現代生活独習ノート

  • 講談社 (2021年11月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (266ページ) / ISBN・EAN: 9784065260371

作品紹介・あらすじ

偶然録画していた興味のない番組
冷蔵庫内の陣地争い 貧弱な食事ばかりのSNS画面 資料室の籠城騒動

キラキラはしていなくても、
冴えない日常は、案外愛しく、悪くない。

短編の名手がおくる 私たちの‘今’が詰まった8つの物語

怒り、あきらめ、情けないこと、ときどきは幸せなこと
“通り過ぎていくものたちのどれかは、手になじんで輝いてくれるだろう”

収録作
「レコーダー定置網漁」
「台所の停戦」
「現代生活手帖」
「牢名主」
「粗食インスタグラム」
「フェリシティの面接」
「メダカと猫と密室」
「イン・ザ・シティ」

みんなの感想まとめ

日常の中に潜むささやかな幸せや不安を描いた短編が魅力の作品。8つの物語は、冷蔵庫内の陣地争いやSNSの貧弱な食事、近未来的なシチュエーションなど、身近なテーマを取り上げ、時にクスッと笑わせ、時に共感を...

感想・レビュー・書評

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  • 津村さんは疲れた人の疲れっぷりを表現するのが上手な作家さんだと毎回思う。

    例えば第一話「レコーダー定置網漁」の冒頭。
    『リフレッシュ休暇をもらったが、もはや私にはリフレッシュする気力自体が残っていなかったのだった』という一文でもう持っていかれる。

    他にも「粗食インスタグラム」の主人公が仕事で『判断すること』に疲れすぎて貧弱な食事のブログに癒されるその心境を『せめて悲しい食事で生きようとしている仲間を探して安心している』と評しているのが津村さんらしくてクスっとする。

    極め付きは「メダカと猫と密室」の冒頭で主人公の先輩安田さんが係長からの電話を受けている最中に『突然気力がなくなった』と言って私に受話器をよこしてそのままいなくなるというシーン。
    何とも衝撃的で主人公の横井もメモの字が大きく歪むくらいなのだが、それが何ともユーモラスなのだ。

    先の「レコーダー定置網漁」では仕事で予約録画した番組を長らく見られなかった間に『刑事コロンボ』シリーズが終わっていたのだが、代わりに録画されていた後番組のユルい料理番組やらワイドショーやらにいつの間にか引き込まれ元気をもらっているし、「粗食インスタグラム」では仕事と人間関係に振り回されつつも少しずつ食事がまともになっていっているし、「メダカと猫と密室」では資料室に籠ってしまった安田さんと主人公横井と中村課長との攻防が楽しい。

    こんな人いるよなぁとか、こんなことあるよなぁとか、その気持ち分かるよなぁと頷きながらも予想を超えた展開と大変なのに笑えるのが津村さんらしくて楽しめた。

    かと思えば、収奪され続ける人たちを描いた「牢名主」とか殺人事件を解き明かす「フェリシティの面接」というシリアスモードな作品もある。
    違う作者が描けばサスペンスだったりホラーだったり嫌ミスだったりになりそうなものをギリギリのところで踏みとどまらせるのは巧みだなと思う。

    他にネットや防犯については発達した未来を描いているのになぜか宅配は人とロバとを選べるという「現代生活手帖」という変わり種もある。

    そして中には難しい親子関係を描いた作品が二編あるのだが、そのどちらもユーモアの一方で繊細さも見せてくれる。
    祖母、母、娘の女ばかり三代で暮らしている一家の台所戦争を描いた「台所の停戦」では主人公である母の、祖母にとっては娘であり、娘にとっては母である双方の立場と出戻りであるという引け目が分かるし、双方難しい親に悩んでいる女子中学生たちの話「イン・ザ・シティ」では主人公キヨがゲームをきっかけに親しくなったアサの家庭事情を思わず知りながら、そこに踏み込んでいいのかどうか悩む心情が細かに描いてあった。

    どの作品も物事が万事解決したというわけではない。だが何故かホッとするような、そんな気持ちにさせられる。
    「粗食インスタグラム」の最後の方の文章を借りれば『やはり、つまらない食事だと思う』と言いつつも『でもそれでもよかった』と言えるようになったのが良かったと思う。変わらないようで何かが変わったというその微妙さ繊細さを伝えるのが上手いなと改めて思う。

