スモールワールズ

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065222690

作品紹介・あらすじ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。

感想・レビュー・書評

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  • 『光のとこにいてね』に続けて、一穂ミチさんの作品を読了した。色々な感情が揺り動かされる不思議な感覚を味わった。6編からなる短編集で、各タイトルは『ネオンテトラ』『魔王の帰還』『ピクニック』『花うた』『愛を適量』『式日』。それぞれの作品の登場人物が個性的で、また、それぞれの登場人物に背景があり、その心情に寄り添いつつ、作品世界に引き込まれながら読み進めていった。ただ、想像しても私の中で描けない、難しい作品世界もあった。その作品世界が、一穂ミチさんの作品としての魅力とも感じた。

    『ネオンテトラ』の中心人物は34歳の美和。貴史と結婚して8年、夫婦に子供はいなかった。このことが、2人の関係をぎこちなくさせていた。そのような中、作品のタイトルにもなっているネオンテトラは、美和と貴史の2人の住まいで飼われている小魚として登場する。青色に光る美しいイメージが広がる。読み進めていくと、美和の向かいのマンションに住んでいる蓮沼笙一、中学2年生が登場する。笙一は、美和の姪の有紗の同級生だった。親から受けている酷い状況を目にする美和。笙一の状況が気になる美和が、ひょんなことから笙一と会話をできるようになり、ますます気になっていく。その背景には、夫の不倫に気づいている美和の不安定な心があった。読みながらやるせない悶々とした思いが膨らむ。そこからさらに状況は大きく変化していく。気持ちが揺さぶられながらも読み進めた。予想外の展開が、ラストに向かって起こっていく。ネオンテトラの例えにぞっとするものも感じつつ、どきどきしながら読了した。

    『魔王の帰還』の中心人物は、高校1年生の森山鉄二とその姉、真央。真央は27歳で180cmあり、真央という名前から「魔王」というあだ名がついていた。真央は、夫である勇と暮らす自宅から、実家に戻った。それは離婚に向けての行動だった。ただ、この離婚に至る理由は、物語の始まりの頃の内容とは異なり、ラストに向かって明らかになっていく。その展開に、胸にグッとくるものが生じた。豪快な佇まいの真央であったが、その内面は繊細で温かく感じた。とかく目に見える表面的なものに影響されやすいけれど、その人となりは目につきにくい考え方や見えていない行動にあるのだろうな。鉄二と同級生の住谷菜々子の祖母は駄菓子屋を営んでいた。その一部のコーナーに金魚すくいを楽しめる場があった。ひょんなことから地元の金魚すくい選手権に3人で出ることになる。この挑戦が、ラストに向かって、それぞれの悩みや問題を解決していく展開へとつながっていく。直接的ではなく、別のことに夢中になる中で、見えてくることや考え方を見つめ直すきっかけになることもあるかな。そのような展開に至るには、人の関わりが大きく影響するのだろうな。この物語のラストを読んで、前向きな気持ちになることができた。

    『ピクニック』の中心人物は、希和子と瑛里子の母娘。瑛里子の夫は裕之。映理子と裕之の夫妻の間に産まれたのが未希。瑛里子は、産後の体のケアや授乳等の育児で疲れていた。母親ならではの大変さを感じつつ、物語の混沌とした状況に不安を感じながら読み進めた。そのような中、裕之に突如、県外勤務の辞令が出る。それでも、瑛里子と裕之の子供、未希の成長が物語を明るい方向へと導く予感がしていた。しかし、事態は一変する。急な展開に読むのが苦しくなる。そこからは、何が起こったのかを理解するのが辛い場面もありつつ、真実を知りたいという気持ちも膨らみ、ページを捲る。ラストに向かって明らかになる真実に、ぞっとする思いを抱えながら読了した。真実が分かったという納得と、悲しい結末の余韻が何とも言えず、辛い思いが膨らんだ。

    『花うた』の中心人物は、向井深雪と向井秋生。そして、弁護士の伊佐利樹。物語は、深雪と秋生の手紙のやり取りの内容で進んでいく。冒頭の手紙は、2020年11月で、宛先は伊佐利樹、差出人は向井深雪。その後、時は遡り、2010年5月の宛先は向井秋生、差出人は新堂深雪だった。ここから、向井深雪と新堂深雪の関係や、時の流れの中での10年間の展開を気にしながら読み進めていった。最初の手紙は、深雪から刑務所にいる秋生へ送ったものだった。深雪の兄は、秋生に突き飛ばされて亡くなっていた。その関係に複雑な気持ちをもちつつ、手紙のやり取りが続く状況を読み進めた。徐々に、互いの背景や心情が明らかになっていく。それでも深雪の兄が亡くなったという事実は変わらない。被害者の家族にとって、死を受け止めることは難しいし辛いものだろう。互いの心情の揺れや状況の変化があらわになりながら、手紙のやり取りは続く。そして、秋生の体に変調が起こり、2人の関係にも大きな転換が起こる。複雑な心境になったが、深雪と秋生にとってよかったのだろうなという思いも膨らむ。最後は穏やかな気持ちで読了した。

