヒントを提示したオンライン対談の本
    言葉の注釈を入れて欲しかった

    対談相手は一流の方ばかりで、あらゆる側面からリベラルアーツを考察した内容の濃い本だった
    自分がどれだけ物事を知らないか、損得勘定ばかりに気をとられていたか、開眼した感じがした

    日本人に足りないものがリベラルアーツとひしひしと感じた
    政治家は法学部出身が多い
    宗教や哲学は選択科目だろうから、希望しなければ学ばず卒業できてしまう(学校にもよるが)
    学びたい人だけ学んでいる実態があるのだ
    本来、政治家こそ宗教や哲学を通して世界を知らなくてはいけない
    政治家の方には是非リベラルアーツを用いて、威厳を示してほしいと願っている

    本書には書いてないが、日本人は大多数で仏教徒なのに仏教の勉強をしていない
    自分の宗教を知らないなんて考えてみたらおかしいことだ
    なぜこんな削ぎ落として学習要項ができてしまったのだろう
    いいことも悪いことも、他の宗教との違いを学ぶことが大切なのだ
    一部分については、江戸時代の学問の方が上だなと矢野氏の意見に頷いてしまった(渋沢栄一がよい例だ)

    宗教の学びが哲学や美術に通じるのだから、少しずつでも読書を通して学んでいきたいと強く思った

    《内容》
    1章リベラルアーツはなぜ必要なのか
    2章歴史と感性、中西輝政氏
    国際政治学や国際関連史の観点から論じる
    ・まず歴史と哲学が基本として、政治や経済はその次にくるもの
    ・歴史の学びは学者を目指す人よりもそれ以外の人に役立つ学問だ
    このことを人間一般に還元したらどういう意味を持つのかという風に、普遍性や通時代性を見いだすような読み方をするのが良い

    3章論理的に考える力が問われる時代に
    出口治明氏
    ・日本の低迷は製造業からサービス産業へと産業構造が変化しているのに、人材も働き方も製造業の工場モデルを続けている
    ・成長のカギは国籍、性別、年齢フリーの社会構造に転換できるかどうかにある
    ・一度学んだから終わりではなく知識も更新する必要がある

    4章グローバル社会を読み解く鍵は宗教にあり、社会学者 橋爪大三郎氏
    ・アメリカは未来を見ることが得意
    それはアメリカには神がいるから
    神は死にません
    天地創造の時からずっと地上の事を見ていて、これからも見続けていくこの視点があれば、過去を持つことができる、未来も考えることができる
    ・日本は多神教なので、一心教的な神の視点を持つことは難しい
    まずはそうした考え方を理解することで何らかのヒントが得られるかもしれない
    新約聖書なら「共観福音書」
    ブッダなら「真理のことば」を読んでみる

    5章人としてどう生きるか
    臨済宗の住職 平井正修氏
    ・コロコロ転がるから心なのだ
    心は水のように形を変える自由自在なもの
    それを好き嫌いや、損得是非や善悪で呪縛して嬉しい悲しい苦しいといった状態で固めてしまうから不自由になる
    その固まりを解く方法を教えてくれるのが仏教であり禅である
    ・禅というのは基本的に人が人になるための修行だ
    人としてどう生きるかを考える、そのために自分の心と対話し自分自身を見つめ直すのだ

    6章組織の不条理を越えるために
    菊澤研宗氏
    ・日本人は宗教という柱が弱いために、意思決定原理として損益計算や客観性に依存しがち
    ・儲からないかもしれないけど正しい、好きだとかいうことにおいてイノベーションが起きる
    ・損得計算を超えて価値判断ができるかどうか、グローバル競争の時代にはそのことが組織にもそれを構成する一人一人にも問われるのだ

    7章ポストコロナ社会における普遍的な価値とは、日立製作所 矢野和男氏
    ・人間の幸福というものを客観的に捉える研究に取り組んできた
    ・スキルはコンピューターの方が上手
    このような時代に人間がやるべきことは問題を認識する力
    ・問題はどのようなフレームワークでストーリーで途絶えるか、そうした力を養う教育が必要
    そのヒントの一つになるのが易経ではないか( 易経とは五経の一つ )
    予測不能な未来に対してどのように状態を捉え行動を起こしていくのかということを説いている一つの学問体系
    ・不確実であることを前提として、未来や変化と向き合うという考え方、その方法論を見出そうとした江戸時代の学問を、今のテクノロジーや社会の変化を踏まえた上で、もう一度取り入れても良いのではないか

    8章パンデミック後に訪れるもの
    ヤマザキマリ氏
    ・日本の倫理や道徳は、世間体によってかたちどられている
    ・イタリア人はものすごく猜疑心が強い
    とにかく人間の歴史は裏切りによって作られてきたと思っているところもあるので、政治家だって信頼していない
    他人を信じる危険を回避したいのであれば、自分の頭で物事を考えるしかない

    9章武器としてのリベラルアーツ
    ・よく言われるような常識を疑うという態度を身に付けることではなく、見送っていい常識と疑うべき常識を見極める選球眼を持つということ
    ・この選球眼を与えてくれるのがまさにリベラルアーツ
    このような時代にあって、したたか、かつ自由に思考し、行動するためにもリベラルアーツは必須の素養と言える

  • 山口周さんと7名の知識人とのそれぞれの対談をまとめた本。
    1章と終章は山口さんの書き下ろしであり、終章に関しては、必読である。ここ数年、流行っているが、なにかとぼんやりしていた「リベラルアーツ」が見事に定義され、かつそれを学ぶ意義を綺麗なロジックで組み立てている。

    以下、響いた箇所。

    185
    日本における組織の不条理は、決して無知や非合理的な考え方のために起きているのではなく、むしろ一人ひとりがこのように取引コストのような見えないコストを忖度して損得計算し、合理的に行動した結果として起きています。(菊澤)

    ☆終章激アツ

    268
    現代をしたたかに生きていこうとするのであれば、リベラルアーツほど強力な武器はない。何らかの形で組織やシステムに関わる立場にある人であれば、リベラルアーツを学ぶことは、おそらく人生において最も費用対効果の高い投資になるであろう。(山口)

    271
    イノベーションには"相対化"が不可欠だから

    273
    重要なのは、よく言われるような「常識を疑う」という態度を身につけることではなく、「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼を持つということなのです。

    275
    目の前の世界を、「そういうものだ」と受け止めてあきらめるのではなく、比較相対化する。そうすることで浮かび上がってくる「普遍性のなさ」にこそ疑うべき常識があり、リベラルアーツはそれを見るレンズとしてもっともシャープな解像度をもっているのです。

    282
    リーダーの仕事は、異なる専門領域の間を行き来し、それらの領域の中でヤドカリのように閉じこもっている領域専門家を共通の目的のために駆動させる事にあります。

  • 偶然巡り会った山口周さん。その第一冊。

    「自分を超えるために必要な言葉のカ」章題のところ、
    『より多くの人々の役に立つことを考え、実行したいと思うのであれば、本などで他の人の言葉に触れるということが必ず必要になるのです。』

    上はその章の抜粋ですが、この章の全てが好きでした。
    言葉にするということ、その必要性、なぜ言葉があるのか、なにが必要なのか
    ということが参考になりました。

    本全体としては、私は頭がそんなに良くないので、少しお堅めな内容に着いていくのが必死でしたが、この章だけでも収穫があったので、読んでよかったなと思います。
    図書館本だったので、全部は読めていません。

  • 建前の表面的な能力にとらわれず本質を見極められる人物になるべき、そのために一層の精進が必要だと改めて気付かされた。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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