電気じかけのクジラは歌う (講談社文庫)

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  • 講談社 (2022年1月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784065264119

作品紹介・あらすじ

圧 倒 す る 想 像 力
震 え る ほ ど 未 来 

「AIがもの作りする時代――
 じゃあ俺は、何の役に立つ?」
挫折と再生を謳い上げる近未来ミステリー

☆☆☆

絶賛!そして考察の声!
「どんどんと深海に深く深く沈められるため、
 ひたすら光が見たくて読み進めさせられる」
「近未来で苦悩する音楽家達の心の叫びを肌で感じるような時間でした」
「AIが自分にとってぴったりの音楽を作り出してくれる世界。
 きっとその世界はもうすぐそこまでやってきている」
「音楽・才能に翻弄される様はもの哀しく感じる」

☆☆☆

人工知能の作曲アプリ「Jing」により作曲家が絶滅した近未来。

元作曲家の岡部の元に、自殺した天才・名塚から
指をかたどったオブジェと未完の傑作曲が送られてくる。

彼の残したメッセージの意図とは――。
名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその謎を追ううち、
岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく。

みんなの感想まとめ

近未来を舞台に、AIによる作曲が当たり前となった世界での人間の苦悩を描いたミステリーが展開されます。元作曲家の岡部が、自殺した天才作曲家から送られた未完の楽曲とオブジェを手に、その謎を追う中で、AI社...

感想・レビュー・書評

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  • 現代技術からそう遠くないような、近未来を舞台にしたミステリー。

    作曲をAIが代替する時代が舞台。天才作曲家の自殺を発端とする不可思議な出来事の真相を追う物語。

    最近のAIの進歩ぶりを見るに、この舞台設定もリアリティを感じるところ。というか、既に出来そうまである。そういう身近さもあってか、500ページ超の割に読みやすい。

    結末も綺麗な終わり方。何かと人との対立軸として設定されがちなAIへの考え方としても参考にしたくなるものでした。

    前半の主人公の、ウジウジっぷりが読んでいて少し辛かった笑

  •  『〝クジラ〟強調月間始めました!』13

     第13回は、逸木裕さんの『電気じかけのクジラは歌う』です。
     今後十数年で、現在の職業の半分がAIに代替されると予測される未来は、理想社会なのでしょうか?
     本書で描かれる世界は、AIで駆逐される音楽業界、とりわけ作曲家の苦悩が主軸です。ここに、天才作曲家の自殺に伴う謎が絡むミステリー仕立てになっています。
     『Jing』というAI作曲アプリ。中国語で「鯨」の意。創業社会長は霜野鯨。生態系の中心に君臨し、海域の食物を大量に食す鯨は、全てを取り込んでしまうのか…。ドキドキとヒリヒリが続くドラマを観ているようです。
     音楽に携わる者の葛藤が見事に描かれています。血が通った人間だからこその苦悩や嫉妬は、誰にも身に覚えがあり心を揺さぶります。言葉による音楽表現も秀逸で、とても読み応えがありました。
     人間の創造性は、AIに凌駕されてしまうのでしょうか? 人の存在意義、苦労を伴って生み出したものの価値を深く考えさせられました。
     近い将来を、少なくとも人間性が否定・淘汰されるディストピアとは、絶対に想像したくありませんね。

  • AIが音楽を作曲する世界の近未来ミステリー

    「作曲」は人の意思が強く反映される創作活動だと思います
    そんな作曲を「AIがするもの」という認識が当たり前になっている世界を「近未来」として描いているのですが、ここ最近の音楽業界では実際に「AI作曲」というものが少しずつ当たり前になってきていると思います
    ただ、それでも人が作曲する意味はあるし、まだ未完成な「AI作曲」に対して目“くじら”を立てずに、容認していきたいものですね

  • 「Jing」というAIによって、これまでの音楽は全て喰らい尽くされていく。
    作曲家としての仕事が減り、安価に音を生み出す機械が重宝される時代の中で。
    ある天才作曲家が、「遺作」の一部を自らの指紋に残し、壁に貼り付けたことから、波が起こり始める……。

    AIが台頭する世の中では、これまでの「仕事」はなくなってしまう、そんな話を何度も耳にする。
    だから、私たち人間にしか出来ない創造的な内容や、答えが一つではない問題にトライしていくことが“必要”になってくるのだと言われている。

