- 講談社 (2021年10月4日発売)
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感想 : 52件
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Amazon.co.jp ・本 (202ページ) / ISBN・EAN: 9784065260432
作品紹介・あらすじ
香港、上海、ソウル、そして東京――分断された世界に、希望は生き残れるか?小説だから見えてくる、光と翳のオリンピック。
変貌をとげるアジアの街で、人生の岐路に揺れる若者たち。コロナ下の東京に、オリンピックの幕が上がる。
2021年夏、東京オリンピックと同時進行で新聞連載された話題作「オリンピックにふれる」をふくむ注目の最新小説集!
「香港林檎」
「この香港のどこかを、もう一人の自分が歩き回っているような気がして仕方ないんだ」
ボート選手枠で入社して10年、タイムが低迷する偉良はコーチから思わぬ宣告を受ける。
「上海蜜柑」
「私たち、上海に住んでるのよ。欲しいものは欲しいって、今、世界で一番言える街に」
ケガで体操選手を諦め、臨時体育教師になった阿青。結婚目前の恋人には初めてのチャンスが訪れていた。
「ストロベリーソウル」
「がんばるって、約束したじゃないか」
ソウルのスケート場で働くクァンドンは、三回転ジャンプに挑む赤い練習着の少女に心惹かれるが……。
「東京花火」
「誰も悪くない。なのに、誰も幸せじゃないのはなぜだ?」
東京五輪が始まった。開会式を前に失踪した部下を探す白瀬は、国立競技場の前に立つ。2021年東京オリンピックと同時進行で新聞連載された話題作。
みんなの感想まとめ
スポーツをテーマにした短編小説集は、コロナ禍の東京オリンピックを背景に、香港、上海、ソウル、東京といったアジアの都市で揺れ動く若者たちの姿を描いています。各作品は、オリンピックに触れようとする人々の不...
感想・レビュー・書評
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スポーツがテーマの短編4篇。
タイトルの「オリンピックにふれる」は「東京花火」に直接関わってくる。
コロナ禍で無観客で行われた2021年のオリンピック東京大会。
もしコロナがなかったとしても実際に競技場まで足を運んだかは怪しいものだが、参加できそうでできなかったという不全感は抱えている。
「東京花火」を読んだ時、だから藤井がなぜあんなにくだらないトライをしてまで、オリンピックにふれようとしたのか、なんだか痛切に共感できた。
そもそも、東京という街自体が、ふれられそうでふれられない街だ。
生まれてこの方、ずっと東京に住んでいて、ほとんどの時間を都内で過ごしているけれど、この街の一員であると思えたことはほとんどない。
♪Paprika/Japanese Breakfast(2021)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本を読んだのは東京オリンピックのあと。
コロナ禍で行われたオリンピックになんとなく情があって思わず手に取った。
その本が、題名変更され文庫化されると言うことで、感想書いてないやと(笑)
単行本の題名の通り、少しだけオリンピックにふれた、様々な国の、ちょっとうまくいかない世界が描かれていたような。
スポーツスポーツしてなくて、これはこれで滲みた作品でした。
文庫化されたら立ち読みで後書き見よ(笑) -
『パレード』から吉田修一さんを追いかけているけど、この本もやっぱり吉田さんの匂いがする。
文章や行間や、なんと表現したら良いか、登場人物の淡々とした感じや、どことなく近未来的な流れが吉田修一だなぁと思う。
最後の『東京花火』に出てくる、「東京とは、一体どこにあるのだろうか」という問いは、上京した18歳の頃から私も考えている。
新宿でも池袋でも渋谷でもなく、でもそのどれでもあり、実在するようなしないような、東京に憧れる人達が作り上げる東京のようなもの。
同じようなことを吉田さんも考えていたとしたら、嬉しい。
「何かが駄目になったからといって、すべてを諦めることもないのだ」97ページ -
東京オリンピック時期にタイムリーに読めばもう少しテンションは上がったかもだが、そうでない今読んだときに面白かったかといわれると、まぁ普通・・って感じ、か。
執筆時期が結構違うので、テーマはある程度揃ってはいるが、全体を通してのバランスがチグハグなのも気になった。 ★2.5 -
東京オリンピックにまつわる香港、中国、韓国、そして日本を舞台にしたお話。
タイトル通り直接オリンピックに出る人ではなく周辺の人々。
コロナ禍で無観客で開催された大会。
あれだけ大騒ぎしたのに今となってはコロナさえ遠い昔な気がしてしまう。
まだ5年ほどしか経っていないのに。 -
香港、上海、ソウル、東京を舞台にスポーツ選手の光と翳が描かれた短篇集。4つの都市が舞台であり、どの作品も、その土地の情景や人々の息遣いが目に浮かんでくる。ラストの短編「東京花火」は東京オリンピックを描いた作品で、一番面白かった。最近の吉田(修一)さんの作品はエンタメ系が多かったが、この作品は純文学っぽいというか純文学(そういえば吉田さんは芥川賞作家だった)。「怒り」や「悪人」ではない純文学路線の吉田さんの作品が読みたい方はぜひ。
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東京花火
吉田修一さんは、国立競技場周辺に住まれていた認識。
何より物理的に近い場所に住んでいたことがある、もしくは住まれているから、人一倍、いや人十倍くらいオリンピックを自分ごとのように楽しみにしていたのではないか。
この小説の臨場感は、テーマと文章力の組み合わせで大優勝。私としても最高にすきなテイストだった。
ちなみに私も、東京オリンピックの開会式のときは外苑前にいた。
お昼には五輪飛行を行う「ブルーインパルス」が空を舞ったため通行人みんなが空を見上げたり、
オリンピック関係者用の顔つきストラップを首から下げる外国人が行き来する光景に非日常を感じて興奮するなどしたっけ。
私も藤井も、それからあの日外苑前にいた人はみんな、コロナ禍ではあるが外出しあの場に行って、生きてる間にもう二度とないであろう「東京オリンピックが開催された年に東京に住んでいる」という事実を、優越感を、語り継げるくらいの経験に落とし込みたかったんだ。 -
四つの短編からなる一冊。
香港、上海、ソウル、東京を舞台に、そこに生きる人たち(多分、若者)の一瞬を切り取る。
どれも、心の扉をノックされたような、なんとも言えない気持ちにさせる。
その中でも、香港の話がよかった。
国立競技場のそばには造られている頃から何度か自転車で通ったけど、ここでオリンピックが開催されるんだ、ここでオリンピックが開催されたんだっけ、で終わってしまう。オリンピックって…ふれられるものだったんだろうか?