  • 久しぶりの津村さん。王国を作る中学生達の成長と関係性が心に残った「イン・ザ・シティ」ミステリー好きに嬉しすぎる「フェリシティの面接」選択する事の苦痛わかる気がする「粗食インスタグラム」嫌な予感とその後の着地点優しい「牢名主」が好き。

  • 【今週はこれを読め! エンタメ編】勇気づけてくれる短編集 津村記久子『現代生活独習ノート』 - 松井ゆかり|WEB本の雑誌
    https://www.webdoku.jp/newshz/matsui/2021/12/01/110309.html

    『現代生活独習ノート』(津村 記久子)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000358053

  • 全話クスッと笑える箇所があり、テンポよく読める話だった。
    ちょっと生活に疲れたという人の表現がとてもいそうな加減でしっくり来た。

    強制的に期限に間に合わせるため、相手が困ってるていのメールを勝手に送ってくれるサービス、私も欲しい…
    出てくる近未来的なシチュエーションは羨ましいと思う範囲で、すっと理解できた。

  •  なんとも不思議な物語だった。8つの短編から成る物語だが、どれもが不思議な設定であったりして私には少し入りづらかった。

     ただ、どれも面白くないか?と聞かれたらそれはNOで、面白いか?と聞かれても、NOだ。

     もちろん人それぞれ感想が違うのは当たり前だし、好みの違いだとは思う。

     最後の章に出てくる『インザシティ』が無性に聴きたくなったし、スケボーも始めたくなった。

  • 何気ない日常を8つの短編にしているが、どれもあるようでちょっと笑えるところもあって楽しめた。

    自分の中でハマったのは、冷蔵庫内の陣地争いで
    なんやそれ、って突っ込みをいれたくなった。
    でも当人にすればそれぞれの言い分があるのだろう…と。
    それに次いで、粗食インスタグラムも夢中になってしまった。
    「つらつらと何かを選ぶという判断をすることに倦んでいる。」
    確かにそういう気分の時ってあるんだなぁ。
    Instagramでも綺麗な器に彩りの素晴らしい料理が、これでもか、というくらいある。
    それより、つまらない食事がポツンとあると、なんだこれって二度見してしまう。
    それでもあるよなぁ、こんなときって思えて愛おしくなったりする。

    自分の中で、情けないなぁと思ってもちょっと笑えることがあればいいのでは…と感じた。

  • 本屋さんで関西弁丸出しの帯に惹かれて、手に取りました。
    この帯、関西だけ?地域によって違うのでしょうか。
    書店員さん達の言葉に納得!
    「この感覚、なんかわかるわ〜」な短編集。
    特に1つ目の「レコーダー定置網漁」。
    これ、私やないか!(笑)
    ひたすらダラダラして、見るつもりなかったけど見たテレビ番組で紹介されてたことをやってみて、何か気が晴れちゃったりして。

    特に事件は起こらないけど、平凡な毎日が一番心地良い。
    そんな1冊。
    ゆるゆるな気分な時、ダラダラしたい時にオススメです。

  • 津村記久子さんの短編集は初めて。
    帯に"短編の名手"とあり、そうだったのか、と初めて知る。
    短い物語の中でも登場人物が立っているし、展開も鮮やか。驚く。

    旧友の訃報があり、目が滑る感覚が全くないわけではなかったけれど、それでもいつのまにか没入できている話も多く、やっぱり読書は現実から目を逸らす逃げ道を作ってくれる、お守りのような存在だと改めて思う。

    特にお気に入りは、『粗食インスタグラム』と『メダカと猫と密室』。
    どちらも仕事に疲れている女性社員にスポットを当てたお話。
    前者は"選ぶ"という作業に疲弊した結果、粗末な食べ物ばかり摂取する感覚もわかるし、外面ばかりいい上司に振り回されることに辟易し、小さな自己満足のオアシスを求める気持ちにもとても共感できる。

    熱が低いまま、それでも登場人物たちの生活を囲んでいるアイテムや会話たちが、ぐっと読者を掴んでくる。さじ加減が本当に上手い作家さんだと思う。

  • どの話も面白かったです。個人的には「現代生活手帖」「牢名主」「イン・ザ・シティ」が特に面白くて2度読みしてしまいました。
    現代生活手帖、私もほしい……

