どの口が愛を語るんだ

著者 :
  • 講談社
3.55
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本棚登録 : 113
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065223871

作品紹介・あらすじ

のたうちまわって超えていけ、愛。

『流』の直木賞作家・東山彰良が新たに挑む、自由でボーダレスな短編集!

九州の温泉街、小さな街の団地、ニューヨーク、台北、東京ーー。
残酷さとやさしさが隣り合わせるパッとしない世界
それでも生きていくむきだしの人間たち。

「猿を焼く」
さえない温泉街に引っ越してきた中三のぼく。無軌道な不良とよそ者の少年は、なぜ猿に火をつけたのか?

「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
クレイジーな同級生カメと、そのアバズレな姉。欲求に翻弄されるぼくと彼らの団地の日常。

「恋は鳩のように」
同性婚が合法化された日、歓声に沸く群衆の中、アンディは詩人の恋人・地下室に電話をかける。

「無垢と無情」
人間じゃなくなった「やつら」から身を潜めるように、おれは画面の中のミーティングルームを訪れた。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり東山さんの作品は最高だ。日本文学で、こんなテイストかけるのはなかなかいないと思う。ここ最近、女性作家さんの作品ばかり読んでいたこともあって、より強くそう思うのかもしれないけれど笑 

    個人的には、「猿を焼く」が一番好き。(この作品に限らずの話だが)思いのほか作品自体のスコアが低いが、アクが強いのと、面白くないは違うと思う。

  •  四篇からなる短編集。ジャケットがとても素敵で買ってしまった。

     「猿を焼く」がこの中では圧倒的に好きだった。脱サラして都会から田舎へ移住しオシャレ農業を始めた一家の息子がその地元の不良たちと出会い、いわゆる"アバズレ"に恋をする話なのだけど、この田舎の閉塞感に身に覚えがありすぎて息が苦しくなった。田舎にいながらにしてできる刺激的なことは喧嘩かセックスかしかなくて、独特のヒエラルキーがあって、その中で起こる出来事は全て地元じゅうで筒抜けで、ここで順応するのは本当に大変だ。そうした環境に問われて溺れそうになりながらも何とか保っていた自我が崩壊していくラスト、救いがあるようで無くて、かなり重たい読後感。

     「恋は鳩のように」も面白かった。LGBTQへの理解が進む世界にあって、同性愛者であるということ、それをカムアウトできないということが本人のアイデンティティや恋人同士の結びつきを強くしていたかもしれない、という視点はLGBTQを取り上げる作品の中では珍しいのではないか。新鮮だった。

    「猿を焼く」★★
    「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
    「恋は鳩のように」★
    「無垢と無情」

  • どれもわりと特異な物語なのに何気ない。かえって正常さに狂気を孕む。

    愛と偽善、優しさと無関心。もしそれらに違いがあるとして、心が突き動かされた時、その違いになんの差があるだろう。

    受け入れられない、理解されない世界は、のたうち回るほどに悲しいけど惹きつけられる。

    「恋は鳩のように」は長編で読んでみたいと思った。

  • 「猿を焼く」不良とアバズレと片目の猿のスタンドバイミー。

    「イッツプリティニューヨーク」イカレた同級生が撮るすべて失敗作の写真。

    「恋は鳩のように」同性愛が普遍だったらそこに意味はないのかと悩む詩人とルブタンのヒールが気になる片思い女子。

    「無垢と無常」ゾンビとオンラインと猫。

  • 3中編と1短編 共感できないのに気になる作家さん

    「猿を焼く」 初出2020年「群像」
    脱サラでおしゃれな農業始める親に連れられて九州の温泉町に引っ越した平山圭一は、転校した中学になじめず同じクラスのユナを好きになるが、そのまま鹿児島の全寮制高校に進学する。ユナが裸のコンパニオンになったという話を聞いてやるせなくなり、殺されたと知らされて同級生の追悼の会に行き、ユナと付き合っていたという不良と一緒に殺した男の家に行き、飼っていた猿を殺して焼く。
    面白いとは思わないが、やるせなさで記憶に残ってしまう。