    けれど、この作品を読んでいると、仕事を「奪われること」の重みをとても感じる。
    それは、今までだって同じで、機械化・情報化されて「奪われた」ことも多くある。
    今の自分が、それを当たり前と感じているだけ。
    それは分かっていて、でも、少し寂しくもある。

    いつか、見えなくなって、当たり前になるんだな。

    扱いきれない膨大な情報を前にして、いかに、足元と目の前で良しと出来るか。
    高速を前にして、いかに深淵に留まれるか。
    欲望への抗いにこそ、生きることへの活路を見いださせるような、そんな矛盾した感想を抱いた。

  • 面白さはもちろんのこと、著者である逸木さんの、人工知能への視点、人間への視点に感銘を受けた一冊でもありました。人工知能が労働を奪う、とささやかれる現代だからこそ、よりこの作品の世界観や主人公の心情がリアルに、そして切迫感をもって伝わってきた気がします。そういう意味ではSF要素がありながらも、社会派的な作品なのかもしれない。

    AIアプリが音楽を作曲する近未来を舞台に、元作曲家が自分の友人であった天才音楽家の自殺の謎を追うミステリー。

    作品に登場する音楽家たちの心情がリアルで、切迫感を伴って伝わってくるのがとてもよかった。自分の創るものは人工知能でも作れる、なんなら人工知能の作る作品の方が優れているかもしれない。そんな中で音楽を創る意味があるのか。

    命題として単純化するとそれに集約されると思うけれど、それを主人公の自殺した天才音楽家・元バンド仲間、ハンディギャップを抱えながら演奏を続ける女性、自動音楽アプリを製作したIT社長などなど様々な登場人物を絡ませ、多角的に命題を浮かび上がらせて、何度も主人公に問いかけてくる。

    その主人公の葛藤に引っ張られていくうちに、物語がどんどん展開していく。ミステリ的な部分で話を引っ張るところもあるのだけど、それ以上に音楽と人をめぐるドラマの部分でも話を引っ張っていき、気づけば後半は夢中で読み進めていました。

    そうやって主人公の葛藤を切迫感をもって目の当たりにしてきたからこそ、終盤の主人公の再生も作り物めいておらず、素直に受け取れる。そして登場人物たちの設定や配置、エピソードにも無駄がなく、見事な伏線回収が決まるのも本当に見事! と思うしかありません。

    逸木さんのデビュー作『虹を待つ彼女』でもそうだったけど、本編が終わってエピローグになってから、もう一つ見せ場があるのも読者として嬉しく感じられる。映画でエンドロールが流れてから、アニメで12話終わってから、もう一話、その後の話が描かれるような、そんなサービス精神というか、見せ方をもう一つ工夫しているのも好ましいと思います。

