真・慶安太平記

  • 講談社 (2021年10月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (330ページ) / ISBN・EAN: 9784065249987

作品紹介・あらすじ

各紙誌絶賛、即重版! 「本の雑誌」2021時代小説ベスト10選出!
「とにかく楽しめた。まさに手に汗握る、幕府を舞台とする大活劇である」本郷和人(東京大学史料編纂室教授)
「読むと驚く。本当に「真」だ。あっと驚く新解釈まで、一気読みである」北上次郎(評論家)
「破格の面白さ。よく知られた題材が真保によってまったく違った物語として生まれ変わった」杉江松恋(書評家)
「凄まじい謀略戦を活写。最後までスリリングな展開が楽しめる」末国善巳(書評家)
「本書は「作家活動30年」を記念するとともに、その新たなスタートを切る力作といえよう」縄田一男(書評家)

徳川の治世。戦世は遠くなり、政は将軍の意をくむ老中たちの掌中。度重なる改易によって主家を失い、幕府に恨みを抱く牢人があふれる江戸市中に一人の兵法者が現れる。名は由比正雪。その恐るべき企みとは。

夥しい血を流して平らげられた世を、命がけで守り抜こうとした男たち、女たち。
由比正雪の乱として知られる「慶安の変」の裏で、何があったのか。綿密な取材と大胆な仮説を元に歴史の脈動をあますところなく描ききった大河歴史小説。作家生活30年記念書き下ろし。

「慶安太平記」
慶安の変(由比正雪の乱)の実録本。のちに講談、歌舞伎の演目に脚色された。圧倒的な存在感を放つ乱の首魁・由比正雪が幕府へのクーデターを企て、天才的な人心掌握術を用いて人集めと金集めを着々と進め、計画を実行に移していく様を描く。異能の登場人物たちの躍動、壮絶なラストシーンが名高い。

〈目次〉
序章
第一章
 将軍と弟/大御所の病/保科家相続/暗闘の果て
幕間
第二章
 我が世の春/天地の違い/徳川の末
幕間の二
第三章
 将軍の死/疑わしき男/変の真実
終章
後記

みんなの感想まとめ

歴史の裏側に潜む謀略と人間ドラマが描かれた本作は、由比正雪の乱を中心に、江戸時代の政治的緊張感を巧みに再現しています。主人公の兵法者・由比正雪が幕府に立ち向かう姿を通じて、彼の周囲にいる複雑な人間関係...

感想・レビュー・書評

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  • なぜ幕府は、一介の町家の兵法者の企てを、事前に察知することができたのか。
    由比正雪の乱(慶安の変)の背景を、独自の切り口で描いた時代小説。

    実父・秀忠のお目見えが叶わず、微妙な立場の、保科正之。
    兄・家光に目を付けられ、自らを抑えて生きる、松平忠長。

    たった1度の邂逅だが、異母兄弟の交流がさわやかで、印象に残る。

    不遇の時代を堪え、家光による引き立てがあっても、決して思い上がらない。
    腹黒い人間が多い中、謙虚な姿勢の正之に、好感が持てる。

    由比正雪の乱にそこまで詳しくなかったので、新説と言われても、あまり感慨がなかった。
    もっと詳しいと、驚きがあるのかも。

  • 元和偃武というものの、市中には牢人があふれて世情は騒然。江戸城も狂気の家光のもと、出世と生き残りをかけ水面下の陰湿な戦いが繰り広げられます。手のつけられない家光の恐ろしさ、そして、才あれど徳なしといわれた知恵伊豆の冷酷非情さ。謙虚で聡明な保科正之を加えて、三者がみせる緊迫感は、やがて、由井正雪の動向と共にクライマックスを迎えます。虚実皮膜。これぞ歴史小説の醍醐味。ほんとひさびさに面白くて一気に読み切りました。

  • 江戸時代初期、家康、秀忠に続く三代将軍、家光が亡くなり、幼い嫡男家綱による将軍宣下の直前に起こった慶安の変。市中の兵法者、由比正雪による謀反とされるが、この由比正雪、実は秀忠の三男(異母兄弟)忠長であったという解釈が、この「真・慶安太平記」。
    秀忠の四男にあたる保科正之が軸となって、家綱の世でも磐石な権力を固持したい老中、松平信綱との心理戦のように話が進む。
    歴史は、時の権力者が伝えたいように、語り継がれていく。ただ、残った史料が時を経て語り始め、作家の目に止まり新解釈も成り立つというのが面白い。
    事実がどうであったかは、分からない。ただ、忠長の無念、正之の辛い選択に思いを馳せるのみ。立場は人を変えるけれど、やはり自分の信念こそが自らの行動を決める。
    おなあの、水鏡の例えが心に響いた。水は平らでないと、鏡の役目をはたさない。すべてを受け止め、ありのままにお返しするのみ。

