本のエンドロール (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1734
感想 : 109
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065230688

作品紹介・あらすじ

本の奥付に載っている会社名の後ろには、悩みながらも自分の仕事に誇りを持ち、本を造る「人」たちがいる。豊澄印刷の営業・浦本も、日々トラブルに見舞われながら「印刷会社はメーカーだ」という矜持を持ち、本造りに携わる一人。本を愛する人たちの熱い支持を集めた物語が、特別掌編『本は必需品』を加え、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • ずっと前から「読みたい」に入れていたが、ようやく中古本屋で見つけて購入。
    ものづくりの面白さとそれに携わる人々が描かれていて、とても面白く読んだ。

    営業・生産管理・工場のぶつかり合いからスタートするが、かつて地方工場で勤務した時のことを思い出した。
    増産や短納期になれば管理部門とて他人事ではなく、人の手当てや稼働時間延長の労組との折衝、場合によっては間接部門からの応援など色んなことが降りかかってくる。
    自分たちが携わったものが店頭に並んだのを見た時の誇らしい気持ちは、よって管理部門の人間でも変わりはない。
    お荷物扱いされていたデクノ、ずっと昔から動き続けお役御免間近の一号機。工場で印刷機が動いている場面を読むだけでジンとしてきて、つくづくメーカー育ちを実感する。

    営業の浦本、工場で印刷機を動かす野末 DTPオペレーターの福原。この三人の視点から話は進む。
    青臭く理想を語る浦本は、現場一筋の野末が苦手とする気持ちもよく分かるが、差し入れを持ってきたり作業服を着て手伝いに来たり、メーカーの営業はこうでなくっちゃねというところもあり。
    営業部や工場で周りを固める面々も多士済々。
    中でも手堅い仕事ぶりの仲井戸、かつては敏腕営業として鳴らした毛利部長、職人気質丸出しのジロさんやキュウさんなど、「いたよね、こういう人たち」という人ばかり。
    紙の本が読書人口の減少と電子化という二つの逆風に直面している中で、印刷機の稼働率向上に取り組む印刷会社の面々に、通常業務の他にゲラやプルーフを読んで販促までする書店員の姿に好感。

    彼らの働きぶりを通して、何のために仕事をするのかという問いも掘り下げられる。
    この歳になっても答が見つけられず、もはやお金のために働いているようなところもあるのだが、仲井戸が言う『目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせること』の難しさと自分の仕事ぶりを照らし合わせると、確かにお金のためだけで人に嫌なことを言ったり頭を下げたりが多い仕事をしているわけでもないなと思うところはあり。

    エピローグの家族見学ツアーの場面はなんだか自分の家族のことのようでもうウルウル。野末の家族も壊れなくて良かったよ。
    本の最後にSTAFFとして記され並んだ役割とお名前に粛然とした。

  • 大崎梢さんの書店員シリーズや出版社の営業マンシリーズ、宮木あや子さんの校正ガールシリーズで本に関わる様々なお仕事を知ったつもりでいたが、この作品は本の印刷会社の話。

    作中、作家たちが自分の本がどう印刷され形になっていくのか知らなかったと驚くシーンがあるが、確かに印刷そのものについてはクローズアップされてこなかったかも知れない。私自身知らないことが多くて興味深い内容だった。

    舞台となる〈豊澄印刷〉は書籍のみを扱っている印刷会社。主人公は営業の浦本。
    出版市場そのものが縮小傾向にある現代、少ないパイを様々な印刷会社と取り合う状況で苦戦している。とくに徹底した機械化と出版物以外の印刷全般を扱う大手の〈ワールド印刷〉には価格と納期の速さでは太刀打ち出来ない。
    中堅規模の〈豊澄印刷〉の強みは長年の付き合いによるきめ細やかな注文対応とそれを実現する工場部門の職人たちの技術。

    途中まで浦本の、都合の良い男になってる感じな姿勢にハラハラしながら読んだ。出版社の編集や装丁作家、作家の言いなりで無茶な注文や度重なる大幅変更に応えて工場部門や校正、オペレーター部門などに無理を課すことになっていく。
    工場の野末の『伝書鳩だな』という皮肉にウンウンと頷き、先輩営業マンの仲井戸の堅実さを見習えとも思ったりするが、時には浦本の情熱が『いい本』を作り上げることもあるのだからバカに出来ない。
    装丁作家のものすごい上から目線な態度に怯まず、技術で応えようとする工場のジロさんが良いキャラクターだったし、次第に工場部門始め作業担当の人々と浦本との連携と信頼が出来ていくところが心地好かった。

    〈豊澄印刷〉は紙印刷だけでなく電子書籍部門も持っているため、会社の電子書籍シフトへの舵切りの話が出て来たり、本は紙であるべきか電子書籍になっていくのを止められないのかという話も出て来る。
    個人的には紙で読みたい人間だが、電子書籍には電子書籍の良いところもたくさんあるし、それぞれが共存出来れば良いなと都合の良いことを思ってしまう。

