春の窓 安房直子ファンタジー (講談社文庫)

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  • 講談社 (2022年2月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784065266908

作品紹介・あらすじ

どこかなつかしい身近な日常からはるかな空想の時間へといざなう安房直子ファンタジー。
売れない絵かきの家を訪れた不思議な猫の魔法を描いた表題作「春の窓」をはじめ、
心を静かに整えてくれる十二編を収録。

大人の孤独や寂しさをやわらかく包み込み、
何度も読み返したくなる切なくも美しい極上の短編集。

みんなの感想まとめ

日常から幻想的な世界へと誘う短編集で、心に温かさと切なさをもたらす作品です。安房直子の描く物語は、孤独ややりきれなさを抱える人々に寄り添い、彼らの日常に潜む不思議な体験を通じて、ささやかな愛を感じさせ...

感想・レビュー・書評

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  • 安房直子さんのファンタジー 、すごく好きです。
    今日は一日、この本をゆっくり読んでいて、とても幸せでした。12編のお話は、どれも、どこか懐かしくて、優しい、切なくも美しい作品ばかり。
    特に 『あるジャム屋の話』と、表題作の『春の窓』が、すごく良かった。読み終えると、心がぽかぽかになっていました! (*^_^*)
    日常から、不思議な世界へといざなわれる、極上の時間を楽しませていただきました。
    とてもあったかく、優しい気持ちになれます。
    おすすめ!
    2022年2月23日

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      身体に染み込むように、ゆるりと読んでください。。。

      猫に積読本の話は禁句!
      りまのさん
      身体に染み込むように、ゆるりと読んでください。。。

      猫に積読本の話は禁句!
      2022/02/21
    • りまのさん
      にゃんこまるさん
      おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      今日も、とても寒くなりそうなので、温かくしてお過ごしくださいね♪
      (...
      にゃんこまるさん
      おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      今日も、とても寒くなりそうなので、温かくしてお過ごしくださいね♪
      (*^_^*)
      2022/02/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      にゃ~ん
      りまのさん
      にゃ~ん
      2022/02/21
  • ブク友さんのレビュー
    「ふとした時に感じるやりきれなさや孤独にそっと寄り添って温めてくれる、ささやかな愛を感じられました」に惹かれて手にとりました。
    ご紹介ありがとうございます♪

    主人公は貧しかったり、ひとりぼっちだったり。
    でもその状況を静かに受け入れて日々を生きている人たち。そんな中で出会う、動物、木、花、スカーフや鍋などなど。不思議な体験なんだけど、本当に起こりそうな、その人だけにしかわからない、温かく心に残り続けるもの。
    安房直子さんの描く独特の世界ですね。

  • ちょっぴり不思議で、夢の中にいるような世界を描いた短編集。
    季節の変わり目にふと感じる寂しさも、ふんわり漂うそよ風や柔らかな陽射し、優しい木漏れ日に慰められる。
    寒くて薄暗かった冬を越えようやく訪れた、待ち焦がれた春。
    それは自分で部屋の窓を開けなければ気付くことのできない嬉しい瞬間。
    森野屋の美味しいジャムもおばあさんの心を明るくする黄色いスカーフも、海から届くカワイイ電話もすてきな贈りものも、ゆきひら鍋で作った温かなりんごの甘煮も、全てが春の淡いまぼろし。

    特に『黄色いスカーフ』『海からの電話』『ゆきひらの話』が好き。
    寝る前に一話ずつ。夢の世界へと優しく誘ってくれる短編集だった。

    • kikiさん
      こんにちは。
      mofuさんのレビューを読んで、
      なんて素敵なんだろう!と思い、
      今、読んでいます。
      一話ずつ、大切に読みたくなる本ですね。
      こんにちは。
      mofuさんのレビューを読んで、
      なんて素敵なんだろう!と思い、
      今、読んでいます。
      一話ずつ、大切に読みたくなる本ですね。
      2022/10/02
    • mofuさん
      kikiさん、こんばんは。
      kikiさんも読まれているんですね。
      可愛くて優しくて、一話一話を丁寧に読みたくなりますよね。
      コメントをありが...
      kikiさん、こんばんは。
      kikiさんも読まれているんですね。
      可愛くて優しくて、一話一話を丁寧に読みたくなりますよね。
      コメントをありがとうございました(*^^*)
      2022/10/02
  • 周りの動植物や物たちの心の声を具現化したかのようなやさしさが、望まずとも孤独を感じて生きていかねばならない人達に届けられる物語は、私のような、今でもひとりぼっちで暮らしている人間にとって、温かくも切ない思いに駆られます。

