本のエンドロール (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.25
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本棚登録 : 716
感想 : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065230688

作品紹介・あらすじ

本の奥付に載っている会社名の後ろには、悩みながらも自分の仕事に誇りを持ち、本を造る「人」たちがいる。豊澄印刷の営業・浦本も、日々トラブルに見舞われながら「印刷会社はメーカーだ」という矜持を持ち、本造りに携わる一人。本を愛する人たちの熱い支持を集めた物語が、特別掌編『本は必需品』を加え、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 大崎梢さんの書店員シリーズや出版社の営業マンシリーズ、宮木あや子さんの校正ガールシリーズで本に関わる様々なお仕事を知ったつもりでいたが、この作品は本の印刷会社の話。

    作中、作家たちが自分の本がどう印刷され形になっていくのか知らなかったと驚くシーンがあるが、確かに印刷そのものについてはクローズアップされてこなかったかも知れない。私自身知らないことが多くて興味深い内容だった。

    舞台となる〈豊澄印刷〉は書籍のみを扱っている印刷会社。主人公は営業の浦本。
    出版市場そのものが縮小傾向にある現代、少ないパイを様々な印刷会社と取り合う状況で苦戦している。とくに徹底した機械化と出版物以外の印刷全般を扱う大手の〈ワールド印刷〉には価格と納期の速さでは太刀打ち出来ない。
    中堅規模の〈豊澄印刷〉の強みは長年の付き合いによるきめ細やかな注文対応とそれを実現する工場部門の職人たちの技術。

    途中まで浦本の、都合の良い男になってる感じな姿勢にハラハラしながら読んだ。出版社の編集や装丁作家、作家の言いなりで無茶な注文や度重なる大幅変更に応えて工場部門や校正、オペレーター部門などに無理を課すことになっていく。
    工場の野末の『伝書鳩だな』という皮肉にウンウンと頷き、先輩営業マンの仲井戸の堅実さを見習えとも思ったりするが、時には浦本の情熱が『いい本』を作り上げることもあるのだからバカに出来ない。
    装丁作家のものすごい上から目線な態度に怯まず、技術で応えようとする工場のジロさんが良いキャラクターだったし、次第に工場部門始め作業担当の人々と浦本との連携と信頼が出来ていくところが心地好かった。

    〈豊澄印刷〉は紙印刷だけでなく電子書籍部門も持っているため、会社の電子書籍シフトへの舵切りの話が出て来たり、本は紙であるべきか電子書籍になっていくのを止められないのかという話も出て来る。
    個人的には紙で読みたい人間だが、電子書籍には電子書籍の良いところもたくさんあるし、それぞれが共存出来れば良いなと都合の良いことを思ってしまう。

    また私自身は書籍について装丁デザインより中身に惹かれるのでそこまで拘らなくても…と思うところが多かったが、本を読む時にはこれまで注目してこなかった印刷というところにも注目してみようとも思った。

    本を作るのは作家さんではあるが、作家さん一人では本は世に出ない。書店に並ぶそこに至るまでにたくさんの行程がありたくさんの人たちが関わっている。
    「本のエンドロール」を見てみれば、野末が言うように印刷会社の名前のその奥に、たくさんの人たちの名前があるのだと改めて知った。巻末に注目。

  • 熱〜いお仕事小説!!
    池井戸潤さんか!と思ってしまった。と言っても池井戸さん読んだ事ないんですが。笑 ドラマのイメージで。

    ああいう感じ、実は苦手で、、
    途中まで全然入り込めず、ものすごく読むのに時間かかってしまった////
    でも本の印刷にまつわる話だったので、気がつくといつの間にかのめり込んでた!

    1冊の本が出来るまで、こんなにも多くの人が携わっていたんだなぁ〜とほんとびっくり!
    今まで、作家さんが描いて、出版社が出して、書店が売るみたいな行程しか頭になかったけど、印刷して、製本をする会社がなければ紙の本は出来ないってこと、改めて思い知らされた。
    そして印刷や製本がこんなに大変で重要な仕事だという事も知りました。

    電子書籍と紙の本、どちらにもメリット、デメリットはある。
    私はもともと断然、紙派だったけど、この本を読むとますます紙の本が好きになる。
    色んな人の一生懸命で1冊の本が出来る。
    これからはそういう事を思いながら、大切に1冊1冊読んでいきたいなと思う。

