石を黙らせて

  • 講談社 (2022年1月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (162ページ) / ISBN・EAN: 9784065266793

作品紹介・あらすじ

名も知らない女性の人生を、尊厳を傷つけた。
過去の強姦を告白し、婚約者と家族から断絶された男は、
謝罪のために事件を公表し、被害者探しを思い立つ。 

せめて罰を受けさせてくれ
罪とはなにか。その罪に許しはあるのか。

『死にたくなったら電話して』の著者が突きつける、このうえなく深い問い。

「謝るというのはある種傲慢な行為であって、自分の本来の気持ちばかりがどうしても滲み出てくる。
それを含めて書いているのが巧みだと思った」
          高山羽根子

「性被害については、どうしても被害を受けた女性側が語る立場に置かれることが多い。男性側がポロッと発語することで露わになってしまうもの、発語した瞬間に生じる社会との摩擦といったものがちゃんと書かれている点を最大限に評価したい」
          倉本さおり

「この作品には、出来事を終わらせないことの倫理観はあった」
          矢野利裕

みんなの感想まとめ

テーマは、過去の強姦を告白した男が謝罪のために被害者を探すという、非常に難しい内容です。作品は、加害者と被害者の複雑な心情を描き出し、特に男性側の視点から語られることで、社会との摩擦や倫理的な葛藤を浮...

感想・レビュー・書評

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  • ページ数にして156ページ。読み終えるのはさほど時間がかからない。だけど、一時も心が落ち着かない156ページ。むしろ、気持ちが乱れてずっと心が騒ぐ。そして、読み終えてからしばらく気持ちがザワつく。罪を犯したり、やましいことはないのに、読んでいるこちらが追い込まれていくような感覚が拭えない。とにかく落ち着かない。

    主人公は過去の強姦を婚約者に告白する。結婚が決まり、幸せを感じた時に強烈に思い出し、今までみたいに忘れたと同様に振舞っていけなくなったから。それから家族にも告白する。その後、共犯者の幹央にも話をしてブログで公開する旨を告げる。そして、元同僚の芳賀、共犯者でリーダー格の溝口、禅僧の宮下と順に対話していく。

    罪を口にすることで、他人に言うことで、言葉にすることで、抱えきれない苦痛から解放されようとしたのか?過去の罪を告白して世間に知らせるのは、自分ひとりでは抱えきれない弱さなのではないかと思える。当然他人から非難されるだろうが、その分注目もされる。そこにはどこか僅かな容赦を求める気持ちが含まれているように感じる。自分で自分に罰を与えられない代わりに、無作為に罰を与えてくれる人を求めたかのようだ。それは、最悪の結果を想像して口にしたのではなく、最良(とまでは言わないがやや楽観的な)の結果を想像して口にしたかのようにも感じる。被害女性や周りの人たちのことを考えてではなく、自己のことを考えて発言したように思えるから。

    言い逃れのしようがない完全に悪い自分、として客観的に語るほどに、どこか優しい言葉を掛けて寄り添ってほしい期待が隠れているように感じてしまう。

    元同僚の芳賀との対話はとても強烈だった。芳賀は女性なのでまるで被害女性の代弁者かのように話すのだが、とてつもなく辛いが反論の余地はない。

    読み終えて感じたことをここまで書いてきたが、これは結局因果を断ち切る気持ちが理解できていなからなのだろうか?一読では把握できていないのかもしれない。しばらくして読み直してみるのがいいかもしれない。

  • 大好きな李龍徳さんの新刊。かつて強姦した被害女性に懺悔したい男の話ということだが、扱いが難しそうなテーマをこのページ数の少なさでどう書き上げるんだろうと読みながらドキドキした。だからラストにかけて流れはちょっと意表を突くというか、想像の斜め上をゆくものだったのだけれど、それでも一気にガッと読んで呆然とするような読書になった。元同僚の芳賀に連れ回されるシーンは、言葉による苛烈な打擲が冴え渡っていて痛快。
    自分の犯した罪とは言え、急に思い立って過去のことをほじくりまわすのは都合のいい自己憐憫と自己満足に過ぎないから、やめとけとしか私も言えない。「あらかじめ許されることを期待してする謝罪になんの意味があるのでしょうか?」という被害女性の、言われたわけではない言葉にこめられる、一生ものの痛み。禅に興味が湧いた。

  • スラスラと読めたけど、ずっとモヤモヤが心の中に残っている。
    (性犯罪に限らずだけど)加害者・被害者のどちらにもなり得る可能性が自分にもあるので、他人事ではないなという思いがずっとあった。
    主人公の反省の気持ちは、良いとは思うけれど、それを公にするとこに対してはそれが最適なのかは分からなかった。被害者の意思はどう考慮するのか、など考えることが多い話だった。

    モヤモヤとした余韻が残るけど、この人生の中で読んでおいてよかったなと思った。

  • https://book.asahi.com/article/14588084
    この話に出てくる男たち、全員火に焼かれてほしい。多分この感想がこの物語で一番正しい。多くの人に読まれることを望むよ。

  • 17歳のころにレイプしたことが急に苦になり、その事実を公表し、被害者に謝罪したいと願う男。
    面白い設定だと思って読んでみた。タイトルが良い。
    しかし、
    仮定したことのシミュレーションという感じが読む間ずっと続いた。良心の呵責を主人公が強く持っていることが切実に感じられず、設定として置いてある印象。
    ゆえに、ラストのタイトル回収も響かなかった。良い着想なのに書ききれていないように思う。