    主人公たちの年代も、少女時代のささやかな思い出が蘇ってくる展開に、安房さんのやさしさを感じさせる、おばあさんが主役の話や、貧しい家庭に生まれながらも思いやりをもった、健気な女の子の話など、様々です。

    特に、後者の「海からの贈りもの」での、お祭りに行く女の子に、病気のおかあさんが、「これですきなもの買っておいで」と、渡した五十円玉二枚を、自分のものを五十円分、おかあさんのものを五十円分、買いたいと思う女の子の気持ちを思うと、物語とはいえ、そのやさしさに込み上げてくるものを止められません。

    また、もう一つ印象的だったのが、表題作の「春の窓」で、ここでの猫があたたかいという話に、実はとても共感できるものがありました。

    というのも、この話を読んだとき、以前、住んでいた家から通ってた公園で、歩道の縁石に座っていた私の膝の上で、丸まって眠ったノラを思い出したからなんですけど、その時の温かさは、本当にひとりじゃない気持ちが芽生えた喜びで胸がいっぱいになって、しかも、それが幻想でなく、ノラの存在をはっきり証明する重さを実感したときの嬉しさといったら!

    そうした体験を踏まえながらも、更に、その先の素敵な幻想世界を見せてくれる、安房さんの物語には、老若男女すべての人が持ちうる、ふとした時に感じるやり切れなさや孤独に、そっと寄り添って温めてくれる、ささやかな愛を感じられました。

    しかし、その愛も、本書を読み終えた途端、現実に戻ってきたような感覚で消滅してしまい、行きどころのない壮絶なもの寂しさを感じた私は、思わず、庭の木々達に縋るような視線を向けていたのでした。

    • koalajさん
      たださん、こんばんは。
      レビューが印象に残ってこの本を手にとりました。ありがとうございます。
      安房直子さんが描く世界は、ほんとうに身近に起こ...
      たださん、こんばんは。
      レビューが印象に残ってこの本を手にとりました。ありがとうございます。
      安房直子さんが描く世界は、ほんとうに身近に起こりそうで不思議な感じがしますね。
      2024/05/13
    • たださん
      koalajさん
      レビュー拝見いたしました。
      私のそれがきっかけで、再び安房さんの作品を読んで下さり、とても嬉しいです!!
      ありがとうござい...
      koalajさん
      レビュー拝見いたしました。
      私のそれがきっかけで、再び安房さんの作品を読んで下さり、とても嬉しいです!!
      ありがとうございます(^o^)

      安房さんの物語は人同士もそうなのですが、特に自然の動植物との関係性を、優しい雰囲気で温かく描くのが好きで、たとえ孤独を感じるのだとしても、ふと自分の周りを改めて見直したときに存在するものたちが、優しく見守ってくれているような、そんな気持ちを抱かせるところに、安房さんのお人柄の良さと、本ならではの素晴らしさを感じられます。
      2024/05/13
  • 祝復刊?

    ※この作品は2008年10月に、X文庫ホワイトハート『春の窓 安房直子ファンタジスタ』として刊行されたものです。

    『春の窓 安房直子ファンタジー』(安房 直子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000361122

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      やっと購入、表紙カバー画は

      Home | Naffy
      https://www.na-ffy.com/
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      2022/03/08
  • 十二篇のファンタジー短編集。
    ひとつめの”黄色いスカーフ”から、もう虜になり、想像がつかない展開にワクワクしながら読みました。少し切ないストーリーもありますが、一話一話が美しくて、うっとり幸せな気持ちになる童話集です。

    1番心に残ったのは”春の窓”。本を閉じた後も物語が続いているような余韻に浸っています。

    自然や動物たちが、自分にも話しかけてくれないかしら…なんて想像するだけで楽しい。夢の世界に連れて行ってくれる一冊でした。

  • 心がポッと温かくなった。
    講談社さんありがとう。
    安房直子さんの本が文庫本で読めるなんて嬉しい!

