もう生まれたくない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065250563

作品紹介・あらすじ

マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。
新聞に載る死。テレビで騒がれる死。どこかでひっそり終わった死。有名人の死。身近な人の死。名も知らぬ遠い国の誰かの死。
そのどれもが身近で、私たちの人生と隣り合わせにある。死を描くことで今を生きることの意味を見出す、著者新境地。

感想・レビュー・書評

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  • 死と向き合った群像劇「もう生まれたくない」など新井見枝香が薦める新刊文庫3冊|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14506029

    死を想い、人生を想う 長嶋有『もう生まれたくない』 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/536129

    もう生まれたくない | 長嶋有&ブルボン小林公式サイト
    http://yu-and-bk.com/book_nagashima/mouumaretakunai/

    『もう生まれたくない』(長嶋 有):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000355987

  • 引き続き、長嶋有さんブーム。
    ブクログ点数が高かった&西加奈子さんの帯が気になったので購入、読了。

    いやーーー、本作素晴らしい…

    自分の人生観に影響を与える本ってなかなかに巡り合えないもんだと思いますが、久々に出会えた感がありました。

    個人的に思ったのは「人は本当に前触れもなく、そして何気なく死ぬ」し、「その死が他人に与える影響はほぼ皆無」なので、「いつ死んでも良いように力一杯、後悔が無いように日々生きるべき」でした。

    タイトル「もう生まれたくない」は、「もう生まれなくて良いように今を生きよう」という風に捉えましたが…
    読み手によってかなり感じ方が違うと思うので、他の方の感想も読んでみようかと。

    それにしても、長嶋有さんの文章良いですねぇ…
    全体に「死」の雰囲気を漂わせながら、各登場人物の浮き沈みをフラットに描きつつ、そして長嶋有さんの装飾し過ぎないこの文体で…その全ての要素があるからこそ「死は何気なく訪れる」という結論が説得力を持っているように思いました。

    あと、ちなみに西加奈子さんの解説が神ですね。
    コレが無かったら作品の良さにすら気付け無かったかもしれないです…それは自分の読解力の問題かもしれませんが…

    まあそれはさておき、とても良い出会いでした。
    コレがあるから本は辞められないですね…(´∀`)

    <印象に残った言葉>
    ・おじさんの言う「ちょっとの差よ」というのは端的に「死ぬか/死ななかったか」という意味だ。飛行機を一便遅らせていたら墜落していた、という「直感」の話に、おじさんの話は似ている。でもなにかが違う。(P26)

    ・誰もが、いつか死ぬことを認識している。でもそれが次の瞬間だと知ることだけは、できない。(P69)

    ・「彼が一番驚いていると思う」ということ「しか」思わなかった。そのときは。たとえば「もっと生きたかったろう」とか「やりたいことがあっただろう」というような「言葉」は、それは今になって「思う」ことだ。自分が今になって言葉を思うということでもあるし、夫も死んですぐにではない、きっと今ぐらいにそれを思っている。(P150)

    ・……初めて、復縁してほしいって言葉でいったねえ(P228)

    <内容(「Amazon」より)>
    「誰にも言わないままの言葉をいつか私はしたためよう。亡くなった人に、友達だと思っている人に。ネットに載せて読めるようなのではなくて、そう、空母の中の郵便局にたまる手紙のように」――。
    マンモス大学の診療室に勤める春菜、ゲームオタクのシングルマザー・美里、謎めいた美人清掃員の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。 スティーブ・ジョブズ、元XJAPANのTAIJIなど有名人から無名の一般人、そして身近な家族まで、数々の「訃報」を登場人物たちはどこで、どんなふうに受けとったのか。誰もが死とともにある日常を通してかけがえのない生の光を伝える、芥川・谷崎賞作家の新境地傑作小説!

  • 一言でいえば、「死を扱った小説」ということになろう。

    そのうえで長嶋有らしいなと思ったのは、物語の中で特にクローズアップされているのが「著名人の訃報に触れた(知った)瞬間」「大規模な災害で亡くなった人(とそれを知った瞬間)」というところ。
    私たち一般人は、著名人の訃報を、それも、名前だけ知っているといったような人のそれを最初に知った時、何を思うのか。時代を象徴したような人、有名な出来事の渦中だった人、または同じ一般人だけれど、突然の事故でその命を奪われてしまった人など。
    簡単に「R.I.P」と「発信」出来るようになったところも時代の大きな変化だし、それを少し皮肉な視点で描いているのもとても共感できた。
    もちろん、死は新聞やテレビやスマホなどの「四角い枠」の中だけの出来事ではなくて、私たちにも死は地続きであり、大抵「唐突に」やってくる。
    「死」という、もはや唯一とも思える、生物に平等に訪れる出来事をこういう形で描くのは新鮮だと思ったし、自分が様々な年齢になった時に何度も読み返したいと思った。

