- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065234853
作品紹介・あらすじ
愛ゆえに、人は。
『流浪の月』『滅びの前のシャングリラ』本屋大賞受賞&二年連続ノミネートの著者が描く、家族の物語。
「すみれ荘」のその後を描く「表面張力」を収録した完全版。
下宿すみれ荘の管理人を務める一悟は、気心知れた入居者たちと慎ましやかな日々を送っていた。そこに、芥と名乗る小説家の男が引っ越してくる。彼は幼いころに生き別れた弟のようだが、なぜか正体を明かさない。真っ直ぐで言葉を飾らない芥と時を過ごすうち、周囲の人々の秘密と思わぬ一面が露わになっていく。
愛は毒か、それとも救いか。本屋大賞受賞作家が紡ぐ家族の物語。
感想・レビュー・書評
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愛情って何だろう?と考えてしまった一冊でした。
異性への、友人への、我が子への愛情。
やっぱりそれはエゴでしかないんだ、とこの一冊まるまる訴えかけてくる。
子への思いは“無償の愛“なんてよく言うけれど、子への愛情が一番エゴたっぷりな気がしました。
「子供のためなら母親は菩薩にも鬼にもなる。ある意味正しく、一方ではその正しさが刃になる」
我が子のためなら、昨日憎んでいた相手にも今日は微笑みかける。我が子のためなら自分の信念やプライドなんてすぐに捨てられる。やっぱりある意味無償の愛なんでしょうね。
人を思う気持ちって厄介だな、と思わせられた一冊でした。でも、思う相手がいないよりは幸せだな、とも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「流浪の月」の凪良ゆうさんの作品。
評判が良かったので読んだが、残念ながら「流浪の月」や「滅びの前のシャングリラ」ほどは心に残らなかった。
ん〜、なんだろ?
「愛は毒か、それとも救いか」というテーマは軸があって読ませる作品ではある。一悟と芥の関係性も面白い。
でもなぁ、僕にとってはリアリティがあまりない。
というか、一悟にも芥にも感情移入できなくて、不完全燃焼のまま読了。
歳のせいですね、きっと。
装丁は好きだし、本棚に飾っておきたい文庫本。軽い気持ちで読めるし、今後何度か手に取るんだろうな。
その度、印象も変わるかも。
「表面張力」はとても面白い。
追加収録する必然性があった章(短編?)だと思う。 -
初凪良ゆう作品。本屋大賞で名前は知っていたが、この本を読み終わって調べたらボーイズラブが得意な作家とか。言われてみると、この本も愛憎が交錯し、最後は離ればなれに育った兄と弟の深い愛情かも知れない。
内容はミステリー要素も多いに盛り込まれ、愛情の裏返しで何度も兄を殺してしまいそうになる女性や、結婚をしたい相手を独占しようと相手の関心先を次々放火するお爺さんなど、色々罪深い人が現れる。人の良い兄は全てを受け入れてしまうが、悲惨な環境で育った弟に救われる。
付録の短編も後日談のようで面白かった。 -
こんなにハラハラする物語だとは思わなかった!
愛が強すぎると怖いです。
それでも読み終わった今、登場人物がみな愛おしいです。
上手いんですね。凪良ゆうさんが!
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初めて読む、凪良ゆうさん。
結論から言うと、好きな作家さんがひとり増えた!
白と黒、善と悪、陰と陽、勝ち負け…どちらかに決めることは出来ないのに、人は二分したがる。
グレーゾーンはあって然るべきで、どんな人間にも多面性があり、家族でさえ知らない顔を持っている。
理解することと許容することは別で、頭で割り切れなくても心で許すことは出来るのだと改めて感じた。
凪良さんの世界感、とても好き。他のお話も読んでみたい。
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凪良ゆうさんの小説は毎回一気読みしてしまう。今回も。やっぱり面白かった。
連作短編集で物語を通してすみれ荘の管理人(代理?)の一悟目線で進む。
話毎にメインの人物がいて、それは入居者だったり一悟の家族だったり。当たり前だけれどみんな表の顔と裏の顔を持っている。中にはかなりヤバい裏の顔を持つ登場人物もいるけれど、それでもみんな生きていく。少しミステリ要素も入っていて、そこも面白かったです。
最後にその後の話が短く載っていましたが、出来ればもっとその後の彼らを見てみたいな。 -
すみれ荘の管理人(代理?)一悟と、入居者たちの日常。一悟が自転車で怪我をさせた相手である、作家の芥がやってきてから、少しずつ雰囲気が変わってゆく。
冒頭は、入居者たちとのほのぼのストーリーなのかなぁと思って、読んでいたのだけど。
徐々に雲行きが怪しくなってきて。
気づけばギャップどころか、コントラストがガラッと変わるほど、強烈な陰陽転換を果たしてしまっていた。なんて怖い小説だよ。
一人の人には、様々な顔がある。
どれが表面とか、どれが裏とか、だけではなくて。
まるで別人のような欲や妬みが、一つの身体と心の中に共存している、得体のしれなさ。
ああ、私だってきっと「そう」なのに。
目の前の誰かがそうであるのが怖くて。
だから、他人と一緒にいることがあまり得意ではないし、一緒にいる限りは丸ごと信じ込んでしまうんだろう。
それは、ある意味の盲目と同じだ。
そういう意味では、一悟の、自分が傷ついても他者を責めきれない優しさに、嫌悪も共感もする。
単純に、自分が傷つくだけなら、楽なのだ。
それが解決ではないことも、分かっていながら。
最後に。
「誰かの夢は誰かの現実ってことか」
という台詞で、RADWIMPSの夢番地が流れた。
「僕が立っているここはきっと誰かの願ってる場所で
誰かが立っている場所がきっと僕の望む場所で」 -
なんだかんだ言いながらも人はいつも脆く欠陥品で、どうしようもなく愛に溢れているいびつな生き物だと思う。
完璧になんてできないのに、それにすがりつくしか知らない自分の頭を、馬鹿デカいハリセンで叩かれた気分だった。
凪良作品はいつだって自分の愚かさや汚さを浮き彫りにして、最後に希望を残してくれる。
著者プロフィール
凪良ゆうの作品






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