パラソルでパラシュート

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1421
感想 : 158
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065260746

作品紹介・あらすじ

企業の受付に勤める29歳の美雨は、人生に惑い、未来にも漠然とした不安を抱えていた。そんな中で出会った、売れないお笑い芸人、亨。彼が気になり始める美雨だったが、ままならない恋愛事情は、亨の相方との「奇妙」な三角関係に発展し……。

感想・レビュー・書評

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  • 29才、退職までリミット1年の受付嬢、美雨。
    同居を始める売れないアラサー芸人、享。どちらも端から見たら人生の「崖っぷち」。
    勢いと若さで進んできた日々も終わり、人によっては人生の節目ともいえる時期。人生の設計図を見直す時期。
    世間並みの生き方を選ぼうなんて毛頭思ってません。
    芸人を花火に例えたのが印象的です。何百何千回と稽古しても輝くのは数分。才能果てない世界で若手からの追い上げも半端ない。「バケモン」のような上には上がいやというほどいます。
    一方で、十万ほどの稼ぎがあればずっと放課後の気分でいられる、笑って暮らせる気楽な面もあります。
    これでもかと世間のレールから外れて生きる姿が描かれています。でも、悲壮感はありません。
    パラシュートでなく、パラソルで笑いながら落ちていってやるという空気感が物語を包みこんでいます。明るくて軽妙なやりとりで読みやすいです。
    私の知らない世界。目まぐるしく展開する出来事に見いってしまうのです。
    「夢や目標は呪いのようなもの。失うのも諦めるのも辛い、でも解放でもある。」芸人を諦め去っていくネバーくんの描写は心に刺さりました。
    これだけの熱量をもって生きている人間たちだからこそ、日々を流されるように生きている美雨は魅かれていったのかもしれません。
    ここに出てくる人びとは、誰一人手堅く生きてる人はいません。むしろ我が道を笑いながら進んでいる。最後にこのままみんなでお好み焼き屋、たこ焼き屋でもやろうかと話し合ってます。こういう生き方もあるよなぁと読了しました。

    ちなみに私が大学進学を決めた日、同じ部活の友だちは警察官合格を蹴って大阪NSCへ行きました。
    たまに帰省したときにすごく大変なんだろうなぁとひしひしと感じられました。同期会の写真見せてくれたら「二丁拳銃」が写ってました。すごっ。そんな彼は30を前に転職、今、会社員をしています。人生色々ですね。

  • お笑い芸人が出てくるお話なので、テンポ良く会話がポンポン出てきて面白いと思いながらも、なんだかモヤモヤする前半。理由ははっきりしている。主人公の美雨がぼやーっと生きてる感じがするから。「意欲がない人間にはないなりのポジションというものがあってもいいのに」なんて思いながら生活してるから。でも私は気付いてもいる。その気持ちが分かるからこそ見透かされてしまったような気がして読んでいて落ち着かないのだということを。
    この物語は誰もが心の中でこっそり思っているけれど、大きな声では言いにくいこと、『夢がなくてはダメですか?結婚しなくてはダメですか?仕事を頑張っていなくてはダメですか?』ってことをバーンと叩きつけてくれました。
    「笑っていてやる、と挑むような気持ちで思う。笑いながら、何でもなく、ただ生きぬいてやる」
    うん、いいじゃないか!ただ生きぬくぞ!

  • あなたは床屋さんと美容室どちら派ですか?

    まぁ女性の方はだいたい美容室でしょうから、男性に向けての質問と思って頂きたい
    正解を言います
    男は黙って床屋さん

    かく言う私も床屋さん派です
    一時期若気の至りで茶髪にしててちょっとだけ浮気したこともありましたが、それはいわゆる黒歴史なのでなかったことにします
    なかったことにしてしれっと床屋さん一択と言い切ります

    だって美容室ってカットとシャンプーだけじゃないですか!それじゃシャキっとせんのですよ!漢はシャキっとせないかんのですよ!

    最後はやっぱり『顔剃りで締めないと』

    さて『パラソルでパラシュート』です

    図書館をブラブラしていたら(略して図書ブラ)目に入ったんですね
    お!みんみんの好きな作家さんやんって思いました
    思っただけでスルーしました
    他の本を借りて帰ろうと思ったんですが
    うーん怒られそうだなと思ってやっぱり借りました
    (なんそれ!)

    借りて良かったw

    なんか間がいいなって思いました
    いや読書なんだから間なんて読者側の都合次第でどうとでもなるやん!と思いました
    だとしたら自分の読み方がいいんだなと思いました

    そして一穂ミチさんの文章はこねればこねるほど透明になる駄菓子みたいだと思いました
    そんな駄菓子ありませんでしたっけ?