    『愛を適量』の中心人物は、公立高校の古文の教師、慎悟。マンションに帰宅すると、外廊下にいたのは娘の佳澄。その姿は、慎悟にとって見覚えのない若い男だった。そして、佳澄は、父慎悟にトランスジェンダーだという告白をする。離婚して15年を経た佳澄の変化があった。読み進めていくと、明らかになっていく慎悟の過去や離婚の理由。そして、幼い頃の佳澄の気持ち。佳澄の告白はストレートが故に、慎悟の胸に響く。そういう関係であり続ければ、互いの理解が進むのだろうな。それが、簡単ではない親子もあるだろうけれど。どれだけ素の自分が曝け出せれるか、それが互いの信頼や理解につながるきっかけになるのかもな。そんな、関係にどきどきしながら読み進めていった。ラストに向かって、佳澄が慎吾を訪ねた理由や、それぞれの本音の部分が明らかになっていく。慎悟と佳澄、互いの思いが通じ合うには、まだ時間がかかりそうだな。でも、互いに向き合っている姿はいいなと思いながら読了した。

    『式日』の中心人物は、先輩と後輩、名前は出てこない。そこに疑問を感じながらも、淡々と進んでいく展開に不思議な気持ちになる。物語の始まりは、後輩から先輩への一年ぶりの電話だった。内容は、父親の葬式への参列の案内。そこから、同じ高校の校舎でも、定時制に通っていた先輩と通常の高校に通っていた後輩の出会いの話に遡る。先輩と後輩、2人の年の差は6歳だった。先輩は定時制の3年生、後輩は通常の2年生で、同じ教室を使っていた後輩が定時制の時間帯に忘れ物を取りにくるという出会いだった。その出会いが縁となって、2人で休みの日に会うようになった。2人の淡々とした会話には、単に先輩と後輩ではない、それぞれの特別な背景が影響しているのだろうなと感じた。抱えている問題が重い分、それぞれの重みを分け合っているようにも感じた。決してそれぞれの抱えているものが軽くはなっていないだろうけど、自分が抱えているものを明からさまに伝えることができていた。そのことは、それぞれが少し重荷をおろすことができているようでよかったなと思いながら読了した。

    それぞれの作品の中心人物が個性的であり、辛い背景を背負っていたけれど、その姿は魅力的にも思えて不思議な感覚で読み進めていた。読了して、タイトル『スモールワールズ』に込められた一穂ミチさんの思いを想像する。今までに味わったことがない作品世界を存分に楽しめた。一穂ミチさんの他の作品への興味が膨らむ作品となった。

  • あなたの『家族』は”歪(いびつ)”でしょうか?

    なんて失礼な質問から始まるレビューなんでしょうか。ねじれたりゆがんだりしていることを意味する”歪”という言葉。自分の大切な『家族』がそんな言葉で表されるとは誰も認めたくなんてないはずです。しかし、少し考えてみるとそんな風に断定できる根拠がないことに気づきます。『家族』の形は千差万別です。そして、そんな『家族』の内情は外からはなかなかに伺いしれないものです。あなたのお隣さん、あなたの友達、そしてあなたの兄弟姉妹の『家族』だって、そこにどんな関係性が、どんなルールが、そしてどんな形があるか、その本当のところはわからないのではないでしょうか?

    『家族』とは、人の集まりの基本となる単位です。私たちの人間社会は、そんな『家族』の集合体で回っています。国が変われば当たり前と思っていた常識がひっくり返ることはよくあることです。民族が変われば、宗教が変われば…と、コミュニティの形が変わればそこには、全体としての人間社会という漠然としたイメージには見えなかったものが見えてもきます。それは、『家族』という単位であっても同じことです。

    さて、ここに六つの『家族』の内側を照らし出した作品があります。”夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年”、”初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族”、そして”向き合うことができなかった父と子”というようにさまざまな『家族』の喜怒哀楽を見るこの作品。そんな『家族』の構成員それぞれの感情の中にそれでもお互いを思いやる糸の存在を感じるこの作品。そしてそれは、作者の一穂ミチさんが、”どの家族にも多少の歪さはあると思いますし、人間は時として、その歪さを愛することもできるんです”と語る、それぞれの”歪さ”の中に生きる『家族』の姿を見る物語です。