    私のところにも春が来ました。

  • 春の陽だまりにいるような心がポカポカとぬくぬくするお話が多かった。
    子供向けというより大人の童話。
    孤独を感じたり、人生に疲れたりした大人の心を温めてくれる。

  • 安房直子さんの物語はファンタジーだけど、どこかピリリとシュールだったり、人間臭かったり、それでいて心に残る。題名の「春の窓」が好き。ジャム屋のお話も、気長な奇跡がいいね。

  • こんなに優しい物語 どうしたら書けるのか

  • この本大好き!ファンタジーの魔法をかけてもらえるような素敵な本。
    「急に、おばあさんは、楽しくなりました。めったにないようなすてきなことが、これから始まるような気がしてきました。」
    これは本文中の一節なんだけど、おばあさんだけじゃなくて私も読んでいてほんとうにわくわくしてしまうのだ。大人向けの童話ということだけど、子供でも読めそうではある。
    全編通して始まりにはしんみりした寂しさが漂っており、そこにやってくるファンタジーがぽっと明かりを灯してくれるようなお話が多い。動物たちとの素朴で楽しいやり取り、手のひらに収まる不思議な宝物。どれも好きだけど、「あるジャム屋の話」「星のおはじき」が特にお気に入り。

    ただほんわかした話には収まらないところもあって、「星のおはじき」「天窓のある家」「日暮れの海の物語」は盗人・裏切りの物語だ。後ろめたい気持ちを抱えた人間と、木や動物のお話。「星のおはじき」はクラスメイトのおはじきを盗んでしまった女の子を柳が優しく慰め、おはじきと「あなたの心」を預かってあげると提案してくる。あくまで「預かってあげる」のがミソなのだと思う。預かったものは、いつか返してもらわなくてはならない(そこまではお話の中では書かれていないが)。その重さに耐え、罪を自分の中にきちんと収めて持っていなくてはいけない。他二編を読んでも、そういったことが前提されているように思うのだ。
    不思議な交友の温かい思い出も、後ろめたい思い出もその人の中にあり続けて、ふとした時どこかから顔をのぞかせ、その人の胸の内に光と影を作るのだろう。読書の思い出も、そういうところがある。この本も、私の心に植わっていてほしいと思うような素朴で豊かな物語だった。また読みたい。

  • 安房直子さんの物語、大好きなんだけど多くは絵本・児童書で判型が大きく、あまり持っていない(棚に余裕がない)ので文庫の復刊はうれしい。
    かわいい、ほんわかファンタジーの趣もありつつ、どこかに哀しみや厳しさがみえる作品が多い。結末も、必ずしも"元通り"や"ハッピー"ではない。子ども心には少しこわく、大人には切なく感じるように思う。
    別世界へ旅立って終わる『だれにも見えないベランダ』。一度は手に入れた素敵な物を、ずっと持っていることはできない『小さい金の針』。難は逃れたが、よくしてくれた相手に恩を返さなかったという心のトゲが残る『日暮れの海の物語』『天窓のある家』。
    このあと、どうなったんだろう――と、読み終えてしばし宙を見つめてしまったりする。

  • 通勤中に読んでいた。
    本の世界とはかけ離れた環境で読んでいた。
    かえってその分安房直子さんのファンタジーにすいこまれていくようで、心地よかった。
    また来年の春位、内容を忘れちゃった頃に再読しよう。

  • 安房直子さんが大好きで、全集も、昔講談社文庫から出てたのも持ってるんだけど、また文庫で世に出たのが嬉しくて買ってしまった。
    「ゆきひらの話」が好きです。

  • 優しいお話しで溢れていた。小さい子に読み聞かせても良さそう。心に沁みてゆっくり栄養になるようなそんな一冊。

  • ◼️ 安房直子「春の窓」

    時に何も考えず、絵本のようなファンタジーに心を任せる。それもいいかなと思えます。

    安房直子は児童文学で多くの賞を受けた方、1993年に鬼籍に入られた。帯の通り、懐かしい、ほんのりとしているが、厳しく現実的な向きもある。深い理屈はないが、心の奥に届くような気がする。動物が多く出てくる。

    「あるジャム屋の話」「黄色いスカーフ」
    「北風のわすれたハンカチ」「日暮れの海の物語」
    「だれにも見えないベランダ」「小さな金の針」
    「星のおはじき」「海からの電話」「天窓のある家」
    「海からの贈りもの」「春の窓」「ゆきひらの話」

    の12編。それぞれは長くなく、全部で250くらいの本。

    表題作「春の窓」は売れなくて貧乏な絵描きのところにまだらの猫が来て、壁に窓を描いてみてください、という。絵描きが春の風景の窓を描き、言われるままにカーテンをかけると、猫は魔法をかけるー。