  • 由比正雪が誰なのか、何をした人物なのか知らず読むがストーリーは分かりやすく、保科正之目線で話は進む。
    保科の性格、藩主としての威厳がないのがもどかしく肩入れしてしまう書き方やくどくない説明にあっという間に読み終え、江戸期の知識も増えいい時を過ごした。

  • 由比正雪というと、星新一の著に何度も出てきて、傾倒してたのだろうと感じたのが真っ先に出てくるくらい、史実に関しては無学。
    そのせいもあってかどーにも難しく呑み込めなかった。
    [図書館·初読·1月31日読了]

  •  真保裕一さんの作品を読む機会は減ってしまったが、本作は時代物ということで手に取った。自分は真保裕一さんの時代物の一ファンである。個人的には、飯嶋和一さんに匹敵する時代物の名手だと思っている。

     戦国の世は終わり、三代将軍家光の治世となった江戸。一般的には、家康・秀忠・家光の三代によって徳川の支配は盤石になったとされているが、幕府内では権力争いという「戦」はまだ続いていた。日本史の教科書では軽く流されている。知名度が高い家光だが、実は謎多き人物だ。

     家光の弟であるが故に数奇な運命を辿った、保科肥後守正之。不遇にも一切不平を漏らさず、憤る家臣を諌める。兄・忠長の言葉を胸に刻み、自らを厳しく律する正之が何よりも優先するのは、再び戦乱を起こさないこと。

     そんな正之の評判が諸大名の間で高まるにつれ、松平伊豆守信綱は露骨な対抗心を隠さない。信綱には、家光の幼少時より仕えてきた自負がある。あくまで無欲な正之だが、家光にも認められ、やがて側近にも名を連ねる。なぜなのか。ただ将軍家光の弟というだけで。

     この時期の出来事としては、島原の乱が有名だろう。信綱は島原の乱の鎮圧にも尽力したとされるが、作中での記述は少ない。本作の題材となっている慶安の変、いわゆる由比正雪の乱は、未遂に終わったせいもあり、さほど知られていない。

     主に正之、信綱の視点で描かれ、鍵を握るはずの由比正雪の登場シーンは少ない。それもそのはず、すべては大胆な新解釈のため。正之の心は大きく揺れ動く。それでも正之は、幕府側の人間として、市中を火の海にしてはならない。

     慶安の変を事前察知できた理由については諸説あるようだが、作中で信綱が自らの手柄にしているのは史実と同じか。最大の功労者たる正之の気持ちは複雑だろう。本来情に厚い人物であるが、忠長に甘さも指摘された正之。必要とあらば非情に徹する。

     庶民を顧みない幕府に、現代の政治の有様を重ねる意図も感じるが、本作は、幕府側と反体制側、それぞれの信念で動いた人間たちの生き様を楽しみたい。これほど濃密な物語を、手頃な長さに収めているのも高く評価したい。

  • 長いし登場人物が多すぎるし名前が分かりにくい

  • 真保裕一さん 由比正雪の乱、新解釈で
    2021/11/8付日本経済新聞 夕刊
    1991年、厚生省(現厚生労働省)の元食品衛生監視員を主人公とするミステリー「連鎖」で江戸川乱歩賞を受賞して、30歳で作家デビュー。以来、山岳冒険小説「ホワイトアウト」(吉川英治文学新人賞)、明智光秀を主人公とする歴史小説「覇王の番人」など幅広い作風の小説を発表してきた。


    作家生活30年記念の書き下ろし長編「真・慶安太平記」(講談社)は、1651年(慶安4年)に発覚した由比正雪の幕府転覆計画(慶安の変)を大胆な新解釈で描く。「(首謀者の)正雪は何者だったのか。そして最期に駿河(現静岡県)の久能山へ向かうが、その狙いは何だったのか、といった点に興味を抱いた」

