ミチクサ先生 上

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065257227

作品紹介・あらすじ

ミチクサが多いほうが、人生は面白い!

てっぺんには裏から登ったって、足を滑らせたっていい。あちこちぶつかったほうが道は拓ける。

夏目家の「恥かきっ子」金之助は生まれてすぐに里子に出されたり、年老いた父親にガラクタ扱いされながらも、道楽者の祖父の影響で子供ながらに寄席や芝居小屋に入り浸る。学校では異例の飛び級で頭角をあらわし、心のおもむくままにミチクサをして学校を転々とするように。その才能に気付いた兄に英語を仕込まれ、東京大学予備門に一番で合格した金之助は、そこで生涯の友となる正岡子規と運命の出逢いを果たす――。

伊集院静がずっと共鳴し、いつか書きたかった夏目“漱石”金之助の青春

「日経新聞」大人気連載、待望の書籍化!

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!さすが、読みやすいです。装丁を見る通り、夏目漱石先生のバイオ。漱石本はほんとうにたくさんありますが、とても優しい(物語のトーンが優しい)。この時代の有名人がたくさん登場してくることもあり、テレビとか映画のドラマになりそうな、スペクタキュラー。上巻が終わった時点では、漱石、子規、米山保三郎を中心とした、高校生のアオハルだねぇ、ってドラマです。大学時代の話とかがさくっと流されているのが、ちょっと寂しいが。フォーカスされているのが、友達付き合いだとか、漱石の主たる部分ではなく、”道草”の部分なので、気楽に漱石を身近に感じられるような描き方なのではと思う。下巻が未読なので、下巻の後、どう感じるかはわからんが。
    個人的には、漱石をやってたので書簡などを含め、論文や研究者の出版物も既読済みで、で、おもしろいと思うんですが、これはきっと、漱石本は一冊も読んだことがない人でも、きっと面白い!と感じられると思います。そして、ミチクサ先生を読んでから、坊ちゃんとか草枕とか読んでも、ああ、これかぁ!って、ハマってくれると思います。

  • ミチクサ先生の生き方、物事の捉え方は尊敬できます。特に生徒や子ども達への接し方は微笑ましく、それでいて頑固さもあって、一本スジの通った潔さがあります。

  • 1867年、パリで5回目の万国博覧会が開催された年に生まれた、夏目金之助こと、夏目漱石。
    その年はまた、大政奉還の年であり、まさに明治と共に成長した漱石先生であった。
    父51歳、母42歳の恥かきっ子。
    もうさほど子供なんかいらないと思ったのか、いったんは養子に出されてしまった。
    漱石は、肉親の愛を享受することなく育ったようだ。
    ただ、実の長兄・大助だけが、漱石に勉学を奨め、教え、将来を案じてくれた。

    一方、同じ年に生まれたのは、正岡子規。
    生い立ちのせいか、ちょっと暗い漱石に比べ、子規は陽気で人気者だった。
    二人は同じく帝国大学の予備門で出会い、無二の親友となる。

    漱石の家は、維新前は町名主だった。
    一方、子規は松山藩の士族の家柄。
    町人と、武家。
    明治以前に出会っていたら、二人は親友になることができただろうか?
    素晴らしい奇跡を感じる。

  • 夏目漱石、正岡子規など歴史上の人物の人柄、家族などが浮かび上がるかのように伝わってくる。天才と言われるような人たちは、類は友を呼ぶのか、才気あふれる人と自然に出会っているのだなぁと驚く。

  • 夏目漱石の一生を描いた物語です。
    上巻は、漱石の英語教師時代までが描かれていました。

    正岡子規のほか、早逝したもう一人の秀才・米山保三郎や寺田寅彦との交流がとても清々しく、青春小説として楽しめました。
    初恋のくだりなんて特にかわいくて。
    ただ、先を知っているだけに下巻は辛くなりそうです。

    また、漱石の兄の存在がこんなに大きなものだとは知りませんでした。彼がいなかったら漱石の人生はまた違ったものになっていたのではないでしょうか。感動しました。偉大なお兄様でした。

  • 漱石と正岡子規の友情は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を彷彿させて、面白い。憂鬱な漱石を、明るく描いている。

  • ■ Before(本の選定理由)
    筆者のエッセイや小説は10ばかり読んできたけれど、どこか鼻持ちならない・頑固な印象。そんな筆者が、ずっと描きたかったテーマを上下巻の大作として発表したらしい。さて、どんな内容だろう。

    ■ 気づき
    夏目漱石の一代記。母親が40を超えての出産だった恥かきっ子が友人の支えもあり松山→熊本に英語教師として赴任するまでの物語。なんとチャーミングな人だろう。「小さい想いなら母のため、大きい想いなら国家のため」と正岡子規が一高中退を望むのを説き伏せたり、熱い友情に触れられたことが一番嬉しい。

    ■ Todo
    下巻に続く。

  • 漱石先生の幼少の頃から、青年時代、愛媛・熊本での教諭時代まで

    ・冒頭、ヨーロッパの情勢から
    ・生家と養子先
    ・気にかけてくれた実兄と実母、義母
    ・親友たちとの出逢いと学生時代
    ・初恋
    ・正岡子規と米山保三郎
    ・漢文と俳句と英語、建築
    ・漱石先生と教え子たち
    ・鏡子さん
    ・ネコ
    ・大切な人、血縁との死別

    〇エピソードの一つ一つが愛おしい
    業績よりも、漱石先生の“みちくさ”をたどった小説
    〇のぼさんとのパートは胸にくる
    〇当時、写真の修正が大切な仕事の一つだった写真館。鏡子さんのお見合い写真に修正されていたらお見合いを断るとうそぶきながら、自分の写真には修正を加えていた先生が面白い。←そして鏡子夫人にはそっこうバレていた。

  • 夏目漱石を描く大河小説の上巻。

    とはいっても、重苦しくなく、気軽に読めました。
    上巻は学生時代を経て、教員時代までを描いています。
    漱石に大きな影響を与えた人物として、長兄の大輔と同級生の米山保三郎については知らなかったので勉強になりました。
    よくある手法ですが、正岡子規がもう一人の主人公かというほど詳述されています。
    これは、先の二人以上に漱石に影響を与えたためだと思います。

  • 穏やかでおっとりしていて少し神経質な金之助が、シニカルで飄々とした天才肌の米山保三郎、快活で豪放な正岡子規ら個性的な友人達囲まれて過ごす学生時代の様子が夏目漱石の小説の風景をそのままで、時代の息遣いや匂いを強く感じる。
    淡々とした語り口の中で、理解者の兄大助や保三郎の死に際しての金之助の心情が切なく、病気や戦争で死がずっと身近にあった現実を実感させられた。
    有名すぎて扱いが難しいであろう「月が綺麗ですね」は、思いの外深々とロマンチックに描かれていて好きな場面。
    (下)に続く

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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