    想像力を刺激されて、ちゃめっ気もありいい話。ほかは人が好いが貧乏な大工の物語「だれにも見えないベランダ」は未来への予感を現実化させることで何も考えずにファンタジックなエンドに浸れる気がして読後感がとてもいい。あと、孤独なお婆さんが主人公の「黄色いスカーフ」「小さな金の針」「ゆきひら」も哀しさの中に希望があって、可愛らしくていいですね。

    サラサラと読み終わり。も少しないかなと思う本読み。書評で見かけたものをブックオフで発見、即購入。スマホも何も出て来ない、昭和の中にいて昔話を聞くようなシチュエーションも感じ取れる。素朴さに潤う。

    冒頭作「あるジャム屋の話」で鹿ちゃんが「ほら、よく言うでしょ、鹿の知恵は神の知恵って」と言うのを、そういえば奈良では鹿は神の使いだな・・なんて不思議な説得力を覚えつつ、この本自体にすでに惹かれていたのでした。

    ロシア紅茶とか、ジャムの種類とか、シルクのスカーフ、青い北風など、ポツポツと小粋なアイテムや色彩を潜ませてあるのもポイントかなと。楽しんで読めると思います。チルい!

  • 安房直子さんの12の短編集
    ひとつひとつの物語は絵本にするのがちょうど良さそうな長さで、どのお話をとっても、哀しみや切なさ、不遇な状況に悩む人などが、不思議な力を持つ動物や憑物神のような存在に助けられたり、欺かれたりする、時には欺く話で、
    そして物語全体を漂う不穏さ、鬱展開に踏み込みそうな危うさが常にある、読みながらずっと、何かを消耗する話ばかりです
    しかしどの話も、そうした繊細な描写や色彩の表現のうつくしさもあいまって、絵本になったところも読んでみたいと願わずにいられない作品でもありました
    各話の解説と感想を記入しますが、あまりネタバレには配慮していません


    『あるジャム屋の話』
    腕は良いが商売は下手な森の中のジャム屋さんのところへ、そのジャムの味に惚れ込んだ鹿のむすめがお手伝いに来てくれてジャム屋は繁盛するけど、鹿のむすめとずっと一緒に居られるのだろうか…? という話
    色鮮やかな様々な種類の果実ジャムを煮る場面や、鹿のむすめが描くラベルの色彩、美しい色合いのジャムを入れたロシアンティーの甘い香りの描写が絶品です

    その一方で、ジャム屋さんは元々勤め人をしていたけど組織に上手くは馴染めなかったとか、ジャム屋を始めたら家族や街の人から奇行扱いをされるなどの世知辛さや世間の風の冷たさも肌感覚で感じる側面もあり、ファンタジーとリアリティの匙加減の巧みさを感じるお話です

    『黄色いスカーフ』
    一人暮らしのおばあさんが、新聞の記事でお洒落にも機能的にも使用できるスカーフっていいですよ! という文章を読み、箪笥の奥にしまったままだった黄色いスカーフをどれどれと取り出して身につけて散歩に出かけて、久しぶりに日の目を見たスカーフが大いに張り切って、おばあさんとのお出かけや、おうちに帰ってからの生活でもたくさんのお手伝いをし、おばあさんは楽しい気持ちで眠りについて終わるって話です
    黄色いスカーフが起こしてくれる素敵な出来事が、ちゃんと黄色にちなんだ内容なのがよい、やはり鮮やかな色彩の描写にこだわりを感じます

    『北風のわすれたハンカチ』
    家族をみな人間の猟銃によって失い、一匹で寂しく暮らす熊が音楽というものを奏でてみたい、それが出来れば寂しくなくなるのではないかと願って、音楽の先生を募集する張り紙を家の外に貼り出します
    しかしそこへ順番にやって来た北風の旦那、北風の奥方は、美しい演奏を聞かせてはくれるものの、ろくに教授はしてくれず、それどころか冬のための食糧を強引に対価として持ち去ってしまうのでした
    そして3人目に訪れた北風の娘は不思議なハンカチを取り出して、熊を幸せに導いてくれる…というほっこりする話…かも知れないのですが、熊がその幼さで世間知が足りないところや、北風の夫婦のイメージ通りの冷たさや残酷さにどちらも寒々しい気持ちになるし、北風の娘が急に優しいお嬢ちゃんなので、その温度差にやや面食らったのと、娘さんが忘れていったハンカチを大事に預かる熊が収納した場所が、それは娘さんに怒られるのでは? と疑問に思うやつだったので、色々とモヤる話でした