    『有紗ちゃん元気?最近会ってないな』と夫の貴史に言われ『隙あらば放課後うちに来ようとするからなるべく断るようにしてて』と返すのは主人公の美和。そんな時『あさって寄っていい?』と姪の有紗からのLINEを受けた美和は『セカンドハウスみたいにされるのはいやなの』と付け加えます。『有紗の両親、わたしの姉夫婦は去年から海外駐在になり』『祖父母と暮らす姪』が『遊びに来たがる頻度が上がった』という今日この頃。そんな美和は『ちょっと慰めて』と言うと貴史を引き寄せます。『また駄目だった』、『判定薬が陰性で』、『その後すぐ生理きた』と今日の出来事を話す美和に『俺にできることあったら言って』と優しく背をさする貴史。そんな貴史が浴室に入った後、貴史のスマホを開く美和は、『震度四の地震でも起きない』貴史が寝ている間に自らの指紋を貴史のスマホに登録しています。『トーク画面のいちばん上、つまり最新のやりとりを確認する』美和は、愚痴程度のやり取りしかない画面に『お互いさま』だと思います。そんな美和は『「いつかの子ども部屋」としてもう八年もスタンバイしてい』る『八畳の空間』へと入ります。『ここには確かにちいさな生命が存在している』というその部屋には『四十五センチの水槽』があり、『ネオンテトラの群れが、現状この部屋のあるじ』となっていました。『特別な愛着を抱いているわけではない』ものの『息苦しさを感じなくなった』今を思う美和。そんな美和が部屋のベランダに出てタバコを吸っていると『向かいにあるマンション』の『四階の外廊下』に『中年の男と、少年』の姿を目にします。『尋常じゃない勢いで少年に食ってかか』る『中年の男』という光景に『絵空事であってほしい』と思う美和。『ああ、それ、笙ちゃんでしょ』と翌日部屋に遊びに来た姪の有紗は言います。『蓮沼笙一、有紗の同級生』という少年が父親に嫌われて酷い仕打ちを受けていることを聞かされた美和。そして、数日後『隣、いいかな?』とコンビニのイートインスペースで偶然を装って笙一に声をかける美和は、『稲田有紗って知ってる?』『わたし、母方の叔母です。相原美和っていいます』と自らを説明します。ぽかんとする笙一の隣に座った美和は、その日をきっかけに『週に二、三回』笙一と会うようになっていきます。そんな美和の日常に起こった変化の先にまさかの展開を見せる物語が描かれていきます…という最初の短編〈ネオンテトラ〉。書名の「スモールワールズ」を象徴するようななんとも言えない読み味の残る好編でした。

    2022年の本屋大賞第三位、他にも第165回直木賞の候補作にもなったこの作品。2020年6月から2021年3月にかけて「小説現代」に連載された六つの短編から構成されています。そんな六つの短編は、一編目と六編目が強い繋がりを持つ連作短編、他の短編は非常に薄い繋がりはあるとはいえ、基本的には無関係の短編となっています。しかし不思議と六つの短編は一つの短編集としてのまとまりを感じます。それこそが、内容紹介に”誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集”とうたわれるどこか物悲しさ漂う雰囲気感なのだと思います。では、そんな六つの短編から私が特に印象深いと感じた二つの短編をご紹介しましょう。

    ・〈魔王の帰還〉: 『結婚して家を出たはずの姉が居間に鎮座しているのを見』て『うわっ』と声を出したのは主人公の森山鉄二。『離婚するんだって』と『ため息混じりに答え』る母に、『ああ…』と声を漏らすと『もっと驚かんか!』と『くわっと目を見開』く姉に、『どうせお前のDVだろ』と言ってしまった鉄二は、姉に『耳をがっと掴まれ』『すいません何でもないです』と謝罪しました。『身長百八十八センチ、体重怖くて訊けない』、『総合格闘技』からスカウトも受けたという『名前は真央だがあだ名は「魔王」』という姉。そんな姉に隠された突然の帰宅へと至る理由が明かされていきます。

    ・〈ピクニック〉: 祖母になる『希和子から一文字取って未希と名づけ』た赤ん坊を愛でるのは母親となった瑛里子。しかし、厳しい育児の実態に『最初はみんなそんなもの』と希和子に励まされるも『吐き出』す、『げっぷをしない、寝ない』未希の育児に苦悩を深めます。そんな中『当事者意識の低さという欠点』をもった夫の裕之に『異動の辞令が下り』隣県へと単身赴任。一方、ようやく『こんなかわいい生き物がこの世にいるのか』と思えるように落ち着いて来た瑛里子に『たまには裕之さんのところに行ってあげたら?』と希和子に提案され出かけた瑛里子。そんな瑛里子にまさかの事態が待っていました。

    〈魔王の帰還〉では、『名前は真央だがあだ名は「魔王」』という強烈なキャラクターをもつ姉が大きな存在感で物語を牽引します。ほとんどギャグとしか言えないその展開は一見物語から浮いてしまう感も受けます。しかし、『離婚するんだって』という姉に隠された真実が明らかになっていく結末には、強烈さが印象的だった分、余計に悲哀が伝わって来ました。また、〈ピクニック〉では、子育てに苦悩する主人公の姿が描かれていきます。『赤ん坊はすべてのストレスを泣き声で表現し』ていると感じる瑛里子は、『まだ、この世の仕組みなど何も知らない生き物に、四六時中ジャッジされている気がしま』す。『「母親」という漠然とした、しかし根源的な能力』を『泣く声が「アウト」の判定』をしていると感じる瑛里子の物語。ここまでの記述で”産後鬱”的な物語を想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、そこに続く物語は、まさかのサスペンス、もしくはミステリー、さらには、えっと驚くファンタジーな物語です。これは、冒頭の物語からはとても予想できない物語。これから読まれる方には是非ご期待ください。

    そして、もう一つ、四編目の〈花うた〉という短編には、さてさて心をくすぐる仕掛けが用意されていました。それこそが、全編手紙のやり取りだけで構成された物語です。同様な構成の作品と言えば、合計56通の手紙だけで構成された湊かなえさん「往復書簡」。さらには湊さんの通数をさらに超える合計179通もの手紙とメールのみで構成される三浦しをんさん「ののはな通信」が思いおこされます。そうです。さてさては、こういう構成の作品を見るとその数を数えずにはいられなくなるのです(笑)。ということでこの作品でも数を数えてみました。

