- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065231036
作品紹介・あらすじ
「先生の手で、終わらせてくれないか」
ホスピスで起きた3件の不審死。沈黙を貫く医師が抱える真相とは?
救うべきは、患者か、命か――。
『闇に香る嘘』『同姓同名』の著者渾身、“命の尊厳”に切り込む傑作医療ミステリー!
「先生は、患者を救ったんです――」
末期がん患者の水木雅隆に安楽死を行ったとして、裁判を受ける天心病院の医師・神崎秀輝。「神崎先生は私から……愛する夫を奪っていったんです…!」証人席から雅隆の妻・多香子が悲痛な声をあげるも一向に口を開こうとはしない。そんな神崎には他にも2件、安楽死の疑惑がかかっていた。患者思いで評判だった医師がなぜ――?
悲鳴をあげる“命”を前に、懊悩(おうのう)する医師がたどり着いた「答え」とは?
“安楽死”をテーマに描く、乱歩賞作家渾身の医療ミステリー!
感想・レビュー・書評
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安楽死…考えさせられる内容だった。
考えても答えは出ない。今は。
わたし自身が経験した義父の介護、入院、転院、施設入居…そして死。
たくさん考えようと思う。
両親のこと、自分のこと(u_u)
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苦しい一冊。
舞台はホスピス、テーマは安楽死。もうこれだけで苦しい。
残された時間に向き合う本人、家族の心情が一語一句心に迫ってくる。
当然の気持ちに相反するかのように湧き起こるまた当然の気持ち。それは永遠に出口のない迷路に閉じ込められた気分。
そしてそこに向き合う医師達の心情が更なる重みと問いとなり苦しさが増す。
第四話のシベリアの話は一番苦しかった。
死に救いを求める気持ちに頷かざるを得ない自分が随所にいた。
難しい。答えは出ない。
どちらの立場でも命の重みを最期まで感じる時間をただ大切に、それしかできない。 -
いやー、ミステリと言われたらミステリですがそういう枠はどうでもよくなる凄い一冊でした。
私の語彙力では到底、言葉を紡ぐことはできないので読んでみてくださいとしか…。
読んでいて辛かった。
ラストは理想。でもどれだけの人が実際に【神崎先生】に巡り会うことができるのかな…。 -
安楽死をテーマに、患者の肉体的、心理的苦しみ、それに向き合う医師や家族の苦悩、ホスピスが果たす役割とその限界などを掘り下げ、ミステリータッチで描いた作品。
舞台は緩和ケアを行う天心病院。いわゆるホスピスで、命を脅かす疾患に罹患している人たちが入院している。ホスピスは、抗がん剤などの理学療法を行わず、状態を維持し苦痛が少ない時間を過ごせるよう、ケアする末期がんの患者が過ごす場所だが、天心病院は、ALS患者も入院している。ALS患者は、病気が進行すると、指一本動かせない体になってしまう。激痛はなく、意識もあり、文字盤を使って意志疎通もできるが、眼球のみでしか意志表示できない状況で、自分の体に絶望する。
痛さにのたうち、また、解けない金縛り状態に苦しむ患者が過ごす天心病院で、3人の患者を安楽死させたとして、ある医師が逮捕される。
その背景には、深い事情があり、明らかに嘱託殺人でないものもあったが、その医師はあえて、自分が犯した罪だとして、法の裁きを受ける。
肉体的、精神的に極限状態に追いやられ、しかも、それが何日も続けば患者はもちろん、家族も精神が蝕まれていく。医師も真摯に向き合えば、向き合うほど、絶望から死を望む患者との対峙に耐えられなくなる。
自然と自分を患者の立場に置いて読んでしまい、深刻で重い気分になった。だが、現実に目を向けた小説であることは間違いない。