  • 何か特別な出来事があるわけではない、が心に残るショートストーリーだった。
    あっ、わかる、この感覚。
    と感じるような所。
    なんとなく安心するような感覚の本です

  • 淡々と生きることは意外と難しいことなのかもなあ。なんとなく人生をバランスよく生きてそうに見える人も、自分をちゃんと持ってそうに見える人も、悩んだり傷ついたりして、でもひょんなことに慰められたりして生きているのかもなとか考えちゃう本でした。

  • ずっとキンドル化されるのを待っていたけれど全然なりそうにないので、紙の本をきのう買ってきたら一気読みしてしまった。
    とても津村さんらしい短編集。
    各短編の登場人物はとにかくいろいろなことに疲れ切っている人たちが多い。いろいろあって(ってひとことで言えば「ストレス」というものなんだろうけど)、なにを食べるか決めるのがしんどいとか、なにかするのがとてつもなく面倒だとか、友達がいないとか、SNSがつらいとか、会社がしんどいとか、人間関係のトラブルにあったとか。そういう人たちがほんの少しだけましになっていく、という話が多いんだけど、そのきっかけみたいなものが意表をついていていい。粗食の写真をアップするとか、会社でこっそりメダカを飼うとか。文章にユーモアがあって、描かれている状況はしんどいんだけれど、笑えて、けっこう楽しそうじゃん?とも思えてしまうような。わたしは本当に津村さんの文章が好きだ。
    とくに中高生を書いたものがすごく好きかも。中高生って思わせないような普遍的なものがあるような。ああいう中高生だったらよかったなと思うような。

    あと、近未来の話とか過去の話とかSFっぽいものもあるんだけど、ちょっとコニー・ウィリスみを感じるのはわたしだけかなあ。

  • 著者初読み。
    ブクログのレビューを見て、読んでみたいと思った一冊。
    かなり評価の高い作家さんで、「短編の名手」とのことだったが、個人的にはどの作品もピンと来なかった。
    偶然録画された興味のない番組、冷蔵庫の陣地争い、映えない食事ばかりのSNS、資料室の籠城騒動・・・
    忙しい現代社会に細やかな反抗とも取れるが、どの登場人物にも感情移入が出来なかった。
    特に「台所の停戦」のイライラ具合が、心に響き渡って、そこで読むのを止めてしまいたいくらいだった。
    心が元気じゃない時に読むのは、良くないのかもしれない。
    それくらい心が疲れ切った人を描くのが、上手な作家さんなのだろう。

  • 短編集。タイトル通り、現代を生きる人々の日常の中のちょっとした苦難の乗り越え方がモチーフになった作品が多かった。苦難の種類はさまざまながら、真面目に生きようとすればするほど人は心を病み、とはいえささいなきっかけで癒され、立ち直れたりもする。

    仕事に疲れた女性が、偶然録画されていた深夜のテレビ番組に癒される「レコーダー定置網漁」と、粗食をインスタにアップし続ける女性の「粗食インスタグラム」が個人的には好きでした。とくに後者、私も、空腹にはなるけど何を食べたらいいかわからないということは多々あり、考えるのが面倒なので気に入った同じものを食べ続ける傾向があるので、とても共感した。

    「牢名主」は、とても怖かった。A群(アドリアナ・スミス)とB群(バーブラ・ウィリアムズ)という言葉やそのストーリーにものすごく説得力があったので、実際にある言葉かと思って検索してみたけれど、どうやら著者の創作のようだ。でもこれ、実際にありそうで怖いなあ。要は、搾取する側とされる側の呼び名なのだけど、ものすごいリアル。こういう関係性に陥ってるひとたちは絶対たくさんいると思う。

    表面的にはB群だけど立ち直ろうとしてる人たちの自助会の話ながら、タイトル「牢名主」が象徴しているのはおそらく彼らのリーダー格である人物のことで、彼の場合あきらかにB群ではなく別の病気(心の)だろうな。そして病気になりたがっている変なクレーマー男とかも、心理的に別の病名がつきそうだ。