    ・向井深雪 → 伊佐利樹 2通
    ・伊佐利樹 → 向井深雪 1通
    ・新堂深雪 → 向井秋生 23通
    ・向井秋生 → 深堂深雪 21通

    ということで、合計47通もの手紙ばかりで構成されたこの短編。通数では湊さんや三浦さんの数に負けます。しかし、お二人の作品は一冊の小説全体でこの数です。一穂さんのこの作品は六つある短編の一つの中でこの数であることを忘れてはいけません。そう、読んでいただければわかりますが、長短織り交ぜながら主に新堂深雪と向井秋生の間で交わされていく手紙たち。そんな手紙のやり取りの舞台に一穂さんが用意されたのは、『自分の罪と向き合うのが怖いんですか?』と塀の向こうで量刑に服す向井秋生に問いかける看護師の新堂深雪という塀を越えたやり取りでした。『あなたに突き飛ばされて死んだ兄はもっとずっと怖かったと思います』と問う深雪。そんな深雪とやり取りする塀の向こうの秋生は、終始低姿勢の手紙が続きます。しかし、それでもその一言一句が気になる深雪は、『お腹が減ること、ごはんを食べること、眠ること。兄にはもうできない、全部あんたが奪ったから。よくそんなことをのうのうと書けますね。反省ってしてますか?』とその態度を辛辣に問いただしていきます。まさに息を呑むそのやり取りは、相手を意識して書かれた手紙だけで構成されていくからこそ、読者にも痛切に響いてきます。合計47通という手紙のやり取りには一定の時の流れが当然にあります。そんな時の流れの中で主に二人のやりとりがどのように変化していくのか、二人の感情がどのように変化していくのか、そして結末には何が待っているのか、よく練られたその手紙の内容の先に待つ、えっ?という結末。手紙だけで構成された物語を上手く活かしたとても読み応えのある短編だと思いました。

    “それぞれの家族が形成する小さな世界を、外の人間は完全にうかがい知ることはできない”、そんな意味を書名の「スモールワールズ」に込めたとおっしゃる一穂ミチさん。この作品には六つの短編それぞれにそれぞれ異なる『家族』のあり様が描かれていました。そんな作品では、『子どもがいない夫婦なんて珍しくない。母になるだけが女の幸せじゃない。生き方はそれぞれ違って当たり前』と思いつつも『空虚な肯定はわたしの劣等感をすこしも拭ってくれない』と苦悩する三十四歳の美和の物語。『姉はビニール袋に閉じ込められてぱくぱくと喘ぎ、もがいている』と一見『魔王』のようなキャラクターを持つ姉の苦悩を思いやる鉄二の物語。そして、『何ヵ月も腹の中で養い、ようやく会えた我が子にいきなり駄目出しをされたように感じ』る中に幼き我が子と向き合っていく瑛里子の物語など、”歪な家族”をテーマに、その”歪さを愛する”主人公たちの姿が描かれていました。

    読みすすめていくうちに登場人物たちの印象が変化していくのを感じるこの作品。どんな人間も、それぞれの『家族』の枠組みからは逃れられないことを感じるこの作品。

    六つの『家族』それぞれの中に見る「スモールワールズ」な世界のあり方に、一穂さんが”歪さ”に愛しさを見る感覚がどことなく理解できた気がした、そんな作品でした。

  • 「ネオンテトラ」
    「魔王の帰還」
    「ピクニック」
    「花うた」
    「愛を適量」
    「式日」の6編の短編集。

    初読みの作家さんで、直木賞候補になっているらしいですが、この作家さんBL以外に他に作品があったら読んでみたいと思いました。
    どんな作品があるか、御存知の方がいらしたら教えて欲しいです。

    この中では「ネオンテトラ」「ピクニック」「花うた」「愛を適量」がよかったです。

    「ネオンテトラ」はちょっと泣きたくなりました。有沙と美和は姪と叔母ですが、有沙のBFの笙ちゃんをより好きだった(心の支えにしていた)のはどちらだったのかと思いました。
    「ピクニック」は悲劇だと思いました。生まれた子の名前が真実というところは細部まで凝っていると思いました。
    「花うた」は傑作だと思いました。美しい作品です。一番完成度の高い作品だと思いました。
    「愛を適量」はトランスジェンダーの佳澄のキャラクターがなんかよくわかってしまい、父子の交流がよかったです。