苦痛緩和のため、鎮静剤で意識レベルを下げることでコミュニケーションも取れなくなるターミナルセデーションと安楽死は違うのか、安楽死を強いられる医師の苦悩は死刑を執行する刑務官のそれと同様「死なせる側の苦しみ」であるなど、多様な論点も盛り込まれている。
安楽死が合法化されているオランダでは、先日、12歳未満の子どもにもそれが適用される方針が発表された。一方で、合法化が否定されている国々もある。物語を通して、賛否双方の論点が身近に伝わってきた感があった。
ラストの仕掛けは、さすがにミステリー作品にふさわしいなと思う反面、少し突飛で無理のある展開だとも感じた。
-
*
テーマは安楽死
残された時間を治療ではなく、
充実した最期を過ごすため
痛みを取り除く緩和ケアを行う
ホスピスが舞台
安らかな死とは、命の尊厳とは。
患者の思い、家族の思い、
医師の思い、看護師の思い。
とてもとても重いテーマですが、
読み終えれてよかったと感じました。
文中より〜
安らかな死とは、
苦痛がない最期の時間を最後まで生き、
死ぬこと
-
命の尊厳に切り込む連作短編集。
これまで安楽死“する”側の視点で是非を問うことはあっても、安楽死“させる”側の視点に立ったことは一度も無かった。
その存在を忘れていた、というか見ないふりをしていた。
医師、家族、患者それぞれの懊悩があり、読んでいて胸が痛くなった。
『安らかな死』とは何なのか考えずにはいられない。 -
後半、喫茶店で読んで失敗。
涙こらえるのに必死でした。 -
重いテーマ。最後に神崎と高井それぞれが答えを見つけてくれてよかった。読者としても少し気持ちが楽になった気がする。
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ホスピスに勤務する医師が、患者の安楽死を行ったとして告発された。彼の行為は殺人なのか、それとも救いなのか。いくら考えても正しい答えを見つけるのが難しそうな、深い謎を扱ったミステリ。
安楽死は殺人行為ではあるけれど、これ以上改善する見込みがなくただ苦しむだけの家族を見ていられないとする家族からすれば確かに救い以外のなにものでもないでしょう。もちろん患者本人にとっても望むところなら、それを妨げるものは一見何もないように思えるのですが。倫理の問題だけでもないのかな……医師だってそりゃあ進んで安楽死を行いたいわけはないだろうし。安楽死を認めることの何がいけないのか、と思う気持ち印象的ですが。「奪われた命」があまりに凄絶。きっと誰もあの人の行動を非難することなんてできないだろうけれど。他に道はなかったのだろうか、と悲しく思えてしまいます。
尽きない苦悩の中で必死に闘う人たちがたどり着いた結末。そして苦しむ患者たちが見つける生き方には胸を打たれます。はたして自分がこの立場に立つことになったら、どこまでできるのでしょうか。ひどく考えさせられます。 -
安楽死がテーマ。下村さんの本だと何かしら「どんでん返し」を想定していたが、小細工なしの医療小説だった。ホスピスの患者3人を安楽死させたとして逮捕された医師。章を追うにつれその背景がわかるようになる。安楽死はセンシティブな問題だし、様々な見解があるだろう。患者の立場、家族の立場、そして医師の立場...なかなか胸に迫るものがあった。ラストは何と言っていいのかわからないが私には一筋の光のように感じた。改めて自分の死生観を見つめなおす機会となった。医療モノは苦手ジャンルだけど読んで良かったと思う。
考えて覚悟して決めても、後からあれで良かったのかなぁって思う事もあるし難しい(u_u)
考えて覚悟して決めても、後からあれで良かったのかなぁって思う事もあるし難しい(u_u)
義父の遺言書が、爆弾だった。
揉めたわけではないけど、遺恨は残ったねえ。
本人は死んでわからないからいいけど、...
義父の遺言書が、爆弾だった。
揉めたわけではないけど、遺恨は残ったねえ。
本人は死んでわからないからいいけど、たいして分けるものなければ、黙って死のうと思うよ。
残すもの無いのが一番よ笑
残すもの無いのが一番よ笑