    最後のエンドロールにじーんときてしまった。
    みんなで作った本。
    映画に必ずエンドロールがあるように、本にもエンドロールがあったらいいのに。


    • Manideさん
      mihiroさん

      何事も熱いのいいですよね。
      熱い人をみるといつも羨ましく思ってますww

      本にもエンドロールが…っていうのが面白い発想で...
      mihiroさん

      何事も熱いのいいですよね。
      熱い人をみるといつも羨ましく思ってますww

      本にもエンドロールが…っていうのが面白い発想ですね。
      最近、本と向き合うことを大切にしようと思ってきたので、自分の中でエンドロールを流すのは面白いな〜と感動しちゃいました。

      一冊読んだら、しっかり振り返るのって大切だなと思っていたので、自分でエンドロール流しながら振り返ってみようと思いました。
      いつも、この曲がこの本に合うなっていうのは考えるので、その曲を流しながらの振り返りは有意義そう!!


      池井戸潤さんの作品は読み応えがあるものが多いですよ^_^
      2022/07/15
  • 出版社が舞台、編集者が主人公の小説はあっても、印刷所や印刷所の営業が主人公の小説はそうはない。本書は豊澄印刷の中堅営業・浦本学が、斜陽産業と言われる出版界の荒浪に抗いながら、「印刷所はメーカー」という信念をもって仕事に邁進していく物語である。本好きにはたまらない面白さ。

    本はどうやって本になるのか、確かにこれは意外に知られていないかもしれない。本書のエピソードでもあるように、おそらく著者ですらも自分の本がどうやってできるのか知らない人が大半だろう。編集者、校閲者、DTPオペレーター、印刷所の技術者、特色工、デザイナー、イラストレーター…。本書は比較的大きな出版社や印刷所が舞台だが、むしろ、多くの小規模会社では、一人が二役三役こなすことが普通だ。その間を取り持つのが、浦本のような印刷所の営業の役割である。日に何度かやってくる営業さんは、印刷会社によって色があり、他社の人なのに時に信頼のおける仲間のようになっていく。

    本は、本という形になってからも、編集者、出版社の営業、取次、運送会社、書店さんと多くの人が関わる。もっとも、これはどの商品、サービスでも同じことだろう。目の前の商品は、実に多くの人が関わって、いま手元にあるのだということを本書は改めて実感させてくれる。そして、何のために仕事をするのかという問いをもう一度考えてみたくなる。どうせ働くなら、楽しんで、ある種の理想をもって働いていたい。

  • 本は身近な職人の技!
    本を作る人々の情熱が詰まったお仕事小説。

    紙の本を作る工程、知ってましたか?
    作者が物語を書いて、編集したり誤字脱字などを訂正したり…のイメージはあると思います。
    でも、印刷や製本の工程と聞いてピンとくるものが私にはなかった。
    巨大なプリンターで刷って、機械で製本…だと思ってたら、大間違い!
    アルミ板で本のハンコ作って、機械で紙にそのハンコを押す。
    表紙に至っては、そのインクを手で作ることも。
    紙は湿度や気候によって状態が変わるから、印刷設定も人の管理が必須。
    乾かしたら、製本も人と機械の共同作業。
    こんなに人が関わって作ってのか!とビックリしました。

    電子も良いけど、やっぱり紙の本を愛おしいと思える1冊。
    私はこれからも紙の本を大切に読み続けていきたいです。

  • 本の印刷にフォーカスした本。本好きな人には絶対にオススメしたい(^^)そうでなくとも、心を揺さぶられると思います。
    作者や編集者が作った本の魂に、ハードの肉体を授ける。「印刷会社は本の助産師」という言葉、いいなぁ。
    「ペーパーバッグ・ライター」がいちばん好き。1冊の本が自分の手元に届くまでに、こんなに多くの労力、技術、時間、情熱を要し、綱渡りのような工程だったとは。これからは奥付もきちんと読み、その向こう側にいる人へ想いを馳せながら読みたいと思う。
    紙の本と電子書籍、機械ができることと人にしかできないこと、仕事の目的…いろいろなことを考えることができた。また明日から本を読むのが楽しみ♪

  • 勝手にノンフィクションだと思って読み始めたが、小説。でも、引き込まれた。
    お仕事小説としても魅力的だが、本好きにとっては、たまらない。今紙の本がなくなってしまうかもしれない…と思うとなんだか切なくなるが、これだけ多くの人が様々な気持ちで一冊の本を作りあげているのを実感すると、本の有り難みを改めて感じた。