    • おじょーさん
      こんばんは。友人によると一穂さんはBL作品が至高だそうですが(ずっと薦められてる)一般作品としての「今日の日はさようなら」は読みました。
      ...
      こんばんは。友人によると一穂さんはBL作品が至高だそうですが(ずっと薦められてる)一般作品としての「今日の日はさようなら」は読みました。
      2025年の姉弟の元に突然父親が30年間の冷凍冬眠から目覚めたばかりの姉の子、今日子を連れて来た事によって起こる一夏の物語ですが漂うノスタルジーさも含めてしみじみ染みました。
      薄い文庫ですが長編になると思います。良かったら。
      2021/07/01
    • おじょーさん
      こんばんは。友人によると一穂さんはBL作品が至高だそうですが(ずっと薦められてる)一般作品としての「今日の日はさようなら」は読みました。
      ...
      こんばんは。友人によると一穂さんはBL作品が至高だそうですが(ずっと薦められてる)一般作品としての「今日の日はさようなら」は読みました。
      2025年の姉弟の元に突然父親が30年間の冷凍冬眠から目覚めたばかりの姉の子、今日子を連れて来た事によって起こる一夏の物語ですが漂うノスタルジーさも含めてしみじみ染みました。
      薄い文庫ですが長編になると思います。良かったら。
      2021/07/01
    • まことさん
      おじょーさん。おはようございます!

      情報ありがとうございます。
      「今日の日はさようなら」読んでみたいと思います。
      おじょーさんのレ...
      おじょーさん。おはようございます!

      情報ありがとうございます。
      「今日の日はさようなら」読んでみたいと思います。
      おじょーさんのレビューも拝見しました。
      とても、楽しみです。
      でも、BLが至高なんですね。BLに偏見があるわけではないのですが、BLはちょっと敷居が高いですね。
      2021/07/02
  • 6つのスモールワールズ。
    なんだか既読感というかありきたりな感じもするが。。。

    みんな頑張って生きているのだと実感させられます。

    もちろん私もなんだけれども。

    1章で、大人になったら自由になれると言う女性と
    6章で、大人になっても本当の意味では自由になれないと言う男。
    色んな意味でどっちも本当だし、大人とは、自由とは。
    そしてこの女性と男の自由の意味がきっと違う。

    6章すべてに共通することは何かしら複雑な家庭環境。
    それは結局、大人たちが作り出したもので。
    自由になった大人という人間が次は子どもを苦しめている。


    LGBT、流行りのテーマですよね。
    特に最近は人間が1つの個体であることを重視し、
    女と男という大まかな区切りでの判断はNGという風潮。
    ちょっと昔だとありえない発想だけど、
    批判の中で声を大にして訴える人達がいるから少しずつ世の中も変化していて。
    今を生きる私たちは後世のためにもその風潮を受け入れることが使命なのかもしれないと感じます。


    他人を尊重するのも大事ですが、
    結局は自分の小世界で生きているので
    自身のよろこびや悲しみの感情に向き合って
    このスモールワールドで生きていく今日この頃です。


    6章すべてテイストが違うのでうまく感想がまとまりません(笑)

    イヤミスだったり、その後どうなったの?と気になったり、
    短編の良さを味わいました。
    初の一穂ミチさんでしたm(_ _)m

  • 2022年4月6日水曜日。午後3時。

    本屋大賞の発表だ。
    同じく読書が趣味だという青年(生徒)と、わたしは本屋大賞のリンクを開く。

    お互いに大賞を予想した作品は朝井リョウさんの『正欲』だった。

    今か今かと発表を待つ。
    そしていよいよ発表の時。

    今年は『同志少女よ、敵を撃て』だった。

    著者である逢坂冬馬さんが出てくる。
    2人同時に、思わず「若!」と声が出た。
    偏見かもしれないけれど、「作家さん」と呼ばれる職業としては、随分と若い風貌をしていた。

    作中に出てくるロシアの戦争と、今行われているロシアでの戦争とに触れた、とても胸にくるスピーチだった。
    その後の彼の言葉も、作家としてというよりむしろ人間としてすごくかっこよくて、思わず2人で画面越しに拍手を送る。
    一体どんな人なんだろう…
    気になって思わず作者について調べる。
    おいおい、同い年じゃないか!
    しかもデビュー作って!!
    なんてかっこいいんだ…戦争が行われているこの状況下でしっかりと自分の軸でもって堂々と自分の意見を語る姿。本当にかっこよかった。

    この作品『スモールワールズ』は惜しくも4位、我々の予想した『正欲』は3位という結果に。
    本屋大賞にノミネートされ、各方面(フォロワーさんや読書好きの方々)から「面白い!」と話題の本作品。
    本屋大賞の発表のタイミングで手に取った。
    短編集の形をとった連作短編集だ。

    何かをする時間が惜しい、ってくらい、夢中になって読んだ。
    わたしのいつもの通勤時のルーティーン。Twitterをたらたら見て、ブクログを開いて、体調管理のアプリをつけて、友人からのLINEを返す。その後で読書に入る(だけどたまに友人が同じく通勤していると、くだらないLINEで盛り上がりすぎて読書に入らない日もある)。しかしこの作品はもう電車に乗ったら、いや乗る前から読みだしてしまって止まらなくてTwitterどころじゃない、LINEどころじゃない。返信止めまくったみんなごめんよ…!

