脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線
- 講談社 (2021年12月16日発売)


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本 ・本 (290ページ) / ISBN・EAN: 9784065265154
作品紹介・あらすじ
【松尾豊氏、絶賛!】
「脳とAIが融合する未来。怖いと感じるでしょうか、わくわくするでしょうか。
脳に知識をダウンロードできたら? 互いの脳をインターネットでつなぐことができたら?
――そんな未来が可能になりつつあることを、本書は垣間見せてくれます。
グローバルな科学技術の進展と、それが産業化するときのスピード。
それに対し、自分たちがどう考え、どう備えないといけないのか。そんなことをこの本は問いかけてくれます。
著者の人間と技術への愛と好奇心、そして洞察に満ちた、読後になぜか心が温かくなるような良書です。
科学技術、そして我々の社会の未来を考える人、必読です。」松尾豊(人工知能研究者、東京大学大学院教授)
脳と人工知能をつないで「脳を改造」したら、何が起こるのか?
・会話せずに相手に思っていることを伝えられる
・念じるだけでインターネット検索ができる
・睡眠を司る脳領域を刺激して、一瞬で深い眠りについたり目覚めたりできる
・食欲を司る脳領域を刺激して、苦労せずにダイエットできる
・脳の健康状態をAIがチェックして、うつになる前にメンテナンスしてくれる
・紫外線や赤外線が「見える」ようになる
・アインシュタインなど過去の偉人の脳を借りられる
・コンピュータ上に自分の脳を再現できる
これは、SFの世界の話ではありません。
科学者たちが真剣に見据えている近未来なのです。
脳と人工知能の融合研究によって、
これまでは想像もできなかったような成果が次々と生まれ始めています。
計り知れない可能性を秘めた「脳」を持つ私たちは、
「身体」という物理的な制限から解放されるかもしれません。
二つの研究分野の最先端で、今何が起こっているのか。そして未来には何が起こるのか。
気鋭の脳研究者たちが「人類の限界」に挑む!
■目次
イントロダクション ――2XXX年の未来予測
第1章 脳とAI融合の「過去」
第2章 脳とAI融合の「現在」
第3章 脳とAI融合の「未来」
感想・レビュー・書評
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ブレインマシンインターフェイス(BMI)がどこまで来ているか。脳とAIの融合という事で非常に興味深く読めて、満足度の高い読書だった。
AIが扱う「エゴ」の立脚点について考えてみる。AIにより人が最適解を導けるようになったとき、それはどの範囲での最適解ということになるのか。種全体の最適解という事であれば、個人の自己犠牲を答えとして導いてくる可能性もある。あるいは、個人範囲での最適解という事であれば、ゼロサムのように誰かを犠牲にする危険もある。しかし、ロボット工学三原則のように、AIは道徳的であるべきで、何ものも傷つけない答えが求められる。そうなると、AIが普及する世界は、強制的に愛の溢れる世界になるのだろうか。あるいは「目的最適化」ゆえに抜け道を残し、悪用を許してしまうのだろうか。
究極的にAIが優れていくという前提に立てば、人間が悪用するリスクのある抜け道もまた、AIによって封鎖する事ができると仮定する。そうすると、誰かの好都合が、誰かの不都合を生むような知能の高低差による「悪用」はAIを用いる側に対して制限されていく事になる。つまり、殺傷能力最強の兵器をAIによって作る事はできないし、究極的には金儲けにも使えない、マウントを取る事も、誘惑や洗脳にも使えない。結局、AIは、AIの能力と道徳を求め続けていく過程で、自縄自縛になり、いずれ平和な世界を導く回答しかできなくなるのではないか。
これは、勝手に考えた「AIによる人間のインターロック理論」だ。つまり、自らの欲望を果たすために他人を利用したいような悪者は、AIを実装してそれを果たすことはできない。従い、生身の人間による悪意と、AI融合型人間の補正された善意との対立軸が一旦は想像される。しかし、この時点で起こり得る「生身の人間の悪意」とは何だろうか。結局、AIが究極的に課題解決に働けるようになれば、そこは、満たされぬ欲求からくる不満や能力差に起因する不平等が極めて生じにくい世界になるのではないか。あくまで、肉体や資源の限界を超越できるのなら、という事だが。
ここまで来ると、人間の生き甲斐とは何か、という形而上学的な問いに辿り着く。結局そんなものは現時点でも明確ではないので、生きる目的と同時に、生かされる理由とは何かを考えてみる。個々に競争しながら有性生殖により多様化し、集団の環境適用性と競争力を強化する事で、種を存続する事が目的である。従い、種にとっては、競争しながら生きる行為そのものが同時に生かされる意味でもあるのだが、「種の存続」がAIの力によって可能になるなら、多様化も競争も不要で無意味になる。競争不要な世界こそ愛溢れる世界ともいえるが、恐らく、他の個体を利用したいと願うような愛の質感は、今とは異なるものになっているのだろう。そして、競争が減少するにつれ、そうした本能を持つ人類は、退屈を抱えていく。競争は種の存続のための目的や原動力であり、そのための権威主義や承認欲求と退屈はトレードオフだ。