    ※収録
    レコーダー定置網漁/台所の停戦/現代生活手帖/牢名主/粗食インスタグラム/フェリシティの面接/メダカと猫と密室/イン・ザ・シティ

  • 短編集。
    「レコーダー定置網漁」…仕事に疲れてリフレッシュ休暇をもらった私。TVでコロンボ警部を録画するはずが、地方局の情報番組を毎日録っていた。しかし出演するアナウンサーたちに励まされ?気力を取り戻していく。
    「台所の停戦」
    「現代生活手帖」…近未来?SF.自治体から配布される手帖。タウンワークのように、地域の便利商品も紹介されている。私が利用する配送酸はロバ。
    「牢名主」…アドリアナ・スミス群。それは病的なまでに相手B群に執心してくるA群と、被害者B群のこと。B群になって逃げるために引っ越し、そこでリハビリグループに通う女性。
    「粗食インスタグラム」
    「フェリシティの面接」
    「メダカと猫と密室」
    「イン・ザ・シティ」
     あらすじ、全編は書かないけど、最後の4編も好きで、ストーリー忘れないだろう。今作は地に足のついたというか、地味なSFっぽい話もあって、新たな津村作品が見られた。「フェリシティの面接」は、読んでる途中で予感がして、「もしやミスレモン?」とわくわくした。仕事で摩耗して、ボロボロになっている作品もあったけど、ほんとーにスローに回復していく様子は希望があったし、そこにもやはりユーモアがあった。この本も読んでておだやかな気持ちになった。

  • 【収録作品】レコーダー定置網漁/台所の停戦/現代生活手帖/牢名主/粗食インスタグラム/フェリシティの面接/メダカと猫と密室/イン・ザ・シティ

     仕事に倦み疲れながら、どうにか生き延びている人々の日常生活に焦点を当てた短編集。しんどい心に効く気がする。
     「フェリシティの面接」は、ミステリ風味。フェリシティの正体(?)を考えると楽しい。

  • たまにネットをうろちょろしていると、一日目の日記を読んだあとになぜか遡って読んでしまう書き手のブログに出会うことがある。津村さんの今作はそんな感じがしないでもない。
    心を打つ、やまない感傷に震える、のような感覚ははあまりないのだが、つい次のページも読みまとめらしきページも飛んで読み、気付いたらフォローボタンを押してしまっているという蟻地獄感がすごくある。
    登場人物は素直な人が多く不快感があまりない。
    掴みどころのなさが残り、けれどさほど仲良くもない人の腹の中がどうなのかなんて本来気にならないはずで、そのくらいの読了感が良かったなと思う。

  • 可愛いイラストが表紙の短編集。あまり重くないのを読みたいと、この本を選んだのは疲れていたせいか。そんな疲れた女性が主人公の「レコーダー定置網漁」から始まる本書は、現実にありそうな話の中に少しだけズレた世界観が混じっているような、夢をみた後の気分になる読後感をもたらしてくれた。どの話もあるある!と言いたくなるような感情をベースにした話なので気軽に読めたけど、少しダークな話もあり、こっちは自分も毒親育ちだったり、若い時に人間関係がこじれた経験があったりして共感しきりだった。ラストの話は、大人になったら絶対にできない友だちとのやり取りの話で自然と涙がこぼれた。そして、私も配達が人かロバかで選べるんだったらロバがいい!

  • 私は津村さんがツボなのだけれど、友人に勧めたらさっぱりわからないと言われた。
    この人の本に登場する、狭いところをぐるぐる回ってる会社員みたいなのが、あまりにも親近感というか心当たりがあって、にやにやしながら読んでしまう。
    みんなこんなに壊れる寸前、もしくは壊れてるのに、社会人を継続してると思うと、生暖かいきもちになる。こんなにもよろよろしてる人たちの集合体である日本は大丈夫かなと心配になりつつ、明日もよろよろと働くんだなと思う。
    置かれた状況から目を逸らしてポジティブでいる必要はないよね。

  • 最後のイン・ザ・シティが特に好き。ディス・イズ・ザ・デイは津村さんの作品の中でも私の中で上位にランクするのだけれど中学生くらいの人物を描かせたら抜群だということに改めて気づかせてくれた。この年代の心のありようがきらめくように迫ってくる。またたく間に過ぎていく幼さから若さへと移りゆく年代の醸し出す空気感、胸いっぱいに吸い込んだ。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。
2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2023年『水車小屋のネネ』で谷崎潤一郎賞受賞、2024年「本屋大賞」第2位となった。
他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『ディス・イズ・ザ・デイ』などがある。

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