    「イッツ・プリティ・ニューヨーク」 初出2020年「小説トリッパー」
    同じ団地の同級生でいじめられても気にしない亀山亀は、工場に勤めてから、AV女優の姉を殴って骨折させた上司を大鍋のスープに突き落として少年院に送られた。主人公が大人になって第一希望ではないものだらけの人生を方向転換して世界を放浪している途中、ニューヨークで「失敗作の輝きに満ちている」と評価される亀山亀の写真展に出会う。
    短編ゆえの寓意的な物語が光る。

    「恋は鳩のように」 初出2020年「三田文学」
    2019年に台湾で同性婚が認められ、ゲイのカップルのアンディと地下室(ペンネーム)に転機が訪れる。アンディは浮気し、社会で認められない方向に生きてきた地下室は、自分はその自認性のためにゲイになったのではないかと思う。大学の教員宿舎の下の階に住むかつての教え子で、裸でベッドで待ち伏せして拒絶されたことのあるチイアンは、ふたたびアプローチする。
    LGBTを超え、詩を読む人々が自分の恋に絡めて解釈するのがおかしい。

    「無垢と無情」 初出2020年「群像」
    ゾンビ小説。町中にゾンビがあふれ、家族もゾンビに感染したので殺して外に放り出した読魔(ハンドルネーム)は、パソコンのミーティングルームで、日本のあちこちで同様の絶望の中にいる人たちと語るうちに、リストカットした女性に怒りを爆発させる。
    つまらない。

  • 選書番号:483

  • どの篇も恋愛(というか愛欲か)を描いているが、どれも設定が一筋縄ではない。

    短編になると作者の純文学的な面が強く出るように思う。

  • 装丁の可愛さで購入。4編からなる短編集。難しいが読みやすく、後から色々と考える。2編目を読んでいる頃までは難解で自分の読解力のなさが情けなくなった。読了し、つまりはそのまま受け取ればいいのかなと思った。4編とも「特殊な愛」の形を描いているように感じるが、特殊な愛なんてそもそもなくて、どの愛も、どの人のどの考え方も生き方もそのままでよいというメッセージを感じた。
    それから「生きづらさ」を抱えているだろうなと他人から思われていそうな立場の人たちも、その人の世界の中で生き辛くなく生きてる人ももちろん大勢いるということを考えた。大変そうだ感じたり、理解を寄せてみたり、それはエゴでしかないんだなと感じる。そして自分はその「思っている」側の人間であると自分自身で傲慢なカテゴライズをしていることに気付かされゾッとする。マイノリティやマジョリティなんて誰が決めたんだろう。そして自分はいつからマジョリティのつもりでいたのかと恐ろしくなる。全く同じ考えをもつ人間など誰一人いなくて、理解しているつもりになっていても、わからないのが真意ではないか。それに改めて気づけてよかったと思う。

  • かなり特殊な“愛”にまつわる4篇(「猿を焼く」「イッツ・プリティ・ニューヨーク」「恋は鳩のように」「無垢と無情」)を収録した短篇集。「猿を焼く」がかなり刺激的かつ巧くて唸らされた。「ニューヨーク」も同様だが、同性愛を扱った「恋は〜」はあまり響かなかった。「無垢〜」はコロナ禍の現在を感じる作品。

  • いきなり猿を焼く、で巻頭にもってくるには重すぎるんじゃないのと思ったけれど、どんより重いものが並んだなあ。巻末の無垢と無情は群像で読んでいたものだが、最重量級で、どうしたらいいのよって読了感。東山さん、大丈夫?

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著者プロフィール

68年台湾生まれ。09年『路傍』で大藪春彦賞、15年『流』で直木賞、16年『罪の終わり』で中央公論文藝賞、17年『僕が殺した人と僕を殺した人』で織田作之助賞、読売文学賞、渡邊淳一文学賞を受賞。

「2021年 『緊急事態下の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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