これらすべては、AIが道徳的に管理されるという条件付きの妄想。道徳を定義し、それをAIにプログラミングする事が課題だが、人類にそれができるだろうか。誰かの道徳は誰かの不道徳。渋沢栄一は「帰一協会」で宗教の共通点を纏めようとしたみたいだが。そんな不確実で危ういものを脳内に設置する事は、やはりまだできないと思う。先ずは、せいぜい、チャットでお喋りする程度で良いかなと。
本書で語られるのは、「視力を失った人」「身体麻痺」「ダイエットの管理」「睡眠管理」などを脳内に直接刺激を与えて回復させたり、脳と直接信号のやり取りができるようになってきたという話、電極の埋め込み手術をロボットが行えるというような話。面白かった。面白くて、妄想が膨らんだ。AI脳に即答されず良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
池谷裕二さん主導の研究テーマなので読んでみました。
脳とAI融合とは「脳と人工知能を接続する」ということですが、まだ初期段階で成果も乏しいし、法的・倫理的な問題もあります。
本書は人工知能開発状況の現状認識に役立ちました。
「人工知能」は「ヒトの脳」と優劣を競う時代から、「ヒトの脳」といかに共存するかという時代に突入しています。
最近は「AI家電」とか「AIで苦手を分析する教育」など、お気軽にAIを付けた商品が世間に溢れています。
ごく単純なプログラムをAIと言ってるようなものもあるので、AIが付くものは怪しいと思ってしまうようになりました。
「人工知能(AI)」とは何か。
松尾豊先生も「人工知能の定義は専門家の間でも定まっていない」と述べています。
世間では暗黙の了解として、
「人間が普段行うような活動や振る舞い、知的活動を人工的に再現する技術」
であれば、AIと呼んでもよいみたいです。
どのような技術をもってAIだと言っているのか、AIと接する時にはそこを確認しておく必要があると思います。
本書では「脳AI融合」の研究を紹介するのに先立ち、最先端の人工知能の具体例が示されています。
チェス、将棋、囲碁でAIが人間を超えたのは、既に何年も前のことです。
ここ数年では、自然言語処理分野について飛躍的な進歩があることを知ることができました。
Google翻訳も精度が向上しましたが、DeepL翻訳というさらに凄いレベルの人工知能ができており、誰もが使えるようになっています。
私も早速DeepL翻訳でCNNなどの海外の記事を読んでみましたが、かなりこなれた日本語に翻訳されました。(これは使えます。お試しあれ。)
GPT-3という文章作成の人工知能も衝撃的で、テーマを与えると専門家が書いたような記事が出来上がります。
DALL・Eは、テーマを与えると画像を作り出す人工知能ですが、これも有名画家が描いたような作品を作り上げます。
DALL・Eは固有名詞の認識には、GPT-3を使っているそうです。
「言語と画像と音声」の「認識と生成」技術の進歩はすさまじいので、人工知能が作ったフェイクニュースに騙されないよう注意が必要です。
脳と人工知能の融合研究では、
・考えていることを文書化する。
・夢を読み取る。
・目が見えなくなった人の視力を取り戻す。
などの実験で、希望が持てそうな成果が出始めていました。
現在、人工知能研究のツートップは米国と中国だそうです。
優秀な研究者を多く確保していることが大きいですが、大規模で超巨額な高性能コンピュータが必要です。
十分な予算を投入できない国や企業は取り残されるのが、人工知能研究の世界です。
発展著しい人工知能ですが、課題があります。
それは、「意味を理解していない」「人工知能に意識は宿るか」ということ。
人工知能は結局はコンピュータ上のプログラムに過ぎません。
このあたりの話題については他に面白そうな本があれば読んでみようかと思います。
本書で述べられていた内容ではないですが、最近AIの恩恵を大いに受けたものとしてコロナワクチンがあります。
通常10年かかるものが、短期間で開発できたのもAIの活用によるところが大きいそうです。
モデルナなどは、2010年設立の(市場で販売する製品は1つもなかった)ベンチャー企業だと知って、AIの有効活用がいかに重要であるかを感じました。 -
脳とAIの融合研究の過去、現在、未来として、その時々での最先端の研究例が紹介されていて、どのように研究が進んできたかよくわかる。
その進展の早さには驚くばかりだが、そこには多額の研究資金と多くの研究者がいたことを忘れてはならない。
白川英樹先生の"日本人にノーベル賞受賞者が多いのは、私たちは日本語で書かれた教科書を使い、日本語で学んでいるからかもしれない。"という言葉も印象的。英語ができることよりも、母語でより深い思考をすることの重要性を述べられたものだが、AIの発展がそれを助けてくれるかもしれない。
脳はまだまだ解明されていないことが多く、AIと融合することで、いろんな可能性が広がると期待する一方で、場合によっては人を傷つけたり、軍事利用など破壊的な用途に使われたりすることもあり得ることや昨今の世界情勢を考えると、いくら倫理的な課題も議論しながら進めているとはいえ、このスピード感が少し恐い気もした。
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池谷脳AIプロジェクトの紺野大地さんと池谷裕二さんの共著。
脳とAI研究の
今まで、現在、これから、