    登場人物みんな好きの物語でした

    あ、あと題名がとても良い

    • ひまわりめろんさん
      大丈夫です!
      だいたい合ってます!
      まとめるとサムライは床屋ってことです
      大丈夫です!
      だいたい合ってます!
      まとめるとサムライは床屋ってことです
      2022/09/07
    • 土瓶さん
      よし! チョンマゲにしよう!!
      よし! チョンマゲにしよう!!
      2022/09/08
    • ひまわりめろんさん
      最終的にすごいとこに着地した!

      一穂ミチさんもまさか自分の書いた物語が1人の男にちょんまげを決意させるとは思ってなかったでしょうね
      読書っ...
      最終的にすごいとこに着地した!

      一穂ミチさんもまさか自分の書いた物語が1人の男にちょんまげを決意させるとは思ってなかったでしょうね
      読書って深いですね
      2022/09/09
  • 地に足を着けた生活を否定できるものは、無いだろうなあと思う。それでも、身を削りながら、自分の過去さえ笑いに変えて生きていこうとする芸人達がいる。不安定な芸人を続け、一瞬の輝きの為に全てを賭けてしまおうとする彼ら。そんな、彼らに巡りあってしまった女性は、何でもなく生きていくのが難しくなってしまう。無謀だなと思うけど、人生パラソルでパラシュートしてしまえ。
    「安全ピン」の夏子ネタは、魅力的。こんなの見ることがあれば、ちょっとトラウマになりそう。笑いって深いなあ。真藤さんの「笑いの世紀」もショッキングな芸人の小説だったけれど、あまりお笑い見ないけど、皆さんご苦労されてるのね。

  • 企業の受付嬢として働く柳生美雨(やない みう)29歳。
    30歳になると契約更新できないという、なんとも前時代的な職場ルールだが、そもそもここに来る人は早く良い相手を見つけて去っていく者も多く、皆割り切りの中でやっている。
    迫りくるXデーを意識しつつも、恋人を作るわけでもなく、次の職場を探すでもなく、ぼんやりと日々を送るちょい天然さん。

    ある日、職場の同僚からチケットを譲ってもらった人気バンドのライブ会場で、お笑いコンビ”安全ピン”で女装”夏子”の芸を持ちネタとする、矢沢亨(やざわ とおる)と運命的に出会う。

    こう書くとべたな恋愛物語が始まりそうな予感がするが、本書でメインとなるのは美雨のぼんやりとした日々に彩りを与えた”お笑い”推しの日々の始まりと、芸人仲間達との繋がりによって得た居場所の確立の物語で、恋愛要素は極めてほんのり。

    亨のお笑いは、”とにかくお笑いがすきやねん、てっぺんとったるでー”的な熱血な感じはなく、”やりたいものをやりたいようにやる。それが自分の人生だから”というようなフラットな感じで押しつけがましさや、眩しさを感じない。
    そして、そこがこの物語の魅力であると感じた。
    登場人物、特に美雨と亨の間で交わされる会話の距離感、すっとぼけたやりとりで生じる笑いがたまらなく良い。

    くすぶりながらも楽し気にもがく劇場芸人達と美雨の静かな推し活の中に、ぼんやりと味気ない日々を送るのはもったいないけれど、ギラついてバチバチにやっていくのだけが満ち足りた人生かというとそうでもないということを感じさせてくれた。

  • 大阪はあたたかい街だな、と。
    僕は、東京生まれ東京育ちだけど、大阪好きなんだよな。美味しいもの多いし、人情味があるし。
    だから、この小説の世界は好き。

    「スモールワールズ」の一穂ミチさんの長編。
    しかし、「スモールワールズ」のような重目のものを期待すると肩透かしを喰らうかも。もっと軽い、ポップな恋愛もの。コンビの芸人と29歳受付嬢のちょっと捻った三角関係。

    恋愛ものとしては全てが奥ゆかしく、鈍くなってしまった僕の心には残念ながらあまり響かなかった。もう、若くないものね。

  • 以前、一穂ミチさんの「スモールワールズ」の装丁を何かで見た時に、読みたいなぁと思ったのだが、紹介文を読んで、中学校図書館に置いてもあまり読まれないかもしれないと思い、結局そのままになってしまった。その後、直木賞候補に上がったので、タイミングを逸した…と思っていたが、今回はこちらをネットギャリーで読む機会を頂いた。


    誰が決めたのか分からない、いわゆる世間の常識…きちんと舗装された道(人生)を外すことなく歩いていく人たち。
    でもそれを選ばない人もいる。
    決して楽には見えないその道は、視点を変えればとても自由で楽な道なのかもしれない。