  • うーむ思ったのと違う。それぞれの思いを同時期に起きた事件に死んだ有名人に絡めながら綴るんだが、先が明るくもないし、感動作の本の紹介文を見て購入したのですが、感動とは違うよ。なんで感動と書いてあるんだろうか、死は確かに悼む気持ち以外にないけど、受け取った登場人物の気持ちが私の気持ちではないですね。佐渡の三人を読んでここに来たんだが、あの流れとも違うし、戸惑いました。フダもゴルフのアイアンで殺されてしまうし、そこで今まで適当に相槌してた表現が理解出来た皮肉な結末。奥田英朗の様な何も可能性のない未来だなあー

  • 今まで死について深く考えてなかったが、その人が生きてる間にどのくらい自分と関わったかで、その死に対する感じ方が変わってくることに気付かされました。

  • 読後、じわじわくる。
    何気ないひと言、何気ない行動が時間を経て今につながっているのだな
    そしてまだまだ生き続くのがつらい

  • 読んだことないタイプの小説でちょっと難しくてずっと輪郭がぼやけたような状態で読み終わった。誰かが死ぬっていう決定的に悲しい出来事に濃淡があることに不思議だなあ、って感じた日を明確に覚えてるし悲しいはずなのに思い出すのは取るに足らないエピソードだし、共感する場面もたくさんあった。ぬるっとした印象だけどこれはこれで良いなあ。

  • 事故、自殺、早逝…誰かの不慮の死の報せに触れたとき、人は全く関わりがなく関心もなかったはずの他人の人生に思いを馳せたくなる。
    誰もが思い当たるこの心情に踏み込むニッチな語り口。

    この小説は、2011年の大震災で多くの生命が失われたことを契機にしている。2024年の元旦、能登でまた大きな地震があり予期せず失われた生命が多くあったことを報じる様子を聴きながら、このレビューを書いている。

    巻末に「本作に登場する主な死者と死因」のリストが掲載されている。殆んどは現実に起きた(2014年以前のものだが)有名・無名の人の死ではあるが、明確に憶えているものもあれば、すっかり忘れかけていたものもある。

    人は自分の生き方を選ぶことはできても、自分の死に方を選ぶことは難しい。
    ましてや自分の死が他者にどのような思いを抱かされるのかなど制御のしようもない。
    そんな儚い普遍に改めて気づかされる。

    久々に長嶋有を読んだが、登場人物の境遇や心情の機微を拾う視点のユニークさは相変わらず。
    そのディテールの綿密さを、書くほうも読むほうも楽しむという面がある。
    セガサターンへの偏愛は著者の趣味の反映そのものだと思うし、大学講師・布田や蕗山フキ子の造形なんかはちょっと悪ノリを感じる。

  • 2019.1.13
    もう生まれたくない 長嶋有

    空母の郵便局に思いをはせるところからはじまって、空母のなかにいる自分、空母の郵便局の出されるのを待つ袋の中にとどまる手紙たちをおもうところで終わる。群像劇なので、最初の彼女と最後の彼女が同一人物なのかそうでないのか、読み終える瞬間もページを繰って確認しないと思い出せなかった。いまも、(わたしのなかから)どんどん薄れて忘れてゆく人々の姿や思いや出来事を、彼らのまわりで死んでいった身近な人や有名人や時代の人などを、なんとなく頭のなかでひっしにひきとめながら感想を書こうとしているけれど、わりとむずかしいみたいだ。
    いちばん残ったのは、この作家は文章中でかっこ()を多用するなあ、ということかな。
    実際に死んだ著名人と、架空の身近な登場人物たちの死を、同列に実名を出して記していて、こういうのありなんだ、と思ったこととか。
    タイトルの、もう生まれたくない、に興味を惹かれて選んだ本だけど、意味が話の内容とつなげられなくて、読後に作家本人のインタビューを検索した。それによると、「もう生まれたくない」からこそみんな今を精一杯生きていくんだ、みたいなことを言ってて、
    へえ、というより、はあ、と思ったのだった。まあそれ自体に思うところがあるわけではないけど、内容とのつながりにはまったくぴんとこない。ようするに、ピンとこない相性だったのかな。


    それより、ずいぶん本を読んでいなかった。書き留めておこうと久しぶりにメディアマーカーを開いて驚いた!
    あと数日でサービス終了になるところだった。いままでの、ぜんぶ、消えちゃうところだった。
    よかった。それだけでもいま本を読んでよかった!

  • 2023/9/25購入

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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