    また私自身は書籍について装丁デザインより中身に惹かれるのでそこまで拘らなくても…と思うところが多かったが、本を読む時にはこれまで注目してこなかった印刷というところにも注目してみようとも思った。

    本を作るのは作家さんではあるが、作家さん一人では本は世に出ない。書店に並ぶそこに至るまでにたくさんの行程がありたくさんの人たちが関わっている。
    「本のエンドロール」を見てみれば、野末が言うように印刷会社の名前のその奥に、たくさんの人たちの名前があるのだと改めて知った。巻末に注目。

  • 本好きなら感動せざるを得ない作品だ。途中で涙腺が緩んでしまったほどだ。
    奥付が本のエンドロールだなんて発想なかったし、気にとめなかった。一冊の本がこんなに沢山の方々の手によって造られていることを改めて再認識させられた。更には本作の中に後付けとは別にまさしくエンドロールが付いていて感動した。

    以前と異なり最近は電子書籍版をスマホで購読する機会が多い。紙に印刷された本も電子書籍も本に違いは無いし、ニーズや目的に合わせて選択すればいいと思ってきた。いわゆる貸本(図書館も含め)や古本と違って作者や出版社などにも利益が分配されるわけだし、頑なに電子書籍化に抵抗する作家に違和感すら覚えてきた。
    本書の中にも登場する「電子書籍は本なのか」「電子書籍化が出版や販売業界の衰退に拍車をかけている」といった議論について、本作なりの答えにある意味腑に落ちる思いがした。

  • 熱〜いお仕事小説!!
    池井戸潤さんか!と思ってしまった。と言っても池井戸さん読んだ事ないんですが。笑 ドラマのイメージで。

    ああいう感じ、実は苦手で、、
    途中まで全然入り込めず、ものすごく読むのに時間かかってしまった////
    でも本の印刷にまつわる話だったので、気がつくといつの間にかのめり込んでた!

    1冊の本が出来るまで、こんなにも多くの人が携わっていたんだなぁ〜とほんとびっくり!
    今まで、作家さんが描いて、出版社が出して、書店が売るみたいな行程しか頭になかったけど、印刷して、製本をする会社がなければ紙の本は出来ないってこと、改めて思い知らされた。
    そして印刷や製本がこんなに大変で重要な仕事だという事も知りました。

    電子書籍と紙の本、どちらにもメリット、デメリットはある。
    私はもともと断然、紙派だったけど、この本を読むとますます紙の本が好きになる。
    色んな人の一生懸命で1冊の本が出来る。
    これからはそういう事を思いながら、大切に1冊1冊読んでいきたいなと思う。

    最後のエンドロールにじーんときてしまった。
    みんなで作った本。
    映画に必ずエンドロールがあるように、本にもエンドロールがあったらいいのに。


    • Manideさん
      mihiroさん

      何事も熱いのいいですよね。
      熱い人をみるといつも羨ましく思ってますww

      本にもエンドロールが…っていうのが面白い発想で...
      mihiroさん

      何事も熱いのいいですよね。
      熱い人をみるといつも羨ましく思ってますww

      本にもエンドロールが…っていうのが面白い発想ですね。
      最近、本と向き合うことを大切にしようと思ってきたので、自分の中でエンドロールを流すのは面白いな〜と感動しちゃいました。

      一冊読んだら、しっかり振り返るのって大切だなと思っていたので、自分でエンドロール流しながら振り返ってみようと思いました。
      いつも、この曲がこの本に合うなっていうのは考えるので、その曲を流しながらの振り返りは有意義そう!!


      池井戸潤さんの作品は読み応えがあるものが多いですよ^_^
      2022/07/15
  • 出版社が舞台、編集者が主人公の小説はあっても、印刷所や印刷所の営業が主人公の小説はそうはない。本書は豊澄印刷の中堅営業・浦本学が、斜陽産業と言われる出版界の荒浪に抗いながら、「印刷所はメーカー」という信念をもって仕事に邁進していく物語である。本好きにはたまらない面白さ。

    本はどうやって本になるのか、確かにこれは意外に知られていないかもしれない。本書のエピソードでもあるように、おそらく著者ですらも自分の本がどうやってできるのか知らない人が大半だろう。編集者、校閲者、DTPオペレーター、印刷所の技術者、特色工、デザイナー、イラストレーター、製本業者…。本書は比較的大きな出版社や印刷所が舞台だが、むしろ、多くの小規模会社では、一人が二役三役こなすことが普通だ。その間を取り持つのが、浦本のような印刷所の営業の役割である。日に何度かやってくる営業さんは、印刷会社によって色があり、他社の人なのに時に信頼のおける仲間のようになっていく。

    本は、本という形になってからも、編集者、出版社の営業、取次、運送会社、書店さんと多くの人が関わる。もっとも、これはどの商品、サービスでも同じことだろう。目の前の商品は、実に多くの人が関わって、いま手元にあるのだということを本書は改めて実感させてくれる。そして、何のために仕事をするのかという問いをもう一度考えてみたくなる。どうせ働くなら、楽しんで、ある種の理想をもって働いていたい。

  • 本好きにとっては感動の作品でした!
    本は作家さんがすべてだと思っていましたが、
    本作りにこんなにも沢山の会社と工程と人々が関わっていたなんて…
    読みながら思わず家にある本のカバーや表紙や印刷の色味など確認してしまいました。
    私はもっぱら図書館で借りるのが基本で、気に入った本のみ購入するというスタンスをとっていましたが、紙の本大好きなので月に一冊は購入して
    紙の本を応援したいと思います!