    自分の中心にあるのが、自分自身なのか、世間なのか…その見えない世間に人はいつから縛られるのか、そんなことを考えさせられた。
    お笑い芸人コンビ「安全ピン」と主人公美雨、更に彼らを取り巻く人たちの関係性の線引きが、はっきりしていないところが、とても印象的。
    人間関係って、そんな白黒はっきりしているものじゃないよね、と腑に落ちる。

    2021.12.24

  • とても感動してしまった本♪
    わたしにはツボだったようです笑
    期限付き契約社員身分の受付嬢をする柳生美雨(29)のコテコテに濃くて楽しくて少しだけ哀しくもある一年間がギュッと詰まった作品ですね。
    登場人物が誰も彼も生き生きとしていて、人には吐き出す場や尊重してくれる相手が居る事の大切さが否応無く腑に落ちました。
    会話がそれこそコテコテの大阪弁なのがとても良いし引き込まれて、たまにグッとくるのも心地よいです。現実的にはないだろう設定の主人公の行動ですけど、それが反って気楽にスイスイ読めるのでしょうか。
    お笑い芸人の世界をかなり詳しく垣間見せてくれるので目から鱗部分も沢山でした。

  • 不安定で崖っぷちななかで生きる人たちの物語。
    30歳になったら「切られる」受付嬢をしている美雨。
    芸人の亨や弓彦たち。
    将来の見えない生活たち。

    恋愛小説だとあったけど、激情的なものではなくて、まさに今外で降っている雪のように、触れたら熱で消えてしまいそうな、ふわふわとした淡い感情だった。
    というか、「恋愛」ってなんだっけ、と、改めてその定義を考えた。きっともっと、広義的でいい。

    心の中に抱くささいな違和感を、素直に言葉で表現できる作家さんだなと思う。
    そんなことができる人は素直に羨ましいし、そんな表現者になれたらなと思う。
    琴線に触れるような言葉や表現がいくつも、いくつもあった。自分ではとうに思い浮かばない宝物のような言葉たち。

    “何でもなく生きていくのが難しい。成長、目標、何かきらきらしたものをまとっていないと「怠け」「甘え」の烙印を押される。上昇し続けられない人間は地べたを這いずるしかないという極端な二択の中で「女性が輝く」とか「夢を追うのに年齢は関係ない」とかいうキャッチフレーズを聞くたび、わたしの頭にはいつも民家のクリスマスイルミネーションが浮かんだ。窓辺に電飾を吊るし、「Merry X'mas」と外に向けて掲げる。それって誰のため?”
    p.240のこの文が特に印象的でした。

    “人間の運命はこんなちょっとしたことでいいほうにも悪いほうにも転がっていく。その不確かさを、わたしは希望と呼びたかった。”
    p.307のこの文も。
    ああ、私はこの人の表現する文章がとてもとても好きだ。

    一穂ミチさん、お笑い大好きなんだろうな。
    芸人さんとの会話が軽快で、読みながら口元がふっと緩んだ。
    大阪の人たちの会話ってほんとにこんなんなんやろか。だったら楽しい。

    以前に「ワラグル」(浜口倫太郎著)を読んだのもあって、そしてこれを読んでいる間にM-1があって。
    完全に番組への印象やそれを見る姿勢が変わった。各々、思うものがあって、人生を懸けている。

    もっと自分の思うように生きていっていい。
    世間体の何かに縛られず、何にも支配されずに。

    一穂ミチさん、すきだなぁ。
    作品を読むのは「スモールワールズ」に続いて2作目。というか、一般作品自体2作目。
    BLの分野でかなり人気のようなんだけれど、そちらの作品も読んでみたくて興味が出てきている。笑

  • やっと読むことが出来ました。

    一穂ミチやっぱり大好きだなぁ。
    2008年のデビュー作からずっと好き。

    なんて言ったらいいかな…
    たぶんどんなジャンルだろうと書くと言う事に変わらない思いが芯のようにあるからだと思う。

    一穂さんは関西の方なので、他作品にも芸人が登場する事もあって、その時も驚くほどリアルな描写に驚きました。
    軽快なセリフと行間に流れる空気感、絶妙な比喩表現
    今作に限らずどの作品も読んでいる間ずっと切ないのです。
    もう「上手い‼︎」としか言えない(*´-`)

    次はどんな引き出しからどんな作品を出してくるのか楽しみに待ちたいと思います(*´꒳`*)

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著者プロフィール

BLを主題とした作品を多数発表。2008年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』。2021年『スモールワールズ』に収録されている「ピクニック」が第74回日本推理作家協会賞短編部門候補作品、『スモールワールズ』で第165回直木賞候補になる。

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