    夫婦問題、不妊、体罰、虐待、犯罪被害者、性的マイノリティ…など、現代の様々な社会問題をとりあげつつ、その生きづらさの中に生きる人たちの、ささやかで、だけどとてつもなく苦しくて愛おしい6編。

    この作品を、第一話『ネオンテトラ』の世界観を借りて言うとするならば。
    自分の心が空っぽの水槽だとして、そこに何かがゆっくりと満たされていく感じ。
    まずは水が入り、少しずつ魚が増え、彩りを増し、それをただ眺めているだけのところから、徐々に魚たちのめんどうをみていくようになるような、そんな感じ。
    絶望を描きながらも、大切な何かをしっかりと掴み取っていく。
    短編集なので一話一話はそこまで長くはないものの、その一話に込められた想いはめちゃくちゃ強い。6つの短編集で100になっているのではなく、1つの短編が120くらいの威力でやってくる。
    人間て、生きてるって、こういうことなのかもしれない。自分一人の人生なんて、世界で起きていることと比べたらくだらない、って思うけど、みんなそれぞれのスモールワールズの中で生きていて、いろいろある。

    こういう作品は、日常の一部じゃなく、一部を全部とした生活の中にほしい。
    (B’zの曲みたい)
    つまり、家に引きこもってただただこの作品の世界に浸るような、読書を生活の全部にしたような世界で読みたい。
    職場の最寄り駅に着かないでほしい。
    まだまだ作品が築き上げているスモールワールズの中にいたい。
    しかしながら、電車はきちんと定刻に発車して、定刻に停車する。

    その人にはその人の日常生活=スモールワールズがあって、その人なりのスモールワールズがある。
    一番最後まで読んだ時、最初に読んだ作品の見方が大きく変わってくる、のかもしれない。

    • たけさん
      naonaoさん、おはようございます。

      僕も本屋大賞は裏切らないって思っています。
      他の様々な賞は受賞した理由がよく分からない(大人の理由...
      naonaoさん、おはようございます。

      僕も本屋大賞は裏切らないって思っています。
      他の様々な賞は受賞した理由がよく分からない(大人の理由?)ものがたまにありますが、本屋大賞は裏切らない。

      最後の作品は気づいて震えますよね。
      そして1話目に戻る。
      スモールワールドの重なりが、一つの事象に様々な意味や解釈をもたらす。
      今生きている社会ってそういうことなんだな、と改めて気づかせてくれて、人生に彩りを与えてくれる作品だと思います。
      2022/04/17
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      大人の理由…やっぱりあるんでしょうかね、時々いろいろ考えちゃいますが、本屋大賞は純粋に全て面白い。作家さんのジャンルや年齢や...
      たけさん

      大人の理由…やっぱりあるんでしょうかね、時々いろいろ考えちゃいますが、本屋大賞は純粋に全て面白い。作家さんのジャンルや年齢や過去の受賞歴なんかも全部関係ない、本好きにはたまらない素敵な賞ですよね!
      もし自分が物語を書いたとして、わたしは本屋大賞が欲しいです笑

      "スモールワールドの重なりが、一つの事象に様々な意味や解釈をもたらす"
      これめちゃくちゃいいですね!!!
      わたしたちが生きている世界って結局スモールワールドなんですよね。でもだからこそ時々そのちっぽけさのようなものにうんざりしたりもするけれど、結局その積み重ねなんですよね。
      本当に、いい作品でした。たけさんがあそこまで推さなかったら読まなかったと思います。ありがとうございました。
      2022/04/18
    • たけさん
      naonaoさん、よかったです!
      良かった本を推して読んでもらえるのは、ブクログやってて最も嬉しい瞬間です!

      これからもがんばります笑
      naonaoさん、よかったです!
      良かった本を推して読んでもらえるのは、ブクログやってて最も嬉しい瞬間です!

      これからもがんばります笑
      2022/04/19
  • ひっそりとした物語たちの連作短篇集だったと思います。
    誰にも理解してもらえそうもない気持ちだから、誰にも話したことがなくて、ひっそりと自分の中だけに押し留めておいたことを呟いたような、そんな物語たちだったような気がします。
    連作といっても、前の物語の登場人物がまた出てくるというわけでもなく、ただすれ違ったくらいの人が次の主人公になっていて、最後まで読むとまーるく繋がっているので、あぁ、自分とは全く関係ないところでも生活が営まれているんだなぁ、そして知らないところでこんなふうに繋がっているんだなぁという思いになります。
    こんなことを思っているのは自分だけ?と感じているけれど、遠くの誰かが同じようなことを思っているのかも、と思うと少し気持ちが救われます。
    そんな一人一人の『小さな世界』がたくさんあるってことかな?

    私が一番好きだったのは『魔王の帰還』
    この短篇集の中で一つだけ異質な物語だったと思います。久しぶりに泣きながら爆笑しました。

  • 小さな世界の6つの物語。
    どの世界もありふれているような切なく醜く、それでいて愛しい物語たち。
    特に「魔王の帰還」「花うた」「式日」が良かったです。
    短編集だったのでとても読みやすかったのと、
    ほんの少しだけ世界が繋がっており「っお!!」となりました。
    それぞれの人生にはその人の小さな世界があって、
    その中で繰り広げられる物語には一つとして同じものは存在しない。
    様々な人間がいて、その分だけ想いがあって生きている。
    希望も絶望も全部含めて愛しく思えるようなそんな素敵な物語たちでした。