  • 本は身近な職人の技!
    本を作る人々の情熱が詰まったお仕事小説。

    紙の本を作る工程、知ってましたか?
    作者が物語を書いて、編集したり誤字脱字などを訂正したり…のイメージはあると思います。
    でも、印刷や製本の工程と聞いてピンとくるものが私にはなかった。
    巨大なプリンターで刷って、機械で製本…だと思ってたら、大間違い!
    アルミ板で本のハンコ作って、機械で紙にそのハンコを押す。
    表紙に至っては、そのインクを手で作ることも。
    紙は湿度や気候によって状態が変わるから、印刷設定も人の管理が必須。
    乾かしたら、製本も人と機械の共同作業。
    こんなに人が関わって作ってのか!とビックリしました。

    電子も良いけど、やっぱり紙の本を愛おしいと思える1冊。
    私はこれからも紙の本を大切に読み続けていきたいです。

  • たとえ天職だとは言いきれなくても、少しでも仕事を楽しく、達成感を得るために、みんな頑張ってるんだなぁ、私も頑張ろうと思えた。
    本造りってほんと大変な仕事なのだと初めて知れた。
    奥付なんてじっくり見たことなかったし、印刷の色、紙の質もじっくり見たこともなかったけど、本を造る人たちはこだわって造ってくれてるんだ。
    これからは本の感触、質感までじっくり味わおう。
    私も本は断然紙派なんで、紙の本がなくならないように祈る。

  • ずっと読みたい本だった。
    読んで良かった。

    本が出来るまで。
    知らなかった苦労。
    色んな人が携わってやっと1冊の本が出来上がる。

    本屋に行けば簡単に手に入る。
    本が出来る工程はあまり考えた事がない。
    この本を読んで、1冊の本が出来上がるには、たくさんの時間がかかり、色んな方が試行錯誤を重ねているんだなぁと。
    本が出来るまでの工程を私も見学してみたいと思った。

    この本は本造りに関することだけではなく、(同じ目標でも)仕事への向き合い方、それぞれの考え方の違いなども描かれていて、いろいろ考えさせられました。
    出会って良かった本になりました。

  • 本が好きならば絶対に読むべき作品だ
    この本を読んでしまったら紙の本が手放せなくなる

    紙の本を作る
    それはどんな風に作られているのか、私は全く知らなかった
    営業の人が橋渡しをして、本の文字や表紙、紙質、印刷工程など、全てに多くの人達が関わっている
    本が生まれるまでに沢山の人の手がかかってるんだなって
    今読んでいるものは当たり前のものではないのかもしれない
    何かが拗れたら世にでなかったかもしれないのだろう
    多くの人の拘りと信念と、そして料金や品質の現実とを合間ぜながら世に出回る本が生まれるのか

    どんどん電子書籍の時代になるとは思う
    勿論電子書籍にはその良さがあるだろう
    小説の中で描かれるように、絶版になった本が電子なら蘇る
    電子で本に触れたならば、その人にとっての思い出の本は電子書籍での物語になるのかもしれない
    けれど私は紙が好きだ、紙の書籍が好きだ
    インクの匂いや本の重さ、ページに触れること、見てどれくらい読んだか分かること
    この本を読むことで、紙の本が好きって気持ちを再認識できる
    そして、電子書籍には少し拒否感あったけど、電子書籍の素晴らしい部分にも触れることができて使う人の理解ができたように思う

    当たり前のことだけれど、小説を生み出すのは先生たち
    だけど本を生み出すことには多くの人が関わっていることを認識させられる
    読んだら紙を愛したくなるし、そして紙の本がいつまでも続くように新品を購入したい
    やはり何事にも売り上げという現実が立ちはだかり、いつかそう言った面でも紙の本の危機が訪れるのかもしれない
    だから私が恩返しとしてできるのは、書店で選んで自宅にお迎えすることなんだろうなって思うんだ

    携わる全ての人へ、本を生んで育ててくれてありがとうと感謝を伝えたくなる1冊

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著者プロフィール

安藤祐介
一九七七年生まれ。福岡県出身。二〇〇七年『被取締役新入社員』でTBS・講談社第一回ドラマ原作大賞を受賞。同書は森山未來主演でドラマ化もされ、話題を呼んだ。近著に『本のエンドロール』『六畳間のピアノマン』『就活ザムライの大誤算』などがある。

「2023年 『崖っぷち芸人、会社を救う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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