    ミステリとしても面白いし、人工知能と音楽をめぐる人間ドラマから浮かび上がる、著者の人間に対する視点の優しさや期待も本当に素晴らしい一冊でした。

  • AIにまつわる小説を読んでみようキャンペーン第二弾。
    今よりもAIが普及して都市部では自動車や決算システムは自動化されている位の近未来。人工知能の作曲アプリによって作曲家が廃業に追い込まれる中、自殺した天才作曲家から遺作となる未完の楽曲を受け取った元バンドメンバー。何故彼は死ぬ前にこの曲を送ってきたのかを追うSFミステリーでした。
    AIが人間の娯楽や知的創造性の領域にまで進出してくることに対する危機感・不安というものはあって、例えば世界一の棋士がAIに敗れた時に感じたあの感覚に通じるというか。
    作曲は、乱暴にいえば計画された調性とコード進行の上でリズムとメロディを基にしたモチーフを展開していく行為、ということができます。限りない組み合わせや可能性の中からひと筋の答えを紡いでいくという意味では、将棋のAIが行っていることにも通じると思う。つまり、AIの方が良い音楽を作り得る可能性があることは否定できないということ。
    まず浮かぶのは、将来例えばAIを搭載した野球ロボットが二刀流で年間82勝、打率9割315本のホームランを達成したとして、それって面白いのかという問題。非力で有限たる人間が達成するからこそ偉大なのではなかろうか?
    同じ10倍だとしても米一反120俵の収穫を達成するのとは訳が違うのです。作曲もしかり。AIの作った音楽は心情的に受け入れられるのでしょうか。
    一方で、AIの作る音楽は巷に溢れている曲よりもはるかに音楽的な整合性、展開、感動に富んだものになるのではないかという予想もしています。特にクラシックの領域では古典と比べても遜色のない名曲が生まれるのではないかと期待しているのです。
    小説では、AIを操る人間の音楽性によって出力される音楽も変わるみたいなことが書かれていたように理解しました。AIというツールを利用して人間が作曲するイメージ。考えてみれば、現在でもAIで得られるものは人間のプロンプトによって石にもなれば宝石にもなるのだから、結局それを扱う人次第なところはあるかもしれません。
    そして、AIに頼らないで昔ながらに作曲することに対しては、決して無駄ではないと書かれています。「僕らはただ、作ればいい」と。たとえ、AIの作った曲の方が圧倒的に優れていたとしても、非力で有限たる我々が苦労しながら創造することには価値があると。そう考えられれば知的創造性に進出してくるAIに対して抱いていた漠然とした危機感・不安も少し和らいだように思えた次第です。

  • すでに音楽の作り方が人経費を抑えるために打ち込みになることが多く、ループ素材を貼り付けて作品を作ることは一般的となっている。
    未来の話というより、そんな現在の世の中を揶揄しているのかもしれない。
    面白く読ませてもらえた。

  • 各人のキャラがブレブレで、展開も混迷を極めるけれど、原点に戻ってくるかのような帰着にはほっとさせられた。主人公を始めとした登場人物があまりにもひねくれているのがマイナス印象でもったいない。アコースティックから交響楽やテクノまで、歌や音楽を奏でることへの想いは伝わってくる。名声を残すために死を選ぶという発想がまったく理解できなかったので、それについてはきょとんな感じでした。それにしても、ここではまるで人間性を否定しているかのように描かれている 「jing」だけれど、これはかなり面白そう。これを開発実現した霜野さんって、わざわざ悪巧みしなくてもすでに偉人ですよね。

  • かつて一緒に音楽ユニットを組んでいた親友の名塚が命を絶った。
    人工知能作曲アプリ『Jing』の検査員である岡部は家に送られてきた名塚の“指”と“スタンプ”と“カイバ”
    名塚の音楽スタジオに次々と貼られていく“音楽”

    岡部は名塚とつながる人と音楽をたずねはじめる。

    メロディはクジラに呑み込まれてしまうのか。

    〇音楽とAI と音楽家たち。近未来SF 音楽ミステリー。
    対AIをもっと全面に出しても面白かったかも。
    〇登場人物たちには、ちょっと後ろ向きだったり、他に転嫁する感じで、ざらりと。

  • AIに作曲家や音楽家の仕事が奪われた世界のお話。
    終始暗い雰囲気のまま、話が進んでいった。結末をどうするのかと不安になったが、その結末でパッと世界に色がつき、救われた気がした。

  • 絵を描くAIが普及しているが、音楽を作るAIは「まだ」。
    絵よりも娯楽として浸透している音楽がどう反応を受けるのか、楽しみでならない。

    AIが作ったといえど、そのAIを作ったのはヒトで、指示を出したのもヒトであり、答えを出すための材料を与えたのもヒトであることは忘れずにありたい。

  • 音楽に限らず、文学も含めたあらゆる表現を行う人には深く刺さると思う。現在もAIによっていろんな仕事が代替可能になりつつある。でもAIを用いることもまた表現の一つの方法であり、どんな形であれ創作をすることには意味があるのだと、優しい希望を感じた。

  • SFだしミステリーだった。
    読み易かったのと題材がAIなので、短時間で読めた。
    2023年以降のAIの劇的進化の後だったらもっと違う話になったかな…?
    AIに対する人間ができることについての語り部分は変わらないだろうからそうでもないか…
    AIっていうSF要素でかなりプラス判定になったけど、登場人物全員薄っぺらい気もする…
    登場人物も少ないし、語られている事件も狭い範囲で起こったことで、それほど大事ではない気もする。