  • 心がザワザワする不穏な作品群。
    だけど、生きている世界が愛おしく感じて泣けてくる。そんな短編集。

    これは直木賞取っちゃうんじゃないか?
    来年の本屋大賞も僕の中では今のところ最有力候補。
    相当良い。とにかくみんなに読んでほしい。

    ネオンテトラ 評価5
    ネオンテトラとは、ネオンのようなメタリックブルーに光ってみえる観賞魚。
    飼い主から愛着を抱かれず、部屋の息苦しさを打ち消すための存在でしかないネオンテトラだけが知る秘密…。
    それにしても、笙一は、もてるなぁ…

    魔王の帰還 評価5
    真央が魔王って…笑ったけど相当な存在感。
    相手が放送を見ることのできないケーブルテレビのインタビューで熱い愛を告白する魔王にほっこりする。
    そして、哲二が菜々子を呼び捨てで呼ぶ瞬間がいい。

    ピクニック 評価5
    怖すぎ…。今年読んだ全ての作品の中で最も怖かったかもしれない。

    花うた 評価4
    往復書簡形式の、あまりに美しすぎる作品。
    秋生はいっしょうけんめい答えを探し、ようやく辿り着く。
    その答えが深雪に届いてほしい。

    愛を適量 評価5
    愛はいつも過剰であり、不足している。
    適量の愛しかた、それはきっと生きている限り永遠の課題だ。
    でもたまに、お互いの愛がちょうど良い時がある。そんな一瞬一瞬が人を成長させるし、明日を生きる活力源となる。

    式日 評価3→4
    人生初の葬式についての話。
    後輩の空虚さはまるで、ノイズキャンセリングイヤホンにより生み出された音のない世界のよう。

    そして、つながっていることに気づいて深みが増す。

    • たけさん
      ゆうママさん、はじめまして!
      コメントありがとうございます。とてもうれしいです。

      読んだ本の感想は、拙くても短くてもなるべく残そうと思って...
      ゆうママさん、はじめまして!
      コメントありがとうございます。とてもうれしいです。

      読んだ本の感想は、拙くても短くてもなるべく残そうと思っていますが、ある程度の時間と根気が必要ですね。

      ゆうママさんのことフォローさせていただきますね。よろしくお願いします!
      2021/07/11
    • アールグレイさん
      こんにちは!たけさん!
      昨夜は失礼致しました。
      まずはフォローを頂きありがとうございます!こちらこそどうぞよろしくお願い致します!
      私はブク...
      こんにちは!たけさん!
      昨夜は失礼致しました。
      まずはフォローを頂きありがとうございます!こちらこそどうぞよろしくお願い致します!
      私はブクログ歴4か月程です。おまけに読むのが遅いのです。その本によりますが、今読んでいる「ドキュメント」は苦労しています。展開が少ないのです。
      図書館利用で、今も次の本の連絡が来ています。「雨夜の星たち」だったと思います。
      焦ります。(~_~;)
      たけさん、何か引き込まれていくような本はありませんか?もし、思いついたらその時にはm(._.)mよろしくです!
      今日は日曜日なので、ゆったりと読書してみます。
      (^〇^∃)
      2021/07/11
    • たけさん
      ゆうママさん!
      東京地方は雨と雷スゴイですが、読書堪能できてますか?

      引きこまれていく本…
      そうですね。僕にとって「スモールワールズ」はま...
      ゆうママさん!
      東京地方は雨と雷スゴイですが、読書堪能できてますか?

      引きこまれていく本…
      そうですね。僕にとって「スモールワールズ」はまさしくそんな本でしたね。
      あと、池井戸潤さんとか伊坂幸太郎さんの作品は総じて引きこまれ感強いと思います。
      最近は金原ひとみさんにはまりつつあります。