    もっとも、物語の主人公は徳川3代将軍家光の異母弟で会津藩藩主となる保科正之だ。「会津の名君として名高い正之の実像に少しでも迫りたかった」。対抗する存在は「知恵伊豆」と呼ばれ、島原の乱制圧でも知られる老中の松平信綱。「正之にはあまり出しゃばってほしくないと信綱は考えていたと思われるので、その時には裏の顔を現していたはず」

    慶安の変は、関ケ原の戦いや大坂の陣の後、幕府が多くの大名を改易・減封した結果、浪人が多数発生したことが要因とされる。「権力の使い方を間違えると世の中が乱れるのは、いつの時代も同じ。それを伝えたくて、慶安の変に至る経緯にページを割いた」

    歴史・時代小説は史料の渉猟が欠かせないが、「もともと調べ物や取材は好きなので、現代ものと(苦労は)あまり変わらない」とあっさり。「粘り強く取り組まないと面白い小説は生まれない」と信じて、31年目も書き続けていく。(しんぽ・ゆういち=作家)

  • 徳川家光、春日局、保科正之、由井正雪、丸橋忠弥江戸時代初期の立役者が勢揃い、将軍の跡継ぎ、慶安事件など読みどころ満載のエンターティンメント時代小説あなたもぜひ堪能してください。

  • 将軍の弟が真犯人という面白い筋書きだった

  • 真保裕一の「真・慶安太平記」は、徳川忠長が由比正雪として生き延び、謀反を企てるという大胆な着想が光り、途中まで保科正之一代記と思い込んでいたが、史実の隙間を巧みに埋め、幕府の権力闘争と人間ドラマを融合させることに成功している
    忠長=正雪の葛藤や松平信綱との謀略戦はスリリングで、ミステリー作家としての本領発揮!史実とフィクションの絶妙なバランスに加えて、世情に乗じた謀反に忠長の執念を感じさせる手腕が憎い!

    徳川忠長が自害した史実を覆し、彼が由比正雪として生き延びていたという設定は、歴史の隙間を巧みに埋める創造的なアプローチとしか言いようがない、史料に乏しい由比正雪の出自や経歴を、忠長という実在の人物に結びつけることで、物語に意外性と深みを加え、歴史の「もしも」を追求するエンタメ小説の醍醐味であり、徳川家内部の権力闘争や保科正之の誠実さと、松平信綱の姑息さ(でも実力者)がドラマチックに描かれている
    忠長が将軍家光の弟として抱える葛藤や、幕府に対する反発が正雪の行動原理に重ねられることで、単なる謀反人ではなく、複雑な動機を持つ人物として血肉が与えられたが、20年の恩讐が祖父の成し遂げた平和な世を否定している事を保科正之に指摘させるべきではないかと思った

  • 松平会津藩初代藩主保科正之と由井正雪の乱を題材にした物語。父に認知されず育った正之は用心深く、知恵深く、それでいて慈しみ深い心を持つ青年に育ち、家光亡き後の徳川家を支えていく。由井正雪の正体は、、、

  • 帯を読むと新たな解釈の由比正雪の乱について書かれた作品だという。
    ところが、人物紹介の中には由比正雪がない。
    これはもしかして叙述トリックのミステリ?なんて思ってしまう。

    登場人物表の筆頭は私の大好きな保科正之。
    由比正雪と何の関係があるのかはわからないが、これは嬉しい。

    しかし、良い人なのだが、優しい人なのだが、あまり魅力を感じない。
    父・秀忠に認めてもらうことは最初からあきらめている。
    兄・家光について、思うところはあるが、差し出口をきける立場ではないことをわきまえて、何も言わない、何もしない。
    もう一人の兄・忠長にこそ、慕わしいものを感じるが、それを表に表すことは徳川家を分裂させることになるので、心の奥底に想いをひた隠す。

    これじゃあ話が動かないじゃないの。

    対するのは、出世のために他家に養子に入り、家光に取り入って出世を果たした松平伊豆守信綱。
    知恵伊豆と言われるほどの知恵者だが、「才あれど、徳なし」と言われた男。
    自分がそうだから、妾腹の保科正之も出世して幕政を思うままにしたいと思っているはずと、とにかく正之を目の敵にする。

    家光が大事すぎて、煙のない忠長のもとに煙を上げては家光にご注進。
    親に愛されなかったコンプレックスが高じて、猜疑心の強い家光は、少しでも気に入らぬ者は排除する。
    家光のお気に入り(衆道のお相手)だけが出世する。

