- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065268148
作品紹介・あらすじ
弱くても戦え!『元彼の遺言状』の新鋭が放つ最高面白さの「公取」ミステリー!
学生時代は空手部所属、弱くないのに万年2位。
曲がったことは嫌いだけど、いまいち壁を破れない残念女子は弱小官庁、公正取引委員会職員の白熊楓。
東大トップ、留学帰りの超エリート・小勝負勉がなぜか公取委を志望して白熊と同じチームに配属される。
考えるより先に動いてしまう白熊と、だいぶ嫌みだけと言うことは絶対正しい小勝負の白黒バディが、
競争を妨げ巨利を貪る悪者相手に繰り広げる、
ノンストップ・エンターテイメントミステリー!
感想・レビュー・書評
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ホテル三社のカルテルにより、ウェディング費用を毎年同じ値幅で上げているという報告が入った。その調査に向かった公正取引委員会の審査官・白熊と小勝負だったが、内偵中に関係者の一人であるオーナー社長が刺される事件が発生して──。
公取委が主役の物語でしかもミステリ仕立て!空手が得意で情が深い白熊楓と、頭脳明晰で冷静沈着な小勝負勉の凸凹コンビが謎を追う。証拠を押さえる立入検査でさえ、警察の捜査のような強制力はない。警察や検察の板挟みという天秤の中でバランスをとりつつ調査する立場の難しさが印象的。
ミステリと並行して、元々は警察官志望だった白熊の正義感と罪悪感が深掘りされていく。過保護な母に従うように警察官を諦めた過去。人を疑うより自責を選んで誰かから支配されてきた白熊。そんな彼女が親子、恋愛関係での公正な関係を築いていく物語でもあった。弱くても、戦うべき時はある。
これまでの作品の中で一番面白くてバランスがよかったように感じた。公取委という仕事を扱いつつ、その理念を人間関係にも反映してドラマを描く。著者が描いてきたミステリも踏襲され、スパイスになっている。白熊の迂闊さはこれで五年よくやってこられたなと思いつつも、小勝負とのかけ合いはエンタメとして心地いい。
最後に印象に残った文章を引用して終わります。
p.26
「期待? そういうのが一番嫌なんです。期待という名の支配でしょう。そういう、ぬるっとしたものが一番嫌いです」
p.192
自分を見ているようだった。
踏みつけてくる相手に対して、怒れなくなっているのだ。倒しようがない敵に直面したとき、大きな理不尽に見舞われたとき、誰かを憎んでも苦しいだけだ。恨む気持ちはない、自分が悪かったと考えたほうが楽なのだ。
自分の足で立って戦うのは辛い。優秀な支配者の差配のもと駒のように動くほうがよっぽど安楽だ。けれどもそれが、幸せといえるのだろうか。
p.241
「別に僕は強くありませんよ。弱くても戦っているだけです。戦わないと不戦敗になってしまう。勝てる見込みは薄くても戦うしか道はない」
p.253
私たち一人ひとりが、不十分でも弱くても、意思をもって動く。勝ったり負けたり、痛手を負ったり。経済全体としては効率が悪い方法かもしれない。けれども、人任せにしていてはいけない。
一人ひとりの挑戦と試行錯誤が積み重なって、経済が回り、社会がつくられる。そのプロセスこそが競争であり、私たち公取委は競争を守る番人なのだ。
p.283
「正しいことを貫くって、すごく難しいのよ。正しいことは何なのか真剣に考えることから逃げている人たちが、どんな言葉を使うか、教えてあげようか。正義と正義のぶつかり合いとか、正義は人の数だけあるとか、正義の暴走、正義の押しつけとか。私、そういう言葉、ぜーんぶ嫌い」
甲賀は伸びをしながら言った。
「人に押しつけていいものだけを正義と呼ぶのよ。正しいことをしなくちゃ。あなた、公務員なんだから」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
公正取引委員会は、警察のように強制捜査ができるわけではない。そんな強い権力を持たない組織で、正当な手順を踏んで悪事を暴かなければならないもどかしさが、この話の面白さでもある。
体力自慢で悪運の強い白熊さんと、頭が良くて冷静な小勝負くんのコンビが、ギクシャクしながらもだんだんチームワークを発揮してくるところ、胸が熱くなる。
勧善懲悪、正義と悪の闘いでスッキリしたい人にオススメです。 -
お仕事小説多々あれど、公正取引委員会の職員を描いた物語は初めて読んだ。談合などで公正な競争を阻むものを摘発する彼らの仕事。調査の過程で強制力を持たないが故のやりにくさ、役所としての知名度の低さから弱小省庁と自虐しながら、それでもやりがいを持って仕事に取り組む主人公たちの姿に清々しさを覚える。
適正な競争とは?という視点でも考えさせられるところもあり、お仕事小説として面白く読めた。
天才的頭脳を持つ変人・小勝負君がなかなか魅力的ではあったものの、肝心の主人公・白熊楓はいまひとつ好きになれなくて残念。
二人のロマンス行く末が気になる終わり方でそこは続編に持ち越し?
テレビドラマ化が決まっているらしい。ドラマで見れば十分な作品かも。
著者プロフィール
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