      ゆうママさんのお好きな「風が強く吹いている」僕も大好きです。あの作品にはメチャクチャ引きこまれましたよ!
      2021/07/11
  • 一言で言うと衝撃的。人間の持つ一面をこうも鋭く重厚的に描き出すなんて驚きだ。いままで人間について知った気になっていたんじゃないかと思わず自分に問いかけてしまった。もう⭐5作品です。
    「ネオンテトラ」
    子どもができない夫婦。それが紆余曲折を経て、自分の赤ちゃんを授かる。虐待される子ども、浮気や未成年の出産、養子縁組など衝撃的な展開でページから離れられなくなってしまった。最後の金魚を流してしまうシーンまでぶっとんでいてすごかった。
    「魔王の帰還」
    出てくるキャラが立っているしみんな好感がもて
    る。型破りな姉ちゃん真央は強烈魅力キャラで最高だった。 弟鉄二もすごいナリだがとても気持ちのいいやつだ。 体育会に巣食う闇が今どんどん出てきているけどやはり文武両道が今は基本だと思う。 知性や教養が足りないと某野球投手のパワハラ体質が生まれるのだと思う。 菜々子との金魚すくい大会もよかった。 青春全開な作品。
    「ピクニック」
    とても重いテーマだった。 親なら誰しもが思い当た
    る節があることばかりだ。 私はいつも子どもの寝息
    が聞いてから電気を消していた。 夜中に起きてしま
    ったときも寝息を聞いていた。 それはあまりに弱々
    しくて小さくて愛おしくてたまらなかったからだ。
    たくさんの心配はつきない。 本当にたまたま運が良
    くてここまでこれたとしみじみ響いた。
    最後のどんでん返しにはやられた。 衝撃的だけども
    うなんだかわからなくなった。 読みごたえはすごく
    あった。
    「花うた」
    加害者と被害者の家族の手紙のやり取り。 これもま
    た重いテーマだった。 罵詈雑言、 謝罪と徐々に近づいていく二人の心。 それらが重なっていくことに不思議な感覚でで一杯だった。 きっと二人とも天涯孤独のようなものだから引き合ったのかもしれな
    い。
    「愛を適量」
    離婚し独り暮らしを続ける初老の高校教師、慎悟の
    もとに、大きくなった娘が訪ねてきて......。 性同一性障害に悩む娘にどうやって愛情を注げばいいのか悩む慎悟にやきもきする。 ただ、荒んでた寂しい生活にパッと火が灯ったような潤いがどんどん生まれていくのが心地よかった。 そして、 慎悟は自分を取り戻していく。娘の過去のわだかまりもある程度清算され、希望を感じさせるラストシーンだった。
    「式日」
    施設育ちの 「先輩」とアル中の父を持っていた「後
    輩」の物語。それぞれが欠けたものを持っている。
    二人は親友のようだ。 「瞬間胸に射した光で生きて
    いける」自分が逃れられない逆境にいるときに誰か
    から勇気を貰うことがある。二人はそれぞれが抱え
    ているものと戦いながら自分を探しているのだと思
    う。 ラストの夕暮れの町の情景が切なくてジーンと
    来た。 つい二人を応援したくなった。火灯し頃で町に明かりが点いていく。 なんとも切なくて、でも温かい。
    BGMはユーミンの「up townは火灯し頃」で決まり(笑)
    やっぱ本屋大賞にランクインするほどの作品ってすごい。すごく密度の濃い時間を過ごせる。
    一見興味がなくともまずは読むことが大事。新しい景色が次々と開かれていくから。

  •  以前から読みたいリストにず~っと入っていたこの作品、ついに読むことができました。6編の短編が収められていますが、どの作品も読み応えがあります。全く異なるストーリーでありながら、あとからちょっとしたつながりを感じることができるのもまた面白いかなって思います。あとから…えっ??怖っ!!ってなる作品から、そうだよねって納得できるものから、心が揺り動かされる作品まで…多彩なラインアップです。

    〇ネオンテトラ:夫の不倫、不妊上手くいっているようで上手くいってない美和夫婦と、美和の姪である有紗とその同級生で家庭環境に問題がある笙一…。複雑に入り組んだ関係の中で得られた宝物とは…。
    〇魔王の帰還:姉の真央が離婚すると実家に戻ってくる…。真央のことをその体格と存在感から魔王と呼んでいたのは弟の鉄二…。転校後学校に馴染めない鉄二と菜々子に、金魚すくい選手権に出場しないかと持ちかける…。
    〇ピクニック:どこにでもある幸せな家庭の姿、お弁当を持って家族みんなでピクニックを楽しむ…。そんな一見理想的とも家族の抱える闇とは…。
    〇花うた:殺人犯の秋生と兄を殺された妹深雪…。手紙のやりとりをする中でお互いの心に変化が生じるのだが…。
    ○愛を適量:長年離れて暮らしてきた親子、教師である慎悟のもとに見た目男性の娘佳澄が現れた…。性別は女性でありながら心は男性…そんな娘に対して慎悟はどう接するのか…。
    〇式日:生まれて初めて参列する葬儀は後輩の父の葬儀だった…。

     この中で好きなのは、「魔王の帰還」です!真央さんって、個性が強いけれど人情味があって憎めないキャラで私好みです。真央さんのその後が知りたいですねっ!

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      一穂ミチさん、まだあまり私は読めてないんですけれど、私も好きです☆
      そう、重いけれど引きずらない感じの作風ですね〜!
      なんか惹かれるものを感...
      一穂ミチさん、まだあまり私は読めてないんですけれど、私も好きです☆
      そう、重いけれど引きずらない感じの作風ですね〜!
      なんか惹かれるものを感じます…(*^^*)♡
      2024/01/16
    • かなさん
      チーニャさん、おはようございます!
      昨日の夜まで雪が降ってだいぶ積もりました。
      今まで、雪が少なかったので
      正直油断していて、身体もな...
      チーニャさん、おはようございます!
      昨日の夜まで雪が降ってだいぶ積もりました。
      今まで、雪が少なかったので
      正直油断していて、身体もなまり
      雪かきしんどかったです( ;∀;)
      チーニャさんの優しい心遣いに感謝します。
      でも、今日はとってもいい天気です!!
      2024/01/17
    • かなさん
      チーニャさん、一穂ミチさんの作品、
      今回読めてよかったです!
      また、これからも気にかけて
      読書も楽しみたいと思います。
      チーニャさん...
      チーニャさん、一穂ミチさんの作品、
      今回読めてよかったです!
      また、これからも気にかけて
      読書も楽しみたいと思います。
      チーニャさんに、教えてもらったサイトもホントよかったっ!(^^)!
      ありがとうございます。
      2024/01/17
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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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