    そして、最後のこの本のスタッフ紹介には震えが止まらなかった。

  • 本ができるまでが分かる本。舞台裏を知り、本にエンドロールをつけることが当たり前になって欲しいと思った。
    話は変わり、本とは何か?
    紙媒体なのか電子書籍か、そもそも電子書籍は本なのか?
    紙媒体の本を前提として電子書籍がある。紙媒体の本が存在しない電子書籍はない。あるとすれば、ネット上にアップされている小説だったり、エッセイなどのデータであり、本ではない。
    本もたくさんあってその中に埋もれる作品があるだろうが、形があるものは後世に残りやすい。データもネット上では形なのかもしれないが、その形がわかりづらい。
    やはり本という形がなければその存在を忘れられてしまうのではないだろうか。
    そのようなことを考えながら読了。

  • 待望の文庫化ー!

    印刷会社の営業さんを中心に、工場がどんな風に動いているのか、出版社とはどんなやり取りがされているのか、舞台裏が見える小説。
    作家はもちろん、本屋であったり校正というお仕事に焦点を当てたものは読んだことがあったけれど、この「下町ロケット」風現場感(笑)

    イチオシは「特色」と呼ばれる、ベースを合わせるだけの機械では出せない色味を練り混ぜて生み出しちゃう、まさに職人のジロさん。
    若い頃は体力があって、歳を重ねると経験がある。
    そのバランスが移り変わる中で、最善手を生み出していく職人さんって、本当に格好いい。

    作中に、紙の種類が幾つか登場する章があって。
    ちょっと文章を印刷しようと思ったときに、紙の質の違いで嬉しくなるときがある。
    クリームキンマリで頼んだことがあるんですが、なんかそれだけでもワクワクしたのを思い出した。

    また、巻末には文庫版特別掌編として、コロナ禍でのお話が入っています。
    『本は必需品』。
    このタイトルに対して、心から頷く人も、鼻で笑う人もいるだろうなぁと思います。
    でも、確かにこの閉塞的な状況の中で、私からどこかに繋がる抜け道として、本がある。

    経済経営に巻き込まれると、どんな内容にニーズがあって、何冊売れたかの世界になるのですけど。
    文化の面をみると、100年、1000年前の本が一冊存在することの価値や意味があるし、その本が存在することで、自分がいかに形づくられるかみたいな世界もある。
    「である」ことと「する」ことのような。

    「一冊を造りだす」ことを切実に伝えようとしているストーリーを通して、手に取った本に重みが増すような、そんな「一冊」でした。

  • 印刷会社の営業マンとして本づくりに邁進する主人公。
    本の印刷に携わりたくて、わざわざ大手から転職してきた彼は、周りからするとらちょっと暑苦しいくらい仕事に情熱的。
    最初は、理想論ばっかで周りを振り回す仕事ぶりにちょっとイライラさせられたけど、そのアツさがブレることなく努力を続ける主人公に対して、徐々に応援する気持ちで読めるようになった。
    物語の中の現実主義な同僚たちも、主人公の情熱に影響を受けて、仕事を楽しみ始める。その心の変化の過程にぐっときた。

    執筆〜編集〜印刷〜製本〜流通〜販売という長い本のリレーの中に位置し、さらに営業という工程間・部門間の橋渡しポジションで働く人は、主人公みたく人を巻き込み、ちょっとずつ信頼を築ける人でないと務まらないんだろうな。
    職人さんもいれば、そうやって人と人の間に入って働くプロもいる。改めて他人の仕事に敬意を持ちたいと思えた。

    時代の流れの影響で、決して行く先が明るいとは言えない出版業界。登場人物たちも最後まで自分たちの仕事がなくなる不安を口にしていたが、そんな中でも「本づくりに関われている」という喜びと誇りを感じながら仕事できているのは羨ましく思う。

    物語の中で、紙か電子かみたいな問題も出てきたけど、わたしは俄然、紙派です!

  • 1冊の本が出来上がるまで、本造りに携わっている人たちの熱い物語。
    紙の本の手触りや匂いが大好で、こうして本を読める日々に感謝しかない。

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著者プロフィール

1977年生まれ、福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年、『被取締役新入社員』でTBS・講談社第一回ドラマ原作大賞を受賞しデビュー。その他の著書に『六畳間のピアノマン』『夢は捨てたと言わないで』『不惑のスクラム』『テノヒラ幕府株式会社』『一〇〇〇ヘクトパスカル』『宝くじが当たったら』『大翔製菓広報宣伝部 おい! 山田』『営業零課接待班』などがある。


「2021年 『本のエンドロール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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