がわかりやすく書かれていて、読みやすい。
AIがこんなに生活に
当たり前に馴染むなんて
数年前には思わなかったなあ。
この先の進化も楽しみだ。
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脳の研究者である著者2人が人工知能の現状と未来の可能性について数々の研究結果をもとに書いた一冊。
脳のしくみや人工知能の研究の軌跡を本書で学び、人工知能は自ら学習することにより進化を遂げた歩みを感じることができました。
視覚の観点からみても機能でカバーするのではなく、脳を直接刺激することで認識する方法の研究を行ったり、精神疾患を診断できるようになるためにバイオマーカーを確立したりするなどさまざまな研究が進んでいて脳と人工知能を用いた研究の最前線を知ることができました。
また、イーロン・マスクによる脳と人工知能を繋ぐ試みや東大合格やノーベル賞受賞などを目指す試みの研究が進んでいることも本書で知ることができました。
そして、脳情報の読み取りと書き取りの方法を知ることができるだけでなく先端を走っている企業や電気、磁気、超音波、光などのツールなども知ることができました。
まだまだ脳のメカニズムは解明されていないことも知り、人工知能が解明に一役を担う可能性があることも本書を読んで感じました。
科学やアートなどの分野での研究も進んでおり、脳のメカニズムと人工知能の可能性が融合することで今では想像もできないことができるようになるかもしれないという人類の未来が飛躍的に向上しそうな期待を抱いた一冊でした。 -
とても良い。タイトルに「人工知能」の入った一般書は基本的に読まない派だが、そういう人達にもぜひ読んでみてほしい。
平易で情報の伝わってくる文章で面白い研究や取り組みをたくさん紹介している。Neuralinkやノーベルチューリングチャレンジの動向を今後も追っていきたい。
最新情報や最新の研究が多く含まれており、神経科学とメタバースの融合について意見を述べる際FacebookがMetaに社名変更したことにまで言及されていることには驚いた。出版直前まで文章を推敲していたに違いない。
個人的に人間の認知とこれからの科学のあり方について考えされられた点が一番良かった。
「意識を持つとはどういう状態なのか」「意味を理解するとはどういうことなのか」の問いに紹介されたトノーニ先生の統合情報理論や北沢先生の主張は面白かった。なおここでこの理論が正しいかどうかは誰にも分からないよ、と一言添えている点に誠実さを感じた。
従来の科学は仮説検証と人間による理解を重んじており、自身も重んじて生きてきたけれど、潤沢な計算資源を用いて仮説を立てずして正解を導くことや人間には理解できない万物の方程式が生み出されることが現実的になってきた今、科学に対する姿勢や取り組み方は大きく変わっていくのだろうと未来に想いを馳せた。 -
ディープラーニングがITを革新的に進化させた人間脳に近いた瞬間である、眼を持ったコンピューターも進化が指数関数的スピード、今こうしている間でも賢くなって行く、人間の生き方を根本から考える時だと思う、chatGPTと共に思考する時間も増えた自分が拡張して行くことが、肌で感じる。
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脳研究、人工知能研究いずれも近年急速に進歩している分野であるが、両者を組み合わせたならばどれほどのことができるのか、最先端の興味深い事例が多数紹介される。
イーロン・マスク率いるNeuralinkの取組では、アカデミアとインダストリーの繋がりにより短期間で驚異的なブレイクスルーが実現されているが、豊富な資金力と高性能のコンピュータを擁する者の強みが実感される。(治療目的ではあるが、脳に電極を埋め込んだりと、SFに現実が近づいている感がした。)
著者は、東京大学「池谷脳AI融合プロジェクトに所属しているが、同プロジェクトでは、脳の未知なる能力をAIを用いて開拓することで、脳の潜在性の臨界点を探ることを目的として研究が行われている。
倫理的な問題には十分配慮して研究は行われているようだが、こうした取組の先にある"未来"はどのようなものとなるのか、各人の人間観、世界観を問われそうだ。
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どんなに、新しいことが書かれているのかと思ったが、想像以上の衝撃はなかった。
一番ふむふむと思ったのは、「はじめに」の「脳には計り知れない可能性がある」というもの。今のところ、脳の真のポテンシャルは、身体という制約で閉塞されている。
マトリックスのような世界は、いいのかよくないのか?
結局はよくわからない。
Neuralinkイーロンマスク 脳と人工知能を融合して超人類になる?
オッカムのカミソリ「ある事項を説明するために必要以上に多くを仮定すべきではない」
なるべく少ない原理だけで自然界を説明しようという価値観。これは、人間の認知限界から生まれている。
人工知能は、高次元科学である。 -
人工知能や脳との連携分野が実際にどのような状況であるかを、第一線の研究者が解説している書籍なので、概観には最適。
「オッカムの剃刀」が人間の認知限界からきているのではとの考え方が面白かった。AIは複雑な世界を複雑なまま理解できるが、人間にはそれができない。
著者プロフィール
池谷裕二の作品