    『日暮れの海の物語』
    亀に願いを叶えて貰った娘が求婚を受けてしまい、そこから逃げ続ける中で、呪(まじな)いに詳しい老婆の助けを得て、亀を退けるまでの話
    娘が亀に願った内容は、自分のためではなく大切な人のためだったのですが、それが相手に伝わって報われる事もなく、娘は亀に恐怖し逃げ回り、亀との約束を反古にはできたものの、生涯そのことを後ろめたく思い続けた…という、辛いことばかりの話で救いは無いのですが、凄く惹かれる話でもあります
    安房直子さんの他の作品集には、亀が人間の娘を自分の領域に置いて愛でているが、他の人間の男の説得により娘を解放してやる、というまったく正反対の道筋を辿る話があるので、合わせて読むとより面白いです
    (タイトルは『誰も知らない時間』)

    『誰にも見えないベランダ』
    この作品集の中でも、ひときわファンタジー色の強い作品です
    腕のよい働き者の大工さんの元に、街に住む野良猫や野鳥たちが、自分たちに親切にしてくれた女の子のおうちにベランダを作ってあげてください、と依頼に訪れる話
    女の子の住まいは小さなアパートで、勝手にベランダなんか作っていいのか? と大工さんは悩みますが、そこは野良猫や野鳥が上手いこと魔法を使って“誰にも見えないベランダ”にしてくれるのだとか
    立派な庭のような美しいベランダができてから、そのベランダで育った花や果物、野菜が大工さんの元にお手紙と一緒に届くようになり、ある日の夜に、女の子と動物たちは空飛ぶベランダで大工さんを迎えにやって来て、どこまでもどこまでも飛んでいく そんな結末の話です
    ベランダで育つ花や果物、野菜の瑞々しさや、空飛ぶベランダの素敵な光景は、皆が幸せに暮らせる世への道行きだったのでは? と自分としては読めてしまった
    都会で過酷な生活を強いられてる動物たち、それに優しくした女の子、親切なあまりに儲からない仕事ばかり頼まれがちな大工さん、そんな面々が幸せに暮らせる場所に去っていったって話、に読めた

    『小さい金の針』
    おばあさんが針仕事をしている夜に、大家族のねずみの奥さんが、針刺しを貸りに現れる話
    おばあさんは自分のうちに住み着いていたねずみの奥さんに凄く親切にし、ねずみの奥さんも物凄く裁縫がはかどる金の針を感謝のあかしにおばあさんに譲るのですが、後日「やっぱり返して下さい」という結末で終わる、ねずみの奥さんがかなり振り回してくる展開です
    でも、その金の針の輝きや、小さな靴をいくつもこしらえるねずみの奥さん、金の針でたくさんのカーテンをあっという間に縫い上げるおばあさん、など働き者の手仕事の心地よさに溢れている、癖のある良さがある作品です

    『星のおはじき』
    きらきらして可愛らしい、星の柄のおはじきを同級生の机から盗み出してしまった女の子の話
    安房直子さんの作品では、経済的に恵まれない環境であったり、幼いながら自分で自分の面倒を見なければいけない、でもそれに挫けずにいようとする境遇の子が時折登場しますが、そういう子が邪険にされたり、やらかしてしまう出来事も容赦なく書かれます
    盗み出してしまったおはじきを上手いこと返す展開ではなく無かったことにする結末なので、幻想譚のところは女の子の想像の中の出来事に過ぎないようにも思えます しんどい解釈だけど

    『海からの電話』
    松原さん、という音楽の学校に通う男性がギターを持って海に出かけ、ついうとうとと昼寝をすると、ギターの弦がカニに切られてしまって、申し訳なく思ったカニたちは松原さんにギターの修繕をしてみせる、と約束します
    松原さんは当初は、カニに何が出来るもんかと馬鹿にするものの、懸命にギターを直してはみんなで弾いて歌って定時報告を入れるカニたちにほだされて、当分の間はカニにギターを預けることにしました
    そしてカニたちの報告の音色と歌声は、ずっと松原さんの元に届き続けた、しかしその音が聞こえるのは松原さんだけだった、という結末なので、うん、自分はやっぱり妄想だった解釈をしてしまう