  • 分かりやすく暴食、酒・煙草という自己憐憫に溺れながらの開示活動には共感できなかった。全ては自己満足でしかないが、その辺りも断つべきでしょう

  • 良い

  • ふむ

  • 過去を償うために自分の犯した罪を告白するお話です。誰かを傷つけてしまった人へ。
    誰かの幸せを願うことさえ許されないのだよ、謝罪は自分を慰める行為でしかない。

  • 初めて 李さんの作品を読みました。 衝撃だろうなぁ。応報刑がいいんではないか。

  • 被害者は黙らない石に生きている間苦しみ続け、加害者は石の存在なんて知らずにあるいは無視して生きていける、その不合理さ
    自己憐憫と自己満足の罪の告白なんて一番いらない

  • 過去におかした強姦を婚約者や家族に告白し、ブログ等で社会に公表し、被害者を探し出し謝罪しようと考える私。
    難しいテーマで、何が正しいのかわからない。
    しかし、過去の罪を時効が成立するような時期になって告白するなんてズルい。
    世間的には非難されても実刑は受けないのだから。
    また、こんなことして被害者の女性は報われるのだろうか?
    余計に苦しむだけだと思う。
    忘れることは無いにしても自分は少なくとも罪を受けない安全なところから告白されても何の償いにもならない。
    独りよがりな考え方でしかない。
    自分が落ちぶれることで自己満足しているだけ。
    被害者にも周りの人にも何も良いことはない。辛く遣り場のない感情を生むだけのような気がする。
    世間に公表しなくても自分の罪にしっかり向き合い、苦しめばいいのだ。
    他の人を巻き込むな、と言いたい。
    こんなことしても被害者は決して喜ばない。

  • 高校生の時に集団レイプの加害者になった男が、突然に罪の意識に目覚める話。
    結婚する直前に目覚めて、自分の罪を告白することで婚約者や家族が傷つく様を見ると「そんな今更告白せんでも…」とか思う(現実のニュースを見て、とかだったらそんな感想出てこないと思うけど、小説だと思ってしまう)
    具体的な行いの内容は書かれているものの、あまり生々しくない。読みやすくはあるが、読んでいて、いまいち語り手である主人公が「レイプした人」という実感を持てない。
    シリアス過ぎない場面も結構あり、元同僚の女や、主犯だった政治家の男、その男が紹介したお坊さん…といった面々とのやりとりはなかなか面白い。
    詰めの甘いところはあるものの、読めてよかった。

  • 加害から10年以上を経て、全てを捨てて、被害者への謝罪をしようとする性犯罪加害者の男が主人公の小説。
    特に性犯罪については、どうしても自己満足のきらいは拭えないので、真の謝罪というのは本当に困難であると感じた。最初から性犯罪なんて絶対やったら駄目ということを再認識した。
    性犯罪や謝罪の在り方について見つめなおすことができる有意義な小説だと思ったが、突然謝罪に目覚める主人公をはじめ、性犯罪を主導した溝口(現在は県議会議員)など、総じて登場人物のキャラクターにはリアリティがあまり感じられなかった。

  • 17才の時成り行きでレイプした主人公。結婚前に突然罪の意識に囚われ何もかも暴露して断罪を乞おうとする。
    降って湧いたような突然の後悔、主人公の押し潰されそうな心に救いはあるのだろうか?そして彼にとっての贖罪が果たしてされた彼女にとって救いとなるのだろうか?考えてしまった。

  • 初めての作家さん
    意外な展開
    思わぬ発想
    同僚のぶっ飛び
    最後の・・・

  • 芥川賞的な小説。高校生のときに自分が起こした強姦を婚約者に告白し(当然破綻)、親兄弟にも告白し、会社を辞め、誰だか分からない被害者を突きとめて贖罪をしようと本名でブログを書こうとしつつ、当時の共犯者たちと連絡を取ろうとしていく主人公。たまたま出会った元婚約者と同僚の女性とのやり取りなども通じて変わっていく主人公。伊坂幸太郎の作品い出てきそうなくせのある登場人物たちの会話を中心に進んで行くのだが、伊坂幸太郎作品のようにエンターテインメントではなく、特別なオチもない。
    誰にでもあるだろう忘れたい過去に自分の過ちとどう付き合って生きていくのか、忘れたいのに思い出させる作品でした。「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」by シャー・アズナブル。

  • 朝日新聞202242掲載 評者:金原ひとみ(作家)

  • 過去に性犯罪を起こした男性が、何年も経って被害者の女性に償いをしようと行動を起こす。被害者ではなく加害者の立場からのお話。しかし、被害者の女性を探して謝罪しようとする行為は、自己満足で、もしかしたら女性からすると過去の辛い出来事を掘り返され迷惑なことかもしれない。
    「あらかじめ許されることを期待してする謝罪になんの意味があるのでしょうか?」(p153)という台詞がありますが、加害者は謝罪を通して単に楽になりたかったのでは?このような話は初めてで、誰にも共感できなかった。それが狙いなのかな? 

  • 結局「完璧に生きていく」なんか当然出来ないし、過去の負債に向き合うとしてもそこからエゴは抜けないんだなって感じました。

    言える過去言えない過去それぞれあるだろうけど、結局過去も積み重ねて生きていくしかないと諦めざるを得ないとすら思います。

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著者プロフィール

1976年、埼玉県生まれ。在日韓国人三世。2014年『死にたくなったら電話して』で第51回文藝賞を受賞しデビュー。2020年『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』で第42回野間文芸新人賞を受賞。

「2022年 『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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