  • 著者の作品を読むのは「五つの季節に探偵は」に続いて2作目。人工知能がリスナーに合わせて好みの音楽を作ってくれるサービス「Jing」をめぐる近未来ミステリー。
    AIによって消える職業を考えたとき、作詞家作曲家なんかは残る側だと思っていた。インプットデータによって作風も模倣できるとすると、予算がないので今回はAIでやります、みたいな未来はすぐそこにありそう。自分が作曲する意味があるのか、一部の天才以外はAIが担えるのではないかと自問自答する作曲家の心情がリアル。

    クジラの挿入のされかたが好き。クジラの食餌、クジラの歌。調べたら、鯨乳は商品化されていないもよう。飲んでみたかったので、少し残念。

  • 読んでる途中で感じたのは「好きを仕事にしたらダメなのかな」だった。岡部も益子も理沙もみんなみんな好きだったから音楽で生きていて、そのせいで絶望を味わった。でも最後はやっぱり音楽で希望があった。「好き」はずっとずっと大切にしていきたい。それが絶望をもたらしたとしても最後はきっと自分の支えになるから。
    AIが音楽を作る話はちょうど今起こっているAI絵師問題と酷似していて興味深かった。世界は日々進歩していて、人にAIが勝る(技能的に)ことはどんどん難しくなるだろうと思う。物語の中でもAIを利用して作った作品はその人の作品と言えるのか?という問いがあったけど、今後その線引きをどうするのかによって創作の世界の未来が変わると感じる。
    (岡部が推測した)名塚のように、上手く利用しさらに世界を広げていくことが個人的な理想だが、そんなに上手くはいかないだろうとも思う。律のようなアンチから実体的な否定活動をする人も現れるかもしれない。岡部のように絶望して創作をやめてしまう人だっているだろう。
    登場人物の動きからもこの作品は今後の創作世界の未来の1つを提示しているように感じた。

  • 生成AIが話題になってるので読んでみた。
    作曲領域でAIが活躍する近未来の話。主人公は夢やぶれて、AIへ取り込む情報の審査員へ身を落とした元作曲家。元バンドメンバーの天才作曲家の自殺から物語が動き出し、謎を解く過程でAIとはなにか、人とは何かが問われる。
    主人公が優柔不断で、そうはせんやろ…みたいなところは不満点だが、ストーリーは一貫してAIとヒトというテーマで軸が通っていて面白かった。

  • ーー大丈夫。世の中がどんなに変わろうと、私たちの行動は波及し、必ず誰かにつながっていくのだから。

    本作では音楽という題材が扱われましたが、イラストもCGも小説も例外ではなく、もっというと私たちの仕事ですらAIが代替していくかもしれない。そんなワクワクと同時に漠然とした恐怖も感じる現在だからこそ、この作品が示した答えは、震えるほど勇気をくれました。AIが加速度的に普及するいま読めて本当によかった作品です。

  • 近未来の音楽世界。究極までパーソナライズされた音楽はもはや作り手を必要とせず、音のタコツボ化が起こる。それでも音楽を作り続ける人間と区切りをつけて適応する人間。主人公岡部数人は、友人である名塚楽の死をキッカケに、音楽の本質的価値を苦悩しながらも理解していく。一人一人が持つ空港。音楽の波及。芸術の将来性を考える上でいい参考資料になった。
    近年の芸術活動は、経済活動と綿密に結びついている。この固定観念の崩壊が起こった時に人類は芸術の本質を再発見出来るかもしれない。

  • AIの発展に侵蝕される音楽業界で生きる人たちの物語。
    近い未来同じような変化がいろいろな文化や職業に起こるのだろう。最近も「昭和レトロ」ブームがあったように、いかに便利な時代になっても、旧き良き、人が創り出したものを愛する気持ちは、必ずや多くの人の心のなかにあり続けると思う。
    自分もいつまでもそういうものを好きでい続けたい。

  • 絵を描くAIが現在話題になっているが、音楽を作るAIも今後現れるのだろうか。この本を読んで、そんな世界は嫌だなと思ってしまった。
    これから時代が変わっていったとしても、仲間と音を一緒に作って奏でることの楽しさをずっと覚えていたい、少しでもそんな風にアーティストさん達が思ってくれたら嬉しい。

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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