    こんな世の中はおかしいではないか、と由比正雪の乱がおきるのかと思った。
    名前だけは知っているけど、具体的に何があったかよくわからない由比正雪の乱。

    実は乱が起きる前に鎮圧されていたのだった。
    だから詳しいことはよくわからないのか、とわたしは思ったのだが、さすがに作家は違う。
    「なぜ蜂起する前に鎮圧できたのか?幕府はなぜ事前に情報を察知することができたのか?」
    ここからこの作品が出来上がったらしい。

    私の思う保科正之ではなかったけれど、徳川忠長ではなかったけれど、これはこれで説得力はあると思った。
    それはそうだろう。
    結構史実に忠実なのだから。
    史実は一つだが、解釈は無数だ。

  • 壮大な前振りで、慶安の変について大きくは触れられなかったが、面白く読むことが出来た

  • 最後はサクッと読めたのですが、そこまでに至る話が、どうもよく分からず、家光の話なのか、信綱の話なのか、正之の話なのか。
    主人公がぼんやりとしているし、家光がやたらと嫌な人物像だし、信綱も嫌な策略家に見えて、「由井正雪の話じゃなかったのか?」と思いながら、悶々としてしまいました。

    由井正雪の解釈は、とても興味深く面白く読めました。
    史実かどうかは別として、歴史の悲哀を感じました。

    講談や歌舞伎の演目にもあるようですが、そういったものを観てから読んだ方が、より分かりやすいのかなとも思いました。

  • 時は慶安四年(1651)、徳川3代目将軍家光
    の頃です。

    「由井小雪の乱」として知られる慶安太平記
    をベースに、真保裕一氏の独自の仮説を取り
    入れて壮大な歴史小説として仕上げられてい
    ます。

    由井小雪の正体は誰なのか。

    ミステリー小説ではないので、そこは読んで
    いて想像がつきますが、巻末の後記に書かれ
    た、著者がその正体は「もしかしたら」と連
    想するに至った「史実」を知ると、確かにそ
    の仮説はあながち仮説とは言い切れないかも
    しれない、と考えさせられます。

    埋もれた歴史に新風を与える一冊です。

  • 2022.8 真保さんの小説はほとんど読んでいるけれど、初期の作品にあった面白さはどこへ行ってしまったんだろう…と最近読むたびに思います。今回も題名と中身はピンとこないし…

  • 光家の時代から慶安の変を描いた歴史小説。

    由比正雪の出自についてはミステリ作家らしい説を取り込んだのは面白かったです。
    クレームは二点。
    作者には松平信綱、保科正之、祖心尼の多視点なのはいいのですが、密偵視点を入れたのは自分としてはいまいちでした。
    さらに、P151の幕間の信綱の養父の間違いは似たような名前が多いので、混乱してしまうので許せません。

  • 由比正雪の乱は、時代劇のドラマの中で聞いたことがあるだけ。幕府を転覆しようとした悪人として描かれていたような憶えがある。その由比正雪が実は。。。というのが、この小説の仮説で醍醐味。江戸時代の初期って、なかなか小説にもドラマにも取り上げられる頻度が低いし、馴染みが薄い。知恵伊豆とか、春日局、保科正之などの名前は耳にしていたが。実の兄弟を謀殺したり、権力争いがえげつない。新しい目線で真保裕一が書く時代小説を面白く読んだ。

  • 由比正雪の乱として知られる「慶安の変」の裏側を描いた物語です。
    この由比正雪の人物像の設定に、真保氏の想像力が存分に発揮されていました。
    徳川二代将軍の秀忠、三代将軍の家光、そして家綱が4代将軍に就くまでの覇権争いの実態を、秀忠の四男である保科正之の視点から描かれています。
    覇権奪取を目指す者は、常に先々を読む洞察力を要求され、かなりの犠牲をも厭わない強靭な意志が要求されるようです。

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著者プロフィール

真保裕一(しんぽ・ゆういち)
1961年東京都生まれ。91年に『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年に『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年に『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。他の書著に『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』の「外交官シリーズ」や『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』『遊園地に行こう!』『オリンピックへ行こう!』の「行こう!シリーズ」、『ダーク・ブルー』『シークレット・エクスプレス』『真・慶安太平記』などがある。


「2022年 『暗闇のアリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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