今更だけど。 -
各国のアスリートの話
海外ものは苦手だけど、さらりと読めた
1番好きだったのは最後の章
コロナ禍での東京オリンピックについて -
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『悪人』『横道世之介』が面白かったなぁと思い、作者への信頼で借りてみた。
短編4つのうち、3つ目までは、正直パッとしない話だなぁと思いながら読んでいた。
周りがどんどん動いていくけど、自分の力では動かせない、みたいな印象を受けながら。
だけど、『東京花火』の中盤(部下の無断欠勤あたり)から引き込まれて、あとは一気読み(大した分量じゃないけど)。
まったく意味のないように思える行動だけど、必死にやり遂げようとしている人がいて、それに巻き込まれていく人がいる。
悪事じゃないのなら、素敵なことじゃないか。なんだかそう思った。 -
短編集であるのだが、物語全体を通して、登場人物を取り巻く背景や生活の息づかいが感じられる。
躍動感であり静寂であり、絶妙なさじ加減は作者の才能なんだろう。
設定もごく普通で、登場人物はたいして特徴もないけれどコロナ禍をおり混ぜて描かれた《東京編》が自分は好き。
文中より。
スポーツが教えてくれるのは勝つことじゃない。
負けてもいいってことだ。
負けることが、決してかっこ悪いことじゃないってことをスポーツは教えてくれるんだ。 -
短編4つが収録されている。2007年、2008年、2010年に雑誌で発表されたスポーツに関わる人たちの作品と、2021年のオリンピック期間に新聞連載されたものが纏められている。
具体的に描写されるモノや空気からそこに暮らす人たちの心情が浮かび上がってくる。
「東京花火」は、そもそもが表題の「オリンピックにふれる」がタイトル。一流アスリートを題材とするのではなく、開催地・東京で毎日を生活するひとが登場人物だ。なんでもあるように見える東京は、様々な集合体を抜けて集まった人が凝縮されていて、虚無の集合体のように語られイメージされることが強い。だが、ストーリーは華々しい一流アスリートだけが持つものではない。生活をするひとたちにもそれぞれにストーリーがある。
国立競技場の壁に触れたかった藤井にも、それに関わることになった白瀬にも、宮本にも、引田にもストーリーはある。あの壁が、彼らのこれから先のストーリーの小さなターニングポイントになっているかもしれない。 -
アジアに住む人々の短編集。最後にオリンピックニツ触れたいという理由で仕事を休んで国立競技場に触れに行く男性の話が出てくる。
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変貌をとげるアジアの街で、人生の岐路に揺れる若者たち。コロナ下の東京に、オリンピックの幕が上がる。2021年東京オリンピックと同時進行で『読売新聞』に連載された作品ほか3作品を収録。
佳作とそうでない作品の落差が大きいというのが私の吉田修一に対する評価。残念ながら本作は…
(D) -
22/02/11
らしくないテーマ選びな気がしたけど、短編はどれも吉田修一らしいものだった。タイトル変えたほうがいいのでは。。 -
短編よっつ
アジアの地域よっつ
の、お話。
やっぱり東京がよかった。
コロナ禍で。
都市のそれぞれ空気感も伝わり。
ちょっとした旅行気分も。
タイトルどぉり。
触れ加減もちょうどいい。 -
『香港林檎』は2007年の作品。『上海蜜柑』は2008年。
『ストロベリーソウル』は2010年。
ヒリヒリとする感じが懐かしい。
いまはスマートな文体で
読んでいても(痛いな)と共感することも減ってしまったけれど
あの頃好きだった(いまも作品は好き)
登場人物と一緒に傷ついて少し悲しくて、でも強がってしまう。
そんな思いを抱きつつ楽しく読了。 -
タイトルだけ見てエッセイかと思ったら短編集だった。
直接的にオリンピックが絡むのは東京五輪の一作品だけで残りは香港、上海、ソウルをそれぞれ舞台にした話で、外国を描いているのに違和感無く読ませる。
著者プロフィール
吉田修一の作品
