スウェーデンボルグ 科学から神秘世界へ (講談社学術文庫)

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  • 本 ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065229132

作品紹介・あらすじ

18世紀のスウェーデンが生んだ稀代の科学者にして神秘思想家、エマヌエル・スウェーデンボルグ(1688-1772年)。この異才の存在こそが、カントに『視霊者の夢』(1766年)を書かせ、またバルザックをして『セラフィタ』(1834年)の執筆にむかわしめました。日本では、禅学の大家である鈴木大拙(1870-1966年)が紹介したことで知られています。
スウェーデンボルグは84年の生涯のうち、その半分を科学者として過ごします。11歳でウプサラ大学に入学したあと、イギリスやフランスに遊学して天文学や機械工学を学び、先駆的な航空機を含め多彩な発明品の設計図を残します。その後、スウェーデン国王カルル12世の知遇を得たことをきっかけに、王立鉱山局の監督官として59歳まで働くことになります。監督官として勤めるかたわら、地質学をはじめ数学、宇宙学、解剖学など多岐にわたる分野で精力的に執筆活動を続け、科学者として当時のヨーロッパに名を馳せますが、50代のときに大きな転機が訪れます。それが相次ぐ神秘体験でした。
スウェーデンボルグを科学者から神秘主義神学者へと変貌させた、神秘体験とは一体どのようなものだったのでしょうか。それはこの天才にとってどのような意味をもっていたのでしょうか。そして、彼が見た死後の世界とはどのようなものだったのでしょうか。科学から神秘世界へ、大きな飛躍があるように見え、ともすれば矛盾に満ちたものになりそうなその生涯は、実のところ極めて合理的な精神に貫かれていたのです。
2005年にユネスコの世界記憶遺産に認定された膨大な手稿も含め、スウェーデンボルグが遺した思考の軌跡を辿っていくと、そこにはこの思想家が持ち続けたたぐいまれな合理的思考の輝きと、ニュートンやカントをはじめとする当時の科学者や哲学者が、人間や魂、宇宙など世界の真理に迫るべく探求を重ねていた18世紀の時代精神が浮かび上がってきます。
日本ではいまだ知る人ぞ知る存在でありながら、ゲーテ、シェリング、ドストエフスキー、コナン・ドイル、エドガー・アラン・ポー、ボルヘスなど、綺羅星のごとき思想家や作家たちに影響を与え続けた巨人の生涯と思想の全貌を本書は活き活きと簡潔に描き出しています。ヨーロッパ思想の奥深さを知る、絶好の入門書です!

感想・レビュー・書評

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  • 霊界との交信、千里眼によるストックホルム大火の体験など、オカルト的な逸話に事欠かない異端の思想家の解説書。彼をオカルティズムの始祖としてのみ理解するのではなく、その科学者・技術者としての側面から、カトリック・プロテスタント双方に対する激しい攻撃に基づき「新しい教会」を構想する神学者としての側面まで、彼の思想体系のエッセンスを抽出している。もとが新書ということもあってか、現代の様々な学問や文学に彼が与えた影響を強調したり、直接の影響はなくとも実質的な先駆者として扱ったり、儒教や仏教と彼の教えの共通性を仄めかしたりするなど、スウェーデンボルグの現代日本的意義を強調しすぎているきらいはあるものの、『天界の秘儀』に代表される大部の著作を遺したこの思想家の紹介・解説書として非常に面白い。

  • 善を為すは我が宗教なり
    科学者としての出発:
    鉱山師の家系
    イギリスでの天文学修業
    工学的発明への意欲
    カルルへの出仕
    鉱山技師としての活躍
    原初の自然点ー革新的な原子論
    宇宙論ーニュートンへの挑戦
    霊へのめざめ:
    霊魂・アニマ
    先見的な大脳皮質論
    自然的な心と霊的な心をつなぐ合理的な心
    科学的探究の限界
    夢解釈
    イエス・キリストを幻視
    幻視体験
    その霊的世界:
    死後の人間である霊
    霊にも身体と精神
    死は生の連続であり移行
    霊界と自然界の類似と相違
    照応
    剥脱
    天界と天使たち
    「創世記」を読み直す:
    徹底した聖書研究
    霊的→天的人間
    善悪を知る木
    原罪とは生命秩序の転倒
    人類史とパラレルな新生の心理学
    不変宗教への道:
    機械論→目的論
    神人
    贖罪論
    真の三位一体
    意志が生み出す善悪
    自らに課した規律
    晩年の日々

  • めちゃんこ面白かった。
    さいこう。
    ボルグ深掘りします。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/768196

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著者プロフィール

放送大学名誉教授。福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『なぜガザは戦場となるのか』(ワニブックス)、『なるほどそうだったのか!! パレスチナとイスラエル』(幻冬舎)、『パレスチナ問題の展開』(左右社)、『ロシア・ウクライナ戦争の周辺』(GIEST)など、多数。最新刊に『なるほどそうだったのか! ハマスとガザ戦争』(幻冬舎、2024年)。「高橋和夫の国際政治ブログ」:http://ameblo.jp/t-kazuo

「2024年 『イスラエル vs. ユダヤ人【増補新版〈ガザ以後〉】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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