    『天窓のある家』
    心を病み、療養のために友人の所有する山荘に滞在していた男性が、天窓からの月明かりに照らされたこぶしの木の花の影を手にとってしまい、花の影は美しい細工物のように男性の手の中に残ったのですが、影をかえして、というこぶしの木の訴えを聞いた男性は一度は返すことを約束するものの惜しくなってしまい、影を持ったまま山を降りてしまう
    山から帰った男性は見違えるように心が晴れて元気になっており、結婚もし、子供も産まれ、何年も過ぎた後に、あの山荘のこぶしの木は病気になって枯れた事を聞くという、木の命を盗み出して死なせたとも、木のおかげで生き延びることができた、とも言える結末でした
    人間の命と木の命、どちらが重いのか? という話ではないかも知れないけど、ひょっとしたらこの男性は、自身を木にぶら下げて命を絶っていたかも知れない、そうならなくて良かったのではないか

    『海からの贈り物』
    身体の弱いお母さんとふたり暮らしの女の子が、ささやかなおこづかいを持って、海辺の街のおまつりに出かけるのですが、綺麗な桜貝を売るおばあさんにすすめられて袋いっぱいの桜貝を買ってしまい、その桜貝は海からやってきたおばあさんたちの賭場で使われる賭け札で、賭け場に参加した女の子はまんまと桜貝をすべてスッてしまって、慌てて残りのお金で桜貝を買おうとするものの、桜貝売りのおばあさんも賭け場のおばあさんたちもいつの間にか居なくなっている、という、悔しいだろうけど、いい勉強だと思って諦めなよ、持ち金をみんなぶっ込もうとするのは駄目だよっておばあさんたちも言ってるんだよ、と女の子をたしなめたい気持ちになる話でした
    おばあさんたちは、桜貝を別の形で返してくれるのですが、賭け事にのめり込むのは良くないってとこ、女の子はちゃんと分かってるか心配になる終わり方をします

    『春の窓』
    売れない画家をしている青年の元に野良猫が住み着くのですが、その野良猫は喋るし魔法も使える猫だったもので、画家はアドバイスを受けて絵がよく売れるようになる
    しかし、最初に描いた春の世界に繋がる窓の絵の中にいる女性に会いたいと画家は願うようになり、それを魔法がつかえて喋れる猫は叶えてあげる…という、猫の仕草や絵画の色彩は美しいのですが、画家はずいぶんなあまえんぼだし、猫の負荷が大きいな、と思わざるを得ない話でした
    『あるジャム屋の話』でも鹿の娘の負荷が大きいな、と思ったのですが、あちらでは鹿の娘さんは自身で望んでそうしていた、こちらはあくまで画家のわがままなので、ちょっとなーって感じです
    猫が身近にいる人間からすると、猫に何かしら仕事をさせることに抵抗があるので、点が辛くなってる側面はあります

    『ゆきひらの話』
    一人暮らしで、風邪をひいて寝込んでいるおばあさんが、昔から使っていたけど最近は棚の奥にしまいっぱなしだったゆきひら鍋に話しかけられて、美味しい療養食を一緒に作るお話
    一人暮らしのおばあさんが、昔大切に使っていた品物に話しかけられるという入口の話は『黄色いスカーフ』と共通していますが、スカーフは夜に目を閉じて眠りにつくおばあさんの姿で終わるのに対し、こちらはすっかり風邪が治って、丁寧にゆきひら鍋を洗ってあげる朝の台所の光景で終わります
    はっきりと、朝の光と命に溢れた終わりかたなので、最後に収録される話に相応しく感じました

  • ファンタジー。雰囲気は明るく穏やかなのだが、想像すると少し気味が悪い。展開も意外とゾッとする。予想していたよりも私の口には合わなかった。グリム童話の日本発祥大人風味。

  • 子供の頃に読んだ話たち。とても懐かしい、穏やかな気持ちになりました。「うさぎ屋のひみつ」も入っていたらさらにうれしかったなと思います。

  • ゆきひらの話と黄色いスカーフの話が好きです。

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著者プロフィール

安房直子(あわ・なおこ)
1943年、東京都生まれ。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっ子』第3回日本児童文学者協会新人賞、『北風のわすれたハンカチ』第19回サンケイ児童出版文化賞推薦、『風と木の歌』第22回小学館文学賞、『遠い野ばらの村』第20回野間児童文芸賞、『山の童話 風のローラースケート』第3回新見南吉児童文学賞、『花豆の煮えるまで―小夜の物語』赤い鳥文学賞特別賞、受賞作多数。1993年永眠。

「2022年 『春の窓 安房直子ファンタジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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