地球にちりばめられて (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1050
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065238158

作品紹介・あらすじ

「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!

留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。

誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。

「国はもういい。個人が大事。そこをいともたやすく、悲壮感など皆無のままに書かれたのがこの小説とも言える」
――池澤夏樹氏(文庫解説より)

感想・レビュー・書評

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  • Audibleで聴了。ものすごく引き込まれたので、続編を文庫で買うことに。出来ればそちらもAudibleで聴きたかった。朗読の可能性も感じました。

  • 『星に仄めかされて』の前日譚。Hirukoが消滅した故郷の言葉(日本語?)を話す者を探すことからはじまる物語。彼女の作った〈パンスカ語〉はじめいろんな言語を選び語り合う彼らの関係性の変化が面白く目が離せない。多和田さんらしい世界観素敵!

  • 大阪大学司馬遼太郎記念学術講演会・箕面新キャンパス開学記念国際シンポジウム - 大阪大学
    https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/event/2021/11/1401

    祝文庫化!

    『地球にちりばめられて』(多和田 葉子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000351088

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    自分が言葉を話せることや、言葉自体を
    改めて素敵だと感じられる一冊。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)

    「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!

    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。

    誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。

    「国はもういい。個人が大事。そこをいともたやすく、悲壮感など皆無のままに書かれたのがこの小説である」
    ――池澤夏樹氏(文庫解説より)

    ⚫︎感想
    言語を扱った本が大好きなので、とても好きな本になった。多和田葉子さんの作品はこちらが初めてだったが、他の作品も必ず読みたいと思う。何語だろうが、言葉のもつ、それ自体の響きや美しさやいろんなものを体感できる。
    日本が失われ、日本人であるHiruko が日本語を話す人間を探す旅。設定やHirukoの困難への対応や内省が素敵で、一気に引き込まれた。出会う人々もさまざまな特徴を持っていて興味深い。もう一度読みたい。

  • 祖国が消滅し流浪の民となったHirukoが欧州で知り合った友人たちと日本語を話す人を探しながら、折々に言語を様々な角度から考察する物語。各章で七人の登場人物の出自や現在に至るまでの経緯が語られ、友を増やしながら旅が続く。 作者の言葉への頴敏な嗅覚を楽しみながらも、国家内で古来の独自言語を持つ少数民族にとって母国語とは、ネイティヴとは、更には国家とは何かという根源的な問題が提示され自ら考えることを余儀なくされる。「地球人なのだから、地上に違法滞在するということはありえない。」という言葉に、「外国人」への排他的差別や偏見「難民」の受容に消極的な国の、庶民には意味不明の「ダイバーシティ推進」の掛け声は虚しく響く。登場人物は、北欧3国の言葉を統一したパンスカ語を作成しているHiruko。彼女に興味を持ったデンマーク人のクヌート、クヌートに好意を寄せるインド人でトランスジェンダーのアカッシュ、日本人になりすますグリーンランド人のテンゾことナヌーク、ナヌークの彼女のノラ、そして失語症のSusanoo。テンゾに会う為にトリアーで開催予定のウマミ・フェスに出かけたHirukoはテンゾがオスロから戻らずフェスは中止に、クヌート、ノラと一緒にオスロに向かう。テンゾが日本人ではないことに気づいたHirukoは次にアルルに住むSusanooに会いに行く。

  • 自分は今、日本という国に住み、日本語という言葉を話している。それは間違いなく自分の思考に影響を及ぼしているしアイデンティティと呼ばれるものになっている。

    では、故郷が消滅したら、母国語が失われたら、人はどうなるのか? そんなことを考えた一冊でした。

    小説の中の世界では、日本は理由は明示されないものの、何らかの理由で消滅しています。そして日本語を話す人がほとんどいなくなった世界で、Hirukoという女性がテレビに出演したことをきっかけに、言語学を研究するクヌートといっしょに自分と同じ母語を話す人を探すため、世界をめぐる旅に出ます。

    Hirukoという女性は欧州の各国で生活していく中で、それぞれの言語が混ざり合った独自の言語〈パンスカ〉を創り出し、それで生活しているらしいですが、この設定が日本に生きている自分からすると絶対浮かばないし、すごいと思いました。

    Hirukoはクヌートといっしょに旅に出ます。そこで様々な人と出会います。彼らはそれぞれにジェンダーや人種、民族、文化、人間関係など、アイデンティティに関しての疑問や葛藤を抱えています。

    意外というか、面白いと思ったのが、彼らよりもHirukoの方がアイデンティティの問題に関して、強く、そして客観的に見れているということ。それは作中でも少し触れられているけど、自分で言語を作り、特定の言葉や国に執着しないからこその強さであり、一種の客観性なのかな、と思いました。

    言葉や故郷というものは絶対的なもの、というイメージが自分の中にありました。しかし、この本を読んでいると、それは縛られるものでもなく、一つしかないものでもなく、生き方、考え方次第で広げていけるものなのかな、と思いました。

    本編とは関係ないことだけど、HIrukoとクヌートが行く先々で出会った人が、彼らの旅に同行するのが、少年マンガやRPGゲームを連想させて、ちょっと面白かったりしました。

  • 所属がない、漂っている不安感。

    留学中に故郷が消滅したHirukoは独自の言語を作り出し使っていたところ、その言語に関心を持ったクヌートと同じ母語を話す人間を探すことになる。

    国と言語の消滅というテーマで言語に重きを置かれた作品。インターネットの日本語のサイトも消えたの?とか図書館は?とかそもそも海外に日本人けっこういるよね?とか雑念が湧いてきて最初は読み進められなかったけれども、「性の引っ越し」をしている個性的なアカッシュが登場してからはがぜん読みやすくなった。

    話の輪郭がぼやけたようなにじんでいるような独特の雰囲気。それがまた不安感を煽るんですよね。

    1巻とは銘打っていないけれど、「次巻に続く」というような終わり方。『星に仄めかされて』のプロローグだったのかな?

    藤原正彦さんの『祖国とは国語』(2005年発行)をタイトルだけ思い出しました。シオランの「人は、国に住むのではない。国語に住むのだ。『国語』こそが、我々の『祖国』だ。」から引用されたそうです。内容忘れているのでまた読みたいな。

  • 震災や、このコロナ禍で感じた危機の、さらに向こう側を、あくまで「物語」として描いているのだけれど、その「物語」に吸い込まれていけばいくほど、すぐそこの現実のような気がしてくる。前に読んだ『献灯使』を読んだときも同じように感じた。とにかく登場人物が魅力的。

    留学中に母国である島国が消滅しまい、生き抜くために独自の言語をつくった女性が、同じ母国語を話す人を探す旅をしながら、数々の出会いを重ねていく。読み終わると、『地球にちりばめられて』というタイトルが、ほんとにこの物語にふさわしくて、深い意味をもつ言葉だということに、なんというか、とても、満たされた。

  • ここで終わってしまうのかってなったので、また続きを読みたい

  • 舞台は近未来のヨーロッパ。留学中にHirukoの祖国は、消滅してしまった。彼女は、国籍もジェンダーも言語も異なる人たちと母語話者を探す旅に出る。国や母語の消滅を想像すると、自分自身が迷子になってしまう。日本語が愛おしく感じ、この言語を大切にしていきたいと思った。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

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